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Wojciech Jakubowski, Nicolay V. Tsarevsky and Patrick McCarthy ATRPによる機能性ポリマーの合成原子移動ラジカル重合(ATRP)は、所定の分子量と狭い分子量分布、そして高い鎖末端官能基率を有するポリマーを、複雑な手段を用いずに作製することができます1 - 4。これまでに、非常に高度に制御された官能性や、トポロジー、組成をもったポリマーの合成に応用されています5, 6。ATRPはラジカル重合反応であり、イオン重合よりも広範なモノマーに適用可能です。そのため、ATRPによる重合、共重合反応に用いられるモノマーの種類が広がり、ポリマー構造へさまざまな官能基を簡単に導入することが可能となりました。ATRPによって多種多様な性質を持つさまざまなポリマーや共重合体を作製することができます。図1に、官能基をもつテレケリックポリマー(telechelic polymer)のATRP合成に関する4つの重要な方法を挙げます7。
初めの2つの方法によって末端官能性ポリマーが、残る2つの方法で、骨格に沿って多数の官能基を持つポリマーが得られます。
図1 ATRPを用いてポリマーに官能性を導入する4つの方法 ATRPで用いられる開始剤ATRPでは単純な開始剤、主にハロゲン化アルキルR-X(X = Cl、Br)を使用します1, 8, 9。ATRPにより合成されたポリマーの数平均分子量Mnは、開始剤に対するモノマー(M)の初期濃度比ならびにモノマー転化率にも影響されます。 Mn =([M]0 / [RX]0)× Conv×MW(M) 開始剤として使用されるハロゲン化アルキルには、1個または複数のハロゲン原子が含まれています。開始剤の構造とハロゲン原子数に応じて、得られるポリマーのアーキテクチャは、線形(ハロゲン原子1個のハロゲン化アルキルを用いた場合)から星型やブラシ状(開始剤に複数のハロゲン原子がある場合)まで変化します。たとえば、単一のコアに複数のハロゲン化アルキルが結合した開始剤を用いて星型ポリマーの生成が可能です。
図2 星型ポリマーを生成するATRP開始剤の例 (USサイトの製品リストはこちら) ハロゲン化アルキル開始剤にもさまざまな官能基が含まれることがあります。ATRPによるポリマー合成における官能性開始剤の主な利点は次の4点です。
図3に、末端官能化ポリマー合成用のハロゲン化アルキル官能性開始剤の構造を示しました。ヒドロキシ基などの置換基を含む開始剤(I)は、カルボン酸やイソシアナートを持つ分子や表面と反応可能なポリマーの合成に適しています。また、アジドやアルキン基を持つ開始剤によって合成されたポリマーは、クリックケミストリー型の反応に用いることができます。アリル基を含む開始剤(III)では、ヒドロシリル化やエン反応によってSi - H結合やS - H結合を含むポリマーや表面と結合可能なポリマーがそれぞれ生成します。トリクロロシリル基は、例えばシリカ粒子やガラスの表面にあるヒドロキシ基やアミノ基(Si - OH結合を含む)と反応します。 最後に、ジスルフィドを含む二官能性開始剤(IV)を用いた場合は、金表面との反応性、および還元的な環境下での分解性を持つポリマーを得ることもできます。ここで重要なのは、ATRP で作製されたポリマーが2種類の鎖末端を含む点です。すなわち、開始剤から誘導されたα-末端(FG)と、通常は臭素原子か塩素原子であるω-末端です。ハロゲン化アルキル(II, V)は様々な求核置換反応により変換できるため、ATRPで得られる末端官能化ポリマーの種類は多岐にわたります9。
図3 ATRPに用いられるハロゲン化アルキル開始剤の例 (USサイトの製品リストはこちら) 高活性ATRP触媒に用いられる配位子古典的ATRPの難点の一つは、大量のCuX - 配位子触媒を使うことです2, 11。得られたポリマーは分子量分布の制御や鎖末端の官能基制御の点では十分ですが、触媒を除去するために面倒な精製が必要です。様々な触媒除去方法が開発されていますが、この余分な精製工程には、最終生成物を得るためにより長い時間と廃棄物の発生を伴います12。 tris[2-(dimethylamino)ethyl]amine(Me6TREN、723142)やtris(2-pyridylmethyl)amine(TPMA、723134)といった非常に高活性な配位子を用いることでその改善が図られています(図4a)。これらの配位子は、ARGET(Activators ReGenerated by Electron Transfer)13, 14と、ICAR(Initiators for Continuous Activator Regeneration)15と呼ばれる新しい方法で使用され、触媒量をわずか数ppm、多くの場合は一桁のppmにまで抑えることができます。ちなみに従来のATRPでは、1,000~10,000 ppmの触媒が使用されていました。この新しい反応系を用いることで残留銅触媒を残したままでも無色の最終生成物を得ることができます。いずれの手法も還元剤を使用し、ICAR ATRPではAIBN15のようなラジカル開始剤、ARGET ATRPではtin(II)ethylhexanoate(S3252)13, 14, 16 - 18、アスコルビン酸19、グルコース14、ヒドラジン15、またはCu(0)20が用いられます。これら還元剤によって低原子価金属錯体の再生が可能となり、「安定ラジカル効果(persistent radical effect)」と呼ばれるプロセスによるラジカル停止反応の結果、低原子価錯体は通常、不可逆的に高原子価錯体に変換されることになります(図4b)。
図4 a) ppm量の触媒を用いる、銅を介したATRP用配位子の例。 b) ARGET (およびICAR) ATRP反応のメカニズム。 ARGETおよびICAR-ATRP反応を用いることで触媒量を1,000分の1未満に削減でき、得られるポリマーは白色または無色です。また、これら方法によって、十分に制御されたブロック共重合体18、高分子量ポリマー16, 21、高度に鎖末端官能基制御されたポリマー16、さまざまな分子量分布を持つポリマー22の作製も可能です。加えて、ARGETおよびICAR-ATRPの重合制御は、過剰の還元剤の存在下でもほんのわずかしか影響されないため、還元剤を十分に加えれば、ある程度の量の空気存在下でも問題なく反応を行うことが可能です17。実験を行うに当たって脱酸素に必要はなく、ラバーセプタム付きのフラスコや単なる広口びんでも反応が可能です。この重合反応はいかなる特殊技術も必要とせず、より広い表面でのグラフト形成に特に適しているだけではなく、その他のポリマー材料の作製にも応用可能です。 ICAR-ATRPの反応例市販されている配位子(723134、723142)を用いて、ICAR-ATRPによるポリスチレンホモポリマーを合成しました(スキーム1)。以下に述べるのは、非常に低濃度の銅触媒(CuIIBr2 / TPMA、50 ppm)とAIBN還元剤を用いて、重合度100の十分に制御されたポリスチレンマクロ開始剤(PSt-Br)を合成する手法です。(以降実験の詳細は、弊社季刊誌「Material Matters Vol.5 No.1 最新高分子合成」の19ページをご覧ください。)
スキーム1 TPMA配位子の存在下における、ICAR-ATRPによるポリスチレンマクロ開始剤(PSt-Br)の合成反応 ATRP反応に関する背景やメカニズムについての詳細は、弊社季刊誌「Material Matters Vol.5 No.1 最新高分子合成」をご覧ください。アルドリッチでは同じくリビングラジカル重合の一種である、RAFT重合やNMPに用いられる連鎖移動剤や開始剤も取り扱っております。 References
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