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PEG修飾に用いられる新しいツール

PEG化(PEGylation)

PEG(ポリエチレングリコール)には、水への溶解度が大きい、溶液中での移動度が大きい、毒性や変異原性がない、すみやかに代謝されるなど、数多くのメリットがあります。ペプチド、抗体フラグメント、酵素などの生物学的に活性な物質もしくは小分子をポリエチレングリコール鎖で化学修飾すること(“PEGylation”)は、特定の用途に応じた性質を分子に付与するために効果的です(Figure 1)。

PEG修飾

Figure 1:PEG化

特に医薬品は、PEGylationの恩恵を受けやすく、PEG修飾医薬品の上市数が継続的に増加しています。タンパク質やペプチドの分子量を大きくしたり、タンパク質分解酵素から遮蔽することにより、PEG修飾は薬物動態を改善します1。PEGの長さとリンカーを正しく選択することにより、医薬品の溶解性と生体内での分布を高めることが可能です2

薬物輸送におけるPEGポリマーの利用については、非常に多くの報告があります3。最近の報告では、PEG修飾はナノキャリアーシステムや微粒子の薬物輸送を高める手段として論じられています4-5

ペプチドのPEG化

血中半減期は、新薬の成功の鍵となる重要な要素です。したがって、非ペプチド分子からペプチド、タンパク質にいたる有望な新薬候補化合物に、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を修飾して血中半減期を延長することは、大きな利点があります。PEGは、毒性も免疫原性も抗原性もなく水によく溶け、FDAの認可を取得しています6。PEG修飾体は、代謝酵素による分解が減少し、免疫原性が低下あるいは消失します。Pettitらは、IL-15(インターロイキン)にPEGを付加すると、滞留時間が50倍になることを見出しました7

官能性ポリエチレングリコール

ペプチド、タンパク質、抗体フラグメント、アプタマー、酵素、小分子などの生物活性物質をポリエチレングリコールで化学修飾すること(PEG化)により、目的に合わせて分子特性を変化させることができます。このコンジュゲートのPEG部分は水溶性、生体適合性、柔軟性などをもたらします。医薬品のPEG化により、血中消失半減期の延長、免疫原性や抗原性の低下、タンパク質分解の低下による生分解の抑制、体内動態の変化などの効果があります8-9。1991年に最初の治療用のPEG-タンパク質コンジュゲート(PEG-アデノシンデアミナーゼ、PEGADA10)がFDAに認可されてから、各種PEG化タンパク質によるさまざまな疾患の治療が数多く報告されています11-12

PEG-酵素複合体は疎水性有機溶媒中で酵素の可溶性、安定性、活性を高めることから、バイオテクノロジーに用途が見出されました11,13

その他の官能性ポリエチレングリコールの重要な用途

  • 固相ペプチド合成(SPPS)用グラフトポリマー担持体の作製14
  • SPPSにおける可溶性の向上15
  • ペプチド合成用可溶性ポリマー担持体16-17
  • 有機合成用可溶性ポリマー担持体18
  • ペプチド合成における疎水性アミノ酸の導入19
  • 高分子のアフィニティー分離用PEG-リガンドコンジュゲートの作製20
  • PEG被覆表面の作製21
  • 高分子と表面の結合22
  • 標的指向性ポリマー製剤の合成23
  • PEG-糖タンパク質コンジュゲートの作製24
  • バイオリアクター用PEG-補因子付加体の作製25
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References

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  3. (a) “Peptide and Protein PEGylation, a Review of Problems and Solutions”, Veronese, F.M. Biomaterials 2001, 5,405.(b) “Chemistry for Peptide and Protein PEGylation”, Roberts, M.J.; Bentley, M.D.;Jarris, J.M. Adv. Drug Del. Rev. 2002, 4, 459.(c) “PEGylation, Successful Approach to Drug Delivery”, Veronese, F.M.; Pasut, G. Drug Disc. Today 2005, 10, 1451.(d) “Advances in PEGylation of Important Biotech Molecules: Delivery Aspects”, Ryan,S.M.; Mantovani, G.; Wang, X.; Haddleton, D.M.; Brayden, D.J. Exp. Op. on Drug Del. 2008, 5, 371.
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