|
(※本記事は2004年に発行された弊社「Materials Scienceカタログ(英語版)26」に掲載された内容に加筆・修正したものです。)
はじめに
燃料電池とバッテリーは、外部電流を作り出すための電気化学電池です。燃料電池は、酸化が起こる「負極、アノード」、還元が起こる「正極、カソード」、および電極間をイオンが動く媒体である電解質から構成されます(電気化学電池の概略図は図1を参照)。燃料電池では、一方または両方の反応物質が外部源から電池に供給されます。電池に供給される唯一の反応物質が空気中の酸素であれば、技術的には燃料電池であってもバッテリーと呼ばれます。例えば、亜鉛/空気電池やアルミニウム/空気電池がその例です。
 図1 電気化学セルの概念図
バッテリー
バッテリーは、一次(使い捨て)バッテリーと二次(充電式)バッテリーという2つのタイプに分類できます。燃料電池よりバッテリーが優れている主な点は、入手の容易性、可搬性、低価格、および広範な動作条件です。ただし、バッテリーは燃料電池より寿命がかなり短く、低い出力しか得られません。バッテリーの出力は通常数100ワットですが、燃料電池はビルの照明や自動車を数時間運転するのに十分なキロ~メガワットを出力できます。要求されるエネルギーが大きい場合、バッテリーでは危険なレベルまで熱や圧力が蓄積されて劣化したり、毒性化合物の漏出や場合によっては爆発したりする可能性もあります。その上、一次バッテリーの寿命やほとんどの二次バッテリーの充放電の繰り返し寿命(充電可能回数)に限界があるため、危険で毒性を持つことが多いバッテリーを構成する材料を廃棄する必要があります。表1は、一般的な一次および二次バッテリーの特徴をまとめたものです。
表1 一般的なバッテリーのタイプ
| バッテリーのタイプ |
負極 |
正極 |
電解質 |
長所 |
短所 |
| 一次バッテリー |
アルカリ電池 |
Zn |
MnO2 |
KOH |
エネルギー密度が高い、保管寿命が長い、漏れ耐性が優れている、負荷の高低にかかわらず高性能 |
亜鉛-炭素電池より高コストであるが、高効率 |
| アルミニウム/空気電池 |
Al |
O2 |
KOHまたは中性塩溶液 |
海水にさらされた状態で利用可能(中性塩溶液)、電解質/電極の交換が容易 |
負極が急速に劣化、保管寿命が短い、動作寿命が短い |
| ルクランシェ電池(亜鉛炭素または乾電池) |
Zn |
MnO2 |
NH4ClまたはZnCl2 |
安価で普及している(入手可能な最も古いバッテリー) |
高負荷時または連続使用時に性能が低下 |
| リチウム電池 |
Li |
各種液体または固体材料 |
SOCl2、SO2Cl2、または有機溶液 |
エネルギー密度が非常に高い、保管寿命が長い、動作寿命が長い |
高負荷時に性能低下、漏出または爆発の危険性あり |
| 酸化水銀電池 |
ZnまたはCd |
HgO |
KOH |
(Zn/MnO2)アルカリ電池よりエネルギー密度が高い |
高コスト、毒性の懸念により生産中止 |
| 亜鉛/空気電池 |
Zn |
O2 |
KOH |
環境に優しい、安価、エネルギー密度が非常に高い、保管寿命は事実上無限 |
動作寿命が短い、出力密度が低い |
| 二次(充電式)バッテリー |
鉄ニッケル電池 |
Fe |
Ni(OH)2 |
KOH |
さまざまな条件下で長寿命、優れた予備バッテリー |
出力性能が低い、充電速度が遅い |
| 鉛/酸電池 |
Pb |
PbO2 |
希釈H2SO4(aq) |
低コスト、サイクル寿命が長い、さまざまな条件下で動作性能が高い、一般的な自動車用バッテリー |
漏出の危険性(が若干あり) |
| リチウムイオン電池 |
C、炭素系化合物 |
グラファイトに挿入されたLi2O |
LiPF6、LiBF4、関連化合物 |
比較的安価、エネルギー密度が高い、保管寿命が長い、動作寿命が長い、サイクル寿命が長い |
漏出の危険性(が若干あり) |
| ニッケル/カドミウム電池 |
Cd |
Ni(OH)2 |
KOH |
高負荷放電および/または低温での性能が高い |
コストが高い、充電前に完全に放電しないと一時的に容量が減ることがある(メモリー効果) |
| ニッケル/金属ヒドリド(NiMH)電池 |
ランタニドまたはNi合金 |
Ni(OH)2 |
KOH |
容量が大きい、出力密度が高い |
コストが高い、いくらかのメモリー効果がある |
| ニッケル/亜鉛電池 |
