ドラッグデリバリーにおける高分子科学の手法

ドラッグデリバリーFAQ

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「ドラッグデリバリーにおける高分子科学の手法」

ドラッグデリバリーにおいて、溶解性の向上・放出制御・標的志向化に重要な役割を担う高分子科学のアプリケーションと実験手順を紹介します(英語版カタログ)。

  • DDS研究者によるプロトコール紹介
  • 低分子、核酸、タンパク質の送達
  • キーテクノロジー

 カタログの詳細

Q. カプセル化効率、担持容量、収率の違いは?

A. カプセル化効率とは、ミセルまたはナノ粒子内に封入可能な薬物の割合です。カプセル化効率(EE%:Encapsulation efficiency)の値は、(加えた薬物の総量 – 封入されずに遊離している薬物)/(加えた薬物の総量)で得られます。担持容量(LC%:Loading capacity)は、ナノ粒子の単位重量あたりの担持薬物の量で、ナノ粒子中のカプセル化された薬物の割合を示し、カプセル化された薬物の総量をナノ粒子の全重量で割ることで計算されます。薬物送達において、収率とは、カプセル化された薬物あたりの送達された薬物の量を示す値(%)です。

Q. ミセルの安定性を向上する方法は?

A. ミセルの自己組織化は動的な現象であるため、これを利用した薬物送達システムはin vitroおよびin vivoの安定性が制限されます。この不安定性により薬物が早期に放出されてしまう場合があります。

ミセルの安定性を向上させる方法は主に2つあります。まず、適切なブロック共重合体を選択することで、疎水性ブロックからなるコア形成によるミセル安定性の向上が期待できます。2つ目の方法として、架橋化を利用した安定性向上があります。ミセルの自己組織化の間に薬物がミセルに充填されるので、架橋法はミセルの形成と薬物の充填後に行います。

特に、アミド結合の生成、チオール-エン反応、クリックケミストリーなどを利用して、ミセルを不可逆的に架橋することができます。さらに最近では、安定性を向上させ、作用部位においてペイロードを放出可能な応答性薬物担体を作製するため、可逆的なミセルの架橋法が探索されています。例として、pHまたは酸化還元応答性ミセルが、腫瘍部位への薬物送達に使用されています。応答性架橋ミセルは、pH応答性のケタール、アセタール、イミンなどの可逆性結合、またはジスルフィドのような酸化還元に不安定な結合などを持つコア架橋型、シェル架橋型、または中間層架橋型ミセルを使用して作製することができます。

また、酵素感応性ペプチドを架橋に使用する方法も研究されています。すべての架橋法において、ミセルを構成するポリマーには、末端官能基化ポリマーや側鎖官能基化ポリマーのような架橋反応を促進する官能基が必要です。理想的には、反応条件が温和で生体適合性を示し、(追加の精製ステップを避けるために)触媒を必要としない架橋法を選択することが望まれます。

Q. ナノ粒子を経口薬物送達に使用することはできますか?

A. 可能です。現在、高分子ナノ粒子が経口薬物送達の前臨床評価を受けています。一般に、ペプチド、オリゴヌクレオチド、および高分子(Macromolecule)の経口投与による薬物送達は、非経口による送達にはない幾つかの問題を克服する必要があります。

胃および腸のpHは1~8の値を取ります。低いpHでは、生物製剤は酸化または加水分解を受けて失活します。さらに、保護されていない薬物は、消化管内でタンパク質分解酵素やその他酵素により分解されます。そのため、高分子ナノ担体中への薬物のカプセル化によって、これらの障害から薬物を保護することができます。もう1つの大きな問題は、腸粘膜の薬物透過性です。

ナノ粒子表面をPEGで修飾することで、ナノ粒子が粘膜を通過しやすくすることができます。腸の吸収を改善するために、キトサン、ポリアクリル酸、およびブロック共重合体などの粘膜付着性ポリマーが使用されています。さらに、末端官能基化ポリマーを使用することで、トランスサイトーシス(transcytosis)を促進する細胞を標的とする高分子ナノ粒子を作製できます。

Q. ナノ担体の最適なサイズは?

A. ナノ担体の最適なサイズは、その用途および要求される薬物担持量に依存します。一般には、単核食細胞による認識および免疫系による排出を防ぐため、ナノ担体のサイズは400 nm未満であることが望ましいとされます。

ナノ担体のサイズはin vivoの分布に影響を与え、粒子が小さいと肝臓の取り込みが低下します。ほとんどの用途において、ナノ担体は200 nm未満であることが望ましく、腫瘍内新生血管からの漏出に関するEPR(Enhanced Permeability and Retention)効果の恩恵を得るためには、ナノ担体のサイズが100 nm以下であることが理想的です。サイズが100 nmより小さい場合、エンドサイトーシスの速度が増加することや、リンパへの移行が加速することが報告されています。

