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一貫性の向上:細胞培養成功のためのヒントとコツ

細胞培養は生命科学研究プログラムの中核を成すものであり、培養技術は進化し続けています。ワークフローを正しく最適化し、最新・最良の実践方法に従うことが一貫した結果を出し、研究を前進させるための鍵です。

細胞認証

全細胞株のうち半数が誤認されていると推測されています。適正で定期的な細胞認証がこうした落とし穴を避けるための鍵となります。

培養プレート・ウェルプレート

将来の細胞ベース実験の計画:

  • 細胞株は調査対象の生態を正確に反映し、計画した実験に耐え、再現性のある結果を確実に出せるものを、慎重に選びましょう。
  • 系統識別情報および品質管理に関する適切な資料が付属した、信頼できるソースから細胞を入手しましょう。
  • 細胞株の非公式な一部譲渡や借用はおやめください。公式の細胞認証書を請求しましょう。

新しい細胞株の開発:

  • 患者の同意を含め、細胞株用の組織採取に関する倫理的・法的要件に従ってください。
  • ドナーまたは患者の臨床情報(該当の場合)、細胞の種類・起源および使用試薬すべてのロット番号、培養細胞の画像、ならびに遺伝子操作または遺伝的リプログラミングの方法など、細胞株の起源についての詳細記録を保管してください。
  • 後で起源を確認するときのために組織試料を保存します。疾患由来細胞の場合も、病理組織検査のほか、正常組織試料との比較のために組織試料を保存します。

現在使用中の細胞:

  • International Cell Line Authentication Committee(ICLAC)の誤認細胞株のレジストリを確認します。
  • 年1回以上、理想としては6か月ごとのDNA遺伝子型解析(表現型解析ではない)により細胞が誤認されていないことを実証します。短いタンデム反復(STR)または一塩基多型(SNP)を利用可能なデータベースと比較することは、種内比較法の中で最も費用対効果が高く受け入れられる遺伝子解析法です。

培地の調製

培養の成功には滅菌操作を正しく行うほか、最良の実践法に従う必要があります。

細胞培養の最良の実践法:

  • 正しい訓練を受けることが基本です。培養手技すべてについて標準操作手順書(SOP)を作成し、ラボの研究者全員に手技の正しい実践法を熟知させます。
  • 試験成績書付きの高品質な試薬および消耗品を供給業者から購入します。後日問題が生じた場合に対処できるようロット番号を記録しておきましょう。
  • ピペット、細胞培養フード、インキュベーター、顕微鏡、オートクレーブ等、装置すべてに通常の滅菌、校正、整備を行います。
  • 新しい細胞株は汚染予防策の公的認証が下りるまで、隔離します。
ウェルプレート

滅菌ろ過:

  • 膜の選択は試料の特性、組成、および量に左右されます。ろ過する試料の溶質および溶解した分子/粒子は、メンブレンフィルターと化学的に適合しなければなりません。
  • 試料を攪拌し、フィルター単位表面積の当たりの流量を調節すれば、スループットの向上と、膜表面の粒子凝集を防止できます。
  • 浄化と予備ろ過の性能は0.45 μmの孔径が最良です。
  • ほとんどの培地およびバッファーの場合、孔径0.45 μmのポリエーテルスルホン(PES)膜を使えば迅速にろ過できます。
  • 血清やその他のタンパク質を含む培地を滅菌するには、孔径0.22 μmのPES膜を使います。
  • マイコプラズマの除去には孔径0.10 μmのPES膜を使います。
  • タンパク質結合が極めて少ない場合や、生体高分子を含む溶液の滅菌には孔径0.2 μmのポリビニリデンフルオライド(PVDF)膜を使います。
ミリポアフィルター

細胞凍結:

  • 保存バイアルには完全かつ明確に表示を入れます。
  • できるだけ継代数が少ない保存試料を凍結します。
  • どの細胞株も正しい技法で凍結します。
    多くの細胞株は緩慢冷却が必要ですが、
    場合によっては(幹細胞等)急速
    凍結が好ましい場合があります。
  • 液体窒素と窒素ガスを用いた保存の比較—液相保存はより低温で保存でき、保存上の問題が起きるまでの反応時間が長いですが、汚染やバイアルのひび割れ/破裂のリスクがより高いです。気相窒素は細胞保存の代替法として優れており、汚染リスクを下げてくれます。
  • 細胞ロスの予防策として、重要ストックを1か所以上で保存し、1バイアルを解凍し凍結保存直後の細胞生存率を評価してください。
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細胞増殖

