カスタムオリゴDNA

FAQ・技術情報

FAQ(よくいただく質問とその答え)

技術情報

混合塩基の国際表記と修飾サービスの記号

混合塩基の国際表記(上段:記号/下段:塩基の種類)

B D H I K M N R
C,G,T A,G,T         
A,C,T dI(Inosine) G,T A,C A,C,G,T A,G
 
S U V W Y      
C,G
dU(Uracil) 
A,C,G A,T
C,T      
 

修飾サービスについて

詳細は下記をご参照ください
カスタムDNAオリゴヌクレオチドの修飾

 

オリゴDNAの定量

合成・精製が終了したオリゴDNAはその一部を希釈しODを測定します。作業者によるエラーを無くし、且つ均一な誤差範囲に収まるよう、すべてのオリゴDNAはロボットにて希釈・測定が行われています。測定値は自動的に製造用データーベースに取り込まれ、塩基組成や配列に基づきモル収量、μg などが計算されます。
OD260=1.0の場合、一般に一本鎖DNAは30~37μg、二本鎖DNAは50μg、RNAは40μgに相当すると言われます。しかしオリゴヌクレオチドの場合は、下表のように塩基によりそれぞれの吸光係数は大きく異なるため、塩基組成による誤差が無視できません。
また、下表の吸光係数はpH=7.0のものであり、この値はpHやイオン強度の変化により激しく変動します。
※OD260とは光路長が1cmのときの、UV260nmの吸光度の意味です。

A C G T
15,400 7,400 11,500 8,700
Nucleotide Extinction Coefficients at 260 nm
 
  3' base
A C G T
5' base A 13,700 10,600 12,500 11,400
C 10,600 7,300 9,000 7,600
G 12,600 8,800 10,800 10,000
T 11,700 8,100 9,500 8,400
Pairwise extinction coefficients
 

詳細は下記をご参照ください
オリゴヌクレオチドの定量化

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Tm値の計算

オリゴヌクレオチドの融解温度Tm(melting temperature)は、PCRにおけるアニーリング温度の設定や、サザン、ノーザンブロット等のハイブリダイゼーションにおいて、有用な数値のひとつです。

 

Oligo Evaluator™
DNA Calculatorが新機能を追加してリニューアル!

【主な機能】
Analysis:分子量、Tm値、ダイマー、ヘアピン予測等。DNA/RNA/特殊塩基にも対応します。
Resuspension:核酸の溶解液量の計算をサポートします。
Dilution:核酸溶液の希釈計算をサポートします。
*オリゴ購入の会員登録とは別にユーザー登録が必要となります。
大変お手数ですがリンク先からご登録の上、ご利用ください。



DNAのTm値を算出するには

オリゴヌクレオチドの「融解温度(Tm値)」とは、オリゴヌクレオチド分子の50%が完全に相補的な分子と二本鎖を形成し、残りの50%が溶液中に浮遊しているという状態になる温度です。Tm値を知っておくことは、分子生物学における複数の技法(PCR、サザンブロッティング、in situハイブリダイゼーションなど)において非常に重要です。これらの古典的技法の一部は、例えば次世代シーケンシングで使用するサンプルのライブラリーのPCRによる準備など、新しい技法との併用により、現在も広く使われています。

Tm値を決定するための実験手法として最も一般的なのは、オリゴヌクレオチド分子とその相補的なヌクレオチド分子の吸光度の変化を温度の関数として測定するというものです(図1)。実験的に決定されたTm値が最も正確ではあるものの、ルーティンワークとして古典的な分子生物学的技法を用いる際には必要ではありません。

オリゴヌクレオチドのTm値を決定する実験の例

図1 オリゴヌクレオチドのTm値を決定する実験の例 測定は紫外可視分光光度計中の恒温セル内で実施される。Tm値は、融解曲線上の二本鎖DNA(dsDNA)領域と一本鎖DNA(ssDNA)領域の間のプラトー部の中点の温度。

