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第2 世代アンフィフィル
注目テクノロジー

TPGS-750-M : 室温、水中での有機金属化学に有用な
第2 世代アンフィフィル

TPGS-750-M

 

水中でのクロスカップリング反応

遷移金属触媒によるクロスカップリング反応を有機溶媒中ではなく水中で実施することは、コスト、環境への負荷、安全性、不純物特性などの点で数多くのメリットがあります。近年、環境調和型の化学プロセスへの関心が高まる中、この分野の研究はさかんに進められています。特に室温で、水に不溶な有機化合物の基質に対して水中で反応を進行させるための万能の手法はありませんが、ひとつの方法として遷移金属触媒反応に適用されつつあるのは、水中でナノミセルを形成するアンフィフィルを少量用い、クロスカップリングの反応場に親油性を付与して反応を進行させる方法です。

 

ミセル触媒

2008 年、Lipshutz らは、界面活性剤により促進される、室温・水中での遷移金属触媒反応を複数報告しました。市販されている種々の界面活性剤を用い、多くのパラジウムおよびルテニウム触媒反応が、温和な室温条件下、水中での反応に適用できることを見出しています。生成物は、一般的な抽出操作により水層から高い単離収率で回収できます。

 

TPGS-750-M:第2世代アンフィフィル

Lipshutz らは、彼らが最初に見出したアンフィフィル試薬PTS(Polyoxyethanyl-α-tocopheryl sebacate)を改良し、第2世代となるPolyoxyethanyl-α-tocopheryl succinate(733857, Figure 1)を開発してTPGS-750-Mと名付けました。親油性のα-トコフェリル部位と親水性のPEG-750-M 鎖を安価なコハク酸リンカーで結合したこの試薬は、水に溶解するとただちにミセルを形成します。親油性と親水性のバランスと分子設計の巧みさから、TPGS-750-M は、PTS に比べてより広範な化学反応を水中で効率良く促進します。また、収率と反応時間の点では通常は同等もしくは優れた性能を示し、すぐにPTS の代替として利用できる実用的な試薬です。

TPGS-750-M

Aldrich No. 733857

 

オレフィンメタセシス

第2世代Grubbs触媒(2 mol%)を用いる反応に適用すると、種々の親油性基質に対して、室温・水中で閉環メタセシスまたはクロスメタセシス反応が進行し、目的の生成物を高い収率で単離できます(Scheme 1)。反応は、2.5 % TPGS-750-M/ 水溶液中で実施し、収率は、他の様々な界面活性剤を水中で用いた場合と同等もしくはわずかに上回る結果が得られました。

Scheme 1

 

Pd 触媒クロスカップリング反応

TPGS-750-M を用いれば、有機合成において広く利用されているパラジウム触媒クロスカップリング反応も、種々の市販パラジウム錯体や配位子を用いて、室温、水中の穏やかな反応条件で実施可能です。鈴木-宮浦反応、薗頭反応、Buchwald-Hartwigアミノ化反応、Heck反応などの変換反応は、アカデミアにおいても企業においても最も頻繁に利用されている炭素―炭素結合形成反応です(Scheme 2)。

Scheme 2

bis(di-tert-butylphosphino)ferrocene palladium chloride 錯体、塩基としてトリエチルアミンを用いるシンプルな鈴木―宮浦反応にこのミセル触媒を用いたところ、立体障害の大きな基質に対しても室温で反応が進行しました。薗頭反応とBuchwald-Hartwigアミノ化反応は、それぞれPdCl2/X-Phos および[(allyl)PdCl]2/cBRIDP の触媒系にTPGS-750-M を加えると、水中で収率良く進行します(Figure 2)。

Figure 2

一般にHeck 反応は高温条件を要しますが、ヨウ化アリール化合物のHeck 反応の例では、Pd(P(t-Bu)32をパラジウム源とし、5 wt % TPGS-750-M 水溶液中で、常温で反応が進行します。

根岸カップリングタイプの反応でも、TPGS-750-Mを用いてハロゲン化アリールとハロゲン化アルキルのカップリングが可能です(Scheme 3)。これらの反応では、ハロゲン化アルキルと亜鉛末から、通常は極めて水分に不安定な有機亜鉛ハロゲン化物がin situ で生成し、Pd 触媒の存在下でハロゲン化アリールと反応します。界面活性剤とTMEDA のような配位子RZnX の安定化効果により、この反応もすべて水中で実施でき、種々の第一級または第二級アルキル置換芳香族化合物が得られます。この反応においては触媒の選択が極めて重要で、Pd(Amphos)2Cl2 や(Bis(di-tert-butyl-(4-dimethylaminophenyl)phosphine)palladium(II)chloride などが適していることが見出されています。

Scheme 3 

 

C-H 活性化反応

TPGS-750-M の存在下、カチオン性パラジウムと当量の酸化剤としてベンゾキノン、硝酸銀を組み合わせて用いると、種々の芳香族アセトアミドのortho- 官能基化が室温、水中で進行します(Scheme 4)。

Scheme 4 

References:
1) Lipshutz, B. H.; Ghorai, S. Aldrichimica Acta 2008, 41, 59.
2) Lipshutz, B. H.; Ghorai, S. J. Org. Chem., 2011, 76 (11), 4379.