メソポーラスカーボン

高表面積グラファイト化メソポーラスカーボン

W. Betz1, D. Shollenberger1, M. Keeler1, M. Buchanan1, L. Sidisky1 and K. Patel2*

1. Supelco, 595 N Harrison Road, Bellefonte, PA 16823, USA.
2. Aldrich Materials Science, 6000 N Teutonia, Milwaukee, WI 53210, USA

はじめに

カーボンブラック(CB:carbon black)はゴム材料の色素、補強剤として1960年代より用いられている材料です。さらに、クロマトグラフ分離用の効果的な固相担体として高い信頼性を得ています1。近年、グラファイト化メソポーラスカーボン(GMC: graphitized mesoporous carbons)はスーパーキャパシタの電極材料2をはじめとする、幅広い用途へ応用できる有望な材料と考えられています。GMCの構造的特徴には、グラファイトに非常に良く似たドメインや積層炭素の高さなどの構造均一性、表面官能基の少なさ、ツイストなどの欠陥や非芳香族性結合の起こりにくさ、炭素原子価などが挙げられます3。その結果、GMC表面の相互作用エネルギーの範囲が狭くなり、理想的なガウス型の溶出ピーク形と吸着質の物質収支の向上に加えて、予測可能なクロマトグラフの保持特性が得られます。

高い表面積と向上した伝導性を組み合わせることで、GMCは電気2重層キャパシタの電極4や結合剤などの電気化学的用途での高性能コンポーネントにも利用されています。さらに、均一な細孔径のような規則性の高い多孔質構造を持つことから優れた触媒担体5,6でもあります。

グラファイト化メソポーラスカーボンの効果的な吸着・脱離特性は試料調製、特にpptレベルの微量な定量が要求される場合にも用いられています。GMCが充填されたチューブ7は、この数十年の間、空気中や液体試料中の吸着物質の濃度測定に利用されています。定量分析の前に行われる脱離は、(熱的な)気相抽出もしくは有機溶媒による液相抽出で行われます。

さまざまな粒径のGMCを調製することで、適応できる技術・用途の幅が広がります。微量のサンプル調製に用いられるナノサイズのGMCは、より小型の試料調製装置のニーズを満たすために生み出されました。

これら高表面積電極材料や小型分離用途での利用に加えて、液体中の大きな生体分子に対する特有の吸着・脱離に関する試料調製への応用も期待されています。オリゴ糖8や糖ペプチドや糖タンパク質9などの分子量の大きな生体分子のマイクロサンプル調製に粒径が40 μmのGMCが用いられています。

構造特性

我々は直径が約35 nmの五角形の形状をしたナノ構造グラファイト化メソポーラスカーボン(699624)を見出しました。このナノ粒子は175 nm程度に凝集し、さらに約400 nmの程度の粒子に凝集しています(図1および図2)。

GMC_TEM画像
図1 グラファイト化メソポーラスカーボンのTEM画像
PMC_TEM画像
図2 精製したメソポーラスカーボンのTEM画像

この高い秩序構造を備えたグラファイト化メソポーラスカーボン(GMC)は優れた吸着容量と導電性を持ちます。精製済みメソポーラスカーボン(PMC: purified mesoporous carbon)中間体(699632)を黒鉛化処理することで高い結晶性を持った、表面欠陥の少ない、表面の均一性が向上した材料を得ることができます。

表1 GMCとPMCの物理的性質
製品名
(製品番号)
表面積
(m2/gram)
全細孔容積
(cm3/gram)
平均細孔径(Å) 粒径分布(μm) 絶対密度(g/cm3) 結晶化度(graphitic:turbostratic)
175 nm purified mesoporous carbon
(699632)
>200 0.324 64 0.175 1.887 1:99
330 nm graphitized mesoporous carbon
(699624)
70.0 0.240 137 0.330 1.8280 30:70

DFTプロット(図3)のように、結晶性が増加しても細孔構造は若干変化するだけです。よって、ナノカーボン骨格構造へのグラファイト構造の導入ではミクロ・メソ多孔性には大きな変化はなく、結果として細孔容積は比較的維持されます。