理論的手法は、融解に影響を与える因子(分子の濃度、配列長、組成塩基、イオン強度など)だけでなく、使用が見込まれる技法も考慮するものであれば、期待されるTm値の算出に用いることができます。

詳細はこちらをご参照ください

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保存と溶解方法

シグマ アルドリッチ ジャパンのオリゴDNAは以下の状態で出荷しております。

未修飾オリゴDNA

<再懸濁>
溶液中に溶かした状態での輸送の要求がない限り、チオール基による修飾のあるもの以外のすべての一本鎖DNAオリゴヌクレオチドが乾燥状態で輸送され、再懸濁すればすぐに使用できるようになっています(チオール基による修飾のあるものの活性化については、以下の還元プロトコルをご覧ください)。再懸濁の際は、TE(10 mM Tris、pH 7.5~8.0、1 mM EDTA)やTris(10 mM Tris-HCl、pH 8.0)といった弱い緩衝液の使用が望ましいですが、最適なのはTEです。TEが最終的な技法や用途にとって不適切である場合には、滅菌ヌクレアーゼフリー水が次に適した選択肢となります。

<保管>
表1に示すように、長期間保存の場合-20℃での保管を推奨します。実験グレードの水はわずかに酸性であることが多く、徐々にDNAを分解してしまうので、TEバッファーが最適です。また、乾燥状態のオリゴヌクレオチドが完全に乾燥していることは絶対になく、常にいくらかの湿気が残るので、次第に分解が進んでしまいます。ただし、少なくとも2年間は、乾燥、水中あるいは緩衝液中のいずれの保管であれ、大きな差が生じる可能性は低いです。

修飾オリゴDNA

<再懸濁>
修飾されたオリゴヌクレオチドはTEバッファー中で再懸濁してください。これは特に蛍光色素修飾の場合、蛍光の発光強度に対するpHの影響が大きいため、必須です。

<保管>
修飾オリゴヌクレオチドの安定性は、修飾がない場合と同様になっています。したがって、上記推奨事項に従った保管をしてください。蛍光標識のあるオリゴヌクレオチドの場合は、光退色を防ぐために暗所で保管してください。

<蛍光色素修飾のある分子を扱う場合>
蛍光色素修飾のある分子を扱う場合、光退色を防ぐため、元々入れられていた褐色チューブ中で保管してください。透明なチューブに移した場合は、アルミホイルで包んで保管してください。

二本鎖オリゴヌクレオチド

弊社の研究者たちは、二本鎖siRNAを-20°Cの乾燥状態で保管すれば、少なくとも3年間は安定であることを発見しています。二本鎖DNAも同程度、場合によってはさらに長期間安定なはずです。(ここに示した値は推定値であり、保証されているものではありません。実験により決定され、保証された使用期限をお知りになりたい場合は、customjp.ts@merckgroup.comまでお問い合わせください。

単回使用向けアリコート

凍結と解凍を繰り返すとゲノムDNAが分解されてしまい、その理由はおそらく氷の結晶の形成による分子の切断だと考えられていますが1、弊社の研究者たちは、こうした凍結と解凍の繰り返しの悪影響をオリゴヌクレオチドは受けないということを発見しています。それでも、オリゴヌクレオチドを単回使用のためのアリコートとして小分けしてから-20°Cで凍結保存することがベストプラクティスです。これによって、クロスコンタミネーションや液こぼれといったアクシデントによる無駄を防ぐことができます。例えば、一つのチューブに全量を入れていたオリゴヌクレオチドを床にこぼしてしまった場合、再注文しなければなりませんが、一つの分注アリコートをこぼした場合であれば、単にもう一つ分注チューブを解凍すれば済みます。

保存方法

DNAオリゴヌクレオチドは比較的に安定している分子ですが(表1)、確実に実験のトラブルを回避し、保存可能期間を最大限にするためには、それぞれいくつかの具体的な取り扱いおよび保管技術が求められます。

