有機合成化学

可視光照射で利用可能な光レドックス触媒

KitAlysis™ ハイスループット スクリーニング キット

はじめに

有機合成におけるラジカル化学の応用については、これまでに広く研究開発が行われていますが、ラジカル開始剤の毒性が問題となる場合があります。通常、ほぼ化学量論量の開始剤が使用され、短波長の光源が必要です。一方、急成長している光触媒の分野では、可視光下でラジカル形成を引き起こす多数の遷移金属触媒や有機触媒が開発されています。可視光による光触媒は、有用な化学転換反応において広く利用されており、この分野の研究は現在も活発に進められています。

主な利用例

合成終盤における生物学的に興味深い低分子への小さなアルキル基の導入

薬学的活性を有する低分子の合成終盤における官能基化(LSF:Late-Stage Functionalization)によって、誘導体を初めから合成するよりも容易に、活性や毒性、薬物動態特性を改善することができます。フッ素やフッ化アルキル基の合成終盤における導入は、現在ではScripps研究所のBaranグループによって開発されたスルフィン酸亜鉛を用いることで容易に達成できますが、メチルやエチルなどの非フッ化物の小さなアルキル基の導入には未だ課題が残っています。特に、小さなアルキル基の導入は、対応するフッ化アルキル基の導入よりも生理化学的および安全面で優れた特性を示す化合物を得ることができます。

そこで、可視光による光レドックス反応を利用することで、薬学的に活性な低分子化合物へのメチル、エチルおよびシクロプロピル基の合成終盤での導入が試みられています。一般に、青色光照射およびラジカル前駆体である過酸化アルキルの存在下で、[Ir{dF(CF3)ppy}2(dtbpy)]PF6触媒(L511765)を用いてLSFに影響を与えずにアルキルラジカルが形成されます(すなわちアルキル基の導入が可能です)1

室温でのリグニン分解

リグニンは非化石燃料由来の有機炭素の30%以上を占める化合物で、化学選択的分解プロセスの開発によって、このバイオマス資源を炭素系原料物質の1次資源にできるかもしれません。最近、Stephensonグループが、我々Sigma-Aldrichの2つの製品を用いて、リグニン系モデル物質の選択的ワンポット分解を行っています。ベンジルアルコールの選択的酸化にBobbitt’s Salt(745537)を用い、続いて、光触媒による還元的C-O結合の開裂によってケトンとアルコールに分解します。この後者の反応は、可視光下でガスの発生なく行われました2

スチレンの分子間交差[2+2]付加環化反応

スチレンの交差[2+2]付加環化反応が、可視光下における適切なRu光触媒の利用によって高化学選択的に行われました。Tehshik Yoon教授は、Ru(bpm)32+L511781)を利用して非対称置換ブタンがグラムスケールで調製できることを示しました3

多様な利用例

この可視光による光触媒は、有機化学全般、更に多岐に渡って利用されています。その他の反応については以下の例があります4

  • 不活化されたヨウ化アルキル、ヨウ化アルケニル、ヨウ化アリールの還元
  • 水のコバルト媒介酸化による水素ガス生成
  • アルケンへのハロアルカン原子移動ラジカル付加反応
  • アルケンの形式的ヒドロアミノアルキル化

可視光レドックス反応のために設計された「マイクロフォトケミカルリアクター」を販売しています。


有機合成用光触媒製品については左記のページもご参考ください。

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References

  1. DiRocco, D. A.;  Dykstra, K.; Krska, S.; Vachal, P.; Conway, D. V.; Tudge, M. Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 4802. Abstract 
  2. Nguyen, J.; Matsuura, B.; Stephenson, C. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 1218. Abstract 
  3. Ischay, M. A.; Ament, M. S.; Yoon, T.P. Chem. Sci. 2012, 3, 2807. Abstract 
  4. J. J. Douglas; J. D. Nguyen; K. P. Cole; C. R. J. Stephenson Aldrichimica Acta, 2014, 47, 15.

 

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