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有機合成化学

1,2,3-トリアジン及び1,2,4,5-テトラジン誘導体の逆電子要請型Diels-Alder反応

KitAlysis™ ハイスループット スクリーニング キット

概要

特長

  • ピリジン・ピリミジン・ピリダジン・インドールなど、多様なヘテロ環骨格合成に有用
  • 幅広い化合物に利用可能
  • アミジンやイナミン、エナミドなどと位置選択的に反応し、多置換ヘテロ環を形成
  • 温和な反応条件
  • [4+2]付加環化体は、さらに多様な化合物に誘導でき、ライブラリ構築に適用可能
  • タンパク質の修飾など、生化学分野への応用可能

はじめに

共役ジエンとオレフィン(ジエノフィル)との[4+2]付加環化反応であるDiels-Alder反応は、有力な6員環形成反応として、天然物合成などに広く用いられます。この際、電子豊富なジエンと、電子不足のジエノフィル側との組み合わせであると、反応がスムーズに進行することが知られています。

しかし、この逆のペア、すなわち電子不足のジエンと電子豊富なジエノフィルという組み合わせでも、反応が加速されることが知られています。この反応を「逆電子要請型Diels-Alder反応」と呼びます。中でも、窒素原子を多数含み、電子不足状態のヘテロ環を用いた付加環化反応は、高度に官能基化されたヘテロ環の合成に重要であり、天然物の全合成にもよく用いられます。

Aldrichでは、Dale. E. Boger教授の協力の下、逆電子要請型Diels-Alder反応1-11に適した1,2,4,5-テトラジン及び1,2,3-トリアジンの誘導体1-8を提供しています。Boger教授のグループは、各種の天然物全合成を通じてこれらの有用性を示し、多様なヘテロ環誘導体の合成手法開発に貢献してきました1-3。またこうした反応は、医薬品や有機電子材料などの機能性分子合成へも応用が可能です。

オレフィンやアルキンとの逆電子要請型Diels-Alder反応は、他の官能基と反応しにくく、触媒などを必要とせず、毒性のある化合物を副成しません。そこで近年この反応は、タンパク質や生きた細胞に対する共有結合生成に利用できる(バイオオルソゴナルな)反応として、大きな成果を挙げています12-13

1,2,4,5-テトラジン及び1,2,3-トリアジン誘導体

代表的な応用例

1,2,4,5-テトラジン誘導体

1,2,4,5-テトラジンと、電子豊富なオレフィンあるいはアルキンとを[4+2]付加環化反応させ、1,2-ジアジン(ピリダジン)誘導体を得るのは、有機合成分野における確立した手法となっています。この反応では、いったん1,2,4,5-テトラジン骨格とオレフィンが付加環化してかご型骨格を形成し、次いで窒素分子(N2)を放出することで、1,2-ジアジンとなります。

テトラジン誘導体の反応例1

この目的に最もよく用いられる2つの対称テトラジン誘導体4は、Aldrichより入手可能です。

  • 1,2,4,5-テトラジン-3,6-ジカルボン酸ジメチル(ALD00098
  • 3,6-ビス(メチルチオ)-1,2,4,5-テトラジン(ALD00108

1,2,4,5-テトラジン-3,6-ジカルボン酸ジメチル(ALD00098)は、非常に反応性の高いアザジエンであり、広い範囲のジエノフィル及びヘテロジエノフィルと反応するため、多くの環状化合物合成に応用されています。

天然物合成に応用された例として、ニンガリンDの全合成があります6。1,2,4,5-テトラジン-3,6-ジカルボン酸ジメチルとアルキンの付加環化によって得られたピラジンを還元し、N-N結合の切断を経てピロールへと環縮小し、望みの骨格を得ています。同様の手法で、リコガルビンC及びリコガリン酸の合成も行なわれています2

テトラジン誘導体の反応例2

これと同様、3,6-ビス(メチルチオ)-1,2,4,5-テトラジン(ALD00108)は、電子豊富なアルケンまたはアルキンと反応します。エナミンとの反応では、付加環化後に窒素分子とアミンが脱離し、ピリダジン骨格を与えます。アルキンとの反応では付加環化後に窒素分子が放出され、同様にピリダジン骨格を生成します2

生成物であるピリダジン誘導体は、さらなる反応によって多くの環状化合物へと変換可能です5。たとえばアルキンを相手に分子内Diels-Alder反応を行なうと、窒素分子の脱離を経てインドリン誘導体が得られます。同様に、アレンを相手に分子内Diels-Alder反応を行えば、インドール誘導体に変換できます。これらは多置換のインドール誘導体の、位置選択的合成に有用です。

