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キャピラリーGCカラムの選び方

ガスクロマトグラフィーカラムを選択する際に考慮すべき要素

クロマトグラフィーにおける最適な分離はカラムから始まります。どのような用途であっても、適切なキャピラリーカラムの選択の基準となるのは、次の4つの要素です。

  1. 固定相
  2. カラム内径
  3. 膜厚
  4. カラムの長さ

ここでは、これらの要素が実際にカラムの性能に及ぼす影響について、重要な順に簡単に説明します。ただし、これは一般的な情報であることに注意してください。状況によっては、ここに示すガイドラインが当てはまらない場合があります。

メルクのテクニカルサービス担当者よりキャピラリーカラムの選択と使用について説明いたします。テクニカルサービス(jpts@merckgroup.com)にお問い合わせください。

1.固定相

固定相を選択することは、カラムを選択する際の最も重要なステップです。なぜなら、これによって、カラムの選択性、つまり、カラムが試料の成分を分離する能力が決まるからです。固定相とは、キャピラリーカラムの内壁に化学的に結合または塗布された膜であり、実施する用途に応じて選択する必要があります。注入された有機化合物質の化学的性質や物理的性質、そして固定相との相互作用に違いがあることが分離プロセスの原理です。2種類の分析対象物間で液相の相互作用の強さが大きく異なっていれば、一方の化合物は他方よりも長く保持されます。化合物がカラム内にどのくらい長く保持されるか(保持時間)が、こうした分析対象物と液相の相互作用の目安になります。

固定相の化学的特性が変わると、その物理的性質が変わります。ある固定相では2種類の化合物が共溶出する(分離しない)場合でも、別の液相では、分析対象物と液相の相互作用が大きく異なれば分離することもあります。このような理由で、さまざまな種類のキャピラリーカラム液相が提供されています。それぞれの液相は、分析対象物の化学的分類ごとに特定の組み合わせの相互作用をもたらします。

  • 無極性カラムの保持機構は主として分散力です。つまり、ファンデルワールス力の影響を受けます。これは化合物の大きさとともに増加する分子間力です。したがって、化合物が大きくなるほど、そして、沸点が高くなるほど、保持時間が長くなります。フェニル官能基を有する液相では、中程度のπ - π相互作用が生じることもあります。溶出順は、一般に化合物の沸点によって決まります。
  • 中極性カラムと極性カラムの保持機構には強い分散力があります。適度の水素結合が基本的な相互作用とともに生じることがあります。フェニル官能基を有する液相では、π - π双極子-双極子相互作用や双極子-誘起双極子相互作用が生じることもあります。シアノプロピル官能基を有する液相では、強い双極子-双極子相互作用や中程度の基本的な相互作用が生じることもあります。分離は、これらの機構の総合的な効果の違いによって決定されます。
  • 高極性カラムと超高極性カラムの保持機構には強い分散力があり、非常に強い双極子-双極子相互作用や非常に強い双極子により誘起双極子相互作用が生じます。適度に基本的な相互作用も生じます。分離は、これらの機構の総合的な効果の違いによって決定されます。

既存のアプリケーション

1950年代に初めて使用され始めたガスクロマトグラフィーは成熟した分析法であり、多くの分析法が確立しています。そのため、特定の用途において、どの固定相が使用されて良い結果をもたらしたのかを示した論文や定期刊行物などの文献が存在することが考えられます。さらに、メルクの「GCカラム選択ガイド」に示したような相の選択チャートが、カラムメーカーから定期的に発行されています。このようなチャートは、使いやすいよう業種別にまとめられているため、簡単なプロセスで適切な固定相を選択することができます。まずは、お客様の該当する業種や関心をお持ちの分野に合ったチャートを入手してください。そして、そのチャート内で該当する用途を見つけて、推奨されるカラムの液相を確認してください。

