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過去数年にわたり、Knochelらは選択的なメタル化、脱プロトン化および求核的付加反応ための試薬を報告してきました。これらの試薬は、穏やかな条件下で、不安定な官能基を有する分子から反応性の高い中間体を生成する、これまでに例のない選択的な変換反応を実現しています。 i-PrMgCl•LiCl とs-BuMgCl•LiClを用いる選択的メタル化反応 有機金属試薬の調整にはハロゲン-メタル交換反応が一般的な手法ですが、Li-ハロゲン交換反応の場合には、官能基の適用性に制約がある、低温条件が必要になるなどの問題があります。一方、Mg-ハロゲン交換反応はLiよりも高温条件で進行しますが、官能基の適用性にはやはり制約があります。さらに、有機マグネシウム試薬の反応性が低いために、ハロゲン化アルキルのHX脱離によりオレフィンを生じるなどの競争反応が起こります。Knochel らは、塩を添加することにより反応速度と効率が高まることを見出しました。最適化により、R-MgCl(R = i-Pr (656984), s-Butyl (703486)) と1.0当量のLiClを用いると、最も効果が高いという結果が得られました1。この場合、アリールおよびヘテロアリールマグネシウム誘導体をはじめとする、種々の官能基を有する極めて不安定な基質から対応する有機マグネシウム化合物が得られます。反応性が向上する理由としては、一般的なGrignard試薬で生成する重合した会合体の分解あるいは発生するi-PrMgCl2-LiCl+種のMgの負の電荷の効果(イソプロピル基の求核性が強まる)が挙げられます。 塩による反応速度の増大と促進効果により、これらの効率的な試薬をターボGrignard試薬と名付けられました。この試薬の利点を以下にまとめます: 利点
主な利用例 Knochel らは、CO2R, CN, OMe, ハロゲンなどの官能基を有する種々の芳香族化合物の基質に対する反応性を検討しました(Table 1)。 検討したすべての基質に対しターボGrignard試薬が利用でき、容易に有機金属試薬を形成して多くの求電子剤と効率的に反応しました。反応速度は速くなりますが、反応性の向上はこの反応に悪影響を及ぼすことはなく、種々の官能基があっても変換反応が進行します。i-PrMgCl•LiClの存在下、ハロゲン化ヘテロアリールも対応する有機金属に高収率で変換できます(Table 2)。
Scheme 1: i-PrMgCl•LiCl (TurboGrignard) for Selective Metalations Table 1: Aryl Grignards prepared using i-PrMgCl•LiCl and Subsequent Reaction with Various Electrophiles
Table 2: Heteroaryl Grignards prepared using i-PrMgCl•LiCl and Subsequent Reaction with Various Electrophiles
Knochel らは、過去数年にわたり、ターボGrignard試薬の有用性を報告してきました。以下に、ターボGrignard, i-PrMgCl•LiCl から調整されたGrignard試薬の重要な変換反応をまとめます2。 Table 3: Summary of Literature on TurboGrignard, i-PrMgCl•LiCl
Knochel-Hauser 塩基を用いる選択的脱プロトン化反応 芳香族類の脱プロトン化と官能基化は合成の鍵となる変換反応です。しかし、アルキルリチウムやリチウムアミドなどの一般的な有機強塩基は、競争的な付加反応(Chichibabin反応)を起こします。さらに、多くのアミドは、in situ生成した溶液中で安定性が低く、また、低温条件を要するため、反応操作が簡便とは言えません。Knochelらは、アリールまたはヘテロアリール化合物のレジオ選択的な脱プロトン化反応に対し、TMPMgCl•LiCl の有用性を報告しています3。求電子剤の付加により、アリールまたはヘテロアリール化合物にレジオ選択的に官能基を導入することが可能です。Knochel-Hauser 塩基と呼ばれるこの塩基の利点は以下の通りです: 利点
主な利用例 Hauser 塩基 TMPMgCl•LiCl は様々な条件で効果的であることが見出され、利用できる反応や官能基適用性が広がっています。アリールまたはヘテロアリール化合物のレジオ選択的なメタル化反応については効率に優れているだけでなく、溶解性を高め、不安定な官能基の存在下、目的としない副反応に優先して進行します。TMPMgCl•LiClによりオリゴマー状の会合体が分解されると考えられています。TMPMgCl•LiCl (703540)を用いた多くの基質に対する官能基化の例を下表に示しました(Table 4)。
Scheme 2: TMPMgCl•LiCl for Selective Deprotonations Table 4: Heteroaryl Grignards Prepared using TMPMgCl•LiCl and Subsequent Reaction with Various Electrophiles