GMCとPMCのDFTプロット

図3 GMC(699624)とPMC(699632)のDFT(密度汎関数理論)プロット

このグラファイト化メソポーラスカーボン(GMC)の表面積は内部のメソ細孔性やミクロ細孔性の関数ですが、1次粒子の外部表面積にも影響されます。乱層構造炭素(turbostratic carbon)の格子面間隔(d-spacing)が0.344nmでは、格子面間隔が0.335nmのグラファイトカーボンに比べて大きな表面積を持ちます。よって、30:70の比率のグラファイト・乱層構造炭素では、GMCの(窒素による)BET表面積測定に影響を与えます。一般的には、炭素表面上にグラファイト領域が存在し、グラファイト層の割合によって粒径に対する黒鉛化の度合いが決まります。規則性グラファイトカーボンの積層によってこのタイプの炭素材料の導電性は非常に高くなります。

格子面間隔

図4 グラファイトカーボンと乱層構造炭素の格子面間隔

GMCの細孔構造を図5にプロットしました。100Åをピークとするこの細孔構造によって、フェムトモルからマイクロモルの濃度範囲において、生体サンプルから極性分子の効率的で選択的な吸着が可能となります。その分子には砂糖、オリゴ糖、糖ペプチド、糖タンパク質が含まれます。

GMCのDFTプロット

図5 粒径が40μmのGMCのDFTプロット

まとめ

微量サンプルの調製用途のナノサイズGMCはより小型の試料調製装置(マイクロデバイス用基板のコーティングなど)のニーズを満たすよう改良されています。GMCの吸着・脱離特性(たとえば吸着質の物質収支)を改良することでGMCを試料調製用途に利用できます。ナノポーラス炭素材料はスーパーキャパシタの電極材料や結合剤などの電気伝導性が要求される用途への利用も期待されています。不活性で規則性を持ったGMC表面は非常に希薄な溶液(フェムトモル濃度)から砂糖、オリゴ糖、糖ペプチド、糖タンパク質などの大きな極性生体分子の抽出や分析に利用されます。PMC、GMSの用途はその安定性と規則性の高い骨格構造から、急速に広がっています。

表2 アルドリッチのメソポーラスカーボン製品
製品番号 製品名 概要
699632 Carbon Nanopowder, Mesoporous,
> 99.95% trace metal basis
  • 64 Å average pore diameter.
  • > 200 m2/g specific surface area.
699624 Carbon Nanopowder, Mesoporous, Graphitized,
> 99.95% trace metal basis
  • 137 Å average pore diameter
  • 70 m2/g specific surface area.
699640 Carbon, Mesoporous,
> 99.95% trace metal basis
  • 100 Å average pore diameter
  • > 200 m2/g specific surface area.
  • Particle size 45 μm ± 5
702110 * Carbon, Mesoporous,
hydrophilic pore surface, Starbon® 300
  • > 0.2 cm3/g mesoporosity
  • C/O Ratio: > 3.1
  • > 50 m2/g (BET) spec. surface area
702102 * Carbon, Mesoporous,
hydrophilic pore surface, Starbon® 800
  • < 0.2 cm3/g microporosity
  • > 0.4 cm3/g mesoporosity
  • > 500 m2/g (BET) specific surface area.

*Starbon®については、開発者であるヨーク大学のJames H. Clark教授らによるレビューをご参考ください。

メソポーラス材料については左記のページもご参考ください。

References

  1. Kiselev, A.V; Yashin, Y.A. Gas Adsorption Chromatography, Plenum Press, New York, 1969.
  2. Toupin, M.; Belanger, D.; Hill, I. R.; Quinn, D. J. Power Sources, 2005, 140, 203-210.
  3. Kruk, M.; Li, Z.; Jaroniec, M; Betz, W.R. Langmuir, 1999, 15, 1435.
  4. Tamai, H.; Kouzu, M.; Morita, M.; Yasuda, H. Electrochem. Solid-State Lett., 2003, 6, A214-A217.
  5. Kim, H.; Kim, P.; Joo, J. B.; Kim, W.; Song, I. K.; Yi, J. J. Power Sources, 2005, 157, 196-200.
  6. Zeng, J.; Su, F.; Lee, J. Y. ; Zhao, X. S. ; Chen, J.; Jiang, X. J. Mater. Sci., 2007, 42, 7191-7197.
  7. Betz, W. R.;.Supina, W. R. Pure Appl. Chem., 1989, 61, 2047-2050.
  8. Koizumi, K.; Okada, Y.; Fukuda, M. Carbohydr. Res., 1991, 215, 67-80.
  9. Barroso, B.; Dijkstra, R.; Geerts, M.; Lagerwerf, F.; van Veelen, P.; de Ru, A. Rapid Commun. MassSpectrom., 2002, 16, 1320-1329.
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