新規アプリケーション

新しい分析用途に関しては、指針となる参考文献がないということがよくあります。このような「メソッド開発」の場合には、分析対象物の化学的性質についてある程度の知識が必要です。液相の選択は、「似たもの同士は溶け合う」という一般的な化学原理に基づいています。無極性カラムは、無極性化合物の分析の出発点として推奨されます。同様に、極性化合物の分離には、通常、極性カラムが推奨されます。化合物の極性のグループごとに推奨される相を表1に示します。

表1.化合物の極性に基づく液相の極性

化学結合型液相・非化学結合型液相

化学結合型液相は管の内部で固定および/または化学結合(架橋)されているのに対し、非化学結合相は単に壁面に塗布されています。一般的には化学結合型液相が推奨されます。それは、化学結合型液相のほうが使用中のブリードが少なく、高温で使用でき、必要に応じて、溶媒で洗浄することで蓄積した不揮発性物質を除去できるからです。液相の極性が高い場合など、化学結合型液相を利用できない場合には、安定化された液相をお探しください。このような液相は化学結合型液相のような耐久性はありませんが(洗浄することはできません)、非化学結合型液相よりも熱安定性の点で優れています。用途によっては、非化学結合型液相が唯一の選択肢となります。

2.カラム内径

現在市販されているキャピラリーカラムの内径(I.D.)のサイズは、効率(理論段数)と試料負荷容量(各種試料をシャープなピークのオーバーロードを引き起こすことなくカラムに入れることができる)という2つの要素のバランスを取ることができます。これらの要素の一方を最適化するためには、他方を犠牲にしなければなりません。ある用途にとって理想的な内径は、その分析で何が求められているかによって異なります。

カラム内径が効率と試料負荷容量に及ぼす影響を表2に示します。ここに示すように、内径が0.25 mmのカラムでは、ほとんどの用途にとって適切なメートル当りの段数が得られると同時に、そこそこの試料負荷容量も得られます。このように効率と試料負荷容量のバランスを調整できるため、0.25 mmはキャピラリーGCカラムの内径として最も普及しています。お客様は、目的の用途の要件に基づいて、これよりも内径が小さいまたは大きいカラムを使用することにより、効率か試料負荷容量のいずれかを最適化することができます。

表2.カラム内径の影響

高効率

効率は、クロマトグラム上で幅が狭くはっきりと分離されたピークとして観測されます。キャピラリーカラムの効率は理論段数(N)またはメートル当りの理論段数(N/m)として測定され、カラム内径が小さくなるほど効率が高まります。これがFast GCの基本原理の1つです。分析対象の試料に多くの分析対象物が含まれている場合や、密接して共溶出する分析対象物がある場合には、実際に使用できる範囲で最も小さい内径を持つキャピラリーカラムを選択する必要があります。なお、0.10 mmや0.18 mmのような非常に小さい内径を持つカラムには、カラムのヘッド圧を高くすることが可能な圧力調整器付きのGCなど、特殊な装置が必要になることがありますのでご注意ください。

Fast GCのパンフレットには、実用上での考慮事項、理論的考察、Fast GC対応カラムのリスト、クロマトグラム、性能を最適化するための関連製品を掲載しています。さらに、参考となる文献のリストも掲載しています。

試料負荷容量

カラム内径が大きくなるほど負荷容量が大きくなります。内径の大きいカラムは、1つの試料について処理できる分析対象物ごとの質量が、内径の小さいキャピラリーカラムの場合よりも大きくなります。カラムの試料負荷容量を超えると、ピークが歪み、分離度が低下します。そのため、分析対象の試料に高濃度の化合物が含まれている場合や、広範囲の濃度が示される場合には、内径の大きいカラムの使用を検討する必要があります。適切な内径のカラムが選択されれば、システムは、主要成分によるオーバーロードを起こすことなく、マイナー成分を十分な感度で検出できるはずです。分析者は、内径の大きいカラムを使用することによって効率が低下することが、目的の用途にとって問題であるのかどうかを判断する必要があります。なお、試料の成分の性質や液相の極性が試料負荷容量に影響することに注意してください。無極性の液相は無極性の分析対象物に対する負荷容量が大きくなり、極性の液相は極性の分析対象物に対する負荷容量が大きくなります。

