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がん治療と漢方薬

By: Lynn Stephenson, Product Specialist, Sigma® Life Science and Chloe McClanahan, Product Manager, Sigma Life Science, Biofiles Vol. 8, No. 6


 

伝統中国医学(TCM)は、何千年にもわたって実践されてきた医術です。TCMによる治療は、身体を健康でバランスのよい状態に戻すことを目的とし、生薬製剤、鍼治療、食事療法などを用いたホリスティック(全人的)な手法で行われます。TCM理論によれば、がんとは、内因的な健康状態と外因的な病原性ストレスによる体内の乱れが原因で生じる疾患であり、その治療にあたっては、身体がもつ本来の防御力の回復を目標とします1。生薬製剤は、TCMの構成要素として広く用いられており、新たな治療法へと転換できるものと期待され、このような薬草の多くでその効能を引き出している分子機序について理解することに研究的関心が高まってきています。パクリタキセルやカンプトテシンなど、がん治療に広く用いられている薬物の多くは天然源に由来しており、7,000を超える薬草を用いるTCMは、可能性を秘めた新たな化合物の豊富な供給源となります2

最近の研究により、TCM由来の多くの化合物でその抗腫瘍効果を引き出している分子機序が解明されはじめています。これらの化合物の標的は、トポイソメラーゼを標的とするもの、アポトーシスを誘導するもの、発がん性シグナル伝達経路を撹乱するもの、という3つの大きなカテゴリーに分類される傾向にあります1。アポトーシス抵抗性は、がん細胞に多くみられる顕著な特徴であり3、アポトーシスの誘導は、多くの有効な抗がん療法で機構的な評価項目として広く用いられています。すでに単離されているTCM化合物の範囲内で、TCM由来の化合物がその抗腫瘍効果を誘発する機序としてもっとも広くみられるのが、アポトーシスの誘導です1,4。たとえば、中国のツチハンミョウ科甲虫から単離されたカンタリジンは、ヒト白血病、結腸がん、ヒト肝細胞腫などの多様な腫瘍細胞株でアポトーシスを誘導することが報告されており、プロテインホスファターゼ2A(PP2A)の阻害を介している可能性が高いと考えられています5。これまでに研究され、抗腫瘍効果を示している化合物の大多数は、主にアポトーシスシグナル伝達分子の調節を介して、アポトーシスを誘導します1。こうした研究は、TCMで用いられる化合物の多くに、新たな治療法につながる可能性のある真の生物学的効果があることを検証する助けとなっています。

伝統医学体系のマテリアメディカ(本草学)は、時の試練を経た治療学の豊かな供給源であり、それゆえに、生理活性をもつと考えられる新たな分子の優れた供給源となります。特に、製薬会社では、創薬のための新たなリード化合物の供給源となりうるものとして、薬草から単離される化合物を詳しく調べてきました。これまでにもTCMは、アルテミシニン、カンプトテシン、トリプトライド、エフェドリンなどの多くの新薬の源となっています6。カンプトテシンの発見は、植物性化合物の研究から得られる途方もない可能性に光を当てています。細胞傷害性のトポイソメラーゼ阻害薬であるカンプトテシンは、何千年にもわたってTCMの処方に用いられていることから研究上の関心をもたれていたカンレンボク(Camptotheca acuminate、漢名は旱蓮木、別名は喜樹)に含まれます。この発見は、1960年代に米農務省(USDA)の植物学者と米国立がん研究所(National Cancer Institute:NCI)の化学者のあいだで実施された分野横断型研究プログラムから生まれました7。カンプトテシン類似体は、最終的に、さまざまな種類のがんの治療のための医薬品として利用可能になりました。