注意すべき重要な点は、サイズが減少すると担持容量も減少するため、治療有効性を得るためにより多くのナノ粒子が必要になる可能性があるということです。ナノ担体の大きさの他にも、組成、形状、および表面電荷が放出挙動および蓄積に影響を与えることがあります。

Q. 脂質二重層は、PLGAのような疎水性ポリマーからの薬物分子の放出に対してどのように影響を与えますか?

A.Polymeric Drug Delivery Techniques Guide(24ページ – PNIPAM系薬物送達システム)」に掲載されているプロトコールでは、PLGAコアの周囲に形成されるのは脂質二重層ではなく脂質の単層です。脂質単層膜が存在すると、PLGAコアからの薬物放出を減速/遅延させる「フェンス」として機能することが明らかになっています。ただし、脂質単層(レシチンおよび脂質-PEG)を加える目的は、薬物放出を減速させるためではなく、むしろ血流中のナノ粒子の生体適合性を向上させるためです。

Q. ペプチドの放出を1か月以上持続させるためには、どのような方法が使用できますか?

A. タンパク質およびペプチドの放出を持続させるために、ヒドロゲル、インプラント、およびキャリアに関する技術が使用されます。薬物を数週間から数か月にわたって放出するように設計された、インジェクタブル(注射可能な)埋め込みシステムが開発されています。インジェクタブルシステムとして、in vivoで沈殿するポリマー‐薬物溶液や、注射後に固体ゲルに転移する温度応答性ゲルなどがあります。

この用途で一般に使用されるポリマーには、poly(lactic-co-glycolic acid)、polylactic acid、polycaprolactoneのブロック共重合体があり、ポリマーの種類や分子量を選択することで、インプラントの薬物放出や効果の持続期間を制御します。PLGAの酸性分解生成物が、タンパク質やペプチドなどの生物製剤を不安定化する可能性があることに注意が必要です。

インジェクタブル技術および徐放性システムにおいて、タンパク質やペプチドのバースト放出が大きな懸念となります。バースト放出は、組成やポリマーの選択を変更することで対処できる場合があります。例えば、カルボキシ基を持つPLGAはタンパク質の放出を持続させることができます。マイクロ粒子およびナノ粒子内にカプセル化することでタンパク質およびペプチドの送達を持続する方法も研究されています。粒子内へのカプセル化により、ペプチドまたはタンパク質を酵素による分解から保護することができ、半減期を延ばすことが可能ですが、これらのシステムのほとんどが著しいバースト放出を示します。この問題を克服する方法の1つは、ゲル内にナノ粒子を埋め込んだハイブリッドシステムです。例えば、薬物放出を持続させるため、PLGAナノ粒子を含む薬物を注射可能なヒドロゲルに分散させたシステムが研究されています。

Aldrichでは、徐放性製剤に適した幅広い種類の生分解性ブロック共重合体を提供しています。

Q. タンパク質薬物についてPEG化を検討するときに、PEG化の化学的方法をどのように決定しますか?

A. タンパク質のPEG化の場合、主に、コンジュゲートの方法もしくはPEG構造を調整する方法があります。前者の場合、その種類によってPEGを結合させるタンパク質上のサイトが決まり、PEG化をランダムに行うか、サイトを特定して行うかが決まります。

例として、タンパク質構造には利用可能なアミン基が本来含まれており、これらのアミン基は表面にある傾向があることから、アミン反応性PEGが頻繁に使用されます。さらに、アミン基を利用する方法では、温和な反応条件が使用され、タンパク質あたり複数のPEG分子が結合することがしばしばあります。ただし、このアミン反応性のPEG化は非特異的で、ランダムなコンジュゲートや不均一な位置異性体の分布を生じます。なお、タンパク質のN末端アミンが低いpKaを示すことから、pHの低い条件で進行するPEG化を使用することでN末端アミンのPEG化を行い、サイト選択性を向上できる可能性があります。チオールを利用したコンジュゲート法は、タンパク質中の利用できる単独のシステイン残金が限定されているため、選択性のより高い方法です。さらに、サイト特異性を示すPEG化は生体直交型の化学反応と併用することができます。チオール反応性およびサイト特異性のPEG化には、通常、遺伝子工学およびフリーのチオール基または非天然官能基を導入するためのタンパク質修飾が必要です。

コンジュゲート方法の他に、PEGのサイズおよび構造の選択も重要です。大型のPEG分子は糸球体にろ過されにくく、組織の空胞化を引き起こす可能性があります。分岐型PEGは遮蔽効果が高く、血中滞留時間を向上できる可能性があります。

検討中の薬剤に対して最適な条件を選択するためには、PEGのコンジュゲート方法および構造が多種多様であることが不可欠です。Aldrichでは、多様なコンジュゲート方法に適した幅広い種類の機能性PEGを提供しています。

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