3.膜厚

内径0.25 mmのカラムの大半は、膜厚が0.25 µMまたは0.50 µMです。用途に応じて、最適な膜厚は異なります。

膜厚を薄くする

膜厚を薄くすることの利点は、ピークがシャープとなり(分離度が上がる可能性があります)、カラムのブリードが減少することです。これらの利点のどちらもS/N比の向上につながります。さらに、カラムの最高使用温度が高くなります。欠点は、分析対象物と管壁の相互作用が増加し、分析対象物の負荷容量が小さくなることです。また、膜厚を薄くすることによって、より短い保持時間とより低い温度で分析対象物を溶出させることができます。ただし、用途によっては、これが望ましい場合と望ましくない場合があります。沸点が高い(>300℃)分析対象物(たとえば、農薬、PCBs、FAMEs、フタル酸エステル、およびその他の半揮発性化合物)の場合や、微量分析の場合は、膜厚を薄くしてください。

膜厚を厚くする

この利点は、分析対象物と管の相互作用が減少し、試料負荷容量が大きくなることです。欠点は、ピーク幅が広くなり(分離度が下がる可能性があります)、カラムのブリードが増加し、カラムの最高使用温度が低くなることです。また、膜厚を厚くすることによって、分析対象物の保持時間が長くなり(特に、k値が低い化合物の場合は、分離度も上がる可能性があります)、溶出温度が高くなります。用途によっては、このような影響が望ましい場合と望ましくない場合があります。沸点が低い分析対象物(揮発性有機化合物やガスなど)の場合は、膜厚を厚くしてください。これは十分な保持のために必要であり、場合によっては、カラムオーブン温度を大気温度より低くする必要がなくなります。より濃度が高い試料の場合も、化合物のオーバーロードのリスクを最小限に抑えるために、膜厚を厚くしてください。

相比(β)

液相の膜厚の影響はカラム内径と相互に依存しています。相比、つまりベータ(β)は、カラム内におけるガスの体積と固定相の体積の比を表します。

β=カラム半径(µm)
2 x 膜厚(µm)


相対的に表現する(「薄い膜」や「厚い膜」)場合とは異なり、β値で表すことによって、各カラムを明確にランク付けすることができます。原則として、表3に示すようなβ値に基づいてカラムを選定してください。

表3.β(相比)の推奨値

β値は、特定の分析においてカラム内径と膜厚の組み合わせを変更する際にも役立ちます。なぜなら、相比が同じであるカラムは、同じ分析条件下であれば保持時間や溶出順がほぼ同じであるからです。一例を図1に示します。

似たようなβ値を示すカラム

図1.似たようなβ値を示すカラム

4.カラムの長さ

一般に、分離度、分析時間、必要なカラムヘッド圧のバランスが最も良くなるのは、30メートルのカラムです。表4にデータを示します。用途によっては、他のカラム長のほうが適している場合があります。

表4.カラム内径の影響

カラムの長さはガスクロマトグラフィーにどのように影響するのでしょうか?

長いカラム

カラムが長いほど分離度が上がりますが、背圧が高くなります。重視すべき点は、カラムの長さを2倍にしても分離度が2倍になるわけではないということです(分離度はカラム長の平方根に比例して上がるにすぎません)。ある重要な1組のピーク間の分離度が1に満たない場合には、カラムの長さを2倍にしてもベースライン(分離度の値が1.5以上)には到達しません。分離度を上げるためにカラムの長さを長くするのは最後の手段と考えてください。もっと効率的に分離度を上げることができる方法は、カラム内径を小さくすることです。

短いカラム

スクリーニングを目的としている場合や、成分の化学的性質が異なる単純な試料の場合など、分離度を上げる必要がない場合には、短いカラムが推奨されます。ただし、カラムの長さを短くすると同時にカラム内径を小さくすることにより、分離度を維持することができ、場合によっては、実際に分離度が上がることがあります。

