分子生物学

トランスフェクション

タンパク質発現やノックダウンを引き起こすために、プラスミドDNAやsiRNAを細胞に効率よく比較的手軽に導入するトランスフェクション試薬が用いられます。

 

プラスミドDNAのトランスフェクション

 

オススメのプラスミドDNAのトランスフェクション試薬

 

ロシュ社 X-tremeGENE HP (エクストリームジーン エイチピー)

哺乳動物の細胞や昆虫細胞などの広範囲な真核細胞だけでなく、トランスフェクションが困難と言われている細胞にも効率よくトランスフェクションが可能です。導入効率の良さからタンパク質収量の向上も期待できます。

 

ロシュ社 X-tremeGENE 9 (エクストリームジーン ナイン)

非常に低毒性のトランスフェクション試薬です。通常よく使用される細胞で高効率かつ、副次的影響を与えることなくトランスフェクションが可能なため、トランスフェクション後の様々なアプリケーションに利用することができます。

  一般的な細胞 困難な細胞 プライマリー細胞 血清を含む培地での使用 ヒト及び動物由来成分
X-tremeGENE HP 可能 含まない
X-tremeGENE 9 可能 含む

 

種々のセルラインにおけるX-tremeGENE HP DNAトランスフェクション試薬を用いた高レベルなGFPの発現

細胞に血清入り培地にてX-tremeGENE HP DNA トランスフェクション試薬を用いてトランスフェクションを実施し、ロシュ社製Cellavistaシステムを用いて解析。本試薬を使用して実施した場合非常に高いレベルのGFPの発現が観察された(左から、HEK-293細胞、K-562細胞、HeLa細胞)。

 

製品名 特長 製品番号 容量
X-tremeGENE HP DNA Transfection Reagent

様々な細胞に利用可能

低毒性

高効率のためタンパク質収量増加も期待

06 366 244 001 0.4mL
06 366 236 001 1.0mL
06 366 546 001 5×1mL
X-tremeGENE 9 DNA Transfection Reagent 非常に低毒性 06 365 779 001 0.4mL
06 365 787 001 1.0mL
06 365 809 001 5×1mL
 

X-TremeGENEトランスフェクション試薬の使用例

一般的な細胞 トランスフェクション試薬 初期播種細胞数/well トランスフェクション時のコンフルエント率 希釈に使用するOpti-MEM® 試薬:DNA 添加量/well
CHO-K1 X-tremeGENE HP 1.5x104 (96ウェル) 65-75% 200 μL 2 μL:2 μg 10 μL
CHO-K1 X-tremeGENE 9 1.5x104 (96ウェル) 65-75% 200 μL 6:02 5 μL
COS-7 X-tremeGENE HP 8.0-9.0x103 (96ウェル) 75-85% 200 μL 4:02 10 μL
COS-7 X-tremeGENE 9 8.0-9.0x103 (96ウェル) 75-85% 200 μL 6:02 5 μL
HeLa X-tremeGENE HP 1.2-1.3x104 (96ウェル) 70-90% 200 μL 6:02 10 μL
HeLa X-tremeGENE 9 1.5x104 (96ウェル) 70-90% 200 μL 6:02 5 μL
NIH-3T3 X-tremeGENE 9 1.5x104 (96ウェル) 70-80% 200 μL 6:02 5 μL
HEK-293 X-tremeGENE HP 3.0-3.5x104 (96ウェル) 50-70% 200 μL 6:02 10 μL
困難とされる細胞 トランスフェクション試薬 初期播種細胞数/well トランスフェクション時のコンフルエント率 希釈に使用するOpti-MEM® 試薬:DNA 添加量/well
MCF-7 X-tremeGENE 9 1.2-1.8x104 (96ウェル) 70-90% 200 μL 6 μL:2 μg 10 μL
HepG2 X-tremeGENE 9 2.0-2.5x104 (96ウェル) 60-70% 500 μL 30:10:00 5 μL
Neuro-2a X-tremeGENE 9 1.0x105 (24ウェル) 30-40% 100 μL 8:02 100 μL
PC-3 X-tremeGENE HP 1.0-1.2x104 (96ウェル) 75-85% 200 μL 2:02 10 μL
HCT 116 X-tremeGENE HP 3.0-4.0x105 (12ウェル) 80% 100 μL 2:01 100 μL
A549 X-tremeGENE HP 2.8x104 (96ウェル) 70% 500 μL 10:05 15 μL
HuH-7 X-tremeGENE HP 1.0x105 (6ウェル) 播種後18-24時間後 100 μL 1.5:1.5 100 μL
U-2 OS X-tremeGENE HP 2.5-3.0x104 (96ウェル) 70-90% 200 μL 4:02 10 μL
プライマリー細胞・幹細胞 トランスフェクション試薬 初期播種細胞数/well トランスフェクション時のコンフルエント率 希釈に使用するOpti-MEM® 試薬:DNA 添加量/well
Primary MEF X-tremeGENE HP 0.5-1.0x105 (12ウェル) 60% 100 μL 4 μL:1 μg 100 μL
Human Primary Fibroblasts from Pre-Skin X-tremeGENE HP 1.0x105 (6ウェル) 40-50% 200 μL 6:02 200 μL
Murine Mesenchymal Stem Cells EK8 X-tremeGENE HP 3.0x104 (96ウェル) 50% 392 μL 8:08 10 μL
Human Mesenchymal Stem Cells X-tremeGENE HP 8.0x104 (6ウェル) 50% 200 μL 6:02 200 μL
パッケージング細胞・昆虫細胞 トランスフェクション試薬 初期播種細胞数/well トランスフェクション時のコンフルエント率 希釈に使用するOpti-MEM® 試薬:DNA 添加量/well
HEK-293T Cells for Lentiviral Production X-tremeGENE HP 5.0x105 (6ウェル) 60-80% 180 μL 6 μL:2 μg 200 μL
SF9 Insect Cells X-tremeGENE HP 0.5x106 (12ウェル) 播種後すぐ 100 μL 8:01 100 μL

