抗体MS分析用の新たな酵素

By: Robert Gates, Market Segment Manager, Sigma Life Science, Biofiles Vol. 8, No. 2


 

抗体MS分析用の新たな酵素

抗体は今や、最も急激に成長している治療薬カテゴリです。今日の高度に規定された組換え型ヒト化抗体でさえ、デザインパラダイムによる品質には機能的影響に関係する微小不均一性の管理および解析が重要となっています1。Centre d'immunologe at Pierre FabreのAlain Beckらは、治療用抗体の解析および品質管理の基準を特定し、特徴付けるための取り組みを牽引しています2,3

現在用いられている、または現在試験中である抗体ペプチドおよびグリカン解析の分野は以下の通りです。

  • 不均一なN結合型グリカン群に主に関係するグリコ型変異
  • 数種類のタンパク質修飾由来の電荷変異体
  • アスパラギン脱アミド、アスパラギン酸異性化、N末端ピログルタミン酸形成などのアミノ酸修飾
  • システイン関連変異体および酸化状態
  • 正電荷または塩基性電荷パッチ
  • 分子量変異体およびC末端リジンのクリッピングなど一次アミノ酸変異体
  • タンパク質の二次~四次構造変異および抗原複合体変異
  • 二量体化および凝集
  • 宿主細胞タンパク質による汚染

数種類の質量分析(MS)解析方法が、抗体ペプチドおよびグリカンの特性評価のためのコアテクノロジーとして出現しています。以下に事例の一部をあげます。

  • 完全抗体および抗体/抗原複合体解析のためのESI MS、MALDI-TOF MS、Native MS、水素/重水素交換MS法
  • 抗体定量のための安定同位体標識ペプチド内部標準を用いたLC-MSおよびLC-MS/MS
  • 化学的または酵素的に作成された抗体断片のMiddle-upおよびMiddle-down LC-MS解析

Beck博士らは、既存の治療用抗体の品質管理を向上させる新たな方法のみならず、バイオシミラー、バイオベター、次世代抗体の開発のための新規手法も検討しています2。Beck博士の最新レビュー記事で、抗体特異的グリカンおよびペプチド解析のためのGenovus Enzyme Technologies社製の2種類の新規酵素を紹介しています3

  • FabRICATOR® · IdeS Protease
  • IgGZERO™(EndoS Glycanase)

 

Fc断片生成を改善するFabRICATOR IdeS Protease

抗体のペプチド加水分解はこれまで、パパイン、ペプシン、エンドプロテイナーゼLys-Cなどのプロテアーゼを利用していましたが、特異性が低いという欠点がありました。近年、化膿性連鎖球菌由来の免疫グロブリン分解IdeSシステインプロテアーゼ(FabRICATOR)により、特異性と消化時間が改善されました。FabRICATORはヒンジドメイン下を切断するため、グリコシル化Fab領域を有する抗体は、2種類のペプチド断片に関連するグリカンを生成するものと考えられます。これにより、特にFcフコシル化およびガラクトシル化のエフェクター機能に関連して、より効果的なグリカン解析が実現しています4

FabRICATOR酵素がIgGタンパク質配列にきわめて高い特異性を有することを利用して、Goetz, A. M.らは本酵素で血清中IgGを切断し、LC-MS解析に用いるFc断片を作成し、個々のハプロタイプを特定しました5

 

F(ab’)2またはFab’産生にFabRICATORを用いることの利点

  • 消化時間の短縮-ペプシンやパパインではIgGの切断にほぼ12時間を要するのに対し、本酵素では30分以内に消化できます。
  • IgG断片化に特化した至適処方およびプロトコール
  • 多様な条件下において同じ断片を生成する他のプロテアーゼと比べて高い特異性
  • 生理的pHでの緩やかな条件下で消化が行われ、生成される断片の免疫反応性に悪影響を及ぼしません。
  • FabRICATOR酵素に適合する抗体:ヒトIgG、ヒト化IgG、キメラIgG、サル、ウサギ、ヒツジ、マウスIgG2a、マウスIgG3

 

図1. FabRICATORはヒンジ領域の直下でIgGアイソタイプを切断し、完全なF(ab’)2断片およびFc断片を生成します。

 

図2. ヒンジ領域直下でのFabRICATORによる治療用抗体の切断による完全なF(ab’)2断片およびFc断片を生成します8

本酵素では、グリコシル化部位を1か所ずつ有する2つのペプチド断片が生成されることによって、重鎖上に2つのグリコシル化部位を有する抗体のMS解析が容易になります。

 

