高分子HPLC

高分子HPLC

生細胞により産生される大型の化学物質ポリマーである生体高分子は、生命体を構成する基本要素であり、生命に不可欠な多くの生物学的プロセスを実行しています。主な生体分子には、タンパク質、ペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質、ビタミンおよび補酵素が挙げられます。高分子や生体分子の構造やこれらの化学的多様性、生物学的活性を考慮する必要性ならびに複雑なマトリックスは、その性質上、効率の高い特性解析技術を要求します。多くの分離および分析技術を利用することができますが、最も多く用いられるのが高速液体クロマトグラフィー(HPLC)です。生体分子は多くの官能基を持ち、複数の構造を取るため、その分析には逆相、サイズ排除またはイオン交換などさまざまなモードのHPLCが用いられます。適用される分離モードに関係なく、効率の高いカラム充てん剤と固定相粒子の化学的性質が一貫していることが、正確かつ信頼性の高い生体分子の分離において非常に重要です。


関連技術資料

関連プロトコル


生体分子の逆相HPLC

逆相HPLC(RP-HPLC)は、高感度かつ汎用性の高い技術であり、タンパク質、タンパク質断片およびペプチドの分離と分析に用いられます。RP-HPLCでは、非極性の固定相と極性の移動相を用います。タンパク質とペプチドは、吸着と分配の原則に従って固定相に保持されます。タンパク質の疎水性領域が、可逆的に固定相に結合します。移動相の極性が非極性に近づくと、タンパク質が溶出されます。分離度は、孔径、粒子サイズ、カラム長および固定相に結合した炭化水素基の影響を受けます。

サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)

サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)は、非変性クロマトグラフィーの1種で、分子をそのサイズ(流体力学半径)により分離します。SECは、分析対象物質と固定相との相互作用には依存せずに、固定相中の粒子間における分析対象物質のランダムな動きに依存します。高分子量の分析対象物質は、固定相中の粒子の孔から完全または部分的に排除されるため、早く溶出する一方、低分子量の分析対象物質は、粒子間の長い道のりを移動するのに長い時間がかかるため、遅く溶出します。SECは、モノクローナル抗体(mAb)の凝集物およびフラグメントの特性解析、未知のタンパク質の分子量推定ならびにタンパク質製剤の安定性の決定に用いられてきました。

疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)

疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、クロマトグラフィーの1種で、分析対象物質の疎水性部分と固定相に結合した疎水性リガンドとの相互作用の程度に基づいて分析対象物質を分離します。ペプチドは分子量が低く、折りたたみ構造をとる傾向が低いため、ペプチドの分離には通常HICを用いません。塩濃度が高いと、タンパク質の水和層が減少して、表面の疎水部分と非極性の固定相とが相互作用するようになります。塩の種類は、タンパク質の水和層を減少させる能力(カオトロピック効果)または水和層の形成を促進する能力(コスモトロピック効果)によって、陽イオンと陰イオンを分類したHofmeister系列に従って選びます。典型的な塩には、硫酸アンモニウム、硫酸カリウムおよび硫酸ナトリウムが含まれます。現在、疎水性相互作用クロマトグラフィーは、抗体薬物複合体(ADC)の薬物抗体比(DAR)プロファイルの決定に用いられています。

イオン交換クロマトグラフィー(IEX)

イオン交換クロマトグラフィー(IEX)は、分析対象物質を電荷により分離するクロマトグラフィーの1種です。タンパク質およびペプチドは両性化合物、つまり酸性と塩基性両方の官能基を持っています。タンパク質の酸性官能基には、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、チロシンおよびC末端のα-カルボン酸基が含まれます。塩基性官能基には、アルギニン、ヒスチジン、リジンおよびN末端のα-アミノ基が含まれます。バイオ医薬品の電荷異性体は、IEXにより検出、分離することができます。電荷異性体は、メッセンジャーRNA(mRNA)転写物の翻訳ミスおよび/または脱アミド化、酸化または糖鎖付加などの翻訳後修飾により生じる可能性があります。

IEXカラムは、分析対象物質の等電点(pI)に基づいて選択しなければなりません。 移動相のpHがpIよりも低い場合は、分析対象物質は正に荷電して陽イオン交換カラムに結合します。 移動相のpHがpIよりも高い場合は、分析対象物質は負に荷電して陰イオン交換カラムに結合します。

アフィニティークロマトグラフィー

アフィニティークロマトグラフィーは、分析対象物質と固定相のリガンドとの間の特異的な相互作用に依存します。理想的には、目的の分析対象物質のみが固定相に適合して、サンプル中のその他の成分はすべてカラムを通り抜けます。次に2番目の移動相をカラムに通すと、分析対象物質が溶出します。

プロテインAクロマトグラフィーは、バイオ医薬品業界で最も多く用いられているアフィニティークロマトグラフィーの1種です。 プロテインAは、S. aureusの細胞壁表面に存在する42 kDaのタンパク質です。 このタンパク質は、IgGのFc領域の重鎖に特異的に結合することから、サンプル中のほかの成分からIgGを分離する理想的なメカニズムとされています。 ほとんどのプロテインAカラムは、多孔質の有機粒子にプロテインAを固定化して製造されています。 しかし、モノリス型のプロテインAクロマトグラフィー用カラムが製造されるようになり、効率を犠牲にすることなく、さまざまな流量でハイスループットなサンプル分析が可能になりました。