Production on Location:サメの破片をろ過する研究者
ハワイ大学マノア校の博士研究員であるDanielle Bartzは、アカシュモクザメが今でもヒロ湾に生息しているかどうかを調べるために、ボートの上で多くの時間を費やしています。

2023年5月3日(所要時間:6分)
雨と波しぶきはBartzにとって難敵です。ボート上で作業する者が味わうこのような状況に、彼女はよく遭遇します。彼女が心配しているのは、パソコンや精密機器にかかる大きなしぶきではなく、ソーダ缶より径の小さい薄いフィルターへのしぶきです。フィルターは濡れてもいいように設計されていますが、Bartzにとってはどのように濡れるのかが重要です。
彼女は、紙のように薄い道具を使用して海水をろ過することによりサメを追跡していますが、サメ丸ごとを求めているわけではありません。探しているのは小さな破片です。ヒトからは毛髪や皮膚の細胞が剥がれ落ちますが、サメやその他の動物も同様です。生物学者は現在、環境DNA(eDNA)として知られるこれらの微小なDNA破片を使用して、捕獲が困難な動物種の形跡を探しています。フィルターでeDNAの破片を収集してから、サンプルを増幅し、最終的には特定種のサメがその領域に存在するかどうかを確認します。
Bartzがナイロンネットフィルターを誤って濡らしてしまうと、他に由来するeDNAが混入してサンプルが汚染されます。そのため、彼女は一般的な生物学者よりも多くの時間をかけて、どうすればフィルターの乾燥状態を保てるかを考えています。
私たちは、Products on Locationシリーズを通じて、Bartzのようなユーザーが特殊な環境で特殊な目的のために製品をどのように使用しているかを調べています。私たちは、最近、サメ、ボート、フィルターに関する研究について詳しく尋ねるために彼女に会いました。
注記:このインタビューは、わかりやすく簡潔にするために編集されています。
どこで働いていますか?
私は米国ハワイ大学マノア校の海洋生物学大学院プログラムの博士課程の学生です。ビッグアイランドとしても知られるハワイ島の東側に位置するヒロ湾で働いています。ボートの上で多くの時間を過ごし、湾内や周辺を巡って研究に必要なサンプルを採取しています。
どのような研究ですか?
サメの個体数が時間の経過とともにどのように変動するかを研究しています。1950年代と1960年代には、ハワイのヒロ湾でシュモクザメの幼魚を1日に10~12匹捕獲したと一部の漁師が報告しています。現在、シュモクザメは絶滅危惧種に指定され、地元の人たちが見かけることはほとんどありません。漁師たちは、カマストガリザメの数が大幅に増えていることにも気付きました。このサメは、シュモクザメより一般的で万能型のサメの一種です。
アカシュモクザメはなかなか見つからないため、カメラに収めるのは困難ですが、Bartzはサメと一緒に泳いだ経験があります。これは、カメラに向かってくるメジロザメの動画です。(動画提供:Danielle Bartz)
この調査はなぜ重要なのですか?
アカシュモクザメは世界中で絶滅危惧種に指定されていますが、ここハワイでは絶滅の危険があるとは考えられていません。ヒロ湾の場合、かつては盛んに繁殖していた生育場からアカシュモクザメがほぼ姿を消していると見られています。私はこれを文書化し、州全体のサメ種の管理に関するより良い情報を提供したいと思っています。
サメの個体数をどのように推定していますか?
私が博士課程に進んだ当時は、シュモクザメの幼魚を捕獲し、タグ付けし、追跡することで個体数を推定することにしていました。しかし、計画して許可を得て作業を開始したものの、このやり方ではうまくいきませんでした。私の身を守るために、シュモクザメの幼魚をどうしても捕獲できなかったのです。それは、私だけではありません。誰も捕獲できませんでした。それで、最初からやり直すことにしました。この完全な失敗が、私にはまったく関わりのなかったeDNAの世界を探るきっかけになったのです。
この新しい手法をどのように学びましたか?
eDNAには数年前から興味を持っていましたが、ゲノミクスを深く研究することには気が引けていました。個体数の変動を推定するための別の手法を特定しようとしたときに、50年以上ぶりにグアムの港でeDNAを使用してアカシュモクザメを検出した研究者たちの論文を読みました。この港はヒロ湾ととてもよく似ていたため、彼らに連絡してみようと思いました。私はDr. Alyssa Buddにいきなりメールを送り、この研究について話していただけないかとお願いしました。正直なところ、行き当たりばったりのハワイの大学院生に過ぎなかった私は、あまり期待していませんでした。しかし、嬉しいことに彼女は返事をくれて、私をサポートしてくれました。そして、彼女は私にとって「eDNAの助けの神」(私は好んでこう呼んでいます)となりました。私のプロジェクト全体にわたり、継続的に指導や助言をしてくれたことにとても感謝しています。

水を汲み上げ終わったBartzは、フィルターを慎重に丸めてから小型容器に入れなければなりません。(写真提供:Danielle Bartz)
これらのフィルターはあなたの手法にどのように用いられるのですか?
海洋中でサメのeDNAを見つけることは、干し草の山から1本の針を探すようなものです。陽性の測定結果が得られる可能性を高めるために大量の水をろ過します。完了したら、ピンセットでフィルターを慎重に取り外します。汚染のリスクを抑えるために頭からタオルをかぶることがよくあります。雨滴や水しぶき、指紋などがサンプルを毀損するおそれがあるためです。その後、フィルターを(ブリトーのように)丸めてから細かく切り、チューブに詰め込み、eDNAの増幅処理を開始します。
フィールドではどのような日が記憶に残っていますか?
風雨ともに強い日は、いつも注意を要します。フィルターに雨や波しぶきがかかれば、捨ててやり直します。フィルターが吹き飛ばされてボートの床に落ちたら、捨ててやり直します。フィルターを装着しているときにこのようなことが起こることもありますが、これは大したことではありません。海水をろ過した後に起こると、本当にがっかりします。雨や風が強い日は、慎重に行動を計画しなければなりません。
フィールドでは苦労も多いと思いますが、あなたのモチベーションは何ですか?
2歳のころからサメが大好きでした。このような状況で働けて、私の夢が叶いました。この調査によって州全体、そしておそらくもっと広範囲でのアカシュモクザメの管理に関して、より良い情報を提供できると思うとワクワクします。
本シリーズについて
製品が300,000品目もあれば、そのうちのいくつかは興味深い場所にたどり着くはずです。私たちは、Products on Locationシリーズを通じて、特殊な環境で特殊な目的のためにメルクの製品を使用している人々を取り上げています。ボート上での使用はもちろんのこと、独創的な手法への応用でもよいですし、あなたが家で眠っている朝の3時でも問題ありません。
私たちは常に新しいストーリーを探しています。もし特殊だと思われる場所や目的でメルクの製品をお使いの場合は、是非アイデアをお寄せください。
ナイロンネットフィルターについて
私たちは、メンブレンフィルターの包括的なポートフォリオを提供しています。新しいマイルストーンの達成やこのストーリーで紹介したような特殊な応用に適したメンブレンの提供など、これまで何世代もの科学者に貢献してきました。Millipore®ナイロンネットフィルターは、均一で大きな孔構造と10~180 µmの範囲のメッシュ開口部を有します。ナイロンフィルターは、さまざまな用途に適しており、強度、柔軟性および親水性を備えているため、粒子の除去や浄化に加えて、溶媒ろ過にもよく使用されています。ナイロンネットフィルターの詳細については、こちらをご覧ください。
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