1960年代、三角座研究学会(Research Triangle Institute:RTI)は、植物の抽出分画とその後に続く単離化合物のin vitroでの細胞傷害性検査に用いることができる画期的な手法を開発しました7。これらの手法は、還元主義的アプローチに由来しており、カンプトテシンの発見には不可欠でしたが、TCMのほとんどの処方は複数の構成要素の相乗効果に基づいており、各構成要素には生理活性をもつと考えられる成分が多く含まれています。最近の研究では、システムバイオロジー的またはネットワークバイオロジー的アプローチが、TCM製剤内の化合物の組み合わせ効果を理解するためのより優れた過程であることが示されています。計測装置の進歩のおかげで、研究者らは、生薬製剤から得られる化学的同定、薬理学、メタボロミクス、生物情報学のデータを統合できます。コペンハーゲン大学で行われた解析では、HPLCとNMRの化学的同定をメタボロミクスに基づくラジカル補足アッセイと組み合せた新たなプラットホームが用いられ、ヤナギの樹皮からの抽出物の、指紋ともいうべき化学的特徴と薬理学的特徴の両方が決定されました。ヤナギの樹皮は、TCMでは歴史的に鎮痛薬として適用されていますが、抗増殖活性を示し、in vitroではアポトーシスを誘導することも分かっています8-9

Sigmaでは、がんスクリーニングアッセイに、あるいは複雑な生物学的ネットワーク解析のベンチマークとして個別に適用可能な、TCMの薬草に由来する高純度の二次代謝産物からなる独自のポートフォリオを提供しています。

 

TCM薬局で典型的にみられる朝鮮人参の根を入れた瓶です。朝鮮人参の抽出物には、化学療法研究において多剤耐性を覆すことが示されている、ジンセノサイドと呼ばれる生理活性サポニンの一種が含まれます。

 

マンゴスチンの実の外皮は、TCMで抗炎症治療に用いられます。マンゴスチンから単離されたキサントンであるγマンゴスチン(γ-Mangostin)およびαマンゴスチン(α-Mangostin)(Sigma商品番号M6824およびM3824)は、抗がん作用、なかでも細胞傷害性、アポトーシス、抗腫瘍原性をもつことが示されています。

 

クルクミン(Curcumin)(Sigma商品番号C1386)は、薬用植物ウコンから単離された天然のフェノール化合物です。化学療法薬になる可能性があるものと考えられ、研究されています。

 

 

Materials

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References

  1. Hsiao, W. L. W. and Liu, L. The Role of Traditional Chinese Herbal Medicines in Cancer Therapy - from TCM Theory to Mechanistic Insights. Planta Med, 76, 1118-1131 (2010).
  2. Parry, J. Taking a New Look at an Ancient Tradition. The Scientist 19, (2005).
  3. 3. Hanahan, D. and Weinberg, W.  Hallmarks of Cancer: The Next Generation. Cell, 144, 646- 674 (2011).
  4. Parekh, H.S. et al.  A New Dawn for the Use of Traditional Chinese Medicine in Cancer Therapy. Mol. Cancer, 8, 21 (2009)
  5. Youns, M. et al. Traditional Chinese Medicines (TCMs) for Molecular Targeted Therapies of Tumours.  Curr. Drug Disc Technol. 7, 2-12 (2010).
  6. Li, X.-J., et al. Chemoinformatics Approaches for Traditional Chinese Medicine Research and Case Application in Anticancer Drug Discovery. Curr. Drug Disc Technol. 7, 22-31, (2010).
  7. Ginsberg, J. The Discovery of Capmptothecin and Taxol. In American Chemical Society Education. Retrieved November 5, 2012 from
  8. Afnolet, S. et al. Comprehensive analysis of commercial willow bark extracts by new technology platform: Combined use of metabolomics, high-performance liquid chromatography-solid-phase extraction-nuclear magnetic resonance spectroscopy and high-resolution radical scavenging assay. J. Chromatogr. 1262, 130-137, (2012).
  9. Hostanka, K. et al. Willow Bark Extract (BNO1455) and its Fractions Suppress Growth and Induce Apoptosis in Human Colon and Lung Cancer Cells. Cancer Detect. Prev. 31, 129-139 (2007).

 

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