有機合成化学

スーパーシリル保護基

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はじめに

トリス(トリメチルシリル)シラン(360715)は、ラジカル反応におけるトリブチルスズ(Bu3SnH)の有用な代替試薬として、1990年の Reagent of the Yearを受賞しています。トリス(トリメチルシリル)シランは、ヒドロシリル化反応1、ラジカル反応2、酸クロリドの還元3、炭素-ハロゲン結合の還元4、カルボニル化合物のシリル化反応5などに利用されてきました。その他、トリス(トリメチルシリル)シリル基(TTMSS基あるいはスーパーシリル基)が遷移金属と典型元素の錯形成に利用されている例があります6

ごく最近、スーパーシリル基の立体的なかさ高さと電子特性がもたらすユニークな反応性を利用した炭素-炭素結合形成反応が山本らにより実施されました。スーパーシリルエノールエーテルを用いた様々な効率的ワンポット連続反応が報告されています7

トリス(トリメチルシリル)シランの構造

Figure 1 トリス(トリメチルシリル)シラン

References

  1. Liu. Y. et al. J. Org. Chem. 2005, 70, 556.
  2. Postigo, A. et al. Org. Lett. 2007, 9, 5159.
  3. Ballestri, M. et al. Tetrahedron Lett1992, 33, 1787.
  4. Ballestri, M. et al. J. Org. Chem1991, 56, 678.
  5. Alberti, A.; Chatgilialoglu, C. Tetrahedron 1990, 46, 3963.
  6. (a) Elsner, F. H. et al. J. Am. Chem. Soc. 1988, 110, 313. (b) Yu, X. et al. Organometallics 2004, 23, 2210.
  7. Boxer, M. B. et al. Aldrichimica Acta 2009, 42, 3. (PDF)

主な利用例

ジアステレオ選択的 [2+2] 環化反応

Boxerと山本は、スーパーシリル基を有するシリルエノールエーテルをアルデヒドから合成し、それを用いるジアステレレオ選択的[2+2]環化反応を報告しています。かさ高いアルミニウム触媒を用いると、高収率かつジアステレオ選択的に反応が進行します。この[2+2]環化反応は他の一般的なシリル基では起こらないため、TTMSS保護化エノールエーテル独特の反応性であると考えられます1

Scheme 1

References

  1. Boxer, M. B.; Yamamoto, H. Org. Lett. 2005, 7, 3127.

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交差Aldol 連続反応

スーパーシリル基を用いると、種々のアルデヒドの合成に有用なβ-ヒドロキシアルデヒド骨格を構築することが可能になり、高収率で1:1付加体が得られます1。プロピオンアルデヒドから得られるスーパーシリルエノールエーテルを用いた場合、syn選択性が認められ(Scheme 1, Table 1)、これまでMacMillanらにより示されているanti選択性を示す手法2とは補完的な役割を果たしています。

Scheme 1

Table 1

スーパーシリルエノールエーテルの他とは異なる反応性と選択性を利用し、2.2 等量のトリス(トリメチルシリル)シリルビニルエーテルを用いる連続反応を行ったところ、2:1で付加した生成物が得られました(Scheme 2, Table 2)。ここでも、すべての場合にsyn 選択性が認められています。

Scheme 2

Table 2

References

  1. Boxer, M. B.; Yamamoto, H. J. Am. Chem Soc. 2006, 128, 48.
  2. Northrup, A. B.; MacMillan, D. W. C. J. Am. Chem Soc. 2002, 124, 6798.

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ポリオールを生成するジアステレオ選択的な連続反応

異なる求核剤を用いると、スーパーシリルエノールとアルデヒドのアルドール反応により、ワンポットで様々なポリオール骨格が得られます。シリルエノールエーテル、アルキル金属種、さらにヘテロDiels-Alder反応のためのジエン類を用いて連続反応を行うと、高選択的に反応が進行しました(Scheme 1, Table 1)1。(S)-2-フェニルプロピオンアルデヒドを用いた場合には、ラセミ化を起こすことなく、97%の収率で生成物が得られました(entry 5)。

Scheme 1

Table 1

この手法は、LiTMPによるポリハロメチルの脱プロトン化によりin situでポリハロメチルリチウム種が生成する場合に、連続的なaldol-ポリハロメチルリチウム付加反応に適用できます。得られたポリハロメチルカルビノール類は、良好な収率と高い選択性でハロゲン化ビニルへと変換できます(Scheme 22

Scheme 2

References

  1. Boxer, M. B.; Yamamoto, H. J. Am. Chem Soc. 2007, 129, 2762.
  2. Boxer, M. B.; Yamamoto, H. Org. Lett. 2008, 10, 453.

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ジアステレオマー合成と4成分反応

ワンポット連続 aldol-Grignard反応では、様々な基質を選択することにより、ジアステレオマー合成が可能になります。ケトンスーパーシリルエーテルとGrignard試薬によって、anti-もしくはsyn-1,3-ジオールが良好な収率と高いジアステレオ選択性で生成します(Scheme 1, 2)。

Scheme 1

Scheme 2

スーパーシリルエーテルの高い選択性により、4成分をワンポットで用いる連続的aldol-aldol-Grignard反応が試みられ、Scheme 3に示されるように中程度の収率と良好なジアステレオ選択性で生成物が得られました。ワンポットで複雑な分子を選択的に与えるスーパーシリル基は、化学合成において非常に有用です。

Scheme 3

References

  1. Boxer, M. B. et al. J. Am. Chem Soc. 2008, 130, 1580.

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