有機合成化学

創薬スクリーニングの新手法:DNA-Encoded Library(DEL)

創薬研究の初期段階を加速するDEL

DNA-Encoded Library(DEL)は創薬の初期段階において、ヒット化合物を発見するための一般的な手法として確立されてきています。フラグメント化合物と標的タンパク質との相互作用による結合を、数ヶ月にわたって個別にテストしていた従来のハイスループットスクリーニング(HTS)とは対照的に、DELによるスクリーニングでは、標的タンパク質に依存せず、膨大な数のフラグメント化合物を同時に調べることができます。 ライブラリーの各フラグメント化合物には、バーコードとなる特異的なDNAがタグづけされています。標的タンパク質を固体支持体に固定し、DELで処理します。非結合フラグメント化合物を洗い流した後、標的タンパク質との相互作用で結合したフラグメント化合物は、単離してバーコードを切り出した後に、PCRで増幅したDNA配列から化学構造を同定します。その後、標的タンパク質に対する活性評価試験を行います1

より信頼性の高い手軽なDELの登場

Sigma-AldrichとDyNAbind社は、多くの創薬研究者がDELの技術を広く利用できるようにするために、幅広いケミカルスペースをカバーする370,000以上のフラグメント化合物を選択してキット化しました。

高額な委託契約を必要とする大規模な医薬品ライブラリーの活用に比べて、DyNAbind社のDELキットは、よりリーズナブルな選択肢となるでしょう。一般的な生化学および分子生物学の機器とスキルを持つ研究室であれば、シークエンス用のキットを使用することができます。

ライブラリーは、DyNAbind社独自のダイナミックライブラリー技術に基づいて構築されています。この新しいDNAアセンブリにより、ライブラリーのフラグメント化合物が標的とするタンパク質に結合して安定するまで、ライブラリー化合物の組み合わせが動的に再編成(reshuffling)されます。その結果、S / N比が30倍以上向上し、より確実性の高い結果が得られます2,3

創薬研究用に最適化されたライブラリー

効果的な創薬ライブラリーは、化合物の数だけでなく品質も考慮する必要があります。DEL技術では、ライブラリーで一度に膨大な数の化合物を同時にスクリーニングできるため数の問題はありませんでしたが、品質の問題に苦労していました。DELライブラリーの多くは、スプリットプール合成法で構築されており、従来の医薬品を模したケミカルスペースの範囲をはるかに超えた化合物の生成が迅速に行われます。

一方、DyNAbind社のフラグメント化合物ライブラリーは、特定されたヒットが有効なリード化合物の出発点になるように設計されています。ライブラリーで使用されるすべてのフラグメント化合物は、数百の部分構造に対して事前にフィルタリングされており、擬陽性リスクが高いとされる化合物(PAINS)や毒性化合物は除外してあります。化合物の多様性を最大化するために、最終選定では化学構造フィンガープリントの助けを借りて、ライブラリー化合物群を決定しました。DyNAbind社のコレクションに含まれる2つのフラグメント化合物の平均的なTanimoto係数は0.2未満です。

以下のヒストグラムに見られる通り、ライブラリー化合物の物理化学的特性は、創薬研究の展開に柔軟性を持たせる多様性を備えています。

Physicochemical properties histogram

DEL技術の利点

  • 創薬研究の大規模なライブラリーへの簡単なアクセス
  • DyNAbind社独自のダイナミックライブラリー技術により、従来のDELアプローチよりも信頼性の高い結果を提供
  • 創薬研究と関連性の高いフラグメント化合物ライブラリー
  • 幅広いケミカルスペースに対応する高い化学的多様性

DyNAbind社のダイナミックフラグメントライブラリー技術

 Dynamic DNA-Encoded Libraries

図1. DyNAbind社のダイナミックフラグメントライブラリー技術
DNAがタグ付けされた化合物の2つのサブライブラリー(5'および3'末端修飾)は、ランダムに組み合わさりフラグメントペアになります。DNAの相互作用は一時的であるため、組み合わせのパターンは絶えず変わります。標的タンパク質を導入すると、熱力学的平衡が移動します。これは、親和性の高いフラグメントペアが標的への結合により安定化されるためです。最後に、フラグメントペアのタグ部分の相補鎖同士をライゲーションしPCR増幅することで、親和性の高いフラグメントペアに関する情報が得られます。

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