表1 修飾のない一本鎖DNAオリゴヌクレオチドを適切に保管した場合のおよその保存可能期間。ここに示した値は推定値であり、保証されているものではありません。実験により決定され、保証された使用期限をお知りになりたい場合は、customjp.ts@merckgroup.comまでお問い合わせください。
 

保管条件 期間
-20°C(冷凍庫) 乾燥した固体の状態または溶液中(水またはTEバッファー中)で約2年間安定
4°C(冷蔵庫) 乾燥した固体の状態または溶液中(水またはTEバッファー中)で約1年間安定
室温 乾燥した固体の状態またはTEバッファー中で約3~6ヵ月間安定
高温(温度管理のない輸送または倉庫での保管) 乾燥した固体の状態またはTEバッファー中で約1~2ヵ月間安定

溶解方法
溶媒は以下を参考にご選択ください。

オリゴヌクレオチドの量は、チューブのラベルおよびテクニカルデータシートの両方に記載されていますが、光学密度(OD)、マイクログラム(μg、または転じてμg/OD)、ナノモル(nmol)など、さまざまな単位で示されています。私たちの定量手法は、紫外可視分光光度計によって波長260 nmの光の吸光度を測定し、OD値を得るところから始まります。他の単位の値は、いずれもこのOD値から導くことができます(詳細は「オリゴヌクレオチドの定量化」をご覧ください)。特に有用なnmolも含め、これらの単位は、直接ストック溶液の調製に使用できます。

濃度を表す単位は数多くありますが、オリゴヌクレオチドの濃度を表すために最も広く使われているのは、おそらくマイクロモル毎リットル(μM)でしょう。ここでは、あらかじめ決定されていて、チューブのラベルやテクニカルデータシートに表示されているnmol単位の量を出発点とし、100 μMストック溶液に加えて10 μM実験用溶液を作るために必要な長い計算手順と簡易版計算式の両方を例示します。他の単位を用いた濃度計算をはじめ、より迅速に結果を得る方法については、OligoEvaluator™の再懸濁および希釈モジュールをご利用ください。

<再懸濁のための長い計算手順の例>

次元解析の際には、換算上の混乱を防ぐため、基本単位を用いることが望ましいです。nmol、μMおよびその他の補助的な単位の間で直接換算しようとすると、ミスが起こりやすくなります。

ステップ1―チューブのラベルやテクニカルデータシートに表示されているnmol表示の数値をmolに換算する

例として使っている仮定上のオリゴヌクレオチドが49.9 nmolという量だけ届いたとします。

 

ステップ2―求めているストック溶液濃度である100 μMをモル濃度換算する

 

ステップ3―モル濃度換算した求めているストック溶液濃度とモル数を使い、再懸濁に必要な液量をリットルで算出する

 

ステップ4―リットルをマイクロリットル(μL)に換算する

 

<再懸濁のための簡易版計算式の例>

ステップ1―チューブのラベルやテクニカルデータシートに表示されているnmol表示の数値を10倍し、再懸濁に必要な液量をマイクロリットル単位で得る

 

この簡易版計算式は、100 μMの溶液の調製にしか適用できません。

今回の事例では、499 μLの水または緩衝液をオリゴヌクレオチドの入ったチューブに加え、ボルテックスミキサーで確実に十分撹拌します。

再懸濁に関する追加考察

上記の再懸濁の例では100 μMという濃度を使いましたが、これは100 μMが一般的に使われる実験室のストック溶液濃度であるためです。100 μMをはるかに下回る濃度のストック溶液を作ると、再懸濁に必要な液量が、チューブの容量である2 mLをすぐに超えてしまうために問題となります。例えば、20 μMのストック溶液を同じオリゴヌクレオチドについて作ろうとすると、現在の49.9 nmolであれば水または緩衝液を2.49 mL追加しないといけなくなります。

