有機エレクトロニクス材料

色素増感太陽電池材料

Hans Desilvestro, Yanek Hebting, Mikael Khan, Damion Milliken
Dyesol, Queanbeyan NSW 2620, Australia

Material Matters 2014, 9(1), pp 14 → PDF版

はじめに

色素増感作用は、カラー写真の基礎をなすものとして長い間利用されてきました1。一方、この原理を太陽光から電気への変換に用いる試みがなされましたが、100 nA/cm2を下回る非常に低い光電流を得ただけでした2。1980年代中頃には、高表面積を有する二酸化チタン(チタニアまたはTiO2)にカルボキシル基による結合を介してルテニウム系色素を化学吸着させることにより、mA/cm2のオーダーで光電流が得られ、最大44%の光電変換効率(IPCE:incident photon-to-current conversion efficiency、または外部量子効率[EQE:external quantum efficiency]とも呼ばれています)を達成しました3。その後まもなく、メソポーラスTiO2およびI3-/I- 酸化還元対を含む有機電解液を基盤とした色素増感太陽電池(DSC:dye-sensitized solar cell)が開発されました4,5。これらの先駆的発見以降、理想的ではない散乱光条件下でも高効率で発電できることが見込まれたほかに、比較的低コストで、製造工程で大きなエネルギーを必要とせず、軽量性・柔軟性・半透明性も有することから、DSC開発は産学界の大きな関心を集めています6。現在、典型的な溶媒および酸化還元対を用いて作製されたDSCでは、エアマス(AM:AirMass)1.5の照射条件で12.3%の変換効率7が得られていますが、最近ではチタニア系固体デバイスにおいて15%の変換効率が研究室レベルで報告されています8,9。本論文では、DSCデバイスの組立てに必要なコア材料、および太陽電池デバイスにおけるそれら材料の相互作用について述べます。

色素増感太陽電池の主な構成要素

一般に、色素増感太陽電池の主な構成要素は、TiO2、ルテニウム系色素、電解質溶液、白金電気触媒および銀インクです。それぞれの構成材料の間には多様な相互作用が存在するため、構成要素の一つ、例えば色素を変更した場合には、TiO2の粒径や膜厚、電解質成分などを調整し、反応系のパフォーマンスを最適化する必要があります。図1は、DSCの主な構成要素を入射光側から順に示しました。

  • 透明基板
  • 透明導電性酸化物(TCO:Transparent Conductive Oxide)層
  • 色素の単分子層で表面を覆われたメソポーラスTiO2
  • 色素吸着したTiO2膜の細孔を満たす電解液(およびTiO2と対電極との間の電解液層)
  • Pt などの電気触媒の非常に薄いコーティング
  • TCO薄膜でコーティングされた対電極基板
  • 長期安定性を必要とする場合、周囲の封止、必要に応じて隙間の封止
  • 集電効率を最大にするための2本の集電体バスバー(bus bar)(オプション)

色素増感太陽電池の構造

図1 色素増感太陽電池の構造および主な構成要素の概略図

TiO2ペーストおよび薄膜

チタニアは、歯みがき粉、日焼け止め、塗料といった日常製品に広く利用されている非毒性の材料です。塗料に用いる場合は、樹脂の分解・黄変・膨張などを最小限に抑えるために光化学的に活性の低いTiO2が用いられます。これとは対照的に、色素増感太陽電池には最も高活性のチタニア(アナターゼ)が必要です10。アナターゼ型TiO2637254)はn型半導体であり、3.2 eVのバンドギャップに相当する約390 nmの波長の光を吸収し、電子が励起されます。従来の太陽電池パネルには、99.9999%純度のシリコン(不純物全体で1 ppm未満の太陽電池グレード)が要求されます11。これに対して、太陽電池グレードほどではありませんが、DSC用のアナターゼ型TiO2においても純度は重要な要件であり、18NRペースト(791547791555)の調製に用いられるような高品質チタニア材料は、少なくとも99%の相純度を有しています。DSC研究用として普及している他のチタニア製品は、アモルファスTiO2のみならずかなりの量のルチル型を含み12、低い相純度を示すため、システム性能に大きな影響を与えます。