その他のレジオ選択的メタル化反応についても報告がなされています。2-フェニルピリジンのメタル化反応は、通常2-ピリジル基で起こりますが、Mg/Li アミド混合物を用いるとフェニル基のメタル化が優先して進行します(Scheme 3)。また、これまで困難とされていたピリミジンのメタル化についても、メタル化されたGrignard中間体を生成しI2 によりヨウ化物が得られました(Scheme 4)。ピリミジンのレジオ選択的なメタル化は、ピリミジンをTMPMgCl•LiCl溶液に加えるという逆添加の手順が最も適していました。 Knochel-Hauser 塩基TMPMgCl•LiCl は、塩基に不安定な官能基を有するアリールまたはヘテロアリール化合物の脱プロトン化にも有用です(Scheme 5)。
Scheme 3: Metalation of 2-Phenyl Pyridine with TMPMgCl•LiCl and Subsequent Functionalization
Scheme 4: Metalation of 5-Bromo-Pyrimidine with TMPMgCl•LiCl and Subsequent Functionalization
Scheme 5: Reaction of TMPMgCl•LiCl with Aryl and Heteroaryl Substrates Containing Base-Sensitive Functionalities and Subsequent Functionalization TMPMgCl•LiClによる芳香族化合物のメタル化反応は適用範囲が広く、下表に示す通り、種々の官能基を有するアリールGrignard試薬が調整され、様々な求電子剤と反応します4。 Table 5: Aryl Grignards Prepared using TMPMgCl•LiCl and Subsequent Reaction with Various Electrophiles
さらにKnochel らは、TMPMgCl•LiCl を用いた多置換チオフェン類の合成も報告しています。2,5-ジクロロチオフェンとTMPMgCl•LiCl の反応により3-メタル化チオフェンが得られます。これを種々の求核剤で捕捉した後にTMPMgCl•LiCl と反応させると、4-置換Mg種が得られ、次の求核剤と反応させることができます。チオフェン骨格上の塩素は還元できるか、あるいは、TMPMgCl•LiCl によりMg種に変換した後に求核剤と反応、または、Mg種とした後にZnCl2によるクロスカップリングでさらに官能基を導入できます。Scheme 7にはTMPMgCl•LiCl を用いる反復メタル化反応の手法による、官能基化されたチオフェンの合成例を示しました。さらに、Knochelらはアトルバスタチン (リピトール)のチオフェンアナローグを36 %の総収率で達成しています。
Scheme 6: Preparation of Substituted Thiophenes
Scheme 7: Preparation of Fully Functionalized Thiophenes LaCl3•2LiCl による選択的1,2-付加反応 La塩は、カルボニルやイミンへ求核剤を1,2-付加させるLuche還元反応に用いられてきました。La塩はLewis酸のようにふるまい、競争する共役付加反応や還元、エノール化などの他の副反応を抑制します。しかし、La錯体の溶解性が低い点と嫌気条件下での取扱いの問題により、その利用には制約がありました。Knochelらは、LiClが有機金属試薬の反応性を高める効果があることをふまえ、LaCl3•2LiClを調整し、THFに可溶であることを見出しました。したがって、立体的に混みあいエノール化しやすいケトン類やMichael受容体、不活性イミンなども、LaCl3•2LiClの存在下では見事に1,2-付加が進行し目的物が得られ、反応の適用範囲が大きく広がりました。さらに以下に示すような利点が挙げられます6: 利点
主な利用例 以下に示すように、Grignard試薬とケトンの反応は、オキソフィリックなLaCl3•2LiCl の存在下では、選択的に1,2-付加反応が進行します(Scheme 8)。
Scheme 8: LaCl3•2LiCl Mediated 1,2-Additions Table 6: LaCl3•2LiCl Mediated Addition to Ketones
溶解性が高く効率的なLa塩-LiCl錯体を用いた最初の発表に続き、Knochelらは、目的の1,2-付加反応の促進するには、La塩は当量以下で充分であることを報告しています。この反応条件は、アルキル、アリール、ヘテロアリールの各Grignard試薬に対して適用できます7。 LaCl3•2LiCl の存在下では、n-BuLiのシクロペンタノンの付加反応も進行し、1,2-付加体生成物のみが得られます(98 %)。さらに、触媒量のLaCl3•2LiClにより、Grignard試薬が不活性イミンに付加し、アミン生成物が高収率で得られます。
Scheme 9: 1,2-Addition of n-BuLi in the Presence of LaCl3•2LiCl
Scheme 10: Nucleophilic Addition of Organomagnesium Reagents to Non-Activated Imines in the Presence of LaCl3•2LiCl
References
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