太陽エネルギー変換技術は、最も優れた再生可能資源である「太陽」の膨大なエネルギーを利用する手段として大きな期待が寄せられています。有機太陽電池(OPV:organic photovoltaic)は、太陽エネルギーを電気エネルギーへと変換するデバイスの一つであり、近年では高効率な太陽電池デバイスの製造が可能となっています。印刷法やロール・ツー・ロール(roll to roll、R2R)法といった低コストで生産性の高い製造技術を用いることが可能で、低価格、軽量、しかもフレキシブルなデバイスを供給することができます。こうしたデバイスは、窓へのコーティングや壁紙、布や衣類など、様々な場所に組み込むことができます。<br><br>有機太陽電池は、一般的には1つもしくは複数の光活性材料が2つの電極に挟まれた構造をとります。図1は、典型的な二層型有機太陽電池デバイスの模式図です。
図1二層型有機太陽電池デバイスの構造
二層型OPV電池では、ドナーおよびアクセプター有機半導体からなる光活性層が太陽光を吸収することで光電流が発生します。ドナー材料(D)は電子を供与して主に正孔を輸送し、アクセプター材料(A)は電子を引き抜いて主に電子を輸送します。図2に示したように、これら光活性材料が太陽からのフォトンを吸収して電子を価電子帯から伝導帯へと励起させ、励起子(エキシトン)が形成されます(光吸収)。励起子は、濃度勾配にしたがってドナー/アクセプターの界面へと拡散し(励起子拡散)、フリーの正孔(正電荷担体)と電子(負電荷担体)とに分離します(電荷分離)。この正孔と電子が、ドナーまたはアクセプター相を通って各電極へ移動することで、光起電力が生じます(電荷抽出)。
図2二層型有機太陽電池の動作原理(D:ドナー、A:アクセプター)
有機太陽電池が無機太陽電池技術と比べて優れているのは、フレキシブルな大面積ソーラーモジュールでの利用が可能な点であり、特にロール・ツー・ロール生産が容易なことです。加えて、有機太陽電池はシリコンベースの材料と比べて原料コストが低く、デバイス製造も容易であるために、製造コストを削減することができます。しかしながら、シリコン系太陽電池の性能に近づくためには、有機太陽電池で用いられるドナーおよびアクセプター材料がいずれも吸光係数、安定性、膜形成の面で、特性がより改善される必要があります。太陽からの光子束(photon flux)の吸収体として最も重要な役割を担うのはドナーであるため、ドナー材料には太陽光スペクトルに一致するような広い波長領域における光吸収性を持つことが求められます。理想的なドナー/アクセプターの基本特性としては他に、電荷輸送を最大にするための高い正孔/電子移動度が挙げられます。OPVデバイス性能の飛躍的な向上には、バルクヘテロ接合構造(BHJ:bulk-heterojunction)や逆型デバイス構造などのさまざまな新規デバイス構造の利用、低バンドギャップ共役系ポリマーの開発、および革新的な有機低分子ドナー材料の開発などが必須です。
シグマアルドリッチでは、有機太陽電池を構成する各機能性材料をすべて取り揃えています(図3)。詳細は「関連情報」の各ページをご覧ください。
図3有機太陽電池に用いられる材料
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