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細胞へのトランスフェクション入門

トランスフェクションとは?どのように細胞へトランスフェクションするのか?

トランスフェクションは、真核細胞にDNA、RNAまたはタンパク質を導入することであり、遺伝子発現の調節や研究に広く用いられています。トランスフェクション技術は、遺伝子機能、タンパク質合成、細胞増殖や発生の解析を容易にする分析ツールとして役立ちます。トランスフェクションアッセイは、細胞レベルの研究を発展させるだけでなく、創薬戦略を下支えするものでもあります。ウイルスによるトランスフェクションや ウイルス形質導入などの戦略では、レンチウイルス粒子を利用して外因性物質を真核細胞に導入します。一方、 細菌の形質転換 は、細菌が外来遺伝物質を取り込んだ際に行われる、遺伝子を水平伝播するためのプロセスです。

トランスフェクションの種類

トランスフェクションのための方法は、物理的、化学的、生物学的手法を含め、幅広く存在します。これらの技術は一般に、トランスフェクションにより核酸を細胞に導入し、遺伝子を一過性または安定的に発現させる方法です。

一過性トランスフェクション技術では、細胞にDNAが導入されますが、DNAは細胞の染色体に組み込まれることはありません。この技術では高いトランスフェクション効率が得られ、1〜4日後には遺伝子転写産物を分析することができます。哺乳類細胞培養における大規模な一過性遺伝子発現(transient gene expression、TGE)には、 ポリエチレンイミン(PEI) や リン酸カルシウム(CaPi) などのトランスフェクション試薬が使用されます。さらに、無血清培地中のチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いた大規模なTGE法も開発されています1

安定的なトランスフェクション技術では、導入されたDNAは細胞の染色体に組み込まれるか、エピソームが形成されます。安定発現細胞の同定には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(HPH)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)などのマーカーを選択できます。

従来から使用されるトランスフェクション技術として、リン酸カルシウム法、リポソーム法、エレクトロポレーションおよびウイルス導入法があります。さらに、これらの方法はコトランスフェクションとしても使用されます。コトランスフェクションは1つの細胞に2つの異なる核酸を導入し、安定的なトランスフェクションを達成するために行われます。トランスフェクション技術は進化し、高速微粒子を使用して核酸を細胞に送達するパーティクルデリバリー法や、siRNA分子の全身送達を容易にする in vivo トランスフェクションプロトコルなど、数々の新しい技術が生まれています。

トランスフェクションの種類

リン酸カルシウムトランスフェクション

リン酸カルシウムトランスフェクション技術では、DNAとリン酸カルシウムの共沈殿を利用します。リン酸ナトリウムを含むHEPES緩衝生理食塩水とDNAを含む塩化カルシウム溶液を混合することによって共沈殿物が形成されます2。特定の細胞では、DNA取込みを促進するため、グリセロールショックを用います。

この手法は費用対効果が高く、幅広い種類の細胞における一過性または安定的なトランスフェクションに使用されますが、比較的小さなpH変化(±0.1)が形質転換の効率を左右することがあります。さらに、再現性の高いアッセイ結果のためには、試薬の一貫性を維持することが不可欠です。また、このトランスフェクション技術は、RPMI培地やその他のリン酸塩濃度の高い培地では機能しません。

リポソームを介したトランスフェクション

リポソームを介したトランスフェクション(リポフェクション)技術には、リポソームを形成するカチオン性脂質、または非脂質性ポリマーの使用を必要とします。リポフェクションによるトランスフェクション試薬の例として、DOTMA(N- [1-(2,3,-ジオレイルオキシ)プロピル] -N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド)および X-tremeGENE®トランスフェクション試薬があり、DNA、低分子RNA、CRISPR/Cas9複合体を含む多様な分子をさまざまな細胞株に導入することに適しています。脂質を用いたトランスフェクションは、費用対効果が求められるシステムやハイスループットシステムに適用できますが、通常、これらのトランスフェクションは細胞の種類に依存します。

エレクトロポレーション

この技術では、細胞膜を高電圧の電気パルスにさらすことにより、細胞の特定部位を一時的に不安定化させることを必要とします。一過的に不安定化する間、細胞膜は高透過性となり、DNAを含むさまざまな外因性分子の導入が可能となります4

エレクトロポレーションは、さまざまな細胞において高い形質転換効率を発揮することができる、簡単かつ、化学物質を用いない手法です。この手法は標的細胞の形態や機能を変えることはありませんが、トランスフェクションが最適な条件下で行われない場合、細胞死を引き起こす可能性があります。 

ウイルストランスフェクション(ウイルス形質導入)

この方法では、ウイルスベクターを使用して核酸を細胞に導入します。レンチウイルス、アデノウイルス、オンコレトロウイルスベクターなどのウイルスデリバリーシステムは、トランスフェクションが困難な細胞でも核酸の導入に使用できます。