Zn |
NiO |
KOH |
コストが低い、毒性が低い、高放電率に適している |
電解質中の亜鉛が不均一に負極上に蒸着し、効率が極端に低下する |
| ナトリウム/硫黄電池 |
溶融Na |
溶融S |
Al2O3 |
材料が安価、サイクル寿命が長い、エネルギーおよび出力が高い |
動作温度が高いと効率が低下、劣化によりいくらかの爆発の危険性あり |
バッテリーの主要部材は、負極、正極、電解質、およびセパレータ(半浸透性材料)です。さらに、さまざまな触媒が電極性能を向上させるために使用されます。例えば、酸化ルテニウム(IV)(アルドリッチ製品番号238058)がバナジウム酸化還元バッテリー系で触媒として使用されます1。表1には、各種バッテリーに使用される電極と電解質のタイプも記載されています。多くの先進的なバッテリーは、これらの主要部材に使用される新しい材料に焦点を当てて設計されています。
リチウムイオン電池は、急成長している小型充電式電子デバイス分野での主要な電源であるため、近年の研究の多くはリチウムイオン電池に注力されています。例えば、硫化ニッケルが充電式リチウム電池の正極材料として検討されました2。また、最近の研究では電解質に用いられるごく一般的な材料にも及んでいます。代表例として、グラファイト(アルドリッチ製品番号332461)の新しい形態がリチウムイオン電池の負極材料として研究されています3。電解質もバッテリーの性能にとって非常に重要です。例えば、ブチロラクトン/炭酸エチレン(アルドリッチ製品番号B103608、E26258)水溶液中のLiBF4(アルドリッチ製品番号451622)水溶液4は、リチウムイオン電池向けの高い伝導性と高い熱安定性を持った電解質であることがわかりました。
燃料電池
燃料電池は、定置型・移動型発電の両方の用途で環境に優しいエネルギー源として活発に研究されています。この電池は、水素、アルコール、または炭化水素燃料からエネルギーを作り出します。燃料電池の研究は19世紀まで遡り、Groveが1839年に2本の白金電極の一部を浸し、それぞれの電極に酸素と水素を別々に供給して発電した研究が最初です5。
化石燃料の代替として、環境的にやさしいクリーンな燃料電池は大きな関心を集めています23。燃料電池の主な用途としては、自動車への利用、携帯機器用エネルギー源、定置型バックアップエネルギー源や非常用エネルギー源など様々です24。 現在、すべての主要自動車メーカーが燃料電池車のテストを行っています(表2)。これらの中には既に世界中の地方自治体で利用されているものもあります25。
表2.現在使用されている燃料電池車の例による提供データ4、2008年3月21日調査)
自動車 メーカー |
車種 |
発表年 |
エンジン タイプ |
燃料電池の サイズ/ タイプ |
燃料電池 メーカー |
一充填当たり 走行距離 (マイル,km) |
換算燃費 (MPG: マイル/ガロン) |
最高速度 |
燃料 タイプ |
商業的導入 |
| BMW |
7シリーズ(745h) (セダン) |
2000年 |
ITC 燃料電池 APU |
5 kW/PEM |
UTC社 |
180マイル、 300 km |
N/A |
140マイル/時 |
ガソリン/ 液体水素 |
2000年に限定的に導入(ミュンヘン空港水素車プロジェクト) |
ダイムラー・ クライスラー |
NECAR 5.2 (Aクラス) |
2001年 |
燃料電池/ バッテリー ハイブリッド |
85 kW/PEM |
Ballard社 Mark900 シリーズ |
300 マイル、 482 km |
N/A |
95マイル/時、 150 km/時 |
メタノール |
日本での道路走行許可。CA–DC運転を完了。 |
F-Cell (Aクラス) |
2002年 |
燃料電池/ バッテリー ハイブリッド |
85 kW/PEM |
Ballard社 Mark900 シリーズ |
90マイル、 145 km |
56 mpg 相当 |
87マイル/時、 147 km/時 |
5,000psi 圧縮水素 4ポンド (1.8 kg) |
2003年から米国、日本、シンガポール、欧州の組織所有車として60台。ミシガン州でUPS社が少数を使用。 |
| EcoVoyager |
2008年 |
燃料電池/ バッテリー ハイブリッド |
45 kW/PEM |
|
300マイル 以上 |
N/A |
115マイル/時 |
