有機合成化学

炭化水素触媒によるアルケンのエナンチオ選択的ジボロン化

炭化水素触媒によるアルケンのエナンチオ選択的ジボロン化

オレフィンのエナンチオ選択的ジボロン化は、不飽和炭化水素を有用性の高いキラルビルディングブロックに変換する有効な方法です。一般的には、遷移金属によるジボロン試薬の活性化を介する方法がとられます。James Morken教授らは、メタルフリーで安価な、炭化水素誘導触媒および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU, 139009)を触媒としたアルケンのエナンチオ選択的な1,2-ジボロン化反応を開発しました。この方法は擬似エナンチオグリコールとして、6-tert-ブチルジメチルシリル-1,2-ジヒドログルカール(THS-DHG, 901235)、および、ジヒドロラムナール(DHR, 901237)を触媒として用います。これらはジボロンの求核反応性を高め、ジボロン化反応の面選択性を制御するためのキラル触媒として、D-グルカールおよびL-ラムナールから誘導されています。多種の有機ボロン酸エステルが本反応で試されている中で、2,2’-ビ-1,3,2-ジオキサボリナン(B2(pro)2, 901464)が高いエナンチオ選択性を保ちながら、反応が効果的に進行することが分かりました。B2(pro)2の反応からの副生成物は1,3-プロパンジオールおよびボロン酸であり、水溶性のため容易に除去可能です。遷移金属を必要としない炭化水素触媒であるTBS-DHGおよびDHRは、より環境に優しい合成手段を提供するだけでなく、末端および分子内アルケンに対して、より穏やかな反応温度およびより短い反応時間で、より高いエナンチオ選択的な1,2-ジボロン化を促進します。

 

THS-DHG catalyst DHR catalyst
THS-DHG catalyst
901235
DHR catalyst
901237
B2(pro)2
901464

炭化水素触媒の利点

  • 反応操作が簡単、環境に優しく反応プロトコールのスケールアップが容易
  • 幅広いアルケン基質から得られる、高いエナンチオ選択性化合物
  • 副生成物が無害で水溶性のため、よりクリーンな反応が進行
  • 触媒添加量の低減、温和な反応温度、および短い反応時間

 

アルケンのエナンチオ選択的ジボロン化のプロセス

Scheme 1 : B2(pro)2と炭化水素触媒であるTBS-DHGやDHRを用いた、アルケンのエナンチオ選択的ジボロン化反応

  1. TBS-DHGまたはDHR触媒(0.10-0.15 eq.)、プロパンジオールジボロンB2(pro)2(2.0-3.0 eq.)、4Aモレキュラーシーブ、およびアルケン基質(1.0 eq.)を、グローブボックス内の反応フラスコに添加する。
  2. 酢酸エチルまたはTHFに溶解させ、0.10-0.15 eq.のDBUを添加する。
  3. 12時間攪拌する(室温または40℃)。
  4. 反応液を0℃に冷却し、溶媒で希釈後、3M水酸化ナトリウム溶液を加え、30%過酸化水素を滴下する。
  5. 室温になるまで温め、4時間攪拌する。
  6. 反応液を0℃に冷却し、チオ硫酸ナトリウム飽和水溶液を5分かけて滴下する。
  7. 酢酸エチルで希釈し有機層と水層に分液する。有機層から硫化ナトリウムで水分を除去、溶媒をエバポレーターで除去し最終化合物を得る。

 

末端および分子内アルケンのエナンチオ選択的ジボロン化反応

Scheme 2 : 炭化水素触媒による末端アルケンのエナンチオ選択的ジボロン化

 

 

Scheme 3 : 炭化水素触媒であるTBS-DHGを用いた分子内アルケンのエナンチオ選択的ジボロン化

 

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参考文献

  1. Morgan, J.B.; Miller, S.P.; Morken, J.P. J. Am.Chem. Soc. 2003, 125(29), 8702.
  2. Kliman, L.T.; Mlynarski, S.N.; Morken, J.P. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131(37), 13210.
  3. Toribatake, K.; Nishiyama, H. Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52(42), 11011.
  4. Lee, Y.; Jang, H.; Hoveyda, A.H. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131(51), 18234.
  5. Fang, L.; Yan, L.; Haeffner, F.; Morken, J.P. J. Am. Chem. Soc. 2016, 138(8), 2508.
  6. Yan, L.; Meng, Y.; Haeffner, F.; Leon, R.M.; Crockett, M.P.; Morken, J.P. J. Am. Chem. Soc. 2018, 140(10), 3663.

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