ガードカラム・リテンションギャップ

時間が経つにつれ、キャピラリーGCカラムの注入口側が蓄積した不揮発性物質によって汚染されることがあります。また、溶媒と分析対象物が絶え間なく凝縮・蒸発することで、カラムの前部にある液相が損傷することもあります。当然のことながら、活性のある分析対象物は、このような汚染/損傷箇所に吸着します(分析対象物がカラムの注入口側を通過する際に「引きずり込まれ」ます)。ピーク形状の悪化(ピークのテーリング)、分離度の低下、そして反応性の低下が見られることがあります。クロマトグラフィーシステムが許容できないほどに劣化した場合には、カラムの注入口側から汚染/損傷箇所をカットすることによって、性能を回復させることができることがあります。カラムカットを行うたびに、理論段数が減少するため、保持時間が短くなり、分離度が下がります。そして最終的には、カラムがまったく使えない状態になります。

ガードカラム/リテンションギャップを使用することは、低コストでキャピラリーカラムの寿命を延ばすことができる手法です。ガードカラム/リテンションギャップとは、何もコーティングされていない不活性化処理済みフューズドシリカの短い(1~5 m)キャピラリー管であり、GC注入口とキャピラリーカラムの間に直列に配置されます。ガードカラム/リテンションギャップは、溶媒や試料による汚染/損傷を受け止めるために使用されます。性能を回復させるために、キャピラリーカラムではなくガードカラム/リテンションギャップを定期的にカットすることにより、キャピラリーカラムがそのままの状態に保たれます。そのため、クロマトグラフィー(保持時間と分離度)への影響はありません。ガードカラム/リテンションギャップは、短いフューズドシリカ管とコネクターという2つの部分から成っています。

フューズドシリカ管

フューズドシリカ管の不活性化処理と注入溶媒の極性を合わせてください。多くの場合、キャピラリーカラムの内径を合わせることも推奨されます。分析カラムとガードカラムの内径と外径に関する情報を表5のリストに示します。選択基準:

  • 注入溶媒がアルカン、二硫化炭素、エーテルなどの場合には、無極性不活性化処理を選択してください。
  • 注入溶媒がアセトン、塩化メチレン(ジクロロメタン)、トルエンなどの場合には、中極性不活性化処理を選択してください。
  • 注入溶媒がアセトニトリル、メタノール、水などの場合には、極性不活性化処理を選択してください。
表5.フューズドシリカ管の内径と外径

キャピラリーカラムコネクター

これらのコネクターは、ガードカラム/リテンションギャップを分析カラムに取り付ける際や、壊れたカラムを修理する際に使用されます。メルクでは、2本のフューズドシリカ管をつなげるためのオプションを2種類用意しています。バットコネクターは、デッドボリュームゼロでぴったりと接続できる小型のステンレス継手です。GlasSealは使い勝手のよいコネクターです。

参考文献

ガスクロマトグラフィーの専門家や研究者が執筆したGC関連文献のリストを下記に示します。ガスクロマトグラフィーのさまざまな面について詳しくお知りになりたい方は、これらの参考文献をご参照ください。

1.
McNair H, Miller J. 1997. Basic Gas Chromatography. Wiley: The University of Michigan.
2.
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Grob K. 1993. Split and Splitless Injection in Capillary Gas Chromatography With Some Remarks on PTV Injection. 547 pages. Huethig Publishing, Limited.
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Grob K. 1991. On-column Injection in Capillary Gas ChromatographyBasic Technique, Retention Gaps, Solvent Effects. p. 591. Huethig Publishing, Limited.
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McMaster M, McMaster C. 1998. GC/MS: A Practical User's Guide(1998). ISBN 0-471-24826-6. Wiley-VCH:
8.
Pawliszyn J. 1997. Solid Phase Microextraction: Theory and Practice, 247 pages. ISBN 0-471-19034-9. Wiley-VCH:
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