有機合成化学

Ubaphoxイリジウム触媒:不斉水素化反応のための高選択的触媒

KitAlysis™ ハイスループット スクリーニング キット

P-N配位子としてのキラルなホスフィン-オキサゾリンは、数多くのエナンチオ選択的な触媒反応において高い選択性を示し、かつ適用範囲の広い有用な化合物です1。特にイリジウム錯体は、不斉水素化反応に有用であることが見出されました。P-Nイリジウム触媒は、空気中で安定な取扱いやすい試薬であり、ロジウム錯体やルテニウム錯体とは異なり、追加の配位子を用いる必要がありません。

この分野のパイオニア的存在であるバーゼル大学のAndreas Pfaltz教授らは、ホスフィン-オキサゾリン骨格をベースとするカチオン性BArF-Ir 錯体配位子Ubaphox(またはThrePHOX)が、様々な基質に対して不斉水素化反応の極めて優れた触媒となることを報告しています(Scheme 12-5

[Ir(cod)Ubaphox][BArF]を用いたアルケンの不斉水素化反応

Scheme 1 [Ir(cod)Ubaphox][BArF]を用いたアルケンの不斉水素化反応

この触媒システムは、ほとんどの基質に対して過去に報告されたP-N配位子よりも高いエナンチオ選択性を発現します。一般的なアリール置換オレフィンに対しては85 – 99 %eeで生成物が得られ、2-アリール-4H-クロメン類はさらに高い選択性で幅広い生理活性を有する植物代謝物であるキラルなクロマン類へと変換されます。天然由来または合成された生理活性物質にしばしば見受けられる構造モチーフであるキラルなアミン類とN-保護化インドリン誘導体は、良好なエナンチオ選択性で対応するエナミンやインドールへと変換されます。さらに、炭酸プロピレンを溶媒として用いると、置換テトラヒドロフラン類の不斉水素化反応にも有用であり、かつリサイクル可能であることが最近報告されました6,7

Solvias 社のIridium Ubaphox触媒

Scheme 2 Aldrichから市販しているSolvias 社のIridium Ubaphox触媒

Solvias社の触媒と配位子については左記のページもご参考ください。

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References

  1. Helmchen, G.; Pfaltz, A. Acc. Chem. Res. 2000, 33, 336
  2. Menges, F.; Pfaltz, A. Adv. Synth. Catal. 2002, 344, 40
  3. Nanchen, S.; Pfaltz, A. Chem. Eur. J. 2006, 12, 4550
  4. Valla, C.; Baeza, A.: Menges, F.; Pfaltz, A. Synlett 2008, 20, 3167
  5. Blakenstein, J.; Pfaltz, A. Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 4445
  6. Kim, H.; Kasper, A. C.; Moon, E. J.; Park, Y.; Wooten, C. M.; Dewhirst, M. W.; Hong, J. Org. Lett. 2009, 11, 89
  7. Bayardon, J.; Holz, J.; Schäffner, B.; Andrushko, V.; Verevkin, S.; Preetz, A.; Börner, A. Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 5971
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