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疼痛機序

イオンチャネルモジュレーター

 

ナトリウムチャネル

電位依存性ナトリウムチャネルは、大部分の興奮性膜に存在しています。これらのチャネルの活性化は神経の脱分極を起こし、活動電位の発生および伝播において重要な役割を果たしています。電位依存性ナトリウムチャネルは、一個の大型αサブユニット(およそ260kDa)と様々な数の小型βサブユニット(およそ35kDa)から構成されています。脳のナトリウムチャネルは、α、β1、β2と呼ばれる3個のサブユニットから構成されています。骨格筋のナトリウムチャネルには、αサブユニットと1個のβ1様サブユニットが含まれます。古くから使われている局所麻酔薬、リドカインやプロカインなどはナトリウムチャネルブロッカーです。最も強力な選択的ナトリウムチャネルブロッカーのひとつとして、日本のフグからとれる毒素、テトロドトキシン(TTX)が挙げられます。テトロドトキシン感受性ナトリウムチャネルは、脳と末梢神経、交感神経神経節、骨格筋に見られます。対照的に、心筋と脊髄後根神経節のC 繊維では、TTX-非感受性ナトリウムチャネルが発現されています。これらの脊髄後根神経節のTTX-非感受性ナトリウムチャネルには、PN3/SNS(NaV1.8)と呼ばれるαおよびβ3サブユニットから構成されるものと、NaN/SNS2(NaV1.9)と呼ばれるβサブユニットの組成が不明なものがあり、いずれも侵害受容において重要な役割を果たしています87。これらのナトリウムチャネルの選択的ブロッカーは鎮痛作用を有すると考えられます84。PN3/SNSチャネルはNaN/SNS2チャネルより高い活性化閾値と遅い不活化のカイネティクスを示します。したがって、PN3/SNSチャネルはニューロパシー、炎症、慢性痛に関与し、またNaN/SNS2チャネルは急性痛に関与すると考えられます84-86。大部分の局所麻酔薬は、ナトリウムチャネルの電位センサー部位か、またはナトリウム通過孔をブロックするような受容体部位のいずれかに結合してチャネル機能をブロックします。これらの結合部位はいずれもαサブユニットにあります。しかしながら、βサブユニット上にも痛みの治療処置の標的となり得る部位があるようです88。新しいナトリウムチャネルブロッカー、RS-132943は、投与量依存的に熱痛覚過敏および冷気アロジニアの症状を緩和し、現在神経因性の痛みの治療薬として臨床前評価を受けています45

 

非電位依存性カリウムチャネル

イオン孔形成カリウムチャネル、TREKTRAAKTWIKTASKは、イオン依存性カリウムチャネルとは構造的に異なるものです。このタイプのカリウムチャネルは中枢神経系に広く分布し、アラキドン酸やその他の不飽和脂肪酸の標的とされています89。揮発性の麻酔薬(ハロタン、エーテル、クロロホルムなど)はこれらのチャネル、特にTREKを刺激し、神経の活動を低下させるようです。ナトリウムチャネルを標的とする局所麻酔薬(リドカイン、ブピバカイン、メピバカインなど)は、TASKチャネルも活性化します。

 

カルシウムチャネル

脊髄ニューロンの高閾値電位依存性LP、Q、ならびにN型カルシウムチャネルは、急性痛、痛覚過敏、および様々な刺激に誘導されるアロジニアの発症メカニズムに関わっています90。研究対象としての興味の大半は、N型カルシウムチャネルに集中しています。このN型カルシウムチャネルのサブユニットであるβ3サブユニットを欠損するラットにおいて、脊髄での知覚神経刺激への応答におけるC繊維「ワインドアップ」の軽減、および神経因性の痛みに対する応答の緩和が認められました91。N型カルシウムチャネルは侵害受容器の前シナプス末端に局在し、P物質グルタミン酸の放出を促進すると考えられています92ω-コノトキシンGVIAによるN型チャネルのプロックは、無害、有害両方の感覚神経刺激による脊髄の過剰興奮を軽減します。しかしながら、これらの化合物が作用する濃度では毒性も現われ、この点で鎮痛剤としての医療的有用性は限定されます93。N型カルシウムチャネルと同様、P/Q型チャネルもグルタミン酸作動性ニューロンの前シナプス末端に局在していると考えられます。P/Q型チャネルブロッカーは、グルタミン酸作動性神経繊維の刺激により誘発される痛みを阻害しますが、イオンチャネル型グルタミン酸受容体アゴニストNMDAにより誘発される痛みはブロックしません92。L型カルシウムチャネルはシナプス後方に局在し、P物質誘発の神経伝達を促進すると考えられます92L型カルシウムチャネルアンタゴニストは、κ-オピオイドアゴニストによる鎮痛作用を増強し、オピオイド耐性の発症をブロックします94

 