ウイルスを用いた導入方法は、非常に効率的ですが、手技が煩雑になる場合があります。さらに、ほとんどのウイルスはバイオセーフティーレベルの適切な封じ込めと注意深い監視を必要とします。ウイルストランスフェクションを実行する前に、ウイルスベクターの溶解性、パッケージング用細胞株、宿主細胞の特異性など、いくつかの制限要因を考慮することも重要です。

トランスフェクション試薬とプロトコルの選択

トランスフェクションプロトコルの改良と、トランスフェクションアッセイの簡便化とともに、最適なトランスフェクション効率を得るためにトランスフェクション試薬の適切な選択が不可欠となりました。

適切なトランスフェクション試薬を検討する際には、アッセイに用いる細胞タイプと培養条件を特定することが重要です。まれな培養細胞、ニューロンおよび初代細胞は通常、トランスフェクションが困難であるため、トランスフェクションが困難な細胞でも使用可能な試薬が必要になります。

さらに、適切なトランスフェクション試薬を決定する前に、試薬の性能レベルと細胞毒性パラメーターも考慮しなければなりません。理想的な試薬は、必要な細胞タイプに対して低い細胞毒性と高いトランスフェクション効率を備えている必要があります。

製品番号 
製品名説明特長と利点
XTG360-ROX-tremeGENE® 360 DNAトランスフェクション試薬DNA、siRNA、miRNAおよびCRISPR/RNP複合体を多くの細胞株に導入するためのトランスフェクション用ポリマー試薬•siRNA/miRNA、プラスミドDNAおよびCRISPR/Cas9複合体の効率的な導入
• プラスミドDNAからの組換えタンパク質発現に
•細胞の形態変化の変形と細胞毒性を最小化
XTG9-RO


X-tremeGENE® 9 DNAトランスフェクション試薬非リポソーム系トランスフェクション試薬• 初代細胞および腫瘍細胞株において新たなトランスフェクション効率レベルを実現
• 細胞毒性の低い試薬を使用しており、生理学的条件に近いデータが得られる
• シンプルで一貫性のあるプロトコルを使用することで、実験スループットを向上させ、ターゲット評価が可能
XTGHP-RO


 
X-tremeGENE® HP DNA トランスフェクション試薬
非リポソーム系トランスフェクション試薬、動物由来成分不含• 初代細胞および腫瘍細胞株において新たなトランスフェクション効率レベルを実現
• 細胞毒性の低い試薬を使用しており、生理学的条件に近いデータが得られる
• シンプルで一貫性のあるプロトコルを使用することで、実験スループットを向上させ、ターゲット評価が可能
SITRAN-ROX-tremeGENE® siRNAトランスフェクション試薬脂質およびその他の成分の特殊な混合物、動物由来成分不含• 多くの異なる細胞タイプで遺伝子発現を90%以上ノックダウン
• siRNAおよびコントラクションによる遺伝子ノックダウンを単一の試薬で行うことで、実験の柔軟性を最大化
• 低い細胞毒性
• 血清の有無によらず作業できるため、培地を変更する必要なし
NPT01
NeuroPorter™ トランスフェクションキット初代ニューロン、グリア細胞および培養神経細胞株に、DNAを高効率かつ低毒性に導入するために最適化された独自のカチオン性脂質による独特の組成

低い細胞生存率、低いトランスフェクション効率、神経変性などの問題を解消
• 初代ニューロン、グリア細胞および培養神経細胞株に最適 
• 非常に低毒性で、神経変性や樹状突起除去が生じない
• 初代ニューロン、グリア細胞および培養神経細胞株へ効率的にDNAを導入
• 迅速かつ簡便に使用
• 血清および無血清トランスフェクションプロトコルの両方に対応
L3287

Escort™ IV トランスフェクション試薬独自のポリカチオン性脂質および中性の非トランスフェクション脂質による独特の組成• 一過性または安定的トランスフェクションに最適
• 幅広い種類の細胞株に適している
• 低毒性
• 血清および無血清トランスフェクションプロトコルの両方に対応
• 昆虫細胞に最適
L3037

Escort™ III トランスフェクション試薬独自のポリカチオン性脂質および中性の非トランスフェクション脂質による独特の組成• 一過性または安定的トランスフェクションに最適
• 幅広い種類の細胞株に適している
• 低毒性
• 血清および無血清トランスフェクションプロトコルの両方に対応
• PC-12細胞に最適
CAPHOS