100 μMを上回る濃度のストック溶液を作ることにも同様に問題が生じることがあります。例えば、1000 μMのストック溶液を同じオリゴヌクレオチドについて作ろうとすると、水または緩衝液が49.9 μL必要ですが、これほど液量が少ないと、2 mLチューブから正確にピペットで必要量を採ることが困難になる場合があります。

実際に100 μMのストック溶液を作る際には、再懸濁に必要な液量がテクニカルデータシートに書かれているので、計算やオンラインツールは不要です。

<実験用溶液のための計算の例>

この例では、PCRの際に一般的である最終濃度10 μMの実験用溶液の液量が20 μLであるという設定にします。

ステップ1―濃度と体積の積が一定であることを示す以下の関係式を用いる

今回の例では、ストック溶液2 μLを反応用チューブに入れたうえで、水または緩衝液、そしてその他の添加成分を加え、最終液量が20 μLになるようにします。

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用途別 精製方法の選択目安

シグマ アルドリッチ ジャパンでは、脱塩、RP1(逆相カートリッジ)、HPLC、PAGEの4種類の精製方法をご用意致しております。また、受注後、塩基配列などの問題により、ご注文以外の精製法への変更をお勧めする場合があります。ご了承ください。以下は、各実験用途にて推奨する精製グレード選択表です。

表1 技法や用途ごとに推奨される精製法
 

Application Desalt Cartridge HPLC PAGE NGSO
Standard PCR & RT-PCR X X      
Sequencing Primers / Probes X X      
qPCR Probes   X    
Cloning     X X  
Microarrays X X X X  
siRNA Screening X X      
Antisense   X X  
Bioengineering   X X  
Crystallography, NMR X X  
in vivo Application   X    
NGS Adapters       X
 

脱塩法

帯電をなくすため、すべてのオリゴヌクレオチドを脱塩処理しています。

ホスホジエステル骨格の脱保護により生じるアクリロニトリルなど、分離や脱保護の後に残留する副生成物である低分子不純物は、脱塩によって除去することができます。PCRをはじめ、多くの技法や用途において、塩基数が35以下のオリゴヌクレオチドの場合は脱塩による精製が許容されています。これは、完全長の分子が圧倒的に多いために、いかなるショートマー(元のオリゴヌクレオチドよりも一つ以上のヌクレオシドが欠損している分子)の影響も非常に小さくなることによります(収量計算の詳細についてはこちら)。塩基数が35を超えるオリゴヌクレオチドの場合は、逆相抽出カートリッジの使用(カートリッジ法)など、さらなる精製が必要になることがあります。

脱塩のみによる精製の場合、ショートマーを除去できないため、保証できる純度の値は示されません。

 

カートリッジ法

逆相抽出カートリッジによる精製を行えば、ワンランク上の純度が得られます(図1)。この分離法の原理は、(疎水基である5’-DMT基を持つ)完全長の分子と(5’-DMT基を持たない)ショートマーの疎水性の差を用いています。配列が完全な分子はカラムに吸着しますが、ショートマーは洗い流されるのです。カートリッジ内の5’-DMTを分子から切断すると、配列が完全な、求める分子が溶出し回収できます。また、5’末端でシアニンやWellREDといった特定の色素による修飾を受けているオリゴヌクレオチドは、色素の構成成分によって疎水性を得るため、カートリッジ法による精製が可能です。

オリゴヌクレオチド分子の長さが増すにつれ、5’-DMT基を構造に含むショートマー(末端にキャップ構造のない配列から生じる産物)の割合が高まりやすくなります。これらの望ましくない配列の分子は、カートリッジ法では除去できません。したがって、長いオリゴヌクレオチド分子については高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)が推奨されます。

カートリッジ法による精製については、保証できる純度の値は示されません。しかしながら長年の経験により、完全長の分子の純度が一般に65~80%となることが(HPLCによる分析の結果)分かっています。

 