P2X、P2Y受容体

いくつかの炎症と痛みの動物実験モデルにおいて、ATPP2Xと呼ばれるイオンチャネル内蔵型のプリン/ピリミジン受容体の活性化を介して痛み刺激の伝達を促進し、痛みシグナルを調節することが示されています89, 95-98。組織の損傷や内臓の膨張、また交感神経の活性化などの様々な状況の下、ATPは侵害受容器近傍の細胞外へと放出されます95, 97。ヘテロメリックなP2X2/3およびホモメリックなP2X3P2X2受容体は、痛覚伝達経路に選択的に分布しています。P2X3受容体は侵害刺激を末梢から伝達する細い感覚神経にほとんど限定的に発現されていますが、三叉神経神経節と脊髄後角および脊髄ラミナIIにも局在しています。その他のイオンチャネル型P2受容体、P2X2P2X4P2X6もまた、中枢での侵害受容伝達経路に関与していると考えられます89, 95, 96。代謝調節型P2Yプリン作動性受容体もまた、痛みの伝達に関わっているようです。痛み伝達を促進すると考えられているイオンチャネル型P2X受容体とは異なり、P2Y受容体アゴニスト、UTPおよびUDPは、数例のラット痛みモデルにおいて脊髄における痛み伝達を阻害します99。しかしながら、UTPの侵害受容促進作用も報告されています100。これらの研究結果は、イオンチャネル型P2X3アンタゴニストあるいはP2Yアゴニストは、より効果的な痛み治療法の探究における新たなアプローチとなる可能性を示しています。

 

NMDAイオンチャネル型グルタミン酸受容体

神経の損傷や炎症に続くアロジニアや痛覚過敏の発症の一部は、NMDAイオンチャネル型グルタミン酸受容体が介在する中枢への痛覚伝達経路の長期増強(long-term potentiation: LTP)によるシナプス興奮性の増大によるものです101, 102。したがって、ニューロパシーなどの慢性痛において、LTPは侵害受容伝達経路に起こる可塑的変化の基礎をなしていると考えられます103。また、LTPはNMDA受容体アンタゴニストにより調節することができます。NMDA受容体は、NR1サブユニットと1個または複数のNR2(NR2ANR2BNR2CならびにNR2D)とが結合して構成されており、グルタミン酸およびグリシンという2種類のアミノ酸に対する結合部位を持っています。チャネルの開放には、両結合部位へのアミノ酸の結合が必要とされます。これまでに同定されたNMDA受容体アンタゴニストは、グルタミン酸結合部位またはグリシン結合部位のいずれかに対して選択的に競合します。サブユニット(NR2Bなど)に対して選択性を示すアンタゴニストも同定されています。CPP、MK-801、ケタミンなどのいくつかの高親和性NMDAアンタゴニストおよびチャネルブロッカーは、動物実験モデルの痛覚過敏を軽減するようです5, 45。しかしながら、これらの薬剤には記憶障害や運動障害といった精神異常作用が見られるため、使用には限界があります。グリシン受容部位およびNR2B に対する選択的アンタゴニストは、有害な副作用を発現することなく鎮痛作用を示します101。これらの薬剤の例としては、NR2B選択的アンタゴニスト、CP-101,606、イフェンプロジル、Ro8-4304、Ro25-6981コナントキン-Gおよびグリシン受容体アンタゴニスト、5,7-ジクロロキヌレン酸、HA-966、MRZ 2/579などが挙げられます。メマンチンなどの低親和性NMDAチャネルブロッカーもまた、動物およびヒト実験モデルにおいて精神異常作用を及ぼすことなく神経因性の痛みを軽減させます5, 45, 104。その他のグルタミン酸受容体も痛みの刺激伝達に関わっています。例えば、感覚神経に存在するカイニン酸受容体は、感作痛覚に関与すると考えられます。カイニン酸受容体アンタゴニスト、LY 293558は、カプサイシンの痛覚過敏モデルにおいて抗侵害受容作用を示します。

 

ニコチン性アセチルコリン受容体

ニコチン性アセチルコリン受容体は、中枢神経系の痛覚伝達経路に広く分布しています。大縫線核に投射する中脳橋脚被蓋核のコリン作動性細胞は、脊髄後角への下向性阻害シグナルの発信源であることが示唆されています105。また、痛みのシグナルを調節する下向性コリン作動性経路にはα4受容体が含まれると考えられます。これらの受容体が刺激されると、急性痛および慢性痛の実験モデルにおいて、痛覚消失が生じます102。ニコチン性受容体アゴニストの原型であるニコチンは、高濃度を投与すると抗侵害受容作用を示しますが、この作用は短時間で消失します。ニコチン性受容体アゴニスト、エピバチジンは、前臨床痛覚モデル実験においてモルヒネの100~200倍強力な痛覚消失作用を示しました。しかしながら、エピバチジンは運動失調、低体温、発作も引き起こすため、治療目的で使用することはできません3。最近、ニコチン性受容体作動薬、ジアゾビシクロオクタン(DBO-83)が鎮痛作用を持つことが示されました106。エピバチジンのアナログであるABT-594も、ニコチン性受容体のα4サブユニットに結合し、エピバチジン特有の副作用を発現することなく鎮痛作用を示します3, 102, 106

 

製品リスト

 

参考文献

こちらをご覧ください。

 

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