テトラジン誘導体の反応例3

これら2つのテトラジン誘導体を比べた場合、1,2,4,5-テトラジン-3,6-ジカルボン酸ジメチル(ALD00098)は、電子豊富、中間的、電子不足のオレフィン相手に環化反応を起こし、その反応速度は3,6-ビス(メチルチオ)-1,2,4,5-テトラジン(ALD00108)を上回ります5

テトラジン誘導体の反応速度

1,2,3-トリアジン

逆電子要請型Diels-Alder反応に用いられるヘテロ環化合物はいくつか知られていますが、1,2,3-トリアジン誘導体は最近ここに加わった化合物群です。これらは、[4+2]付加環化反応の新たなポテンシャルを引き出し、合成可能な骨格をさらに広げました。

Aldrichが提供する以下の試薬を用いれば、各種含窒素ヘテロ環の合成はより容易になります。下図にまとめた通り、これら1,2,3-トリアジン誘導体は各種ジエノフィルと反応し、窒素分子の発生を伴いつつ、ピリジンまたはピリミジン骨格を与えます3,7-9

  • 1,2,3-トリアジン-5-カルボン酸メチル(ALD00106
  • 1,2,3-トリアジン(ALD00112
  • 1,2,3-トリアジン-4-カルボン酸メチル(ALD00104
  • 1,2,3-トリアジン-4,6-ジカルボン酸ジエチル(ALD00110
  • 5-メトキシ-1,2,3-トリアジン(ALD00500
  • 5-メチルチオ-1,2,3-トリアジン(ALD00502

トリアジン誘導体の反応例1

特に注目すべきこととして、これら1,2,3-トリアジンの反応性は、位置選択性を犠牲にすることなく、5位置換基によって調整できます7。たとえば、5位にCO2Me基が結合した1,2,3-トリアジン(ALD00106)は、無置換のもの(ALD00112)よりはるかに反応性が高いことがBogerらによって示されています3

トリアジン誘導体の反応性1

実際、ジヒドロリゼルギン酸及びジヒドロリゼルゴールの全合成において、1,2,3-トリアジン-5-カルボン酸メチル(ALD00106)は、エナミン型ジエノフィルと室温で反応しています。母体の1,2,3-トリアジン(ALD00112)は、この条件で反応は進行しません。

トリアジン誘導体の反応例2

さらに、電子求引基が4位に結合している場合、または4位と6位両方に結合している場合(ALD00104及びALD00110)も、母体の1,2,3-トリアジンに比べて反応性が向上します。興味深いことに、4位に電子求引基がついている場合には、位置選択的に付加環化反応が進行するケースが報告されています8

トリアジン誘導体の反応例2

Sigma-Aldrichでは、電子供与基の結合したトリアジン誘導体をも用意しています。

  • 5-メトキシ-1,2,3-トリアジン(ALD00500
  • 5-メチルチオ-1,2,3-トリアジン(ALD00502

5-メチルチオ-1,2,3-トリアジン(ALD00502)はアミジン、エナミン、イナミンなどと反応し、それぞれピリミジン、ピリジン、2-アミノピリジン誘導体を与えます。一方、5-メトキシ-1,2,3-トリアジン(ALD00500)はアミジンのみと反応します9

トリアジン誘導体の反応例3

これら反応で得られるインドール、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピロールなどの骨格は、アルカロイドやビタミン類など生理活性天然物のみならず、医薬品候補化合物や有機電子材料など、高付加価値化合物に広く見出されるものです。1,2,4,5-テトラゾールや1,2,3-トリアゾール誘導体は、これらの安全で位置選択的かつ短工程での合成に、大きな威力を発揮します。

バイオコンジュゲーションへの応用

1,2,4,5-テトラジンとジエノフィルの逆電子要請型Diels-Alder反応は、ケミカルバイオロジー分野におけるバイオコンジュゲーションのツールとして非常に有用です。この反応では速度が問題となっていましたが、ひずんだオレフィンであるトランスシクロオクテンをジエノフィルとして用いる方法が提案されました13

この組み合わせでは極めて高速で反応が進行する上、銅など金属触媒を必要とせず、不可逆で高選択的です。副生成物は窒素分子のみであり、周辺の生体分子に対しても余計な反応を起こさない(バイオオルソゴナル)点も優れています。このため、たとえばジエノフィルを生体分子に結合させておき、蛍光タグやアフィニティタグを結びつけた1,2,4,5-テトラジン誘導体と反応させれば、容易にこれらタグを生体分子に導入することができます13-14

また、クリックケミストリーで最もよく用いられる、アジドとアルキンの組み合わせともオルソゴナルであるため、2種の蛍光タグを選択的に導入するといった応用も可能です15。Aldrichでは、化学プローブ合成やバイオコンジュゲーションに有用な、1,2,4,5-テトラジン誘導体及びジエノフィルを用意しております。

バイオコンジュゲーションへの応用例

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