腸管排出系トランスポーターと薬物吸収

By: Michael D. Mitchell, Product Manager, Sigma® Life Science and David C. Thompson, R&D Manager, Sigma Life Science, Biofiles Vol. 8, No. 8


 

腸管での薬物吸収

創薬成功のための重要な側面の1つは、意図している作用部位に薬物が効果的に送達されるよう薬物を設計することにあります。薬物の吸収は、優れたバイオアベイラビリティーを達成し、体循環に確実に薬物が届くための重要な要素です。経口薬の場合、薬物吸収の大半は小腸内で生じます。ここには絨毛と微絨毛が存在し、最適な吸収のために表面積を大きく拡大させています。小腸内の薬物吸収は、相互作用している複数の因子によって大きく影響されています。たとえば薬物の特性(溶解性、剤型、濃度など)、腸管の特性(pH、食物の摂取、小腸内の部位など)、代謝、透過性、腸上皮膜を介する能動輸送などです。

 

腸内の排出トランスポーター

体内の薬物動態の決定因子として、膜の薬物トランスポータータンパク質が同定されており、これは吸収、薬物動態、薬物間相互作用、および安全性プロファイルに影響する可能性があります。主要な排出トランスポーターであるABCファミリーには、MDR1(P-糖タンパク質、P-gp、ABCB1)、BCRP(ABCG2)、およびMRP2(ABCC2)が含まれます。これらは腸管、肝臓、腎臓、血液脳関門、および胎盤など体内のバリア組織に局在化しており、ここで多種多様な生体異物、たとえばスタチン系薬物、マクロライド系抗菌薬、アンジオテンシンブロッカー、化学療法薬などを排出し、in vivoでの曝露とクリアランスに影響しています。

腸内では、排出トランスポーターがかかわる薬物-トランスポーター相互作用が生じた結果、吸収不良となり、薬物が容易に腸管腔内に戻り体外に排泄されることから、経口バイオアベイラビリティーが低下することが多くあります。大半の薬物は経口送達用に開発されているため、in vitroの透過性およびトランスポーターアッセイが、in vivoでの薬物の吸収能を評価する重要なツールとなっています。

 

In Vitroトランスポーターモデル

薬物による腸透過性と排出の障害について検証するin vitroモデルは多数ありますが、Caco-2アッセイは、これまで20年間使用され、ほとんどの薬物について、ヒトでの透過性および能動的排出と高い相関を示しています。結腸腺癌患者由来のCaco-2細胞は、培養下で、ヒト小腸内で認められる主な生理機能を示す特性、たとえば頂端膜での主要な排出トランスポーターの発現や、21日間の両方向性トランスウェルアッセイに用いたときの頑健な排出活性などを示します。

Caco-2アッセイのような現在の細胞ベースのトランスポーターアッセイでは、薬物-トランスポーター相互作用の可能性を確認するために、基質や阻害剤などのトランスポーター特異的物質を利用する必要があります。しかし、基質はさまざまな親和性で複数のトランスポーターにより認識され、さらに、阻害剤の特異性は不明であったり不良であることも多いため、薬物-トランスポーター相互作用の解釈は曖昧になってしまいます。たとえばMK571は、排出トランスポーターMRP2の選択的阻害剤として広く認められていますが、研究者が一般に利用している濃度(25~50μM)のMK571では、その他の主要な排出トランスポーターであるBCRPとMDR1も効果的に阻害してしまいます。

 

Caco-2排出トランスポーターノックアウト細胞

C2BBe1 Caco-2細胞株にCompoZr®ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を用いて、MDR、BCRPおよびMRP2の排出トランスポーター遺伝子を標的にした、ZFNを介するノックアウトが作成されました。得られた一連のシングルノックアウトおよびダブルノックアウト(KO)細胞は、遺伝子配列が乱れ、両方向輸送アッセイではトランスポーター機能が完全に損なわれ、40回以上継代してもZFN後のゲノム改変が認められました。

 

 

このような新規のノックアウト細胞株を使って、野生型(WT)とノックアウト細胞株の間で薬物輸送を比較することで、特定の薬物-トランスポーター相互作用を確認することができます。これらの排出トランスポーターの基質であることが知られている数種類のモデル化合物、すなわちジゴキシン、エリスロマイシン(MDR1)、エストロン3硫酸とニトロフラントイン(BCRP)、およびCDCF(MRP2)について、サンプルのデータを示しています。それぞれの場合で、野生型細胞株に比較したそのKO細胞株における各化合物の排出率は、1まで低下しています(図1、2、3)。さらに、シングルKOおよびダブルKO細胞株をWTと比較し、シメチジンがMDR1とBCRPのトランスポーターの両方の二重基質であることが確認されました(図4)。

これらの新規の腸管排出トランスポーターノックアウト細胞株は特性が十分検討されています。そして、化学的阻害剤に頼らず薬物-トランスポーター相互作用を解明するための、また薬物吸収および動態における特定の排出トランスポーターの影響を明らかにするための、強力なツールであることが明らかになっています。これらの細胞株は現在、大学および製薬関連の研究者の皆様、および開発業務受託機関(CRO)様向けに、ライセンス供与および新発売のassay- ready plateといった複数の形式で提供しております。

 

図1 野生型(WT)およびMDR1ノックアウト(KO)細胞株におけるP-gp基質の排出

 

図2 野生型(WT)およびBCRPノックアウト(KO)細胞株におけるBCRP基質の排出

 

図3 野生型(WT)およびMRP2ノックアウト(KO)細胞株におけるMRP2基質CDCFの排出

 

図4 野生型(WT)およびP-gp、BCRP、MRP2ノックアウト(KO)細胞株におけるシメチジンの排出

 

References

  1. Pratt, J. et al., Use of Zinc Finger Nuclease Technology to Knock Out Efflux Transporters in C2BBe1 Cells. Current Protocols in Toxicology 52. 23.2.1-23.2.22 (2012).
  2. The International Transporter Consortium, Membrane transporters in drug development. Nature Reviews Drug Discovery, 9, 215-236 (2010)
  3. Highlights from the International Transporter Consortium Second Workshop. Clinical Pharmacology and Therapeutics, 92. 553-556 (2012).
  4. Matsson et al.  Identification of Novel Specific and General Inhibitors of the Three Major Human ATP-Binding Cassette Transporters P-gp, BCRP and MRP2 Among Registered Drugs. Pharmaceutical Research, Vol. 26, No. 8, (2009).

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