疼痛機序

神経ペプチド類

 

メラノコルチン

メラノコルチン類は内因性ペプチドのグループのひとつで、プロオピオメラノコルチンの誘導体です。メラノコルチンの例としては、副腎皮質ホルモン(ACTH)およびα-、β-メラノサイト刺激ホルモン(MSH)が挙げられます。最近の研究から、脊髄メラノコルチン受容体(MC4サブタイプ)は神経因性の痛みの動物実験モデルにおいて正の調節を受けることが示されています。また、脊髄の侵害受容に関わる領域でα-およびβ-MSHの両方が確認されています2。MC4メラノコルチン受容体アゴニスト、MTIIとd-Tyr-MTIIは、ラットの座骨神経締め付けによる痛み刺激に対しての感受性を亢進します。反対に、メラノコルチン受容体アンタゴニスト、SHU9119による前処理は、痛み応答を減衰させます2

 

コレシストキニン

コレシストキニンは、ペプチド群のガストリンファミリーに属するものです。コレシストキニンは、中枢神経系に広く分布し、主にCCK-8として存在しており、CCKBあるいはCCK2受容体と結合します。末梢部においては通常、CCKA受容体あるいはCCK1受容体と結合します。ラット脊髄後根神経節での軸索切断は、CCK2の正の調節を誘導します53。CCK2受容体に対するYM022の拮抗作用は、ラットの座骨神経締め付けによる損傷がおこす痛みに対して痛覚消失を誘導することが示されています54。CCK2受容体アンタゴニスト、L-365,260は、接触アロジニアや熱に対する痛覚過敏を逆転することが示されています55。興味深いことに、CCK受容体は脊髄後角ラミナI およびラミナII においてμ-オピオイド受容体とともに発現しており、神経因性の痛みのモデルにおいて内因性オピオイドの抗侵害受容効果をブロックするようです。したがって、CCK受容体アンタゴニストはオピオイド誘導痛覚消失の増強剤として利用できると考えられます。CCK2受容体に対する特異的アンタゴニスト、Cl-988は、モルヒネの効果を増強することが確認されています56

 

タキキニン

P物質は、ニューロキニン1(NK1)タキキニン受容体に対する内因性リガンドであり脊髄後角に多量に存在します。このP物質は、C繊維侵害受容器に見られるという理由から痛みと関連付けられて来ました。脊髄後角にP物質を投与すると、末梢部の有害刺激によって起きる興奮に似た、ゆっくりとした持続性の興奮が起こります57。さらに、P物質は炎症に伴い正の調節を受けます。興味深いことに、オピオイドの抗侵害受容作用によってP物質の原侵害受容作用を制御することが可能です。したがって、モルヒネによる抗侵害受容反応が減衰した状況下では、NK1アンタゴニストによってP物質の作用を阻害することができます。実際、NK1受容体アンタゴニスト、LY303870、RPR100893、CP99994の包膜内投与は、急性期の痛みを除き炎症性の痛覚過敏に対して効果的であることがモルモットを用いた実験で示されています58。現在のところ最も強力なNK1受容体アンタゴニストであるSDZNKT343の経口投与は、炎症性および神経因性の痛覚過敏を軽減することが同動物モデル実験から報告されています59, 60。しかしながら、また別のNK1受容体アンタゴニストであるLY303870およびMK869は、臨床試験において効果が認められませんでした。この結果は、NK1受容体アンタゴニストの、抗侵害受容薬としてよりも抗不安薬/抗鬱薬としてより強く作用する薬効を反映していると考えられます58, 60

 

カルシトニン-遺伝子関連ペプチド

カルシトニン-遺伝子関連ペプチド(Calcitonin-gene-related peptide: CGRP)は37個のアミノ酸から構成される血管拡張性ペプチドで、αCGRPβCGRPという2つのアイソフォームの存在が知られています。CGRPは、カプサイシンの局所投与などの炎症性の刺激に応答して末梢神経末端から放出され、多くの場合痛覚過敏を起こします。およそ80%のP物質三叉神経節およびその他の感覚神経神経節はCGRPもともに含みますが、C繊維侵害受容器では単独のCGRPも見られています。CGRPとP物質はいずれも炎症に伴い増加しますが、脊髄後根神経節の軸索切断を行うと減少します56, 61。CGRPはまた、ガラニンと共に発現しています。CGRP8-37などのCGRPアンタゴニストの脊髄後角への注射は、痛覚消失を誘導します。別のαCGRP受容体アンタゴニストであるBIBN4096BSは血管拡張を特異的に抑制するため、片頭痛治療薬となる可能性を持っています62

 

ガラニン

ヒトのガラニンは29~30個のアミノ酸から構成されるペプチドで、神経系に広く分布しており、CCKと同じく侵害受容に関与しています。ガラニンはCGRPと結合し、脊髄後根神経節の細い感覚ニューロンでP物質とともに発現されています。急性痛においてガラニンは抗侵害受容作用を示し、脊髄の興奮性の亢進を抑制し、P物質の侵害刺激作用を軽減します63。脊髄後角ラミナIIにおいては、ガラニンはエンケファリンとともに発現され56, 61、モルヒネの抗侵害受容作用を増強します。この増強作用は、CCK2受容体アンタゴニストPD134, 30863とともに投与した場合に特に顕著です。ガラニン受容体に対する非特異的アンタゴニストであるM35は、炎症時のC繊維「ワインドアップ」および脊髄の感受性を増進します64。軸索切断はGalR2受容体mRNAの発現を減少させますが、その一方で、炎症時と同様に神経損傷の際も脊髄後角ニューロンのGalR1受容体が正の調節を受けると示唆する知見も最近報告されています65。したがって、GalR1受容体に対する選択的アゴニストは、神経因性および炎症性の痛みの治療に対して有効な薬剤となると考えられます。

 

製品リスト

 

参考文献

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