ナノ材料

ハロイサイトナノチューブ

Prof. Yuri Lvov+ and Dr. Ronald Price++
+ Institute for Micromanufacturing, Louisiana Tech University
++ Applied Minerals, Inc.

自然界にあるアルミノケイ酸塩のナノチューブであるハロイサイトは、これまであまり注目されていませんでした。Al2Si2O5(OH)4・2H2O は、多くの場合サブミクロンの大きさの中空管状構造を持つ2層のアルミノケイ酸塩で、化学的にはカオリンに似ています1,2。隣り合ったアルミナとシリカの層およびそれらの水和水は、無秩序な結晶構造のために湾曲して多層チューブ(図1)を形成します。ハロイサイトは、その鉱床から原鉱石を採掘可能で、経済的観点からも実用的な物質です2。多くの天然物質と同様に、ハロイサイト粒子の大きさは鉱床によってさまざまに変動します(長さ1~15 μm、内径10~150 nm)。我々の研究では、Applied Minerals社の「ハロイサイト(Halloysite)G」(685445)を使用しました。この物質のチューブの平均直径は50 nmで、平均内径は15 nmです(図1)。このハロイサイトの代表的な比表面積は65 m2/g、細孔容積は約1.25 mL/g、屈折率は1.54、比重は2.53 g/cm3です。

ハロイサイトナノチューブのTEM写真
図1: a 直径50 nmのハロイサイトナノチューブ(685445)のTEM写真、bチューブの断面

化学的には、ハロイサイトナノチューブの外表面はSiO2と似た特性を持つ一方、円柱内側の中心部はAl2O3と似ています。ハロイサイト粒子の電荷(ゼータ電位)の挙動は、SiO2の主に負である表面電位(pH6~7)と、内表面のAl2O3の正電位がわずかに寄与していることで大まかに説明できます3,4。内側にある正電荷(pH 8.5未満の場合)は、負に帯電した高分子をハロイサイトナノチューブに取り込もうとしますが、それと同時に負に帯電した外表面は同じく負に帯電した高分子を排斥しようとします。薬物5-9、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、海洋防汚剤9といった広範囲の活性物質を、多層アルミノケイ酸塩のシェルの空孔に捕捉できるのと同様に、内側のチューブの間にも捕捉できます。捕捉した物質はその後、保持されて放出されるため、ハロイサイトは巨大分子の輸送用途に最適のナノ材料です。

我々は、ハロイサイトナノチューブによる高分子の取り込みと放出について研究しました。取り込みは次のようにして行います。ハロイサイトと標的分子の飽和溶液の混合液を入れたバイアル瓶を減圧容器に入れて、真空ポンプで排気を繰り返します。懸濁液からわずかに泡が出てくるのは、ハロイサイト内部から空気が取り除かれていることを示します。泡が出なくなった後、標的分子の分布(拡散)が平衡に達するまで小瓶に封をして30分置きます。その後、ハロイサイト懸濁液を遠心分離機にかけて、過剰に溶けている分子を除去して洗浄します。ハロイサイトが最大量の標的分子で確実に満たされるように、この工程を2度繰り返すこ ともあります。この単純な取り込み手法によって、薬物、タンパク質、高分子電解質、適切な直径を持つナノ粒子などあらゆる物質を、銃口に弾丸を込めるのと同じような旧式の方法でハロイサイトナノチューブ内部に詰め込むことができます。

ハロイサイト表面を適切に前処理した後であれば、疎水性物質でも親水性物質でも捕捉できます10-11。例えば、私たちは最近、ハロイサイトにウレアーゼを取り込んで、チューブ内の空孔で生体触媒によるCaCO3合成を行うデモ実験を行いました11。代表的な放出時間は、親水性分子(ケリン、NAD、テトラサイクリンなど)では2~5時間、水溶性が低い分子(デキサメタゾン、フロセミド、ニフェジピンなど)では5~20時間でした(図2)。ハロイサイトからの高分子の放出特性は、ナノチューブの空孔開口部からの1次元拡散モデルによってうまく説明できます。

ハロイサイトナノチューブからの高分子放出
図2 ハロイサイトナノチューブからの高分子の放出(NAD、デキサメタゾン、フロセミド、ニフェジピン)。
曲線が急峻であるのは、分子微結晶がチューブに取り込まれずに直接的に溶解することを示します。

ハロイサイトクレイナノチューブを使用した今後の基礎・応用研究では、ストッパーを作ったりナノチューブ空孔からの出口を狭くしたりして高分子の取り込みと放出を制御することや、ハロイサイトナノチューブの開口部で、取り込まれた分子とバルク溶液中の分子を反応させるチューブ型ナノリアクターの概念を展開することなどが考えられます。ハロイサイトナノチューブの応用例には、(1)防錆剤の放出制御、(2)除草剤、殺虫剤、殺菌剤、および抗菌剤の徐放、(3)薬物、食品添加剤、および芳香剤の徐放、(4)棒状ナノ粒子の鋳型合成、(5)触媒担体および分子ふるいとしての使用、(6)特定イオンの吸着、(7)高強度化および傷が付きにくくするためのプラスチックの充填剤としての使用、(8)高性能セラミック材料、特に生体適合性インプラントでの使用などが考えられます。

 

     

References

  1. E. Joussein; S. Petit; J. Churchman; Clay Minerals Dec 2005, 40.4, 383-426.
  2. S.E. Creager, G. K. Rowe, J. ElectroanalyticaI Chemistry 1994, 370, 203.
  3. G. Tari; I. Bobos; C.S. Gomes; J.M. Ferreira; Journal of Colloid and Interface Science, Feb 1999, 210.2, 360-366.
  4. S. Baral; S. Brandow; B.P. Gaber; Chemistry Of Materials 1994, 5, 1227-1232.
  5. S. Levis; P. Deasy; International Journal of Pharmaceutics 2003, 253, 145-157.
  6. B. Gaber; R. Price; J. Santos; V. Vittal; Rocks & Minerals 2001, 76, 211-216.
  7. L. Yang; R. Fassihi; International Journal of Pharmaceutics, Sep 1997, 155.2, 219-229.
  8. Y. Lvov; R. Price; B. Gaber; I. Ichinose; Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects, Sep 2002, 198, 375-382.
  9. R. Price; B. Gaber; Y. Lvov; Journal of Microencapsulation 2001, 18.6, 713-722.
  10. N. Veerabadran; R. Price; Y. Lvov; NANO Journal 2007, 2, 215-222.
  11. D. Shchukin; R. Price; G. Sukhorukov; Y. Lvov; Small (Nano, Micro) 2005, 1, 510-513.
Redi-Driのご案内