金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)は、金属と有機リガンドが相互作用することで、活性炭やゼオライトをはるかに超える高表面積を持つ多孔質の配位ネットワーク構造をもつ材料で、ガス吸着や分離技術、センサーや触媒などへの応用が期待されている三次元ミクロポーラス材料です1-3。
最もよく研究されている2つのMOF、「MOF-5」5と「HKUST-1」6,10は1999年に初めて報告されました。MOF-5は、有機リンカーとしてテレフタル酸ジアニオンを持つZn(II)クラスターで構成されます(図1左)。表面への多層ガス吸着が可能で、MOF-5のBET表面積は約3,500 m2/gです。HKUST-1(別名:Basolite® C 300、688614)は、トリメシン酸トリアニオンでリンクされたpaddlewheel型Cu(II)ダイマーで構成され、その表面積は約1,900 m2/gです(図1右)。既知材料のなかで最も高表面積な物質の1つである「MOF-177(Basolite® Z377、794325」7は、MOF-5と同じ金属クラスターと、非直線的な構造の、H3BTBと呼ばれることもあるトリトピック(tritopic)カルボン酸の1,3,5-tris(4’-carboxyphenyl)benzene(686859)から構成されます(図2)。MOF-177は、MOF-5と同じ条件下(N,N-ジエチルホルムアミド、100℃)で合成され、そのBET表面積は4,750 m2/gに達します8。
図1代表的なMOFの合成方法
図2MOF-177(794325)の結晶構造
一般に、MOFは、塩基の存在下でソルボサーマル条件または水熱条件の下で合成されます。多くのMOFは、純粋なN,N-ジエチルホルムアミド(DEF)またはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒中で調製されますが、これらは高温で分解して緩やかにアミン塩基を生成し、これがリンカーの有機官能基を脱プロトン化して金属有機クラスターを生成します。
1,3,5-tris(4’-carboxyphenyl)benzene(H3BTB、686859)はMOFのビルディングブロックであり、近年、表面積が非常に広いMOFを作るリンカーとして使用されています。77 Kで7.5 %という極めて高い水素吸蔵能力を持つ水素吸着材料「MOF-177、794325」(表面積:約 5000 m2/g)は、そのようなMOFの一例です4。さらに、かご状有機分子による多孔性材料も報告されています9。
また、従来の方法とは対照的に、「二次構造単位を制御・利用する手法(CSA:Controlled SBU Approach)」と呼ばれる、あらかじめ調製したSBU(secondary building unit)前駆体に対して単純かつ様々な置換反応を行うことで、試行錯誤による材料探索を行わずにMOFを合成することも可能です。一般的な手法とは異なり、CSAは目的に適した金属中心を含むMOFを作製することのできる簡便な方法であり、化学安定性、触媒活性、磁性、極性などの性質を制御した、構造の類似した多様なMOFを得ることができます。(CSAの詳細はレビュー「MOF用無機二次構造単位(SBU)前駆体」をご参考ください。)
アルドリッチでは高性能MOF(MOF-1778,11、UMCM-1505、meso-MOF-16、NOTT-1017など)の合成に最適な金属塩、金属クラスター二次構造単位(SBU)、有機リンカー化合物を販売しております。
代表的なBasolite®の金属イオンとリンカーの種類
Basoliteシリーズのまとめ15-18 |
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