疾患研究

神経変性疾患

神経変性疾患は中枢神経系に発症し、特定の神経細胞群の減少や神経細胞の内外に頻繁に発現する繊維状物質の蓄積を特徴としています。

細胞内封入体の形成は、異常なタンパク質-タンパク質相互作用やタンパク質フォールディング、あるいは細胞の主要なタンパク質分解機構であるユビキチン-プロテアソームシステム(UPS)の機能不全、すなわちUPSの異常調節によりおこるタンパク質の凝集に起因するといわれています。このような症状は「Proteinopathy」と呼ばれることもよくありますが、現在ではアルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など複数の神経変性疾患1,2 の特徴となっている神経死や機能不全の主な要因と考えられています。

神経変性のプロセスには多くのメカニズムが関与しています。ニューロン小胞体のカルシウムホメオスタシスの変化によって、カルパインによる無秩序なタンパク質分解や細胞骨格の不安定化が引き起こされます。また、外部の毒性因子がミトコンドリアの機能障害(カルシウム緩衝の障害、ATP欠乏、活性酸素種の過剰産生、チトクロムc放出など)や、アポトーシス誘導性の分子カスケードを惹起する原因となることがあります。このようなプロセスが一層理解されるようになれば、これをブロックする治療法を開発することも可能なはずです。

神経変性の開始・進行過程での興奮毒性、酸化ストレス(活性酸素種(ROS)の蓄積)、窒素化ストレスおよび炎症メディエーターの役割に関しても精力的に研究されており、神経死をもたらすある種のニューロン-グリア相互作用が明らかになりつつあります3-5 。中枢神経系(CNS)の神経炎症では特徴的にミクログリア細胞が活性化しており、ROSやNO産生のほか炎症誘発性サイトカイン、ケモカイン、プロスタグランジンを分泌してその多くは細胞死のパスウェイを活性化します。これは脳損傷・脳卒中・脳感染症のように外的要因によって引き起こされると思われ、そのような場合、血液脳関門(BBB)機能が破壊され、脳実質へのリンパ球・マクロファージの浸入がおこります。多くの神経変性症状は高齢者によく見られ、認知症に伴って発症します。これらの疾病に関係する要因には遺伝的なものとその他のリスクファクターがありますが、かなりの割合が孤発性のもので、遺伝因子によらずランダムに発生します。

アルツハイマー病(AD)は認知障害の主要要因であり、加齢にともなって、発症率が増加します。国連人口予測によると、80歳以上の人口は2050年までに3億7000万人に達すると見積もられています。現在、85歳以上の人々の50%がADに苦しんでいると推定されています。従って、これらの統計データを当てはめると、50年間で世界的に1億を越える人々が認知症を患うことになります。大量の人々が継続的な治療や介護をはじめとするサービスを必要とするようになれば、そのための医療的、金銭的、人的な負担増は避けられません。米国では、パーキンソン病(PD)が50万から150万の人々に発症し、毎年新たに5万件が報告されています。PDは60歳以上の人々に多くみられることから(65歳以上の1%、90歳以上の6%)、人口の高齢化に伴う発症率の増加は当然のごとく予測されます。

このような高齢化人口を背景に神経変性疾患はますます広がっていることから、その原因の究明は治療法・治療薬の発見とともに世界中の研究者の大きな課題となっています。

これら分野における最新の研究の一部を取り上げながら、この研究活動に役立つ製品をご紹介します。

 

 

参考文献

  1. Ross, C.A. and Poirier, M.A., Protein aggregation and neurodegenerative disease., Nat. Med., 10, S10-7 (2004).
  2. Selkoe, D.J., Cell biology of protein misfolding: the examples of Alzheimer's and Parkinson's diseases., Nat. Cell. Biol., 6, 1054-1061 (2004).
  3. Wersinger, C. and Sidhu, A., Inflammation and Parkinson's disease., Curr. Drug Targets Inflamm. Allergy, 1, 221-242 (2002).
  4. Zhang, L., et al., Role of nitric oxide in Parkinson's disease., Pharmacol. Ther., 2005.
  5. Herrera, A.J., et al., Inflammatory process as a determinant factor for the degeneration of substantia nigra dopaminergic neurons., J. Neural. Transm., 112, 111-119 (2005).

 

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