DSCの性能は、TiO2の化学的純度および相純度のみならず、粒子のサイズ、分布、形状、表面水酸基、塗布法および焼結温度といった他の因子にも依存します。ペースト組成、印刷、乾燥および焼結のパラメータは、最適な結果を得るために精密に制御される必要があり、膜の形態や膜全体の多孔性および細孔分布に影響を及ぼします。18NR-T(transparent、791547)および18NR-AO(activeopaque、791555)チタニアペーストの利用によって、非常に優れた成果が得られています8。推奨されたスクリーン印刷および焼成条件下で、18NR-Tペーストによって、光学的に透明で、厚さ6 ~ 7 μm、多孔質度が約65%の薄膜を作製できます。用いる色素によって1 ~ 3層が必要となる場合があり、あるいは、様々なメッシュサイズによるスクリーン印刷によって全体の膜厚を精密に調整することも可能です。

図2は、焼結した18NR-T膜のSEM画像を示しています。平均粒径は約20 nmです。DSCにおけるチタニア電極のナノ粒子および細孔の特性(細孔径2 ~ 50 nm)は、少なくとも以下の5つの面で重要です。

  • 可視光の波長よりも十分に小さい粒子サイズのため、光学的に透明な薄膜となります。
  • デバイス電圧を減少させる界面電荷空乏層の形成を電子的に回避します。より大きな粒径からなる半導体(TiO2)に見られるような電荷空乏層の幅よりも粒子がかなり小さいため、空乏層は固体/電解質の界面に形成されません。その代わり、電子はTiO2伝導帯の中を自由に拡散します。電荷は電解液中の陽イオンによって効果的にスクリーニングされ、TiO2粒子ネットワークを通じて電子輸送が促進されます。
  • 約500℃という比較的低い温度で、粒子と粒子との結合を機械的かつ電子的に促進します。より大きな粒径のチタニア粒子は、800℃以上の高い温度でのみ焼結します。
  • 入射光の効率的な集光を最大にするため、色素吸着に大きな表面積が必要です。
  • 色素分子のチタニア粒子への吸着や、デバイス動作中に酸化された色素を還元する電解質イオンの浸透のために、開孔性の多孔質構造が必要です。

TiO2膜のSEM画像

図2 18NR-Tペーストにより作製したTiO2膜の焼結後のSEM画像。

透明膜は、窓や天窓といった半透明性の最終製品を可能にしますが、多くはより長波長の光を十分に吸収することができません。そのため、ある程度の光散乱および内部反射が望まれます。この場合、より大きな光散乱TiO2粒子をチタニアペーストに加える方法、もしくは散乱層を透明層の上部に追加する方法のいずれかを用いることで解決されます。

前者には、チタニア全体の膜厚が大きく増加しないという利点があります。添加された大きな粒子(18NR-AOの場合、直径は最大で450 nm)は、その光散乱効果を通じて性能に寄与するのみならず、色素吸着により活性化することで光変換をより高効率に進めます。また、二層構造にするよりも一種類のペーストを用いる方が簡便です。光散乱する比較的大きな粒子を添加するとヘイズ率(曇り度)の増加につながりますが、このヘイズ率は式1によって定義されます。

式1

ここで、Td(λ) は波長λ における拡散(または散乱)透過率、Ts は正透過率、Ttot は全光線透過率です。18NR-AOペースト(791555)で作製した15 μm薄膜のヘイズ率は、可視スペクトル全域で99%を超えています。より長波長(例:800 nm)では、デバイス性能はヘイズ率に伴って増加します13。最も高い変換効率が必要な場合や、特により高い粘性の電解液を用いる場合には、18NR-AOペーストが最適です。18NR-AOペーストは、より薄いチタニア膜の作製を容易にしますが、これはTiO2のメソポーラス構造に起因する長いパスを短くし、電解質の移動度を向上させるという点で有利となります14。推奨されたスクリーン印刷および焼成条件の下で18NR-AOペーストを使用することにより、白色で不透明な、厚さ7 ~ 8 μm、多孔質度が約55 ~ 60%の膜が得られます。18NR-Tと同様に、増感色素の性質によっては1~3層が必要となる場合があり、あるいは、様々なメッシュサイズによるスクリーン印刷によって膜厚全体を調整することができます。

