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ナノディスク(Nanodisc)

 

ナノディスク:膜タンパク質研究の最新ツール

ナノディスク(Nanodisc)とは、生物学的、薬理学的に重要な不溶性タンパク質、例えばレセプター、トランスポーター、酵素やウィルス抗原、などを、水系溶媒中で可溶化できる形にする、タンパク質自己構築システムです。

ナノディスクは、不溶性タンパク質を、膜骨格タンパク質(Membrane Scaffold Proteins:MSP)のベルトによって囲み、天然に近いリン脂質二重膜構造をとるナノ構造体です。ナノディスクに組み込まれた目的タンパク質は、機能活性を維持すことが可能です。よって、反応速度研究、構造解析、画像測定、結合定量や新薬開発など、様々な分野での利用が期待できます。この新しい技術は、イリノイ大学 アーバナ・シャンペーン校のSligar教授によって開発されました。

この度、この『ナノディスク』のライセンシングを受け、汎用性の高い2種の膜骨格タンパク質(Membrane Scaffold Proteins:MSP)である、M6574(MSP1D1、ディスク直径 約10.6 nm)と M7074(MSP1E3D1、ディスク直径 約12.9 nm)を販売することとなりました。

 

Membrane Scaffold Protein 1D1(MSP1D1; MSP1T2) Membrane Scaffold Protein 1E3D1(MSP1E3D1)
ナノディスク 直径約10.6 nm、MW: 24,661.9 ナノディスク 直径約12.9 nm、MW: 32,600.0
製品番号:M6574-5MG 容量:5 mg 製品番号:M7074-5MG 容量:5 mg

 

ナノディスクの特徴

1つのナノディスクは、2つの膜骨格タンパク質と、リン脂質約150分子から構成されています(図1)。本膜骨格タンパク質は「Apolipoprotein A-1」を元に設計されている(図2)ため、両親媒性の特徴を持ち、様々なサイズのターゲットタンパク質が組み込められるよう、多重ら線タンパク質ベルト構造をしています(図1)。リン脂質の含有量はナノディスクが取り込んだ目的タンパク質のサイズに依存します。また、ナノディスクの厚さは、使用したリン脂質の種類に依存ます。典型的な厚さは、4.5~5.6 nmです。

また、この膜骨格タンパク質はTEV プロテアーゼ切断サイトをもったN-末端His-tagを持っています(図2)。目的タンパク質を組み込んだ後、His-selectのようなHisタグ精製レジンによって、単離することが可能です。

製品形状は、Tris-HCl とNaCl を含んだ凍結乾燥粉末です。容量は、含有タンパク量で表記されていて、純度は90% 以上です。

図1 7回膜貫通タンパク質(チトクロムp45複合体)含んだナノディスク

 

ナノディスク技術の利点

  • 不溶性膜タンパク質を可溶化
  • 取り込まれた目的タンパク質は本来の構造と活性を保持
  • 目的タンパク質にとって極めて安定な微小環境を提供
  • 不溶性目的タンパク質は水溶液中で単分散を持続
  • ミクロソーム以上の粒子均一性を提供
  • 生体構造に近いリン脂質二重膜で目的タンパク質を抱合

ナノディスクに取り込まれ、活性を維持した膜結合性タンパク質の実績として、下記のタンパク質があります。

  • multiple GPCRs1
  • Bacteriorhodopsin2
  • Cytochrome P450s3-5
  • Coagulation factors6
  • Cholera toxin7
  • TAR receptor8
  • ABC transporters9
  • the SecYEG assembly10
  • その他

図2 膜骨格タンパク質マップ(Apo-A1に類似)

 

膜骨格タンパク質(本製品)、界面活性剤に溶解した目的タンパク質とコール酸に溶解したリン脂質を一緒に混ぜてインキュベートします。その後、透析などで界面活性剤を取り除くと、自然にナノディスクに目的タンパク質が組み込まれます。