RP-HPLC

逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC)の原理は逆相抽出カートリッジと同じですが(図1)、より分離度が高いために精製後の純度も高くなります。RP-HPLCでは、色素修飾されたオリゴヌクレオチドをその固有の疎水性によって、色素修飾のないオリゴヌクレオチド、ショートマー、そして欠損のあるショートマーから非常に効果的に分離できるので、色素修飾されたオリゴヌクレオチドの効率的な精製法となります。さらに、RP-HPLCはカラムの容量と分離度が優れているので、大規模な合成の場合に選ばれる精製法です。ただし、疎水性に基づく分離では、オリゴヌクレオチド分子の長さが増すにつれて分離度が低下します。したがって、塩基数が50を超えるオリゴヌクレオチドの精製には一般にRP-HPLCは推奨されません。長いオリゴヌクレオチド分子(最大塩基数80、場合によってはそれ以上)をRP-HPLCによって精製することは可能ではあるものの、純度および収量が低下することがあります。

標準的なRP-HPLCでは、完全長の分子の純度が一般に85%を超えることが(HPLCによる分析の結果)分かっています。配列の特性によっては、さらに高い純度を得ることが可能です。RP-HPLCが提供できる正確な精製純度と、関連する料金については、お近くの営業担当またはカスタマーサービス担当までお問い合わせください。

図1 逆相抽出カートリッジおよびRP-HPLCによる分離
標準的なカートリッジ法とRP-HPLCのいずれについても、配列に5’-DMT基が結合していることで精製が進む。1)カラムに入ると、求めている配列の分子に結合している疎水性の5’-DMT基が固定相樹脂に吸着する。2)5’-DMT基を持たないショートマーは樹脂と作用し合えないので移動相を通り、洗い流されてしまう。3)5’-DMTが切断され、求めている配列の分子が溶出する。

 

 

IE-HPLC

イオン交換クロマトグラフィー(IE-HPLC、ここでは厳密には陰イオン交換HPLC)は、オリゴヌクレオチド骨格中の帯電している官能基(リン酸基)の数に従って精製します。陰イオン交換法では、第四級アンモニウム基固定相に、塩濃度勾配のある移動相を流します(図2)。IE-HPLCは少量サンプルの精製であれば非常に優れた分離度を示しますが、オリゴヌクレオチド分子の長さが制約となります。通常は塩基数40以下でしか使えません。これよりも配列が長いオリゴヌクレオチドでは、完全な配列の分子とショートマーの分離度が低下するので、純度が低下し安定しません。

RP-HPLCではなくIE-HPLCを使用する場合、その第一の理由は、二次構造をとるオリゴヌクレオチド分子を多く含むサンプルを精製するためです。二次構造は、GC含量が高い配列でよく見られます。IE-HPLCでは、移動相のpHが強アルカリ性に傾いており、水素結合を切断し、ひいては二次構造を壊すことができるため、二次構造をとるオリゴヌクレオチドにも効果的です。IE-HPLCの後にRP-HPLCを実施することで、分離のプロセスをさらに強化することも可能です。

完全長の分子について保証できる純度の値についてはお問い合わせください。

図2 IE-HPLCによる分離
IE-HPLCによる精製は配列上に5’-DMT基がなくても進む。1)カラムに入ると、未精製混合液中の多価陰イオン性リン酸基が、固定相の多価陽イオン性樹脂と相互作用する。2)移動相のイオン強度が増すにつれ、ショートマーが洗い流される。3)さらにイオン強度が増した後、より長い配列の、求めている分子が最後に溶出する。

 

PAGE

ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)では、変性条件を活用し、電荷ではなく分子量に従ってオリゴヌクレオチドを分離します(図3)。条件が揃えば、一塩基以外が同一なオリゴヌクレオチド同士の分離も可能です。分子の大きさに従う素晴らしい分離度によって、一般にPAGEは他のどの精製法よりも高い純度を実現することが可能です。PAGEでは、オリゴヌクレオチドの抽出に求められる手順が複雑なので、最低収量は他の手法よりも小さくなります。高い純度が求められる場合、また、塩基数が50以上の配列を扱う場合、PAGEが推奨されます。

