医薬品の微量元素分析に用いる超純水
本報では、製薬業界における微量元素分析の結果に試薬水の水質がどのように影響するかについて考察しています。Milli-Q®超純水製造装置で精製した直後の超純水は、ICP-OESおよびICP-MS微量元素分析に適合することが確認されています。
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製薬業界における微量元素のモニタリング
製薬業界においては、開発・生産の全段階において微量元素を監視・管理することがきわめて重要です。これは以下の3つの主な理由によって説明できます。
- 金属および半金属は、原料、中間体、医薬品有効成分の合成加工、医薬品の製剤化や製造において試薬および触媒として使用されます。そのため、医薬品にはヒトの健康に有害となり得る濃度の毒性がある金属汚染物質が含まれないようにすることが重要です。
- 特定の消費者や規制当局にとって重要なのは、総合ビタミン剤や金属ベースの医薬品などの製品に、想定される含有成分が包装に記載されているレベルで含まれていることです。
- 医薬品は、開発・製造工程において、汚染された試薬を介して、あるいは製剤が金属表面に接触した際に、意図せず金属が混入することがあります。また、金属は包装から製品に混入することもあります。そのため、製剤を保管する容器の材質について、微量成分の溶出物や抽出物を評価しなければなりません。
分析技術:AASからICPへ
フレーム原子吸光分析(FAAS)およびフレームレス原子吸光分析(GFAAS)は、最近まで分析化学者の微量元素分析の第一選択肢でした。今日では、これらの技術は、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)や誘導結合プラズマ発光分析(ICP-OES)などの最新のより高度な装置に置き換わることが多くなりました。1この装置の使用は、さまざまな種類のサンプルを迅速、特異的かつ確実に多元素分析できることから、米国薬局方協会(USP)により推奨されています。2ICPは感度が高く、実験試薬の品質について確立された厳格な要件を有することを特徴とします。実際、ICP-MSまたはICP-OES装置の性能を最適化するためには、非常に高品質の試薬を選択しなければなりません。
微量元素分析用の水質の要件
ICP-MSやICP-OESによる微量元素分析では、超純水が広く用いられています。サンプルおよび標準物質の調製時の希釈、試薬ブランク、また装置やサンプル容器の洗浄に使用されています(図1)。 サンプル調製時に混入が認められた場合(この場合は微量元素混入)は、分析全体を通して影響が生じ、最終結果にも影響があります。したがって、微量元素分析のために選択される水は、一貫して非常に高品質なものでなければならず、サンプルや分析装置を元素で汚染してはなりません。3
製薬業界では、水質の選択はその使用目的に応じて決定されます。4ただし、分析試薬として選択される水は、特定の薬局方の基準に適合するだけでなく、微量元素分析を確実に成功させるための最新の分析装置の要件も満たす必要があります。
Milli-Q®超純水製造装置は、さまざまな薬局方で定められた水質基準に適合するように*設計されています。この研究では、Milli-Q®超純水製造装置を用いて製造した超純水のICP-MSおよびICP-OES微量元素分析への適合性を評価しました。

図1.ICP-MSとICP-OES分析での超純水の使用方法
| 元素 | BEC (ppt) | LOD (ppt) | 元素 | BEC (ppt) | LOD (ppt) | 元素 | BEC (ppt) | LOD (ppt) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 7Li | 0.00 | 0.00 | 85Rb | 0.07 | 0.14 | 157Gd | 0.18 | 0.13 |
| 9Be | 0.24 | 0.28 | 88Sr | 0.36 | 0.15 | 159Tb | 0.03 | 0.03 |
| 11B | 7.71 | 1.84 | 89Y | 0.11 | 0.11 | 163Dy | 0.11 | 0.08 |
| 23Na | 17.49 | 2.72 | 90Zr | 0.47 | 0.09 | 165Ho | 0.03 | 0.02 |
| 24Mg | 13.17 | 0.52 | 93Nb | 0.23 | 0.15 | 166Er | 0.10 | 0.06 |
| 27Al | 0.47 | 0.06 | 95Mo | 0.62 | 0.36 | 169Tm | 0.04 | 0.03 |
| 39K | 38.72 | 0.00 | 101Ru | 0.69 | 0.19 | 172Yb | 0.14 | 0.10 |
| 40Ca | 63.6 | 2.17 | 103Rh | 0.16 | 0.26 | 175Lu | 0.03 | 0.03 |
| 45Sc | 7.50 | 1.89 | 105Pd | 0.07 | 0.06 | 178Hf | 0.12 | 0.09 |
| 49Ti | 2.08 | 2.49 | 107Ag | 0.59 | 0.11 | 181Ta | 0.15 | 0.13 |
| 51V | 0.72 | 0.39 | 111Cd | 0.06 | 0.2 | 182W | 0.59 | 0.40 |
| 52Cr | 2.10 | 0.37 | 115In | 0.07 | 0.06 | 187Re | 0.06 | 0.03 |
