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Richard Jansen and Philip Wallis1
単層カーボンナノチューブの合成単層カーボンナノチューブ(SWNT)の製造にはさまざまな方法が用いられています。レーザーアブレーション法、炭素アーク法およびCVD法があり、HiPCo®法のようなガス触媒、またはCoMoCAT®法のような担持触媒のどちらかを用います。レーザーアブレーション法は、主に研究用材料の作製に用いられます。炭素アーク法では1.4 ~2.0 nm の直径を持つ、長さの長いチューブが作製されますが、不純物が非常に多く含まれるため、多くの応用分野では大規模な精製が必要となります。CVD法はより大量のSWNTを製造する最適な方法であり、そしてCoMoCAT®法は生産規模に関して拡張性が最も高いと考えられます。このCoMoCAT®法では規模ははるかに小さいものの、石油精製に用いるのと同様の流動床反応炉を使用します。 このCoMoCAT®方式では、典型的な全圧が1~10 atmの純COガスフロー中において700~950℃でのCO不均化反応(CおよびCO2への分解)によってSWNTが成長します。我々は、触媒および反応炉の開発に関して3年にわたって研究を行い、さまざまな触媒成分の調整や運転条件について特性を詳細に調べ、試験を実施しました。その結果、かなりの量のSWNTを1時間未満で成長させることが可能で、90%を超えるSWNT選択性を維持することのできるプロセスを開発し、触媒性能にとって重要なCoとMoの間の相乗的効果を発見しました。これら2つの金属を低いCo:Mo比でシリカ担体上に同時に担持させた場合に高効率となり、それぞれの金属が分離した状態の場合は、非選択的になります。図1に、CoMoCAT®方式によるSWNT選択的合成の結果を示します。
CoMoCAT®法には、2つのユニークな特徴があります。一つは、容易にスケールアップ可能であることと、もう一つは、反応炉を大きくしても触媒固有の選択性が高く保たれることです。よって、CoMoCAT®法には低コストで高品質という2つの利点が得られます。この担持触媒を用いた方法には、合成時のカイラリティ制御がかなりの程度まで可能になるという特徴的な性質も持っています。 CoMoCAT®法による合成については、オクラホマ大学のResasco教授のレビューもご覧ください。
単層カーボンナノチューブの評価および品質保証カーボンナノチューブの特性は個々のSWNTのカイラリティによって変化します。現時点では、すべてのSWNTはさまざまなカイラリティのチューブから成る混合物として製造されるので、その材料の特性は、カイラリティの割合に依存することになります。SWNT材料の構造を解明するために、SEM、TEM、AFM、STMなどの観察技術から、UV-Vis-NIR、フォトルミネセンス、ラマンなどの分光法にまで及ぶ、多くの解析技術が用いられています。Miyataらは、これに加えて、SWNTの光学スペクトルを用いて同定したカイラリティを確認するためにX線回折を用いました2。さらに、熱重量分析法(TGA:thermogravimetric analysis)が、酸化の開始、最大酸化速度、および製品中の残留触媒の質量を決定するために広く用いられています。TGA曲線から純度の妥当な推定値が得られる場合もあります。 TEMおよびSEMは、SWNTの純度を評価するために広く採用されてきました。しかし、これらの方法は純度を定量的に見積もるには信頼性が不十分です。典型的なTEMまたはSEMの画像には、面積1~4μm2で重量約1 pgの材料が用いられます。したがって、全体の純度に関する有意な結果を得るためには、巨視的サンプル全体をランダムに写した多くの顕微鏡写真を解析することになります。さらに、精製されてない典型的なSWNT材料に見られる異なる種の相対的割合を客観的に決定するための適正なアルゴリズムがありません。TEMおよびSEMは、生成物の構造に関する有益な情報を与えてはくれますが、慎重に用いる必要があり、純度についての定性的指標に過ぎないと考えるべきです。 一定した高品質のSWNTを確実に製造するために、比較的簡単で一般に利用できる測定法としてラマン分光法、吸収分光法および熱重量分析法(TGA)があります。この3 つの方法を組み合わせて使うことにより、その結果が純度および品質の一貫性における優れた指標となります。しかし、SWNTの応用がさらに進むと、SWNTの性能を評価するために純度データに加えて、電気伝導度の測定のような機能試験が必要になると考えられます。
ラマン分光法による分析ラマン分光法は、SWNT材料中の詳細なカイラリティの分布を決定し、純度を評価するために広く用いられてきました。ラマンスペクトルには、SWNTに関して非常に重要な3つの領域があります。まず、約120~300 cm-1のRadial BreathMode(RBM)はSWNTに特有のもので、ナノチューブ直径が伸縮する振動に由来し、次の式からチューブの直径を決定することができます。 ν = 238 / d0.93 ここで、dはnm単位のSWNTの直径、νは波数cm-1です。存在するカイラリティの全体像を把握するために、励起周波数の異なるいくつかのレーザーを使って測定することが重要です。Jorioらは、SWNTを励起するために連続可変レーザーを用いて、SWeNT® SG 65のカイラル構造を解析しました3。SWNTのラマンスペクトル中には、さらに2つのバンドが見られます。1300~1350 cm-1にあるDバンドは不規則炭素(格子欠陥)に由来するピークであり、また、1500~1586 cm-1にあるGバンドは、グラファイト状物質からのtangential stretchingモードに対応するものです。