通常、PAGEでは完全長の分子の純度が95%を超えます。PAGEによる精製が提供できる正確な純度と、関連する料金については、お近くの営業担当またはカスタマーサービス担当までお問い合わせください。

 

図3 PAGEによる分離
ゲルに電場がかけられると多価陰イオン性のオリゴヌクレオチドは、正に帯電した陽極に向かって移動する。電荷は未精製混合液全体に均一に分布しているため、異なる配列のさまざまな分子が、分子量、すなわち配列の長さに従って分離される。求めている配列は、配列長が長いためショートマーよりも移動が遅くなる。

 

ゲルろ過

ゲルろ過が推奨されるのは、生体内の実験での使用を意図する少量オリゴヌクレオチドです(図4)。製造拠点にもよりますが、生体内でのアンチセンスの研究でよく使われるホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(S化オリゴ)はゲルろ過が可能です(お客様の地域でゲルろ過処理のご利用が可能かどうかは、お近くの営業担当またはカスタマーサービス担当までお問い合わせください)。ゲルろ過では、生成時に使用した溶媒だけでなく、合成、分離および脱保護反応の微量な副生成物(標準的な脱塩では取り除けなかったもの)も除去できます。これらの微量な副生成物は、生体外では通常無害ですが、生体内では細胞毒性を示すことがあります。

このほか、より大容量製品となっている弊社のiScale Oligos™は、生体内での使用向けにさらなる選択肢を提供しています。

図4 ゲルろ過による分離
ゲルろ過による精製は配列上に5’-DMT基がなくても進む。1)カラムに入ると、求めている配列の分子とさまざまな副生成物や溶媒などの不純物を含む混合液が固定相の樹脂の中を移動する。2)移動相が流れるにつれ、小分子不純物はゲルの孔に入り、ゲル基質中を進む速度が遅くなる。一方、求めている配列の分子はゲルの孔には入らないので、ゲル基質中を先に移動して最初に溶出する。3)不純物はゲルの孔を通過してから基質中を移動し、最後に流出する。

 

次世代シーケンシング用オリゴ

ここまでご案内してきた従来の精製手法は、分子の小さい不純物の除去に加え、完全長の分子の割合を望ましいレベルまで高めることに効果を発揮します。一方で、次世代シーケンシング(NGS)をはじめとする、非常に高感度な技法の応用が成長を続けているため、クロスコンタミネーションという新たなタイプの不純物混入の問題が大きくなっています。従来の精製手法は、クロスコンタミネーションを起こすオリゴヌクレオチドの除去には効果を発揮できません。

オリゴヌクレオチドのハイスループット製造施設であれば、少量のクロスコンタミネーションはどこでも現実に起こり得ます。通常は、PCRなどといった従来の技法や用途に対してこうした少量のクロスコンタミネーションが明確な影響を与えることはありません。しかし、ほとんどのNGSプラットフォームはマルチプレックスのためにインデックス(バーコード)アダプターを使っているので、シーケンシングの標的分子に(クロスコンタミネーションによって)本来とは異なる少量の誤ったバーコードが紐づけられてしまうことがあります。これが起きると、データ解析段階まで問題が検知できないために時間と費用がかかってしまうことになります。

この問題を回避するために開発されたのが次世代シーケンシング用オリゴ(NGSO)です。NGSOは、専用の精製手法を用いて製造されています。NGSアダプターとしての使用が意図されるすべてのオリゴヌクレオチドに対する使用が推奨されます。

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チオールオリゴの取扱い

チオールオリゴ(SH修飾オリゴ)DNAは、輸送中・保存中の酸化反応を防ぐために、保護基をつけたまま出荷しております。脱保護、還元方法については、オリゴ出荷時に還元反応説明書とNAP(脱塩)カラムを同封致しますので、ご使用直前にお客様ご自身にて還元、脱塩を行っていただくようお願い致します。また、発送は室温にて行いますが、到着後すぐにご使用にならない場合は乾燥状態のまま-20℃以下にて保存してください。