目的タンパク質をナノディスクに組み込ませることを成功させるには、次のパラメータを最適化することが必要です。

  • 目的タンパク質を調製する際の界面活性剤の選択とその濃度
  • リン脂質の選択と濃度
  • 再構築の際の温度
  • 膜骨格タンパク質と脂質との比
  • 膜骨格タンパク質と目的タンパク質との比

 

【ナノディスク調製方法】

 

<試薬準備>

  1. 膜骨格タンパク質(本製品)凍結乾燥粉末 1バイアルにつき、5mLの水で溶解します。

    2-8℃での保存は2-3日まで安定。長期保存の場合は-20℃で小分け保存が望ましい。

  2. リン脂質(製品リスト)をクロロフォルムで溶解し、50-100mMに調製します。
  3. Amberlite XAD-2(20275)を水で洗浄します。

<ナノディスク反応液の準備>

詳細なプロトコールはこちら(Sligar Lab) 

  1. クロロフォルムに溶解したリン脂質は、使い捨てチューブに適量分注します。ドラフトの中で、窒素ガスを穏やかに当てて、乾燥させます。溶媒が残った場合は、バキュームデシケーターに一昼夜おくのがよいでしょう。
  2. 乾燥させたリン脂質に2倍濃度のコール酸ナトリウムを加えます。(例えば、終濃度50mMのリン脂質に対し、100mMコール酸)
  3. チューブを湯煎、攪拌し、溶液が透明になるまで溶解します。これをナノディスク反応液のリン脂質ストック溶液とします。
  4. コール酸溶解リン脂質に膜骨格タンパク質の溶液を加えます。脂質とタンパク質との混合比は、選択したリン脂質の種類によって異なります(Sligar Lab プロトコール参照 )。再構築混合液中のコール酸終濃度は、12-40 mMであることを確かめます。短くとも、15分以上は各適温でインキュベーションします。
  5. 界面活性剤を除去すると、ナノディスクの自己構築が開始されます。コール酸は、インキュベーションした温度で透析するか、AmbliteXAD2(20275)または、BioBeadsSM-2(Bio-Rad)で除去します。
  6. 透析はバッファーを3回代えて24時間以上行います。バッファーの容量は、膜骨格タンパク質/脂質/コール酸 混合液量の約1,000倍を使用します。
  7. BioBeadsの場合は、使う前に水を除去して再構築混合液1mLに対して、ビーズ湿重量で0.5~0.8gを加えます。オービタルシェイカーで短くとも2時間(脂質:DPPCDMPCの場合)、POPCの場合は、4時間インキュベーションします。
  8. ナノディスクサンプルはインジェクション量を0.5 mLを上限として、Superdex200 10/300GLカラム(GE Healthcare)を用い、MPS標準バッファーで、0.5 mL/minで分画します。

 

参考文献

  1. Bayburt, T.H. et. al., J. Biol. Chem., 282, 14875-14881 (2007).
  2. Bayburt, T.H. et al., Arch. Biochem. Biophys., 450, 215-222 (2006).
  3. Denisov, I.G. et al., J. Biol. Chem., 282, 7066-7076 (2007).
  4. Grinkova, Y.V. et al., Biochem. Biophys. Res.Commun., 372, 379-382 (2008).
  5. Denisov, I.G. et al., Biochim Biophys Acta., 1814, 223-229 (2011).
  6. Shaw, A.W. et al., J. Biol. Chem., 282, 6556-6563 (2007).
  7. Borch, J. et al., Anal. Chem., 80, 6245-6252 (2008).
  8. Boldog, T. et al., PNAS, 103, 11509-11514 (2006).
  9. Alvarez, F. J. D. Et. al., J Am Chem Soc., 132, 9513-9515 (2010).
  10. Alami, M. et. al., EMBO J., 26, 1995–2004 (2007).
  11. Dr. Sligar's web site 
  12. "Mass Spec Analysis of Intact Membrane Proteins"  Genetic Engineering & Biotechnoligy News, 2012, Vol. 32, No. 11

 

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