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有機エレクトロニクス材料

昇華精製ペンタセンを用いた薄膜トランジスタ

Ajay Virkar, Zhenan Bao
Department of Chemical Engineering, Stanford University

 

はじめに

有機電界効果トランジスタ(OFET:Organic Field Effect Transistor)は、大面積でフレキシブル性を備え、軽量で低コストなデバイスの実現可能性を持つため、大変注目されている技術です。このタイプのデバイスの性能を決定する要素の一つが有機半導体であり、新しい半導体材料の構造設計や純度といった要件が、有機エレクトロニクス技術の進展に非常に重要な役割を果たします。文献で報告されている最も高い移動度のデバイスには低分子半導体1図1のような単結晶デバイス2)、もしくは低分子材料と高分子材料をブレンドした材料3が利用されています。

図1. 昇華精製グレードのルブレンの単結晶用いたOFET

図1. 昇華精製グレードのルブレン(551112)の単結晶用いたOFET2。約8cm2/V・sの非常に高いホール移動度を示します。

高純度有機半導体材料は薄膜トランジスタ(OTFT:Organic Thin Film Transistor)においてより優れた特性(ホール移動度やオン/オフ比)を得るのに適しており、デバイス寿命を伸ばすこともあります。ペンタセンをはじめとする多くの有機半導体材料は高温かつ高真空において昇華するため、昇華精製法は非常によい精製法であり、より純度の高い材料を得ることができます。ここでは、3回昇華精製したペンタセン(698423)を用いて作製したOTFTデバイスとその超高性能特性について報告します。

図2. OTFTデバイスの模式図

図2. OTFTデバイスの模式図。誘電体層は結晶性オクタデシルシランで修飾し、半導体に3回昇華精製したペンタセンを用いています。

 

デバイスの作製と特性

ペンタセン薄膜トランジスタは、活性物質としてアルドリッチより購入した高純度ペンタセン(triple-sublimed, >99.995% 698423)を用いて作製しました。トランジスタ基板(Silicon Quest社製)には高濃度にn型ドープしたシリコン基板に熱酸化によって二酸化シリコン誘電体を成長させ(300nm)、単位面積あたりの静電容量(Ci)が10nF/cm2のものを使用しました。Si/SiO2基板はピラニア溶液(H2SO4:H2O2 = 7:3 反応性が高いので注意)で30分間洗浄し、脱イオン水で十分にリンスしました。誘電体表面を修飾するために、Si/SiO2ウエハ片の上にオクタデシルシラン(OTS, 442291)の結晶性単分子層を堆積させました。結晶性OTS単分子層の作製の詳細については、既報を参照ください4。ペンタセンは60℃の基板温度で10-6~10-7Torrの真空度のもと、熱蒸発によって0.3 - 0.4Å/sの速度で蒸着し、最終的に40nmの膜厚(真空チャンバー内の水晶式膜厚計にて測定)を得ました。続いて、金電極(約40nmの膜厚)をW/L比が20(W:チャネル幅、L:チャネル長さ。L = 50-150μm)のシャドウマスクを用いて作製しました。

ペンタセントランジスタの電気特性はケースレー4200半導体特性評価システムを用いて、周囲条件で室温にて測定しました。電流電圧(IV)特性(伝達特性)は、-100Vの固定ソース-ドレイン電圧で測定しました。

 

結果

代表的な伝達特性は次のとおりです。

図3

図3. 3回昇華精製したペンタセン(698423)を用いたOTFTデバイス(表1のNo.3(左)とNo.5(右))の典型的なIV曲線

図4

図4. 3回昇華精製したペンタセン(698423)を用いたOTFT(表1のNo.1)の出力特性

図3の伝達特性で注目すべきは、オン/オフ比が106を超えている点です。電荷キャリア移動度は飽和IV曲線(図4)から次の関係を用いて求められます。

Formula

ここで、μは電荷キャリア移動度、IDSはドレイン電流、VGはゲート電圧、VTはしきい電圧、Cは静電容量です。チャネルの形状は幅(W)と長さ(L)で定義されます。

3回昇華精製したペンタセンを用いて作製した7つのOTFTの主なトランジスタ特性は以下のとおりです。

 

Device µ (cm2/Vs) On/Off VT (V)
1 1.1 105 -22
2 4 7x106 -17
3 4.6 5.6x106 -22
4 2.1 1.2x106 -16
5 3.2 1.1x107 -18
6 4.4 1.3x107 -21
7 4.5 2.4x107 -18
Average (stdev) 3.4 (1.3) 8x106 -19 (2.4)

表1. 3回昇華精製したペンタセンで作製した7つのトランジスタの性能

 

まとめ

ペンタセン有機薄膜トランジスタ(OTFT)をアルドリッチより購入した高純度ペンタセンを用いて作製しました。結晶性オクタデシルシランで修飾したSiO2誘電体表面において、3.4cm2/V・sの平均電荷キャリア移動度(最大4.6cm2/V・s)が得られました。この非常に高効率なOTFT性能は、高純度ペンタセンや結晶性誘電体修飾層を用いた結果であるといえます。

アルドリッチでは有機エレクトロニクス分野における幅広いさまざまな用途に適した、高純度昇華精製材料を多数取り揃えております。昇華精製グレード製品の一覧からご覧ください。高純度材料をお届けするために、昇華精製グレード製品については次の試験項目が行われております。これらの試験結果は、弊社Webサイトの規格書または試験成績書にて公開しております。

  1. 不純物金属分析
  2. DSC・TGA測定
  3. HPLC(溶解性化合物の場合)

また、TIPSペンタセン可溶性ペンタセン前駆体をはじめとする低分子有機半導体や、有機半導体ポリマー(P3HTBBL有機溶媒分散PEDOT、PEDOT-PSS水溶液など)も多数取り揃えております。Zhenan Bao教授によるレビュー「有機薄膜トランジスタにおける自己組織化」、「有機薄膜トランジスタ用有機材料」もご覧ください。

 

References

  1. Gundlach, D. J.; Royer, J. E.; Park, S. K.; Subramanian, S.; Jurchescu, O. D.; Hamadani, B. H.; Moad, A. J.; Kline, R. J.; Teague, L. C.; Kirillov, O.; Richter, C. A.; Kushmerik, J. G.; Richter, L. G.; Parkin, S. R.; Jackson, T. N.; Anthony, J. E. Nat. Mater. 2008, 7, 216.
  2. Podzorov, V.; Menard, E.; Rogers, J. A.; Gershenson, M. E. Phys. Rev. Lett. 2005, 95, 226601.
  3. McCulloch, I.; Heeney, M.; Chabinyc, M. L.; DeLongchamp, D.; Kline, R. J.; Clle, M.; Duffy, W.; Fischer, D.; Gundlach, D.; Hamadani, B.; Hamilton, R.; Richter, L.; Salleo, A.; Shkunov, M.; Sparrowe, D.; Tierney, S.; Zhang, W. Adv. Mater. 2009, 21, 1091.
  4. Ito, Y.; Virkar, A. A.; Mannsfeld, S.; Oh, J. H.; Locklin, J.; Bao, Z. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 9396.

 

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