これらGバンドとDバンドの高さの比は、SWNTの純度の尺度として広く使われてきました。 ラマン分光測定から得られる品質ファクターとして、Q値を設定しました。全体的な品質の指標として、とりわけカーボンナノチューブに対するアモルファスカーボンの比率の指標となる値です。ここで、 DはDバンドの最大値、GはGバンドの最大値、Bはベースライン(2つのバンド間の最小値)です(図2)。 Q = 1 – (D – B) / (G – B) しかし、Gバンドは共鳴バンドであり、Dバンドと比べてはるかに強いので、この比率を測定する際には注意が必要です。おそらく、G:D比が大きいことはSWNT純度が高いことのための必要条件であり、純度を保証するのに十分な情報ではないと考えるのが妥当であると思われます。よって純度の決定にはこのパラメーターと合わせて他の方法を用いる必要があります。たとえば、他の形態のグラファイト状炭素によってGバンドが強まることもあります。上述の注意に従えば、さしあたってSWNTの純度の尺度としてラマンG:D比を用いることができます。SWeNT®SG 65(Aldrich製品番号:704148)の典型的なラマンスペクトルを図2に示します。品質保証の点からは、RBM領域を大まかな純度の「フィンガープリント」として用いることができます。
光吸収分光法UV-Vis-NIRの領域における光吸収(OA:optical absorption)測定では、π-プラズモンに起因するバックグラウンドの上に重なって、個々のカイラル指数(n,m)の特性を示すピークが見られます。たとえば4-5、(6,5)型は、566 nmおよび976 nmで吸収し、これに対応して983 nmの蛍光を発します。(7,6)型SWNTは、645 nmおよび1024 nmで吸収し、1030 nmの蛍光を発します。これらの個々のピークは、SWNTの純度を推定するためのベースとして使われています6。Nairら7は、スペクトルのベースラインの計算手法を開発し、これにより、個々の(n,m)型に対するピークの高さと面積を計算することが可能となりました。 単純化のために、通常は測定した光吸収スペクトルをエネルギー単位に変換して、SWNTの特性評価に重要な領域でのバックグランドを差し引きます。図3に、SWeNT®SG 65 の典型的な光吸収スペクトルをエネルギー単位に変換して示しました。一方、差し込み図には、このスペクトルを変換前の形で示しており、吸収を波長の関数としてプロットしてあります。最も強いピークの高さ(P2B)と、全信号の積分値(S2B)の測定値を用いて、製品の品質にばらつきが少ないことを示すことができます。我々は、ある一つのチューブタイプが優勢に含まれているSWeNT®SG 65(Aldrich製品番号:704148)およびSWeNT®SG 76(Aldrich製品番号:704121)のナノチューブの制御パラメーターとして主にP2Bを用いています。P2Bは、350 nmと1350 nmの間のスペクトルの最大ピークの高さをその波長におけるバックグランドで割ったものと定義されます。 P2B =(6,5)または(7,6)の信号ピークの高さ / バックグラウンドピークの高さ ここで説明した光吸収スペクトル法は、SWNTサンプルを分散させ、遠心分離した後に測定した光吸収スペクトルを使用している点に注意する必要があります。この方法は、全体の純度というより、むしろカイラリティ制御を測定する手段として用いられます。また、特定の波長における遠心分離の前後の吸光度を測定すると、SWNTの分散性の度合についての情報が得られます。
熱重量測定分析熱重量測定分析(TGA)を用いて、材料の純度を評価することができます。SWeNT®SG65 単層カーボンナノチューブの典型的なTGA曲線を図4に示します。これまでの研究の結果、TGAの微分曲線における第一のピークはSWNTの酸化を示しており、第二のピークはアモルファス炭素以外の他の形態の炭素の存在を示すことがわかっています。TGA分析により決定される品質パラメーターはT1%と、625℃における残留質量です。
図4に示したように、T1%は制御パラメーターとして測定されます。一般に、この測定ではSWNT含有量が3~5%低めに推定されることがわかっています。T1の位置は、微分曲線の2つのピークの間の極小値に取ります。微分曲線に第2の明確なピークがない場合には、T1は変曲点に取ります。重量減少%を記録し、サンプル中の水分による初期の重量減少に関する補正を行った、サンプル中の炭素のパーセントとしての最終値T1%を、次の式から計算します。 T1% =(初期重量-測定されたT1%) / (初期重量-残留質量) 625℃における残留質量の測定では、材料中の非炭素物質含有量が得られます。残留質量は、200℃における重量減少に対して正規化されたパーセントとして表現されます。 残存質量 = 625℃における重量損失 / 初期重量損失 CoMoCAT®法で作製した単層カーボンナノチューブの構造と特性について、 CoMoCAT®法の開発者であるオクラホマ大学のResasco教授に解説していただきました。また、産業技術総合研究所の片浦弘道先生によるカーボンナノチューブの純度評価方法についてのレビューを、弊社季刊誌「材料科学の基礎 第3号」に記載しております。あわせてご参考ください。 CoMoCAT®法で製造された単層カーボンナノチューブ
※アルドリッチでは、修飾済み単層ナノチューブ(PDF:366MB)や多層カーボンナノチューブ(PDF:464MB)も取り扱っております。単層カーボンナノチューブの分散方法を記載したTechnical Bulletin(英語版PDF:248KB)もご用意いたしました。 SWeNT® and CoMoCAT® and registered trademarks of
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