有機合成化学

幅広く応用可能なDoyleニッケル触媒前駆体
~取り扱い容易なニッケル触媒~

KitAlysis™ ハイスループット スクリーニング キット

特長:

  • 空気に安定
  • 多くの配位子との組み合わせが可能
  • 広い応用範囲

現代化学の花形である遷移金属触媒反応において、ニッケルの化学はこのジャンルを切り拓く大きな力となりました。しかし現在この分野では、パラジウムが不動の地位を築いています。その理由のひとつは、0価パラジウムの触媒前駆体としての有用性にあります。ニッケル触媒に比べ、0価パラジウムは反応の多様性、入手及び取り扱いの容易さ、安定性などに優れています。たとえばPd2(dba)3は安定な固体であり、適当な配位子と反応系中で混合するだけで触媒としてはたらく錯体を形成するため、面倒な事前の触媒調製を必要としません。

ところが、0価ニッケルはパラジウムに比べてより電気的に陽性であり、原子半径も小さいため、酸化的付加が速いというユニークな特性があります。たとえばパラジウム触媒では通常難しいとされる、塩化アリールを用いたクロスカップリング反応も、ニッケル触媒を用いればスムーズに進行します。またニッケルはパラジウムよりも原子量が小さく、はるかに安価なので、経済的なメリットは大きいといえます。

ただし、Pd2(dba)3のような優れた触媒前駆体が知られていないのが、ニッケルの大きな難点でした。たとえばNi(cod)2は最も広く使われるニッケルの触媒前駆体ですが、空気などに敏感であるため、取り扱いにはグローブボックスが必要になります。

しかし最近になり、パラジウム触媒に代わりうる性能を持つ、ニッケル触媒の優れた前駆体が、Abigail Doyleらのグループによって開発されました。[(TMEDA)Ni(o-tolyl)Cl](804398)は、用途が広いニッケル触媒前駆体であり、空気にも安定であるため、通常の実験設備で秤量・保存できる利点を有します。

Doyleの触媒前駆体(804398

この触媒前駆体は、TMEDAのニッケルに対する配位力が弱く容易に他の配位子(単座あるいは二座のホスフィン、ジイミン、含窒素ヘテロ環カルベン)に置き換わるため、鈴木-宮浦カップリング、Buchwald-Hartwigカップリング、熊田-玉尾-Corriuカップリング、根岸カップリング、薗頭カップリング、Heck反応、付加環化反応、アルデヒドとアルコールの酸化的カップリングなど、広い範囲の反応に応用が可能です1,2

反応は、基質及び触媒前駆体、配位子を適当な溶媒中で混合するのみで進行し、グローブボックスは必要ありません。また反応の収率は、これまで使われていた触媒前駆体である、Ni(cod)2やNiCl2(dme)を用いた場合に比べて遜色ないか、優れています。

アルドリッチでは、Doyleグループの協力の下、この革新的な触媒前駆体を新発売いたしました。

Doyleらの、ニッケルをベースとした遷移金属触媒について、より詳しくはProfessor Product Portal(英語サイト)ご覧下さい。本記事の作成に協力いただいた、Jason Shields氏に感謝いたします。

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