Attention:

Certain features of Sigma-Aldrich.com will be down for maintenance the evening of Friday August 18th starting at 8:00 pm CDT until Saturday August 19th at 12:01 pm CDT.   Please note that you still have telephone and email access to our local offices. We apologize for any inconvenience.

Biofiles

PEPscreenのリン酸化研究への応用

By: George Yeh, Ph.D., Product Manager, Sigma® Life Science and Stacey Hoge, Market Segment Manager, Sigma Life Science Custom Products, Biofiles Vol. 8, No. 13


 

タンパク質のリン酸化は、細胞の増殖、代謝およびアポトーシスといった多様なプロセスを調節している、重要な細胞シグナル伝達経路を媒介しています。23,000までものタンパク質から成るヒトのプロテオームには、約65万のリン酸化部位が予測され、それらのうち約10万の部位は実際にタンパク質リン酸化部位として確認されています1。プロテインキナーゼ(PK)は、シグナル伝達カスケードの一部として基質をリン酸化する、主要なタンパク質の1クラスです。PKは多様な器官においてかなりの数が認められ、ヒトの518個2からコメの1,429個までが予測されています3

プロテインキナーゼとその潜在的な標的(クライアント)との間で考えられる相互作用は膨大であるため、関係する生物学的経路を解明するには、特定のPKと特定の部位との正確な相互作用を確立することが重要です。より技術的なレベルでは、このような有効なキナーゼ-クライアント相互作用を確立するためには、ハイスループットなアッセイが必要です。過去には、放射能標識や2次元ゲル電気泳動などロースループットな手法が用いられていました。最近の研究では、よりハイスループットなアッセイのため、ペプチドおよびタンパク質アレイが利用されています1。しかし、このようなアレイ中ではタンパク質とペプチドの立体構造が変化しているという欠点がありました。そのため、キナーゼとその基質の相互作用が必ずしも正確には反映されていません。加えてアレイでは、リン酸化されるアミノ酸が1つのペプチドに複数含まれている場合、具体的な個々のリン酸化部位を明らかにすることができません。

タンパク質リン酸化を解明するための高感度で特異的な分析法として、質量分析法(Mass spectrometry:MS)が用いられるようになりました4。ミズーリ大学のJay Thelen教授は、シグマアルドリッチの受託サービスであるペプチドライブラリー技術「PEPscreen」を用い、標的タンパク質のキナーゼリン酸化を研究するハイスループットタンデム質量分析法を開発しました。さらに彼の研究グループは、キナーゼを介する複数の標的ペプチドのリン酸化を単一の溶液相反応中で調べる、キナーゼクライアント(KiC)アッセイを開発しました5。PEPscreen上のペプチドは、そのようなアッセイに用いられる便利で費用効率の高いカスタムメイドなペプチドライブラリーとなります。これらのペプチドは十分に高い純度をもつことから、親化合物であるPEPスクリーニングペプチドと、その後リン酸化されるペプチドとを、LC-MS/MS分析により容易に識別することができます。

Huangらが発表した同研究グループの初期の報告では、シグマアルドリッチから提供された80のPEPscreenペプチドからなるペプチドライブラリーを作製していました2。これらのペプチド配列は主に、シロイヌナズナ由来の3つのタンパク質のセリン含有ペプチド、すなわちピルビン酸脱水素酵素キナーゼ(PDK、At3g06483)と、2つのミトコンドリアピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC)サブユニットであるE1α-1(At1g59900)およびE1α-2(At1g24180)に由来していました。この一次ペプチドカクテルは、単一キナーゼ溶液反応の基質として用いられる46のペプチドを含んでいました。リン酸化反応に使用したキナーゼはA. thaliana PDKおよびA. thaliana Ca2+依存性プロテインキナーゼ(CPK3、At4g23650)でした。この結果から、PDKはそのアッセイ条件下で、単一のペプチドYHGHSMSDPGSTYR(下線部のセリン、Ser292)をリン酸化したことが明らかになりました。対照的にPK3は、PDKとE1αペプチドのいずれもリン酸化しませんでした。このことは、立体構造性をもつ、したがって意味をもつ溶液条件下でのこのアッセイが正確であることを実証していました。さらに著者らはYHGHSMSDPGSTYRペプチドに注目し、主要リン酸化部位(Ser292)周辺の配列多様性の影響を、PEPscreenペプチドのセットを追加して検討しました。さらに、この2回目のスクリーニングでは、CPK3の陽性対照ペプチドとして、細胞膜の内因性タンパク質に対するリン酸化部位(Ser274)を含むRASAIKALGSFASNを加えました。CPK3は報告された部位でRASAIKALGSFASNペプチドのみをリン酸化しました。