最大出力を求める場合、WER2-O reflectorチタニアペースト(791539) による散乱層により、色素の光吸収が弱くなる長波長域でIPCEを著しく高めることが可能です。WER2-Oは、十分に分散された、主にDSC不活性な 150 ~ 250 nm径の散乱粒子を含んでいます。推奨条件に従った場合、透明な活性層の上に厚さ3 μmの完全に不透明な白色薄膜を得ることができます。

色素

色素は色素増感太陽電池で最も重要な材料です。色素の吸収スペクトルおよびn型(電子)導体への電子カップリングにより、吸収(ηabs)および電子注入効率(ηinj)が決定されます。これらはIPCEの3つの重要な因子のうちの2つです。

式2

チタニア膜内部のかなりの部分が、色素吸着に利用可能です。吸着した色素の量は、化学的な色素脱離と分光測定法を用いて測定できます15。典型的な例としてN719(703214)の単位面積あたりの色素吸着量は、1.1 x 107 mol/cm2です。この値は、膜厚(dTiO2)が14 μmの場合、cdyeTiO2 = 7.8 x 10-5 mol/cm3の色素濃度に相当します。透明膜では、吸収される光、すなわち透過しない光(=1-T)の量を式3から推定できます。

式3

吸光係数ε は、TiO2に吸着した場合でも、溶液におけるεmax値(N719では14,700 M-1cm-1)とあまり変わらず、ある量の色素によって、吸収極大で97.5%の光を吸収することができます。しかし、TiO2に吸着することで色素の吸収スペクトルがレッドシフトをすることに注意してください。表面粗さ係数を約1,300とみなした場合、各N719分子は約2 nm2の面積を占めます。この数値はN3(703206)の理論的に推定された占有面積と比べて30 ~ 70%高いことから16、すべてのTiO2サイトが占有状態もしくは吸着可能な状態ではないことを示しています。

図3は、以下の表に記載のルテニウム色素の構造を表しています。

Dye アルドリッチ製品番号 Based On
N3 703206 Bipyridine
N719 703214 Bipyridine
Z907 703168 Bipyridine
K19 791415 Bipyridine
C101 791423 Bipyridine
C106 791393 Bipyridine
N749 791245 Terpyridine

各種Ru色素の構造式

図3 ビピリジン系およびターピリジン系ルテニウム色素の構造

色素N3、N719およびN749は、すべてのピリジン系配位子にプロトン化・脱プロトン化したカルボキシル基が存在するため、親水性の挙動を示します。他の色素の場合、TiO2に吸着すると、吸着していないビピリジン配位子に無極性側鎖があるために疎水性の挙動を示します。すべてのビピリジン色素は、ルテニウムイオンに対して電荷バランスがとれていますが、ターピリジン色素の場合、ルテニウム金属中心に結合した3つのイソチオシアネート基が存在するためアニオン性です。ビピリジン系色素は赤から栗色を示す一方、ターピリジン色素は濃緑色を呈し、非透過性デバイスでは実質的に黒く見えます。

脂肪族側鎖、および芳香族系、電子豊富、電子供与性構造を含む他の無極性側鎖によって、以下のような傾向を示します。

  • π電子系が大きくなるため、吸光係数がより高くなります。そのため、通常では単位面積あたりの色素(およびルテニウム)の必要量が減少します。
  • 側鎖の大きさや動的運動によってTiO2表面へのI3- の接近が抑制されるため(立体効果)、電荷再結合が減少します。
  • 基底状態におけるpKaが高いため、TiO2表面への静電結合が増加します。
  • 色素上の電荷が減少するため、吸着色素間の静電反発力が低下して、色素充填量が増加します。
  • 水が原因で起こる色素の脱離に対する、太陽電池の安定性が増大します。
  • これらの錯体の酸化電位はN3増感剤と比べてカソード側にシフトしているため、ルテニウムIII/II対の可逆性が増加し、安定性が向上します17

上述した長い脂肪族鎖および共役した側鎖の利点に加え、金属から配位子への電荷移動遷移(MLCT:metal to ligand charge transfer)も長波長側にシフトすると予測されます18。深色効果は、親油性側鎖よりもむしろピリジン間の共役の増加によって主に制御されます。また、図4においてビピリジン系構造をターピリジン系構造と比べた場合、共役電子の数によってモル吸光係数に影響の及ぶことが確認されます。N3からC106、さらにK19と見ていくと、N3とN749を比べた場合とは対照的に、レッドシフトは比較的穏やかです。