 

脱保護基・還元手順

  1. 終濃度 0.072MのDTT*で、室温にて1時間インキュベート。
  2. その後余剰のDTTなどを取り除く為、ゲルろ過カラム(Napカラム**)で精製してください。その際にご使用になるBufferや水はS-Sダイマー形成を緩和する為、超音波洗浄器などを用いて脱気しておきます。
  3. 収量チェック (吸光度測定)。

【注意点】

  • この方法での回収率は 通常70-80%以上ですが、オリゴDNAの長さなどで回収率は変動します。実験に必要な量の1.5倍以上を還元処理することをお勧めします。
  • 残った溶液状のオリゴDNAは速かに-20℃以下で保存してください。

* DTT = Dithiothreitol
** NAPカラムはGEヘルスケア・ジャパン株式会社の製品です

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S化(ホスホロチオエート化)オリゴDNAについて

製造過程で混入するTEA(トリエチルアミン)や遊離保護基は生体内には存在しない物質であり、細胞や実験条件によってこれらの物質が何らかの悪影響を起こす可能性があります。弊社のS化オリゴDNAは、これらの物質を除いてありますので、お受け取り後のエタノール沈殿、ゲルろ過、ODの計り直しは一切不要、そのままご使用いただけます。

  • 様々なオプションをご用意しております
    蛍光色素、ビオチン、DIG、チオール、アミノ化などさまざまな修飾オプションや部分的なS化も可能です。透析処理などご希望の場合にも、別途お申し付けください。
  • 多量合成にも対応
    10μmolスケール・HPLC精製で 200 OD 保証。さらに多量に必要な場合は、お問い合わせください。

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アニーリング (二本鎖オリゴ、dsDNAの作成)

dsDNA作製の標準的な手順をご紹介します

 

DNAやRNAのアニーリング用機器および消耗品

  • ブロック恒温槽またはサーマルサイクラー
  • 2 mL遠心チューブ
  • ピペットチップ
  • Milli-Q® H2O
  • EDTA(製品番号E9884
  • NaCl(製品番号S3014
  • Trizma base(製品番号93362
  • 相補配列を持つ2種類の一本鎖オリゴヌクレオチド
 

DNAやRNAのアニーリング手法

アニーリングの工程は、ブロック恒温槽またはサーマルサイクラーのいずれかを用いた「溶解」と「アニーリング」という二段階に大きく分けられます。

オリゴヌクレオチドの溶解

各オリゴヌクレオチドはあらかじめ分量が計測されたうえで用意されてはいるものの、最良の結果を得るためには、反応時に各オリゴヌクレオチドを確実に等量ずつ加えられるよう、分光測色計を用いて量を確認しましょう。

  • 各オリゴヌクレオチドを所定量のアニーリングバッファー(組成は以下を参照のこと)で溶解し、それぞれ同じ濃度になるようにします。
  • 各オリゴヌクレオチドの濃度は、必要な二本鎖オリゴヌクレオチドの濃度の2倍とする必要があります。

<例>

必要とされている二本鎖オリゴヌクレオチドの濃度は50 μMです。

  1. オリゴヌクレオチド1:10.55 OD(312.6 μg、49.9 nmol)分光測色計を使って、ODを測定し、この値が正しいことを確認してください
  2. オリゴヌクレオチド2:9.04 OD(279.7 μg、45.9 nmol)分光測色計を使って、ODを測定し、この値が正しいことを確認してください
  3. 各オリゴヌクレオチドのストック溶液の濃度を、必要とされている二本鎖オリゴヌクレオチドの濃度の2倍にする必要があります。すなわち、いずれのストック溶液も濃度を100 μMにしなければなりません
    a.    *オリゴヌクレオチド1には、49.9 x 10 = 499 μLのアニーリングバッファーを加えて100 μMストック溶液を調製
    b.    オリゴヌクレオチド2には、45.9 x 10 = 459 μLのアニーリングバッファーを加えて100 μMストック溶液を調製