| 55Mn | 2.64 | 0.14 | 118Sn | 0.47 | 0.85 | 189Os | 0.28 | 0.23 |
| 56Fe | 0.60 | 0.19 | 121Sb | 0.06 | 0.11 | 193Ir | 0.08 | 0.12 |
| 58Ni | 0.76 | 0.18 | 125Te | 3.77 | 2.61 | 195Pt | 0.29 | 0.19 |
| 59Co | 0.30 | 0.11 | 133Cs | 0.05 | 0.00 | 197Au | 0.40 | 0.32 |
| 63Cu | 0.19 | 0.11 | 137Ba | 3.9 | 0.5 | 202Hg | 0.49 | 0.25 |
| 66Zn | 14.07 | 1.17 | 139La | 0.13 | 0.06 | 205Tl | 0.50 | 0.21 |
| 69Ga | 0.02 | 0.10 | 141Pr | 0.05 | 0.04 | 208Pb | 1.37 | 0.33 |
| 72Ge | 8.05 | 4.96 | 146Nd | 0.22 | 0.17 | 209Bi | 0.07 | 0.08 |
| 75As | 3.10 | 0.72 | 147Sm | 0.25 | 0.18 | 232Th | 0.10 | 0.08 |
| 78Se | 1.05 | 0.91 | 153Eu | 0.05 | 0.05 | 238U | 0.11 | 0.05 |
製薬業界では、微量元素分析をmg/L(ppm)からサブμg/L未満(サブppb未満)の範囲で実施しており、目的元素のBEC値がppt(ng/mL)またはサブppt未満の範囲を超えないことが望ましいと考えられています。また、メソッドのバリデーション工程において感度、正確さ、精度、回収率を適切に示す必要があることから、検出限界を低く安定させることは重要です。表1に示すように、一部の元素はサブpptよりもわずかに高い値を示しますが、これは通常の実験室条件下で分析を行ったため、実験室環境からの汚染と考えられます。7元素濃度を大幅に低下させる必要がある場合は、ppt未満レベルのBECが得られるMilli-Q® IQ Elementなどの追加の精製工程を使用することが妥当です。8
ICP-MS実験条件
超純水を得るために、水道水を2ステップで精製しました。
- 純水を水道水から得るために、逆浸透、Elix®連続イオン交換(EDI)、および殺菌UVランプを組み合わせた、Milli-Q® IX純水製造装置と同じようなMilli-Q®超純水製造装置を使用しました。
- 超純水を得るために、Millipak™最終フィルター搭載Milli-Q® IQ 7000超純水製造装置と同じようなMilli-Q®超純水製造装置により、上記の水をさらに精製しました。ただし、Hgの分析に用いる超純水を得る場合には、Elix® EDIモジュールを含まないMilli-Q®Direct装置を使用しました。
超純水サンプルを以下の元素の量について分析しました。
- Agilent® 7700s ICP-MS装置を使用:Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Co、Cu、As、Se、Sr、Mo、Pd、Ag、Cd、Sn、Sb、Cs、Ba、Tl、Pb、Th、U
- Agilent® 7500s ICP-MS装置を使用:Hg、Sc、Fe、Zn、Ga、Ge、Rb、Y、Zr、Nb、Ru、Rh、In、Te、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Bi
すべての実験は(クリーンルームではなく)通常のラボ条件で行われました。
Agilent® 7700s装置の詳細およびパラメータ:PFA-50噴霧器、PFAスプレー室、サファイア不活性トーチ、石英内径2.5 mmトーチインジェクター、プラチナサンプルおよびスキマーコーン、RF電力600/1600 W、サンプリング位置12/8 mm、キャリアガス流0.90 L/分、メイクアップガス流0.32/0.51 L/分、自動検出モード、較正1、5、10、50 ng/L。
Agilent® 7500s装置とパラメータ:石英噴霧器、石英スプレー室、石英内径トーチインジェクター、ニッケルサンプルおよびスキマーコーン、RF電力1300/1550 W、サンプリング位置8 mm、キャリアガス流0.96 L/分、メイクアップガス流0.23 L/分、自動検出モード、較正1、20、50、100 ng/L。
容器はすべてPFAで超純水で事前洗浄しました。Milli-Q®超純水製造装置から得られたすべての超純水サンプル(比抵抗値18.2 MΩ·cmおよびTOC 5 ppb未満)を採水直後に分析しました。
微量元素分析用超純水の利点
この研究により、Milli-Q®超純水製造装置によって製造された超純水に含まれる微量元素量は、低pptレベルであることが示されました。そのため、微量元素分析を行う製薬産業のラボは、その厳しい要件を満たす高純度の水を製造するために、Milli-Q®超純水製造装置を適用することができます。微量元素分析にMilli-Q®超純水製造装置が製造する超純水を選ぶことにより、質の高いデータが確実に得られます。
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参考文献
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