2012年に発表した研究でAhsanらは、ミトコンドリアのピルビン酸脱水素酵素複合体中のSer292リン酸化に関してYHGHSMSDPGSTYRペプチドをさらに調べていました。この研究では59のPEPscreenペプチドからなるライブラリーを使用し、さらに従来の研究とは異なり、Ser292周囲の配列多様性がそのリン酸化の程度に及ぼす影響を徹底的に調べるため、この配列はすべて1つのペプチド上の変異体でした。リン酸化反応には遺伝子組換えPDKを使用していました。実際、このMS試験は、相当する配列多様性をもつタンパク質全体に対するフルスケールの部位特異的突然変異試験に代わる、これより経済的かつ迅速な試験法でした。

Thelen教授の研究グループは、1回のKiCアッセイに最高100のペプチドを含められることを明らかにしています5。PEPスクリーニング技術を利用した直近の研究では、このような規模の反応を用い、A. thaliana由来の77種類のプロテインキナーゼによるリン酸化を調べるため、in vivoでリン酸化部位をもつ377のペプチド配列からなるライブラリーが利用されました8。Ahsanらは、A. thalianaの生育中の種子に含まれる、過去に同定されたin vivoリン酸化部位からその配列を選択しました。一次スクリーニングにより、キナーゼ-クライアントペアの候補として、特に注目される23のタンパク質と17のプロテインキナーゼが明らかにされました。さらに著者らは、複数のシグナル伝達経路で働くと考えられる特定のクライアントとして、1つのfull-lengthのタンパク質「プロテインホスファターゼ阻害剤‐2(AtPPI-2)」に注目しました。先に詳述したYHGHSMSDPGSTYRペプチドに関する研究と同様、この比較的最近の研究からも、それぞれ377のペプチドをもつfull-lengthのタンパク質について研究を進めるよりも、リン酸化の標的ペプチドに初めから注目した研究の方が、時間と資源の効率が高いことが示されました。

タンデムMS法は現在も、アレイと放射能標識/蛍光標識基質を用いるアッセイの代替法として、ハイスループットなスクリーニングにおける重要性を高めています。タンデムMS法はアレイ法と異なり、キナーゼとクライアント両方が立体構造的に意味をもつ溶液中における、キナーゼを介するリン酸化の解析が可能です。ペプチドアレイに比べたタンデムMSアッセイの最も重要な利点は、おそらく、複数のSer、Thr、またはTyr残基をもつペプチドにおいてリン酸化部位を特異的に示すことができる、という点でしょう。このように、PEPscreenのカスタムメイドなペプチドライブラリーは、プロテインキナーゼの活性およびリン酸化といった研究の用途に、将来が期待される1つの研究手段といえます。

 

References

  1. Zhang, H., and Pelech, S., Using protein microarrays to study phosphorylation-mediated signal transduction. Semin. Cell Dev. Biol., 23(8), 872-882 (2012).
  2. Manning, G., et al., The Protein Kinase Complement of the Human Genome. Science, 298(5600), 1912-1934 (2002).
  3. Ding, X., et al., A Rice Kinase-Protein Interaction Map. Plant Physiol., 149(3), 1478-1492 (2009).
  4. Mann, M., et al., Analysis of protein phosphorylation using mass spectrometry: deciphering the phosphoproteome. Trends Biotech., 20(6), 261-268 (2002)).
  5. Huang, Y., and Thelen, J.J., "KiC Assay - A Quantitative Mass Spectrometry-Based Approach for Kinase Client Screening and Activity Analysis" Quantitative Methods in Proteomics: Methods in Molecular Biology, Vol. 893 (Springer Science), pp. 359-370 (2012).
  6. Huang, Y., et al., A quantitative mass spectrometry-based approach for identifying protein kinase clients and quantifying kinase activity. Anal. Biochem., 402, 69-76 (2010).
  7. Ahsan, N., et al., "Scanning mutagenesis" of the amino acid sequences flanking phosphorylation site 1 of the mitochondrial pyruvate dehydrogenase complex. Front. Plant Sci., 3, Article 153 (2012).
  8. Ahsan, N., et al., A versatile mass spectrometry-based method to both identify kinase client-relationships and characterize signaling network topology. J. Proteome Res., 12(2), 937-948 (2013).

 

おすすめ お役立ちツール

Sigma News

キャンペーンや製品情報をお届けするメールニュース(配信登録はこちらから

  • PDFカタログをダウンロードすることができます。
  • 製品検索には、「製品名・製品番号・CAS番号など」、もしくは「製品カテゴリ」の方法があります(製品検索方法)。
  • 規格書やSDS(安全性データシート)、ロットごとの分析表のほかに、日本円価格、国内在庫情報も確認することができます(製品情報の見方)。