*この計算は簡略化しており、濃度100 μMの溶液を調製する場合にしか使用できません。具体例として示すためだけに用いたものですので、他の濃度のオリゴヌクレオチドの計算についての詳細は、「溶解方法」をご覧ください。

オリゴヌクレオチドのアニーリング

<ブロック恒温槽を使う場合>

  1. 等モル濃度のオリゴヌクレオチド溶液を等量ずつマイクロチューブに加えて撹拌します
  2. マイクロチューブを95 °Cで5分間インキュベーションします
  3. マイクロチューブを室温までゆっくり冷却させます(60分未満)

<サーマルサイクラーを使う場合>

ブロック恒温槽でもオリゴヌクレオチドのアニーリングはできますが、サーマルサイクラーを使うと、より工程の一貫性を保てます。

  1. 等モル濃度のオリゴヌクレオチド溶液を等量ずつPCRチューブに加えて撹拌します
  2. 以下の温度設定プログラムを組みます
    a.    95 °Cまで加熱後、2分間保温
    b.    45分間かけて25 °Cまで冷却
    c.    一時的な保管のために4 °Cまで冷却
  3. PCRチューブをさっと遠心分離機にかけ、蓋に残らないようにします

ブロック恒温槽またはサーマルサイクラーの使用後、二本鎖オリゴヌクレオチドは使用または保管が可能な状態になっています。オリゴヌクレオチドの保管についての詳細は、「保存方法」をご覧ください。

 

DNAアニーリング用バッファーの組成

すべてのバッファーをMilli-Q®水で調製してください。

アニーリングバッファーの組成(1倍)

  • 10 mM Tris、pH 7.5~8.0
  • 50 mM NaCl
  • 1 mM EDTA

リガーゼバッファーの組成(1倍)

主にT4 DNAリガーゼとともに使用するバッファーです。

  • 50 mM Tris-HCl、pH 7.5
  • 10 mM MgCl2
  • 1 mM ATP
  • 10 mM DTT

キナーゼバッファーの組成(1倍)

主にT4ポリヌクレオチドキナーゼとともに使用するバッファーです。

  • 70 mM Tris-HCl、pH 7.6
  • 10 mM MgCl2
  • 5 mM DTT

 

 

【注意】

  • わずかに含まれる合成エラーシーケンスやミスアニールDNAが、欠損や重複などを起こす場合があります。また、アニール操作中に生じる、二本鎖間の”浮き上がり”や”ズレ”が、クローニングの際のホストセル保有の酵素により、深刻なトラブルを引き起こす場合があります。発現などにご利用の際は、必ずシーケンスの確認を行なってください。
  • 制限酵素サイトを持つようにデザインする場合、効率の良い切断のために、その5'側は余分な塩基の付加が必要です。付加する塩基数は酵素により異なります。たとえばEco RIやBam HI、Kpn I等は通常3塩基程度で十分ですが、Hind III、Sma Iなどは4-5塩基以上必要です。Not I などは最低でも10塩基以上必要です。
  • 二次構造を作りやすい配列や、Long Sequence の場合は、一本鎖の鋳型配列を合成し、これをもとにPCRやその他のDNA Polymeraseで調整するほうが簡単です。
 

以下、プリントアウトして、実験ノートとしてお使い下さい。

 
Protocol for Annealing Oligonucleotides
Oligo Name :


Lot Number :


Total nmol :


Volume of Annealing Buffer added :


Oligo Name :


Lot Number :


Total nmol :


Volume of Annealing Buffer added :


Annealing Buffer : 10mM Tris, pH 7.5 - 8.0, 50mM NaCl, 1mM EDTA
または通常お使いの1x Ligase Buffer or 1 x Kinase Buffer

1xTE Buffer : 10mM Tris, pH 7.5 - 8.0, 1mM EDTA


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