10,000 psi圧縮 水素 |
|
| フィアット |
Seicento Elettra H2 Fuel Cell |
2001年 |
燃料電池/ バッテリー ハイブリッド |
7 kW/PEM |
Nuvera社 |
100マイル、 140 km |
N/A |
60マイル/時、 100 km/時 |
圧縮水素 |
|
| Panda |
2007年 |
燃料電池 |
60 kW/PEM |
Nuvera社 Andromeda- IIスタック |
125 マイル、 200 km |
N/A |
81マイル/時、 130 km/時 |
圧縮水素 |
マントバ市に3台納車。 |
フォード 自動車 |
Advanced Focus FCV |
2002年 |
燃料電池/ バッテリー ハイブリッド |
85 kW/PEM |
Ballard社 Mark900 シリーズ |
180マイル、 290 km |
約50mpg 相当 |
N/A |
5,000psi 圧縮水素 8.8ポンド (4 kg) |
2004年後期からバンクーバーで3年間のデモ。サクラメント、オーランド、デトロイトに組織所有車として30台。 |
Airstream コンセプトカー/HySeries Edge |
2007年 |
燃料電池/ プラグイン ハイブリッド |
HySeries Drive |
Ballard社 |
水素使用時 280マイル、 計305 mi |
80 mpg |
85マイル/時 |
|
リチウムイオン電池駆動の電気モーターで走行。燃料電池は走行中にバッテリーを再充電するための搭載「発電機」として機能。 |
| GM |
Chevy S-10(小型トラック) |
2001年 |
燃料電池/ バッテリー ハイブリッド |
25 kW/PEM |
GM** |
240マイル、 386 km |
40 mpg |
70マイル/時 |
低硫黄 クリーン ガソリン (CHF) |
GMは企業改革にてトヨタと提携。 |
| HydroGen4 |
2007年 |
燃料電池/ バッテリー ハイブリッド |
93 kW/PEM |
|
200マイル、 320 km |
|
100マイル/時、 160 km/時 |
|
Equinoxの欧州バージョンは2008年にベルリンでテスト予定。 |
| Provoq |
2008年 |
燃料電池/ バッテリー ハイブリッド |
|
|
300マイル |
N/A |
100マイル/時 |
10,000psi 圧縮水素 |
Cadillac ProvoqはGMの第5世代燃料電池スタックを使用。 |
| ホンダ |
FCX |
2002年 |
燃料電池/ Honda ウルトラ キャパシタ |
85 kW/PEM |
Ballard社 Mark900 シリーズ |
220マイル、 355 km |
約50 mpg (ガソリン 換算ガロン) |
93マイル/時、 150 km/時 |
5,000psi 圧縮水素 156.6L |
日本に4台、ロサンゼルスに5台、サンフランシスコに3台。 |
| PUYOコンセプトカー |
2007年 |
燃料電池 |
N/A |
N/A |
N/A |
N/A |
N/A |
N/A |
2007年東京モーターショーにて展示。 |
| FCX Clarity |
2007年 |
燃料電池 |
100 kW/PEM |
ホンダ |
354マイル、 570 km |
N/A |
100マイル/時、 160 km/時 |
圧縮水素 |
2008年の3年間リース価格は600ドル/月となる見込み。 |
| ヒュンダイ |
Santa Fe SUV |
2000年 |
常圧型 燃料電池 |
75 kW/PEM |
UTC Fuel Cell社 |
100マイル、 160 km |
N/A |
77マイル/時、 124 km/時 |
圧縮水素 |
|
| i-Blueコンセプトカー |
2007年 |
燃料電池 |
100 kW/PEM |
N/A |
373マイル、 600 km |
|
102マイル/時、 165 km/時 |
圧縮水素 |
フランクフルトモーターショーにて展示。 |
| 三菱 |
SpaceLinerコンセプト限定 |
2001年 |
燃料電池/ バッテリー ハイブリッド |
40 kW/PEM |
N/A |
N/A |
N/A |
N/A |
メタノール |
|
| 日産 |
X-TRAIL(SUV) |
2002年 |
燃料電池/ バッテリー ハイブリッド |
