有機合成化学

メタ位選択的C-Hアルキル化・アリール化を実現するノルボルネン誘導体

KitAlysis™ ハイスループット スクリーニング キット

はじめに

C-H結合活性化反応は、ここ20年ほどの間に大きく発展し、有機合成の方法論を大きく革新しつつあります。中でも代表的なのは、芳香族ケトンのオルト位を官能基化する反応です。カルボニル基などへの遷移金属原子の配位を利用し、隣接するC-H結合へ遷移金属元素が割り込む形で、結合の活性化を行なうというものです。このカルボニル基のように、反応位置を決める官能基を配向基(directing group)と呼びます。

C-H結合活性化反応の例

この反応は極めて有用ではありますが、反応位置は配向基のオルト位にほぼ限られていました。巨大な配向基を用い、メタ位を選択的に活性化する手法も報告されていますが、原子効率もよくない上、基質に制約があるなど、十分満足できるものではありませんでした。

しかし2015年、Jin-Quan Yuらのグループは、画期的な直接的メタ位C-H結合活性化法を報告しました。いったんパラジウム触媒によってオルト位のC-H結合を活性化し、生じたパラダサイクルにノルボルネンを作用させ、パラジウムをメタ位へと転位させるアプローチです1。これにより、ヨウ化アルキルあるいはヨウ化アリールを用いて、アリール酢酸誘導体のメタ位にアルキル基あるいはアリール基を選択的に導入することが可能になりました。

直接的メタ位C-H結合活性化法

しかしながら、β位に水素を持つヨウ化アルキル及びヨウ化アリールを試薬として用いた場合、反応途中でパラジウムが還元的脱離を起こす副反応が起こり、目的物の収率が低下するという問題がありました。

この合成的に重要なメタ位C-H活性化反応改良のため、Yu研究室では配位子及び触媒、反応の媒介役となるノルボルネンなどの検討を推し進めました。結果、2-カルボメトキシノルボルネン(ALD00510)及びキノリン骨格を持った配位子(ALD000042が、優れた結果を与えることがわかりました。この先進的な反応系は、広い適用範囲と優れた反応効率で、Pd(II)触媒によるメタ位C(sp2)-Hのアルキル化・アリール化を可能とします。この反応に用いる下図の化合物は、いずれもアルドリッチより入手可能です。

ノルボルネン誘導体

特長

  • 新たなノルボルネン誘導体は、以前は反応が進行しにくかったヨウ化アルキル・ヨウ化アリールに対しても適用可能
  • 最適化されたキノリン配位子は、ホスフィン配位子やカルベン配位子では得られない優れた反応性を実現
  • 大きく改善された基質の適用範囲及び反応効率

主な応用例

  • ノルボルネンを媒介とするメタ位C-H活性化反応において、キノリン骨格の配位子ALD00004が最も優れた反応性を示すことを確認後、Yuと共同研究者らはノルボルネンの系統的な最適化を行い、2-カルボメトキシノルボルネン(ALD00510)を発見しました。この組み合わせは最高の収率が得られ、触媒量の使用でも十分な収率で目的の生成物が得られています(1.5当量使用した場合収率97%、0.5当量では72%)2
  • 最適化された条件では、芳香族アミドのメタ位に、広い範囲のアルキル基あるいはアリール基を導入することができます。ヨウ化アルキルとしては、Cl, OBn, NPhth, CN, CF3, CO2Me及びケタールなどの置換基を持つものが利用可能です。また、フェニルアセタミド誘導体を含めた、アミド置換基を持った基質も、問題なく反応が進行します。
  • 以前の、無置換ノルボルネンを用いるプロトコールでは、利用可能なヨウ化アリールに大きな制限がありました。この条件で効率よく反応するのは、オルト位に配向基(-CO2Meなど)を持ったものか、多数の電子求引基を持ったものに限られていたのです。しかし新しいプロトコールはこの大きな制約を乗り越え、広い範囲のヨウ化アリール化合物が利用可能となりました。これらの反応結果のうちいくつかを、下図に示します。

主な応用例

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