各種Ru色素のUV-VISスペクトル

図4 ビピリジン系およびターピリジン系ルテニウム色素の紫外可視スペクトル

電解液

色素増感太陽電池デバイスの電解液は、以下の重要な機能を有しています。

  • 内部電荷輸送によって外部回路に電流の流れが発生します。
  • 色素励起およびTiO2への電子注入の後、色素が再生されます(式4)。

    式4

  • 光アノードでのI3- 生成および対電極での部分的なI3- 欠乏により生成したI3-/I- 濃度勾配の拡散平衡を促します。

DSCデバイスは、20 mA/cm2以上の電流密度を有する電気化学的に高出力なデバイスであり、高いデバイス効率を得るためには十分な電解液伝導度と比較的速い拡散度が重要となります。

表1は、EL-HPE(791482)、EL-HSE(791466)、およびEL-HTE(791458)の電解液伝導度を比較したものです。電解液伝導は、一般に溶媒の粘度の増加および沸点の上昇につれて減少します。DSC電解液による直接的な抵抗損失は、TCOのオーム損失と比べて比較的小さい点に注意が必要です。電極間距離が40 μmの1 x 1 cmサイズのセルにおいて、10 mS/cmの電解液伝導度ではわずか0.4 Ohmの抵抗を生じるだけですが、TCO抵抗は同じセルで一般に10 ~ 18 Ohm程度となります。一方、電解液粘度は、濃度分極、すなわちアノードとカソードとの間の濃度勾配を形成するために、抵抗損失に重大な影響を及ぼします。

表1 3種類の標準的色素増感太陽電池電解液の電気伝導度

Electrolyte Solvent Conductivity (mS/cm at 20℃)
EL-HPE(791482 Acetonitrile 16.5–18.5
EL-HSE(791466 3-Methoxyprionitrile 8–10
EL-HTE(791458 3-Butoxypropionitrile 2–4

加えて、電解液は85℃の温度まで(非常に高温気候においてはそれ以上)化学的かつ光化学的に安定である必要があります。残念ながら多くの場合、性能と安定性に関する要件は正反対の関係にあります。高い電解液伝導度および速いI3- 拡散速度は、一般にアセトニトリルのような低粘度・低沸点の溶媒を用いた場合に可能となります。たとえば、EL-HPEのような電解液は高い電池性能が要求される場合に適しています。しかし、アセトニトリル系デバイスでは、長期に及ぶデバイス出力の安定性は得られません。長期安定性への向上を図るには、より高い沸点と粘度を有する溶媒19またはイオン液体を用いた系18,20が必要です。EL-HSEの優れた長期安定性は、85℃、暗所(Fraunhofer Institute for Solar Energy Systems)21、および85℃、明所(3G Solar)22において、100 × 100 mmから150 × 150 mmのサイズのデバイスで実証されています。

白金ペースト

I3-/I- 酸化還元反応(redox shuttle)に基づく色素増感太陽電池デバイスは、光化学的に生成されるI3- の効率的な電気化学的再生を必要とします。3I- へのI3- の還元は2電子移動プロセスであり、多くの中間体が関与すると考えられるかなり複雑かつ比較的遅い反応です23。白金(Pt)はこれまで見出された最も効率的な電極触媒であり、効率的デバイスおよび透過性の実現には、平均1 ~ 2 nmの膜厚に相当する2 ~ 4 μg/cm2の量のPtが必要です。しかし、電気化学的なI3- 還元が最も高活性なPt電極は平滑な膜ではなく、TCO表面上に分布した平均粒径約5 nmのPtナノクラスタ層を基盤とした構造をとります24。このナノ構造層は、380 ~ 420℃でH2PtCl6を熱分解することで作製されます。

PT-1ペースト(791512)は、主にTEC基板上に、簡便かつ高い再現性でPt堆積ができるように配合されており、ハイスループットスクリーン印刷によってパターン化された堆積が可能となります。これにより、不透明DSCデバイスのみならず半透明DSCデバイスにも効率的な対電極が作製されます。