75 kW/PEM |
UTC Fuel Cell社 (常圧型) |
N/A |
N/A |
78マイル/時、 125 km/時 |
5,000psi 圧縮水素 |
日本の公道試験にて認可。日本政府に3台リース。 |
| スズキ |
Covieコンセプト限定 |
2001年 |
燃料電池 |
N/A |
GM |
N/A |
N/A |
N/A |
N/A |
|
| トヨタ |
FCHV (Kluger V/Highlander SUV) |
2002年 |
燃料電池/ バッテリー ハイブリッド |
20 kW/PEM [122 hp] |
トヨタ |
180マイル、 290 km |
N/A |
96マイル/時、 155 km/時 |
5,000psi 圧縮水素 |
カリフォルニアと日本にて計18台リース。 |
| VW |
Touran HyMotion |
2007年 |
燃料電池/ バッテリー |
80 kW/PEM |
|
N/A |
N/A |
140 km/時 |
|
|
| Space Up Blue |
2007年 |
燃料電池/ バッテリー |
45 kW |
VW |
155マイル、 250 km |
|
|
|
小型リチウムイオン電池パッケージにより一充填当たり走行距離がさらに62マイル(100km)延長。 |
燃料電池は、使用する電解質のタイプ(表3)で分類されますが、いずれも一般的に同じ酸化還元化学に従います。燃料電池の原理はバッテリーの原理と似ていますが、燃料電池は燃料で駆動するため、充電する必要がなく、かつ使い捨てすることもありません。ほとんどの燃料電池は負極で水素を酸化し、その結果できるH+を正極で大気中の酸素によって水に還元して、熱と電気を生成します(図2、図3)。
 図2 一般的な固体高分子形(PEM)燃料電池の模式図6
 図3 燃料電池での酸化/還元反応
燃料電池が使用する水素は、直接供給することも、アルコール、天然ガス、またはその他の炭化水素燃料を水素に変換する燃料改質装置から間接的に供給することもできます。燃料電池の主な排出物は水であるため、燃料電池は環境に優しい電源であるといえます。
表3に、現在入手可能な燃料電池の比較を示します。さらに、現在開発中の燃料電池には以下のようなものがあります。
- 再生式燃料電池
- この電池は、太陽エネルギーを動力とする電解槽で水を水素と酸素に変換します。その後、この燃料を電気、熱、および水に変換します。水はその後、電解槽でリサイクルされます。現在NASAがこの技術の先頭に立っています。
- 亜鉛-空気燃料電池(ZAFC: Zinc-Air Fuel Cell)
- ZAFCは、大気中の酸素を気体拡散電極に通して、水とヒドロキシルイオンに変換します。このイオンは電解質中を移動して亜鉛の負極に達し、そこで反応を起こして亜鉛と電気を生成します。充電式バッテリーと同様に、亜鉛電極も再生可能です。ただしバッテリーと異なり、このプロセスにわずか約5分しかかかりません。
- プロトンセラミック燃料電池(PCFC: Protonic Ceramic Fuel Cells)
- この電池は、高いプロトン伝導度を持つセラミック電解質を使用して、高い温度(700℃)で動作します。高温電池としてMCFC(溶融炭酸塩形燃料電池)と同様の利点を持つ上に、高いプロトン伝導度といったPAFC(リン酸形燃料電池)の利点も多く組み込まれています。さらに、この電池は化石燃料を負極で電気化学的に酸化するため、水素生成ステップが必要ありません。
表3 最も一般的な燃料電池タイプの比較
| 燃料電池タイプ |
電解質 (水素源/酸素源) |
入手可能性 |
動作温度 |
効率 |
長所 |
短所 |
出力 |
| リン酸(PAFC) |
マトリクス中に含浸したリン酸 (水素/空気) |
入手可能 |
150~200℃ |
40%、85%(熱電併給時) |
低い純度のH2を燃料として利用可能。動作温度で、最大1.5%のCOに耐性を持つ |
高価なPtを触媒として使用、生成される電流は比較的低い、大型かつ重い |
200 kWまで、1 MWまでのユニットが試験済み |
| プロトン交換膜(PEM) |
ポリパーフルオロスルホン酸 (水素/酸素or空気) |
開発中、試作品を使用中 |
80℃ |
60% |
出力密度が高い、素早く出力の変更が可能(車載用に最適)、固体電解質を使用 |
低純度の燃料から影響を受けやすい |