細胞が生育する自然環境に近づけて健康に保つことは容易なことではありません。細胞を常時観察することが肝心です。

フード下:

  • 1度に細胞株1種類以上を扱わないようにし、細胞株の間で培地ボトルを使い回さないでください。
  • 培地の調製とろ過は使用当日に行います。
  • 血清の品質に特に注意を払ってください。可能であれば、血清はバルクで購入し、確実に細胞が増殖するようにバッチごとに試験を行ってください。
  • 遺伝子型や表現型が不安定にならないよう、定期的に細胞の特性解析を行い、冷凍庫から取り出したストックと頻繁に交換してください。
血清サンプル

微生物汚染の検出:

  • 感染有無を定期的にスクリーニングしてください(特に、目視できる汚染の徴候がなく、最もよくみられるマイコプラズマ)。
  • 汚染抑止のために抗生物質を何度も使用すると感染の徴候が出なくなるため、控えてください。抗生物質無添加培地では、細菌、酵母、および真菌感染の徴候として混濁のほか、色およびpHの変化などが起きます。
大量の細菌増殖および抗生物質耐性微生物によって破壊された培養

細胞分析

細胞の健康状態および機能をモニタリングし定量化することは、生物学的に意義があるデータの習得に欠かせません。

細胞計数:

  • 細胞計数を頻繁に行い細胞培養の状態を調べてください。
  • 電子センサー付きの開孔部を細胞が1つずつ通過するコールター原理が精度の最も高い細胞計数法です。
  • コールター原理によるセルカウンターは、正確な細胞数を表示するだけではなく、細胞の平均サイズおよびサイズ分布についてのデータも出してくれます。
  • さらなる利点として、コールター原理セルカウンターはサイズ分布ヒストグラムも出力するので、試料の単分散性がわかります。
  • 細胞は必ずよく混ざった状態で計数してください。混合状態が悪いと細胞密度に局所的なバラツキが生じ、誤った細胞数が出力されることになります。
  • チャンバーに細胞を添加しないタイプのセルカウンターを使えば、気泡を心配する必要がなくなります。
  • 細胞試料を移動させると誤差が生じる可能性があります。培養フードを外さず携帯型自動セルカウンターを使用することが、バラツキを防止し、各時点の正確な細胞培養状態を捉える最良の方法です。
  • 試料調製時に機器の仕様を確認し、細胞径と出発希釈濃度が使用予定の計数法に適合するようにしてください。
セルカウンター

細胞培養の消耗品は品質が最も重要です。

試験の一貫性向上に役立つ20,000を超える確かなツール

  • 認証書付きの細胞株および一次細胞の豊富なラインナップ
  • 高流量の滅菌ろ過システム
  • 各種用途で試験済みの細胞凍結溶液
  • 高品質の液体培地、血清、栄養補助剤/成長因子
  • 培養器および特殊培養インサート・プレートの豊富なラインナップ

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参考文献

  1. Geraghty RJ et al. Guidelines for the use of cell lines in biomedical research.Br J Cancer.111:1021-1046 (2014).
  2. Yu M et al. A resource for cell line authentication, annotation, and quality control.Nature520:307-311 (2015).

SNAP i.d.およびMuseはMerck KGaA(ドイツ・ダルムシュタット)の登録商標です。

参考文献

1.
Geraghty RJ, Capes-Davis A, Davis JM, Downward J, Freshney RI, Knezevic I, Lovell-Badge R, Masters JRW, Meredith J, Stacey GN, et al. 2014. Guidelines for the use of cell lines in biomedical research. Br J Cancer. 111(6):1021-1046. https://doi.org/10.1038/bjc.2014.166
2.
Yu M, Selvaraj SK, Liang-Chu MMY, Aghajani S, Busse M, Yuan J, Lee G, Peale F, Klijn C, Bourgon R, et al. 2015. A resource for cell line authentication, annotation and quality control. Nature. 520(7547):307-311. https://doi.org/10.1038/nature14397
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