有機合成化学

CBHA 配位子:不斉酸化用の新規なキラル配位子

KitAlysis™ ハイスループット スクリーニング キット

はじめに

不斉合成は、キラルな分子を合成するための最も重要な手法です。これらの変換反応は、数え切れないほどのキラルな分子の発見をもたらし、医薬、香料、農薬などをはじめ様々な分野で利用されています。プロキラルなオレフィンの水素化反応におけるKnowlesとHonerの先駆的な業績以後、新しい不斉反応に用いる多くの新規配位子と触媒が開発されてきました。これらの配位子に共通した特徴はC2対称性であり、金属錯体のとりうる異性体や異なる置換基を有するアナローグの数を減じています。これまでに見出されてきた新規変換反応により、より少ない工程で、高収率、高選択的に目的の分子が得られるようになりました。

山本らにより開発された新しいタイプの配位子は、C2対称のキラルなビスヒドロキサム酸(CBHA)を基本骨格にしています。これらの二座配位子は、種々の置換基で修飾できるペンダントアームを有しており、配位子の効力のファインチューンが可能です。様々な配位子が合成され、種々の不斉酸化反応での有用性が示されました。

利点

  • 汎用性が高い
  • アトムエコノミカル
  • 低い触媒量
  • 穏やかな反応条件

主な利用例

アルコールの不斉エポキシ化反応1

キラルなエポキシドは、天然物や生物活性物質の合成によく用いられているビルディングブロックです。光学純度の高いエポキシドは、チタン-酒石酸エステル錯体を用いるSharpless不斉エポキシ化やサレン-マンガン錯体を用いるJacobsenエポキシ化といった種々の方法で得ることができます。これらのエポキシ化反応の欠点として、触媒の量が多い、反応時間が長い、触媒の適用範囲が比較的限られている、ことなどが挙げられます。

山本らは、さまざまなアリルアルコールのエポキシ化を達成するCBHA配位子を開発しました。空気中、0~–20℃で2 mol %のBHA配位子、1 mol %のVO(O-iPr)3404926)およびtert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP,458139)を用いたところ、高いエナンチオ選択性と高い収率で目的のエポキシアルコールが得られました。この方法は、低分子量のエポキシアルコールにも複雑なエポキシアルコールにも適用できます。

オレフィンの不斉エポキシ化反応2

オレフィンの不斉エポキシ化は、基本的なビルディングブロック類を得るための重要な反応です。これまでに報告されている最も実用的な反応のひとつは、1990年にJacobsenらが報告したサレン-マンガン錯体を用いる触媒反応ですが、低温での反応の実施が必要でZ-オレフィンの選択性が低いために、適用範囲が限られていました。山本らは、CBHA配位子をモリブデン錯体とともに用いてオレフィンの不斉エポキシ化への利用を検討し、この配位子の一置換-、二置換-、三置換-オレフィンの不斉酸化への有用性を見出しました。反応は空気中、穏やかな条件で実施し、良好な収率と高い選択性が得られます。

スルフィドの不斉酸化反応3

光学的に純粋なスルホキシドは医薬品や天然物の合成に欠かせないビルディングブロックとなっています。キラルなスルホキシドの合成法はいくつか知られていますが、通常は工程数が多く反応条件が厳しい、またエナンチオ選択性が低い場合がほとんどです。スルフィドからキラルなスルホキシドを生成する反応に新規に開発したCBHA配位子とモリブデン錯体を用いたところ、空気中、2 mol%の触媒量で、良好な収率で反応が進行しました。

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不斉合成については左記のページもご参考ください。
     

References

  1. : Zhang, W. et al. Angew. Chem., Int. Ed. 2005, 44, 4389.
  2. : Barlan, A. U. et al. Angew. Chem., Int. Ed. 2006, 45, 5849.
  3. : Basak, A. et al. Tetrahedron: Assymmetry 2006, 17, 508.
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