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グラスアイオノマーセメント(GIC)用の革新的材料:歯科材料への応用

Ganga Panambur, Nicolynn Davis, Viktor Balema, Yong Zhang, Doug Harris, Bryce Nelson

はじめに

歯科修復材料の開発は、生体適合性と自然な外観を持つ修復材の必要性から、非常に重要です。アマルガムやコンポジットレジンといった従来の歯科材料には、素材固有の短所があります。アマルガムは審美性に乏しく、水銀を含んでいるため、潜在的な毒性や体内への放出が懸念されます。レジンベースの材料はアマルガムに比べて審美性は向上しますが、レジンの接着は術者の技量に左右されやすく、また硬化に時間がかかります。グラスアイオノマーセメント(GIC:Glass ionomer cement)は、アマルガムやレジンコンポジットに代わる魅力的な歯科材料です。

グラスポリアルケノエートセメントとも呼ばれ、歯科用途に有用な特性を有しています。GICは主としてインプラント固定や再建的外科処置で使用され、窩洞(cavity)に充填することができ、接着剤を必要としません。組成を変えることで、窩底(cavity floor)の裏層、合着(luting)、支台築造(core build-up)、高いフッ素徐放性機能、小児向け歯科用セメントなど、様々な用途の要件に合わせて物理的性質を調整することができます。

GIC材料の利点

GICは以下の特徴から、多くの歯科治療用途での使用が増えています。

  • 安全性
    – 炎症反応や毒性を伴わない生体適合性
    – ビスフェノールAおよび水銀を含まない
  • 優れた物理的および化学的性質
    – 熱適合性と低熱膨張性
    – 石灰化組織、エナメル質、象牙質への接着
    – ガラス粒子および卑金属との接着性
    – 安定かつ高い耐久性のアイオノマー化学構造
  • 使いやすさ
    – 速い硬化性能
    – 粉体/液体の比率を変えることで、物理的性質を調整可能
    – 抗う蝕性(虫歯予防)のためのフッ素徐放性を付与可能
  • 優れた審美性

従来型アイオノマーの例

従来型GICは、ポリアルケン酸などの高分子アイオノマーと15~50 μmのケイ酸塩ガラス粒子の複合体が主流です。硬化時に、アイオノマーはガラス粒子と共にネットワーク構造を形成し、アイオノマーのカルボキシ基が金属イオンと架橋構造を作ることでネットワークの修飾因子として機能します。従来型アイオノマー(図1)は、不飽和のモノ、ジ、トリカルボン酸、またはポリホスホン酸のホモポリマーまたは共重合体です。

不飽和モノカルボン酸

アイオノマーは、GICの品質と特性において非常に重要な役割を果たしています。硬化時間や接着性、セメント強度といったGICの特性は、アイオノマーの組成、構造、粘性、分子量、ポリマー分散性に依存します。アイオノマーの純度、特に微量のモノマーやオリゴマーの含有量もまた、GICの最終的な特性を決定する上で非常に重要です。

次世代GICのための革新的アイオノマー

多くの利点があるにもかかわらず、従来型GICの機械的強度は依然として比較的弱いままです。そのため、破壊強度や靱性、耐久性も低くなっています。特に、既存のGICは引張強度が低いため、クラスIIの修復のような強い力がかかる部位での使用、とりわけ窩壁(cavity wall)の支持がない部位での使用には適しません。このような理由から、従来型アイオノマーの利用は、応力がかからない部位の修復に限定されています。これらの特性を改善し、破損や摩耗、腐食に対する耐性を向上させるために、新しいGICが開発されています。

改良されたGIC材料には以下のものがあります。

  • レジン添加型グラスアイオノマーセメント(RMGIC: resin-modified glass ionomer cement): 重合性レジンをGICに添加し、接着性や半透明性といった機械的および物理的性質を改善したもの。
  • ハイブリッドアイオノマーセメント(dual-curedおよびtri-cured):強度を高めるために、GICに光硬化性モノマーを添加したもので、酸-塩基アイオノマー反応と光硬化反応により硬化します。セメントの硬化が光化学重合反応により誘起され、反応初期における吸湿からセメントを保護します。tri-cured型GICでは、光開始反応および酸-塩基反応に加えて、化学硬化剤による硬化が起こります。
  • 強化型GIC:金属粉末または繊維をGICに添加することで、全体的な強度が向上します。また、アルミナ、シリカ、炭素繊維をGICに加えることで、曲げ強度が改善されます。
  • 生体活性グラスアイオノマー:GICに生体活性ガラスを添加することで、歯の生体活性や再生能力、修復を向上させることができます。生体活性ガラスは象牙質の再石灰化を助けます。

新規アイオノマーの設計

シグマ アルドリッチでは、アイオノマー共重合体の特性をより制御可能な合成方法を開発しています。所望のアイオノマー特性を再現性良く得るためには、堅牢なアイオノマー合成法の開発が重要です。従来のアイオノマー共重合体は、異なる反応性を有するアクリル酸モノマーとジ/トリカルボン酸モノマーから合成されています。そのため、従来のアイオノマー合成法では分子量や多分散性、組成を制御することが困難でした。最適化された手法では、物理的性質および分子物性が精密に制御されたアイオノマーを合成するために、反応条件やモノマー供給比、モノマーおよび触媒の添加が細かく制御されます。

弊社では現在、GICの性質を向上させるためにさらに結合部位を延長した新規モノマーを多数提供しています。これまでのアイオノマーの場合、カルボン酸がポリマー主鎖の近い位置にあります。そのため、セメントがガラス化する際、硬化反応中にカルボキシ基とイオンとの効果的な結合が妨げられ、金属イオンとの架橋構造の形成が減少します。様々な長さのスペーサーを持つカルボン酸モノマーの導入は、塩との架橋形成を促進し、セメントの特性を向上させます。

ポリアクリル酸を含まないアイオノマー

さらに、弊社ではポリアクリル酸を含まないアイオノマーを開発しています。ポリアクリル酸は、ppmオーダーの濃度でも生体活性を抑制し、GIC表面におけるアパタイトの形成を阻害することが知られています。ポリアクリル酸を含まない代替アイオノマーは、アパタイト形成を改善し、特性を向上させる可能性があります。

カスタム製造について

新規歯科材料の開発には、革新的で高品質な原材料が必要不可欠です。私たちは、歯科材料の研究開発や商品応用のために多数のアイオノマーおよびモノマーを取り揃えており、お客様の仕様に合わせたモノマーのカスタマイズや生産が可能です。

テクニカルサービス(jpts@merckgroup.com)までお問い合わせください。

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