 

siRNAのトランスフェクション

 

RNAi(RNA 干渉)は自然界で見られる生体メカニズムで、二本鎖RNAが遺伝子発現を強力に阻害します。RNAiを引き起こす21から23merの短い二本鎖RNA断片はsiRNAと呼ばれます。特定の遺伝子をターゲットにした人工的に作成したsiRNAまたはsiRNAが作り出されるshRNA(ヘアピン型RNA)を細胞内に入れることで結果的にターゲット遺伝子がノックダウンされタンパク質発現の減少が起こります。siRNAの細胞への導入にトランスフェクション試薬が用いられ、shRNAはプラスミドの形でトランスフェクションを行うかウイルス粒子に入れてトランスダクションを行います。ここではsiRNAを効率よく細胞に導入するためのトランスフェクション試薬を紹介します。

製品名   製品番号 容量
X-tremeGENE siRNA Transfection Reagent 非リポソーム系のトランスフェクション試薬。低毒性。動物由来成分フリー。 04 476 093 001 1 ml
04 476 115 001 5 x 1 ml
MISSION® siRNA Transfection Reagent 低濃度(1 nM)のsiRNAでトランスフェクション可能(実際の使用は10-100 nM推奨)。使用するsiRNA量が少ないためオフターゲットの低減が期待できます。 S1452-100UL 0.1mL
S1452-1ML 1mL
N-TER™ Nanoparticle siRNA Transfection System ペプチドベースのトランスフェクション試薬。脂質系とは異なる導入法のため、siRNAが細胞内で局在しにくいことが期待できます。siRNAは5-100 nMを推奨。 N2913-120UL 0.12mL
N2913-1ML 1mL
N2913-400UL 0.4mL

 

プロトコール例 MISSION siRNA Transfection Reagent (製品番号S1452

付着細胞へのトランスフェクション(フォワードトランスフェクション法)

事前の準備

トランスフェクションの前日に細胞を30~50%コンフルエントにする必要があります。24ウェルプレートの場合、一般的に15,000~35,000個の細胞をトランスフェクションの24時間前にまきます。その他の場合の目安は表1をご覧下さい。

使用するsiRNAの最適濃度を決めるために、最終濃度として1~30 nMの範囲でテストすることが推奨されます。24ウェルプレートの場合、siRNAが10 nM以下ではトランスフェクション試薬は1~3 μL、siRNAが10 nMより高濃度ではトランスフェクション試薬は2~4 μLが推奨されます。その他の場合の目安は表1をご覧下さい。

以下は24ウェルプレートで最終濃度5 nMのsiRNAを用いるときのプロトコールです。1ウェルあたりの量を示しています。

  1. まず3ピコモルのsiRNA duplexを血清を含まない培地100 μLで希釈します。
  2. トランスフェクション試薬(S1452)2μLを手順1のsiRNA溶液100 μLに添加し、すぐに混ぜます。
  3. 混ぜてから10~15分間、室温でインキュベートします(1時間以内に手順5に進んで下さい)。
  4. インキュベーション中に前培養した細胞から培地を除去し、あらかじめ温めた新しい培地(血清を含む)を500 μL入れて下さい。トランスフェクション時に抗生物質が含まれていても構いません。
  5. 手順3で準備したトランスフェクション試薬 + siRNA混合液を4の細胞に添加し、穏やかに揺り動かすようにして混ぜます。ここで最終液量は600 μLになります。
  6. トランスフェクションした細胞を細胞培養用インキュベーターでインキュベートします。一般的にトランスフェクションから24~96時間後に遺伝子発現抑制の効果を測定します。
  7. より長時間インキュベートする場合は、適宜培地を交換します。

表1 付着細胞のトランスフェクション条件

プレートのウェル数 前培養時の播種細胞数 前培養の培地量 siRNA duplex(ピコモル) トランスフェクション試薬(siRNA 1~10 nMの場合) トランスフェクション試薬(siRNA >10 nMの場合) トランスフェクション混合液の量 トランスフェクション時に入れる培地量
384 1,250-3,750 0.1 0.5 0.25 - 0.6 0.35 - 0.75 25 63 μL
96 2,500-7,500 0.2 1 0.5 - 1.2 0.7 - 1.5 50 125 μL
24 15,000-35,000 1 3 1 - 3 2 - 4 100 500 μL
12 30,000-70,000 2 7 2 - 6 4 - 8 200 1 mL
6 100,000-200,000 4 12 6 - 10 8 - 16 200 2 mL