リン酸カルシウムトランスフェクションキット真核細胞へのDNA導入に頻用される方法• 一過性または安定的トランスフェクションに最適
• 幅広い種類の細胞で再現性あり
• 多くの使用実績
• 安価
DOTAP
DOTAPリポソームトランスフェクション試薬DNA、RNAおよび他の負に荷電した分子を真核細胞へ導入するためのカチオン性リポソーム化合物• リン酸カルシウムやDEAEトランスフェクションと比較して、100倍高い効率
• リン酸カルシウムやDEAEトランスフェクションと比較して、低毒性
• 血清および無血清トランスフェクションプロトコルの両方に対応
• In-vivoトランスフェクションプロトコルに対応
XTG360-ROX-tremeGENE® 360 DNAトランスフェクション試薬DNA、siRNA、miRNAおよびCRISPR/RNP複合体を多様な細胞株に導入するための万能なポリマー試薬• siRNA/miRNA、プラスミドDNAおよびCRISPR/ Cas9複合体の効率的な導入
•  プラスミドDNAからの組換えタンパク質発現
•  細胞の形態変化と細胞毒性を最小化。
70967GeneJuice トランスフェクション試薬トランスフェクション効率を最大化し、簡便に使用でき、幅広い種類の哺乳類細胞において細胞毒性を最小化した、脂質をベースとしないトランスフェクション用合成試薬• 一過性または安定的トランスフェクションにおいて高いDNA導入効率
• 最小化された細胞毒性
• 血清または無血清培地のいずれにも対応
• シンプルなプロトコル—培地交換が不要
• 多ウェルプレートを用いた高スループットのトランスフェクションに最適
72181293-Free™トランスフェクション試薬懸濁培養液中のHEK293細胞へのトランスフェクションに最適化された、動物由来成分不含のポリカチオン性リポソームによるトランスフェクション試薬• 懸濁培養液中のHEK293細胞への一過性トランスフェクションに最適化
• 動物由来成分を含まない
• 最小化された細胞毒性
• 生産向けにスケールアップが容易なプロトコル
• 血清または無血清培地のいずれにも対応
• 培地交換が必要なし
72622-MNovaCHOice トランスフェクションキットチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いた哺乳類タンパク質の発現用に特別に開発されたトランスフェクション試薬• 特定の培地成分において発現を亢進させる
• 動物由来成分を含まない組成で構成
• 多くの既知組成培地に対応
• トランスフェクション後の培地交換が不要
• 一過性または安定的トランスフェクションの両方に最適
71115RiboJuice™ siRNA トランスフェクション試薬取扱いが容易で、毒性が最小限になるよう、最適化されたsiRNAトランスフェクション試薬• 幅広い種類の哺乳類細胞へsiRNAを高効率に導入し、目的の遺伝子を抑制
• GeneJuice® トランスフェクション試薬と適合しており、siRNAとプラスミドDNAの共導入に対応
• 多様な細胞株における遺伝子抑制に使用可能
71259Insect GeneJuice トランスフェクション試薬Sf9昆虫細胞へのトランスフェクション効率を最大化するよう最適化された独自のリポソーム溶液• 細胞毒性は極めて低い
• 血清または無血清培地における、一過性または安定的トランスフェクションに適している
• 組み換えバキュロウイルスの産生のために、線状化ウイルスDNAとプラスミドを共導入することに使用可能
• 懸濁培養細胞へのトランスフェクションによる大規模なタンパク質発現に最適
TR-1003ポリブレンインフェクション/トランスフェクション試薬レトロウイルスベクター感染効率を向上させる、哺乳類細胞への遺伝子導入のための高効率な方法• レトロウイルスの感染効率を向上させる
• 多様な細胞株へのDNA導入に使用可能
表1.トランスフェクション試薬の特徴と利点

一般的なプロトコル

リン酸カルシウム法とリポフェクション法の一般的なトランスフェクションプロトコルの比較を以下に示します。製品独自のプロトコルの詳細についてはお問い合わせください。

リン酸カルシウムトランスフェクションのプロトコル
脂質を用いたトランスフェクションのプロトコル
関連製品
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参考文献

1.
Derouazi M, Girard P, Van Tilborgh F, Iglesias K, Muller N, Bertschinger M, Wurm FM. 2004. Serum-free large-scale transient transfection of CHO cells. Biotechnol. Bioeng.. 87(4):537-545. https://doi.org/10.1002/bit.20161
2.
Ravid K, Freshney I. 1998. DNA Transfer to Cultured Cells. Wiley-Liss Inc..
3.
Felgner PL, Gadek TR, Holm M, Roman R, Chan HW, Wenz M, Northrop JP, Ringold GM, Danielsen M. 1987. Lipofection: a highly efficient, lipid-mediated DNA-transfection procedure.. Proceedings of the National Academy of Sciences. 84(21):7413-7417. https://doi.org/10.1073/pnas.84.21.7413
4.
Chang DC, Saunders JA, Chassy BM, Sowers AE. 1992. Overview of Electroporation and Electrofusion.1-6. https://doi.org/10.1016/b978-0-08-091727-6.50004-6
5.
Ausubel FM. 1995. Short Protocols in Molecular Biology. 3. New York: John Wiley & Sons.
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