Biofiles

shRNAプールライブラリーを用いた発がんパスウェイの特定

By: Kerry Trice, Product Manager, Sigma® Life Science, Biofiles, Vol. 8, No. 14


 

RNAiによるスクリーニングは、培養細胞における遺伝子活性を調節する強力なツールであり、遺伝子機能、パスウェイ解析、ターゲットの特定を可能にします。shRNAは安定的な遺伝子ノックダウンに用いられており、shRNAスクリーニングには通常、アレイライブラリーおよびプールライブラリーの2種類のフォーマットが用いられています。

新規遺伝子ターゲットの特定には、主にアレイフォーマットが用いられてきました。アレイスクリーニングには、プレートのそれぞれのウェルにshRNAクローンが1つずつ含まれるため、陽性ヒットを簡単に検出できます。アレイスクリーニングは単純で便利ですが、何百枚ものプレートや液体分注機など高価な装置が必要であり、大半のユーザーにとってコストが高すぎます。また、アレイスクリーニングはin vivoでの利用ができません。一方、プールスクリーニングでは、1つのプール中に多くの遺伝子をターゲットとする多数のshRNA粒子が含まれており、これを用いて細胞を形質導入します。shRNAのプールスクリーニングでは、特定のshRNA導入によりどの表現型が発現されたかを決定するために、シークエンス等によるデコンボリューションを行う必要があります。プールスクリーニングはより安価であり、1人の研究者で行っても1週間以内に結果が得られ、特殊な機器を必要としません。

Possematoらは、セリン合成パスウェイが乳癌に不可欠であることを特定するため、in vivoでのshRNAプールスクリーニング法について発表しています1。代謝パスウェイマップとKEGGデータベースから2,752個の遺伝子を抽出し、そのスクリーニングを行っています。遺伝子は、3つの特性に基づき評価しました。1)正常組織に比べ、腫瘍で優位に高発現、2)乳癌で高発現、3)幹細胞状態との関連です。これらのカテゴリのうち2つ以上で評価された遺伝子、および各カテゴリのトップにある遺伝子を選択し、133個の代謝酵素遺伝子およびトランスポーター遺伝子の高優先度セットを定義しました。この選択した遺伝子をターゲットとするレンチウィルスshRNA(1遺伝子あたり5個のshRNA)を構築し、これを用いてレンチウィルスshRNAライブラリーを2種類作製しました。1つのライブラリーにはトランスポーター遺伝子とコントロール遺伝子をターゲットとする235個のshRNAが含まれ、もう1つのライブラリーには、代謝酵素遺伝子とコントロール遺伝子をターゲットとする516個のshRNAが含まれています。次にHuman MCF10DCIS.com細胞にshRNAを導入後、マウスの哺乳類脂肪パッドに移植し、腫瘍生成時に消失したshRNAについてスクリーニングを行いました。これにより、16個のターゲット遺伝子のリストが得られ、このうちのいくつかはこれまでに癌において重要な役割を担っていることが明らかにされています。

2種類のスクリーニングで重複していた遺伝子の1つはホスホグリセリン酸脱水素酵素(PHGDH)でした。PHGDHはエストロゲン受容体陰性乳癌および黒色腫において共通に増幅されます。PHGDHはセリン合成を誘導し、shRNAによるそのノックダウンによってセリン濃度の低下、in vitroでの細胞増殖の阻害、in vivoでの腫瘍径の低下が認められることから、この腫瘍型にはセリン合成パスウェイが必要であることが示唆されています。これが、The RNAi Consortium(TRC)ライブラリーを用いた、乳癌の治療ターゲットを特定する初のin vivoでのshRNAプールスクリーンとなりました。この遺伝子以外にも臨床的に重要な可能性のあるいくつかのターゲットも特定されました。

それぞれのプールには多数のshRNAが含まれているため、プールライブラリーのスクリーニングにおいて特異的なshRNAを同定する適切な方法を開発することがきわめて重要です。シグマは、それぞれのshRNAを増幅するための独自のPCRプライマーによるディープシークエンシングを用いた包括的デコンボリューション法を開発しました。この手法を利用することには多くの利点がありますが、その1つは、配列ごとに各shRNAを明確に特定し、各shRNAを定量するためのディープシークエンシング性能です。ディープシークエンシングは、各サンプルでそれぞれのshRNAが特定される回数がデジタルにカウントすることが可能なため、検出のダイナミックレンジに制限がありません。この点は、DNAの飽和が起こる可能性のあるハイブリダーゼーションを用いた検出法を上回っています。オリゴDNAが飽和すると、個々のshRNAを定量する性能が失われます。飽和によって、同様のDNA配列に対する非特異的結合による偽陽性も発生します。ディープシークエンシングは、カスタムサンプルと全ゲノムサンプルの両者に適用可能であり、デコンボリューションの柔軟性を増加させます。MISSION shRNAはデコンボリューション中に完全に配列決定され、バーコードを利用して、さまざまなサンプルの配列を同時に同定できます。シグマは、多数のサンプルを単一のレーンにマルチプレックス化することによって、コスト削減と効率改善を実現し、研究者が創薬を進めながら時間と費用を節約できるようにしています。

 

DNAの調製とデコンボリューションのワークフロー

DNA Preparation and Deconvolution Workflow

 

Materials

Product # Description
SHPH01 MISSION® LentiPlex® Human Pooled shRNA Library For Rapid, Convenient Genome-wide shRNA Screens
SHPM01 MISSION® LentiPlex®マウスプールshRNAライブラリー For Rapid, Convenient Genome-wide shRNA Screens

 

References

 

おすすめ お役立ちツール

Sigma News

キャンペーンや製品情報をお届けするメールニュース(配信登録はこちらから

  • PDFカタログをダウンロードすることができます。
  • 製品検索には、「製品名・製品番号・CAS番号など」、もしくは「製品カテゴリ」の方法があります(製品検索方法)。
  • 規格書やSDS(安全性データシート)、ロットごとの分析表のほかに、日本円価格、国内在庫情報も確認することができます(製品情報の見方)。

 

 

Related Links


  VIEW PRODUCT LIST