有機合成化学

光レドックス触媒

光レドックス触媒の紹介

光レドックス触媒反応は、ラジカル合成や光化学分野での発見を元にして、有機合成分野における強力な手法として注目されています。光レドックス触媒反応は、開殻系の反応を経て新しい結合を構築することを可能にし、ケミカルスペースの幅を広げる複雑な生成物合成を容易にします。可視光の存在下でラジカルを生成する多くの遷移金属錯体および有機触媒は、クロスカップリング、C-H結合活性化、アルケンおよびアレーン活性化、およびトリフルオロメチル化を含む、幅広い合成反応を促進することが報告されています。

新しいフォトリアクター:SynLED

光レドックス触媒分野における長年の課題は、同一反応条件の再現性でした。新しいフォトリアクター:SynLED(Z742680)は、小規模な光触媒反応スクリーニングと迅速なライブラリー生成を可能にすることで、反応条件の同一性や再現性を実現しています。SynLEDでは、2ドラム以下のシンチレーションまたはマイクロ波バイアル中にて、16通りの反応を平行して同時に進めることが可能です。各ウェルは、45度レンズを有する467.5nmを中心とする1WのLEDが備えられています。内蔵の冷却ファンとヒートシンクにより、反応温度を約30℃に保ちます。セットアップはIKAブランドのスターラーを含む、一般的なスターラーに合うように設計されています。

Advantages of SynLED Photoreactor

SynLEDの利点

  • 4x4アレイにより16通りの反応を同時に実施
  • 底部に備え付けられた青色LED(465-470nm)により均一強度の光照射
  • 内蔵の冷却ファンにより反応中の温度を均一にコントロール

代表的な触媒とその応用例

生理活性物質に対する短鎖アルキル基の合成終盤での導入

薬効のある生理活性物質の合成終盤での官能基化(LSF, Late Stage Functionalization)は、類似化合物を一から合成するよりも、効率的に毒性および薬物動態プロファイルを提供することができます。フッ素およびフッ素化アルキル基によるLSFは、Baran教授らにより開発されたスルフィン酸亜鉛誘導体を用いることで容易になりましたが、メチル基およびエチル基のように短い非フッ素アルキル基によるLSFは未だに最適な方法がありません。つまり、短いアルキル基の導入が容易になることで、フッ素化アルキル基の導入より有利な物理化学的および安全性を持つ、生理活性物質合成の可能性が広がります。

最終的に、薬効のある生理活性物質に対するメチル、エチルおよびシクロプロピル基によるLSFは、光レドックス触媒反応により達成されました。実際に、青色光および過酸化物アルキルラジカル前駆体の存在下で、新たに入手可能となった [Ir{dF(CF3)ppy}2dtbpy)]PF6触媒(747793)により必要なアルキルラジカルを発生させます。この方法は、従来であればLSFには適さない方法でした1

 

室温におけるリグニン分解のための合成戦略

リグニンは非化石燃料ベースの有機炭素の30%を占める物質であり、このバイオマスは化学選択的な分解プロセスが確立されれば、炭素の主要な供給源となり得ます。近年、Stephenson教授らは、リグニン型のモデル化合物を選択的に1ポットの反応で分解するための方法を確立しました。本手法の中で、ベンジルアルコールの選択的酸化のためにBobbitt’s Saltが用いられ、続いてケトンとアルコール分解物への選択的C-O結合開裂には、光レドックス触媒反応が用いられました2

スチレンの分子間[2 + 2]環化付加反応

スチレンの分子間[2 + 2]環化付加反応は、適切に調整されたRuベースの光触媒を用いた選択的反応により達成されました。Tehshik Yoon教授らにより、 Ru(bpm)3を用いて非対称に置換されたブタンが合成されました。

 

多様なアプリケーション

光レドックス触媒は、有機合成化学で幅広く応用されています。現在、上述以外にも以下のようなアプリケーションが報告されています。

  • 未活性化アルキル、アルケニルおよびヨウ化アリールの還元
  • H2ガス製造のための水の酸化
  • アルケンへのハロアルカンの原子移動ラジカル付加反応
  • アルケンのヒドロアミノアルキル化

製品

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参考文献

  1. DiRocco, D. A.;  Dykstra, K.; Krska, S.; Vachal, P.; Conway, D. V.; Tudge, M. Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 4802. Abstract
  2. Nguyen, J.; Matsuura, B.; Stephenson, C. J. Am. Chem. Soc. 2014, 136, 1218. Abstract
  3. Ischay, M. A.; Ament, M. S.; Yoon, T.P. Chem. Sci. 2012, 3, 2807. Abstract

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