銀インク

高品質な接点およびバスバーは、集電時の抵抗損失および導電性基板による接触抵抗に起因した抵抗損失を最小限に抑えるために必要であり、特に、光がより強い場合や、有効面積(active area)が1 cm2を 超えるデバイスに対して重要です。さらに、電気的接点の作製には、配線のためのハンダ特性を有することも必要です。銀は、その非常に高い導電性と良好な耐大気腐食性、および適度なハンダ特性のため、最適な材料です。銀のコストは高いため、最小使用量で所定の導電性を得ることが重要です。標準的な太陽電池用シリコンウエハのような高温で使用できる材料に対しては、ガラスフリット系銀ペーストが用いられ、500℃を超える温度で加工されます。こうしたペーストはガラス系色素増感太陽電池には用いられますが、フレキシブルデバイス用ポリマー基板との使用には適せず、ポリマーを用いた組成が要求されます。

ほとんどのポリマー厚膜(PTF:polymer thick film)導電性銀インクは、溶媒キャリアと混合した絶縁性有機樹脂またはバインダーで保持された銀粒子からなります。このインクは、スクリーン印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷などの方式を用いて様々な基板上に印刷された後、オーブンで乾燥します。乾燥プロセスでは、基本的にキャリア溶媒が除去され、銀粒子間の点接触によって導電性が得られます。しかし、低いアニール温度(< 200℃)では、残留する非導電性バインダーにより、得られる導電性が制限されます。より高い焼成温度では、残留バインダーが加熱除去され導電性が向上しますが、基板材料、または基板と導電性薄膜との間の接着性に好ましくない影響を及ぼすことがあります。

他の従来型インクとは異なり、DYAG銀インク(791873791881791903)は、熱的に誘起された反応によってナノメートルサイズの銀粒子が生成されるように設計されています。熱プロセスの間に「化学的に溶接された(chemically welded)」ブリッジが銀粒子間に形成されることで連続的な金属同士の接触が見られ(図5を参照)、従来のインクと比べてはるかに優れた粒子間接触をもたらします。このように、DYAG銀インクでは低い硬化温度および低銀含有量でより高い導電性が得られます。

DYAG100インクのSEM画像

図5 乾燥・硬化後のDYAG100インクのSEM画像

DYAGインクは、ポリエステルやTCO被覆基板を含む様々な基板に用いた際に、優れた印刷適性および接着性を実現するように設計されており、フレキシブルおよびリジッド基板の双方にとって理想的なものになります。表2は、DYAG銀インクの抵抗値、その他特性を示しています。これらインクは、DSC用のみならず有機太陽電池(OPV:organic photovoltaic)用として、また一般に、RFIDタグ(radio frequency identification tag)、ICカード、有機EL、電子ペーパーなどの新たに登場したプリンテッドエレクトロニクス用途にも適しています。これらのアプリケーションにおいては、比較的低い硬化温度の他、高い導電性、柔軟性および信頼性を兼ね備えていることが重要です。

表2 DYAG銀インクの特性

Silver ink Specific Resistivity
(μΩ·cm)
Solid Content
(wt %)
Viscosity (Pa.s)
at Shear Rate
of 10 s-1 at 25 ℃
DYAG 50
(791873)
5 – 6 80 ± 5 13 – 17
DYAG 100
(791881)
9 – 10 80 ± 5 9 – 12
DYAG 350
(791903)
30 – 35 70 ± 5 6 – 9

結論

個々の材料の最適化がデバイスの高性能化に重要であり、例えばチタニアの透明性や色素の吸光係数の制御による光吸収の最大化がありますが、その一方で、各要素間(とりわけ電解液)の相互作用がシステムの安定性を左右します。個々の材料およびその特性について明確な知見を得ることは重要ですが、色素増感太陽電池システムとして実際に動作しているそれぞれの要素の相互作用に注目することも、最終的なデバイスに要求される特性を知るために必要です。このように十分に特性評価された、信頼できる製品が広く入手可能になることで、DSC研究が着実に進み、高い再現性および信頼性を持つ成果が得られるようになります。さらにその研究成果は、DSC技術のより急速な進歩に貢献し、将来の世界的なエネルギー問題に対処するためのアプローチとして今後も注目されることでしょう。

     

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