N結合型グリカン加水分解の向上のためのIgGZERO(EndoS Glycanase)

抗体の酵素的グリカン加水分解にはこれまで、PNGase Fなどのグリカナーゼ、およびその他のエンドグリコシダーゼやエキソグリコシダーゼが用いられてきました。IgGZero(EndoS)はやはり化膿性連鎖球菌由来ですが、IgG結合グリカンに特異的できわめて優れた加水分解活性を示します6,7。本酵素は、ヒト、ウサギ、マウス、アカゲザル、ヤギ、ヒツジ、ラット、ウマ、イヌ、ブタなど、多様な動物由来のIgG上のグリカンのキトビオースコアを切断します。

 

IgGZEROの利点

  • IgGZEROは、天然型IgGに対してユニークな特異性を有する、最も知られた細菌性酵素であり、基質の変性は必要ありません。PNGase Fなどの他のエンドグリコシダーゼの活性は、糖タンパク質基質の変性を必要とするか、それにより強化されます。
  • IgGZEROはN末端ヒスチジンタグを含有するため、本組換え型酵素の除去はきわめて容易です。
  • IgGZEROは、IgG Fc受容体から結合IgGを効率的に切断し、天然細胞にさらなる損傷を与えることがありません。

 

図3. IgGZEROは、IgG重鎖上のAsp297に付着する保存グリカンを加水分解するため、天然IgGに対し特異的エンドグリコシダーゼ活性を示します8

 

図4. IgGZEROおよびPNGase Fの切断部位

 

要約

治療用抗体の解析は、特に液体クロマトグラフィー、電気泳動、MSのワークフローが洗練されるにつれて進化しています。FabRICATOR酵素とIgGZero酵素は、これらの手法に精度と使いやすさという利点をさらに追加しています。

Genovis酵素、Maxi and Minispin Columnなどの抗体特性評価用製品については、当社の抗体の特性評価のホームページをご覧ください。

 

Materials

Product # Description
96395 deGlycIT MaxiSpin deglycosylates 10-100 mg IgG, 1 column
68763 deGlycIT MicroSpin deglycosylates up to 0.5 mg IgG, 2 columns
90308 deGlycIT MicroSpin deglycosylates up to 0.5 mg IgG, 5 columns
04251 deGlycIT MicroSpin deglycosylates up to 0.5 mg IgG, 10 columns
67533 deGlycIT MidiSpin deglycosylates 1-10mg IgG, 1 column
07298 FabRICATOR® for cleaving 2 mg IgG, 2000 U/vial
77661 FabRICATOR® for cleaving 5 mg IgG, 5000 U/vial
42607 FragIT™ MaxiSpin for cleaving 10-100 mg IgG, 1 column
00283 FragIT™ MicroSpin for cleaving up to 0.5 mg IgG, 2 columns
41476 FragIT™ MicroSpin for cleaving up to 0.5 mg IgG, 5 columns
42606 FragIT™ MicroSpin for cleaving up to 0.5 mg IgG, 10 columns
89379 FragIT™ MidiSpin for cleaving 1-10 mg IgG, 1 column
36111 IgGZERO™ for cleaving 1 mg IgG, 1000 U/vial
94509 IgGZERO™ for cleaving 5 mg IgG, 5000 U/vial

 

References

 

  1. Goetze, A.M. et al., Assessing monoclonal antibody product quality attribute criticality through clinical studies, MAbs, 2, 500-507 (2010).
  2. Beck, A. et al., Biosimilar, biobetter, and next generation antibody characterization by mass spectrometry, Anal. Chem., 84(11), 4637-46 (2012).
  3. Beck, A. et al., Anal. Chem., Special Issue: Fundamental and Applied Reviews in Analytical Chemistry, 2013.
  4. Ryan, M.H. et al., Proteolysis of purified IgGs by human and bacterial enzymes in vitro and the detection of specific proteolytic fragments of endogenous IgG in rheumatoid synovial fluid, Mol. Immunol., 45, 1837-1846 (2008).
  5. Goetze, A.M. et al., Rapid LC-MS screening for IgG Fc modifications and allelic variants in blood, Mol. Imm., 49, 338-352 (2011).
  6. Goodfellow, J.J. et al., An endoglycosidase with alternative glycan specificity allows broadened glycoprotein remodelling. J. Am. Chem. Soc., 134(19), 8030-8033 (2012).
  7. Goetze, A.M. et al., Rates and impact of human antibody glycation in vivo. Glycobiology, 22(2), 221-234 (2011).

 

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