50~250 kW |
| 溶融炭酸塩(MCFC) |
炭酸塩水溶液 (水素orメタン/空気) |
開発中、試作品を使用中 |
650℃ |
60%、85%(熱電併給時) |
動作温度が高いため、高価な貴金属触媒が不要、安価な燃料で動作 |
動作温度が高いため、電池部材が早く腐食 |
10 kW~2 MW |
| 固体酸化物(SOFC) |
イットリアで安定化したジルコニア、最近ではランタニドをドープしたセリア (水素orメタン/空気) |
開発中、試作品を使用中 |
1000℃ |
60%、85%(熱電併給時) |
動作温度が高いため、高価な貴金属触媒が不要、安価な燃料で動作 |
動作温度が高いため、電池部材が早く腐食 |
最大100 kW |
| アルカリ |
マトリクス中に含浸したKOH (aq) (水素/酸素or空気) |
NASAの宇宙ミッションで数十年にわたり使用 |
150~200℃ |
最大70% |
液体電解質が正極での反応と高性能化を促進 |
コストが高い |
300~5000ワット |
| 直接メタノール燃料電池(DMFC) |
PEMに類似、メタノールを直接使用 (水素/酸素or空気) |
開発中、試作品を使用中 |
50~100℃ |
40% |
動作温度は低いため、小型の可搬デバイスに適している |
燃料が電極で反応せず電解質膜を通過する(クロスオーバー)、PEMより低出力 |
|
燃料電池は、バッテリーと同様に負極、正極、および電解質から構成されます。イットリアで安定化したジルコニアは、固体酸化物形燃料電池で最もよく使用される電解質の1つです5。ランタニドをドープしたセリアもまた、低温特性が改善されるために燃料電池用電解質として用いられるようになりました8。さらに、このドープした酸化セリウム電解質のイオン伝導率は、イットリアで安定化したジルコニアの3~5倍を示します(固体酸化物形燃料電池用材料の製品リスト)。白金ブラック(アルドリッチ製品番号520780、燃料電池グレード)や白金をベースとした合金は、燃料電池の電極として最もよく使用されます。Schererらによる最近の研究では、白金電極やガラス状炭素(アルドリッチ製品番号484164)電極の表面積効果を検討するための優れたモデルが開発されました9。
水素貯蔵用材料も各種取り揃えております。詳しくは「水素吸蔵合金・水素化物・アミド」、「水素貯蔵研究用ボロン化合物」をご覧ください。
白金は最も一般的な燃料電池用触媒ですが、コストが高いため、多くの場合はパラジウム、ルテニウム、コバルト/窒素複合体、また最近ではイリジウムやオスミウムをドープします。白金はコストが高い上に、極めて希少でもあります。実際、現在使用されているすべての自動車に、従来の(白金触媒)プロトン交換膜(PEM)燃料電池を搭載するのに十分な白金は地球上に存在しません。このため、燃料電池触媒に必要な白金量を削減するために、白金を使用しない新しい触媒、他元素をドープした白金触媒、合金触媒、および新しい白金担持技術などの研究が進められています。
25年以上前、ドープされたポリアセチレンが比較的高い電気伝導率(約103 S/cm)を持つことが発見された10のをきっかけにして、エレクトロニクス、エネルギー貯蔵、触媒、化学センサー、生化学、腐食制御など、さまざまな分野で共役高分子の幅広い応用研究が始まりました11, 12。残念なことに、導電性高分子は空気中で不安定で加工が難しいことがわかっています。化学、物理学、材料科学、およびエンジニアといった、分野を超えた協力によって、加工性と安定性を同時に高めながら、電気、光学、および機械特性を向上させる大きな進歩が見られています。
たとえば、ポリアニリンは、電子特性のカスタマイズが容易、優れた化学的安定性を示す、導電性高分子の中で最も安価、といった理由から、多くの用途によく使用される導電性高分子です。また、ポリチオフェンは、3位および4位の置換が可能であるため、特に発光ダイオードへの応用が広く研究されてきました。側鎖の規則性は、共役主鎖の電子バンドギャップに大きく影響し、デバイスの性能において重要です13。アルドリッチでは、ほぼ完全なレジオレギュラーhead-to-tail(HT)P3HTとレジオランダム(1:1 HT/HH)P3HTなど、高度に位置制御されたアルキル置換ポリチオフェン(P3HT)を提供しています14。
