神経変性疾患

筋萎縮性側索硬化症

 

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、 かつてこの病気で亡くなった米国の野球選手の名前からルー・ゲーリック病とも呼ばれていますが、上位運動ニューロンの変性が急速に進行する疾患です。世界 的な有病率はおよそ0.005%で、米国の患者数は約30,000人と報告されています。Betz細胞、脳神経運動核とともに脊髄前角細胞における運動 ニューロンの脱落が筋萎縮の原因となります 1,2。筋萎縮性(amyotrophic)という言葉は骨格筋の萎縮と筋力低下を示しており、側索硬化症(lateral sclerosis)は軸索変性によるグリオーシスとその後の脊髄側索の硬化を表しています。

一般にALSの初期症状は中年期に現れ、四肢の衰えに続いて運動麻痺、無言状態、筋肉疲労、呼吸困難、嚥下障害といった症状を呈します。大抵の場合、認知機能に影響はありません。診断時から死亡までの平均生存期間は5年です。

この疾患の原因はまだよく分かっているわけではなく、多くの場合は孤発性ですが、5~10%のケースは常染色体優性遺伝型を有している可能性があります。ALSの要因としては、酸化的損傷、細胞骨格タンパク質の組織化異常、ニューロフィラメントの凝集、過剰グルタミン酸の興奮毒性による神経死など幾つかの説があります 3Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)は スーパーオキシドラジカルを過酸化水素と酸素に転換する反応を触媒して別の酸化種を生成する酵素のひとつですが、このSOD1をコードする遺伝子の変異が ALSの要因になっているというのが最も有力な根拠です。軸索輸送の障害もALSの原因に関与するメカニズムのひとつであると言われています 4。軸索輸送に関与するタンパク質の一種ダイナクチンのサブユニットであるダイナミチンを過剰発現したマウスは、遅発性の運動ニューロン疾患の表現型を示します 5。別の仮説では、運動ニューロンの細胞体と軸索でのニューロフィラメント凝集の結果として熱ショックタンパク質が過剰発現するといわれており、シャペロン機能の活性化を示唆しています。これまでに唯一治療使用が認可されているリルゾールは、グルタミン酸放出のインヒビターです。この薬剤はわずかですが、病気の進行を食い止めて数カ月程度の延命効果を発揮します 6。しかし、過剰グルタミン酸のALSへの関与は実験的証拠で裏付けされており、現在の動物モデルが新しい薬剤候補の有効性を十分評価できるものではないのかもしれません。AMPAレセプターアンタゴニストのNBQXは、家族性ALSの動物モデルであるG93Aトランスジェニックマウスに対する投与で延命効果が認められています 7

 

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参考文献

  1. Hefti, F.F., Other neurodegenerative disorders. In Drug Discovery for Nervous System Diseases, Ch. 12., John Wiley & Sons, Inc., (2005).
  2. Lowe, J., New pathological findings in amyotrophic lateral sclerosis. J. Neurol. Sci., 124 Suppl., 38-51 (1994).
  3. Cleveland, D.W. and Rothstein, J.D., From Charcot to Lou Gehrig: deciphering selective motor neuron death in ALS. Nat. Rev. Neurosci., 2, 806-819 (2001).
  4. Miller, C.C., et al., Axonal transport of neurofilaments in normal and disease states. Cell Mol. Life Sci., 59, 323-330 (2002).
  5. LaMonte, B.H., et al., Disruption of dynein/dynactin inhibits axonal transport in motor neurons causing late-onset progressive degeneration. Neuron, 34, 715-727 (2002).
  6. Borras-Blasco, J., et al., Riluzole as a treatment for amyotrophic lateral sclerosis. Rev. Neurol., 27, 1021-1027 (1998).
  7. Van Damme, P., et al., The AMPA receptor antagonist NBQX prolongs survival in a transgenic mouse model of amyotrophic lateral sclerosis. Neurosci. Lett., 343, 81-84 (2003).

 

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