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有機合成化学

N-ヒドロキシテトラクロロフタルイミド(TCNHPI)を用いたアリル位C-H結合の電気化学的酸化

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はじめに

Phil Baran教授のグループが開発した新規な試薬N-ヒドロキシテトラクロロフタルイミド(ALD00564)は、アリル位C-H結合酸化に利用可能であり、安価で大量合成にも適用できる特長があります。

アリル位酸化反応にこれまで用いられてきたのは、毒性の高い試薬や、高価な貴金属を含んだ試薬でした。本試薬はこれらを用いる必要がなく、工業的規模での大量合成に適用することも可能です2。また、有用な炭素-炭素結合生成反応である、根岸カップリングや鈴木-宮浦クロスカップリング反応などへも適用可能です。

特長

  • 各種の酸化的条件で容易に電子を受け取る、レドックス活性な試薬です1,3
  • 電子求引基(-Cl )が結合しているため、これまで天然物合成などに用いられてきたN-ヒドロキシフタルイミドよりも、優れた電子受容体となります。
  • アリル位酸化反応で今まで用いられてきた、毒性の高い試薬や高価な試薬に取って代わりうる試薬です。このため、工業的スケールでも利用可能です。

主な適用例

  1. TCNHPI(ALD00564)は、脂肪族カルボン酸と反応させることで、種々の酸化還元活性エステルを合成することができます1,4。以下に、ジクロロメタン中室温でTCNHPIを用い、酸化還元活性エステルを合成した例を挙げます。




    TCNHPIから得られたエステルは、ニッケル触媒存在下でアリール亜鉛化合物と容易にクロスカップリング反応します1。この際、脱炭酸を伴います。また、アリールボロン酸と反応させることで、同様に鈴木-宮浦カップリングが利用可能です4

  1. TCNHPIはまた、アリル位C-H酸化反応のメディエーターとしても利用可能です。Baranグループでは、ステロイド類やトリテルペン誘導体を含む40ほどの反応を行ない、天然物合成への有用性を示しています2

  1. TCNHPIは、様々な電気化学的アリル酸化反応において、触媒としてはたらきます。その高い酸化ポテンシャル(Ag / AgClに対して0.87V)のため、酸化剤の作用によって、高エネルギーで高反応性のラジカル種(テトラクロロフタルイミドN-オキシル)を効果的に生成します。



    TCNHPIによるオレフィンアリル位の電気化学的酸化反応のメカニズムは、以下のように推定されています2

    a) TCNHPIはピリジンによって脱プロトン化され、テトラクロロフタルイミドN-オキシルアニオンとなる。
    b) 生成したアニオンは陽極酸化を受け、ラジカル種(テトラクロロフタルイミドN-オキシルラジカル)となる。
    c) オレフィン化合物(I)は上記のラジカルによって水素を引き抜かれ、安定なアリルラジカル(II)となる。テトラクロロフタルイミドN-オキシルラジカルはTCNHPIへと戻る。
    d) tert-ブチルヒドロペルオキシド(tBuOOH)は電気化学的にtBuOO・を生成し、これがアリルラジカルと反応して、アリルペルオキシド(III)となる。
    e) (III)からt-BuOHが脱離し、エノン(IV)が生成する。

まとめ

ALD00564は安価で大量合成にも利用可能な、化学量論的試薬です。本試薬により、アリル位C-H結合の選択的酸化反応や、カルボン酸を用いたボロン酸とのNi触媒クロスカップリングなど、合成化学上重要な変換が可能になります。今まで用いられていた試薬に比べ、その有用性は明らかです。これまで、さまざまなサイズや複雑さの化合物群が合成されてきましたが、この新たな反応は今までの合成の考え方を塗りかえる可能性を秘めています。

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Baran研究室で開発された化合物については左記のページもご参考ください。
     
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