アルドリッチの高純度材料は、ppmレベル以下の不純物も検出可能なICPによる微量金属分析など、さまざまな技術によって厳密に分析されています。多くの場合、燃料電池やバッテリーには高純度の部材が必要になります。例えば、低温充電式バッテリーに使用される電解質は、アルキル炭酸塩や、LiPF6(アルドリッチ製品番号450227)、LiAsF6(アルドリッチ製品番号308315)などの高純度リチウム塩です15。
高純度無機物は工業用途にも多く利用されています。たとえば、工業に利用されるカドミウムの60%以上はNi-Cdバッテリー用で、その75%は携帯電話用です。残りの大部分も同様に、電話の電子交換機用緊急電源の材料のような電子通信分野で利用されています。
液体電解質
燃料電池に使用される電解質のタイプは燃料電池の種類(表1)によりますが、主に負極と正極の間をイオンが移動するための媒体の役割を果たします。電解質はある種のフィルターとしても機能し、反応に必要のない、悪影響を与えるイオンや電子が化学反応に関与するのを防ぎます。
可塑剤と結合剤
商業用途の高分子に可塑剤を配合してTgと内部粘性を下げ、バルク柔軟性を上げることは多くの工業用途で用いられている方法です。実際、自動車の所有者の多くが楽しむ「新車の香り」は、主にフタル酸エステル可塑剤が自動車の車内で蒸発したもので、実はビニール製の内装材が劣化していることを意味しています。最近の自動車内装では、可塑剤を長持ちさせるために、高分子量フタル酸エステル類がよく使用されます。可塑剤の選択に当たっては、コスト、適合性、安定性、加工の容易性、持続性など多くの基準が考慮されます。これまでに紹介した利用法の他に、この20年の間に、通常は高分子と関係のない材料特性を必要とする分野において、可塑性高分子の利用を促すために研究が進められています。例えば、高エネルギー密度バッテリーやその他の固体電気化学デバイスに使用する固体高分子電解質(SPE)として、イオン伝導性を大幅に高める可塑剤としてのオリゴマーポリ(エチレングリコール)(PEG)や誘導体の導入があります16-18。
2-ニトロフェニルオクチルエーテル(アルドリッチ製品番号365130)で可塑化したセルローストリアセテート膜は、分離用材料として使用されます。この膜は金属陽イオンは通しませんが陰イオンの交換が可能で19、中性の単糖類と二糖類は通過できます20。高効率光反射性高分子複合体は、ゲスト-ホスト高分子内の可塑剤として9-エチルカルバゾール(アルドリッチ製品番号E16600)(ECZ)を使用して作製できます21。
NASAジェット推進研究所は、現在、充電式バッテリーや電気化学電池用にリチウム塩(例えば、LiClO4、LiPF4、LiCF3SO3)とシアノレジンを反応させて生成する固体高分子電解質(SPE)を研究しています。具体的には、SPEは炭素複合体の負極と正極間のセパレーターとして使用されます。このバッテリーは、80 Wh/lbのエネルギー密度を持ち、1000回の充電を可能とするように計画されています。ポリアクリロニトリル(アルドリッチ製品番号181315)、ポリビニルピロリドン(アルドリッチ製品番号234257、856568など)、およびポリエチレン(アルドリッチ製品番号427772、427799など)は誘電率が4~5であり、リチウムイオン伝導率は10-6~10-5 S/cmです。残念なことに、発電を効率化するには室温での伝導率としては低い値です。シアノエチルポリビニルアルコール(CRV)、シアノエチルプルラン(CRS)、シアノエチルスクロース(CRU)などのアモルファス状のシアノレジンから作成されたSPEは誘電率が20以上にも達し、リチウムイオン伝導率は従来のSPEの100倍になります15。
アルドリッチは、ナフィオン®製品も取り扱っています。ナフィオン®は、フッ化炭素骨格、およびスルホン酸基を含むパーフルオロ側鎖からなるパーフルオロイオン交換材料です。パルス電力を供給するための固体高分子燃料電池は、ナフィオン®固体高分子電解質をベースにしています22。
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- 米国エネルギー省 水素プログラム
- 米国エネルギー省 エネルギー効率・再生可能エネルギー局
- Fuel Cells 2000(非営利団体)
- Aldrich Materials Science Catalog, 2004-2005, 563.
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