研究者インタビュー

~脊髄性筋萎縮症の解明とその創薬を目指して~脊髄性筋萎縮症患者由来の線維芽細胞およびリンパ芽球におけるSMNタンパク質を検出

齋藤 加代子教授 東京女子医科大学附属 遺伝子医療センター

東京女子医科大学附属 遺伝子医療センターでは10万人に1人の頻度で発症する「脊髄性筋萎縮症」のメカニズムの解析と治療研究を実施しており、そのプロセス解明のツールの一つとして、イメージングフローサイトメーターが使用されています。今回、同センター長の齋藤加代子 教授に、イメージングフローサイトメーターの導入の背景や実際の使用状況についてお話を伺いました。

導入機器

イメージングフローサイトメーター FlowSight®およびImageStream®X Mark II

機種: FlowSight®
搭載レーザー: 405/488/642/785 nm

機種: ImageStream®X Mark II
搭載レーザー: 405/488/642/785 nm

 

――先生のご研究について簡単に教えてください。

齋藤 教授:
私たちは診療現場や臨床の窓口において遺伝子検査をベースとし、患者さんの診断や病因・病態、そして治療といったそれぞれのプロセスに関わるところの原因解明と治療法の確立を目指し、日々診療に携わりつつ研究に取り組んでいます。難病に挑戦することで最終的には治療および完治によって患者さんに安らぎを取り戻すことが使命であり、ゴールだと考えています。また、疾患を有する子供さんやそのご家族に希望を持ってもらいたいという想いが強くあります。さらに難病が治療できるようになれば、これらの手法が頻度の高い病気に対しても応用できる可能性もあり、希少疾患を解明することが多くの方々に有益な治療を享受いただけるようになると考えています。

 

導入の経緯・理由

治験の基礎研究を始めようとしている時期に学会でFlowSightを見たのが最初でした。
血液を使った細胞集団の画像解析と定量解析ができるのがいいと思いました。

――先生がイメージングフローサイトメーターを導入されたきっかけを教えてください。

齋藤 教授:
私たちが研究している脊髄性筋萎縮症では、サバイバルモーターニューロン(SMN)タンパク質の減少や欠損が発症に関与することが判っておりましたので、SMNタンパク質をバイオマーカーとして測定できないか?ということを考えました。しかも、その測定を血液で実施できるとさらによいと思ったのです。ちょうどその頃、学会でFlowSightを見かける機会がありました。解析を実施してもらったところ、核内小体の一つであるGem小体のスポットを確認でき、定量もできることがわかりました。ちょうど治験の基礎研究の開始前だったので、そのために使おうということになりました。

※Gem小体:脊髄性筋萎縮症の原因遺伝子SMN1遺伝子の遺伝子産物であるSMNタンパク質の局在が認められる部位。SMNのほかにGeminファミリー、snRNPsなどのタンパク質群もGem小体に局在する。筋萎縮性側索硬化症における運動神経細胞死ではGEM小体の減少が報告されている。

――学会でご覧になったのがFlowSightということで、最初はFlowSightでデモをさせていただきました。

齋藤 教授:
そうですね。デモをしていただいて満足のいく結果が出たのでこれはいいとなってFlowSightを購入したところ、細胞サイズが大きい場合は測定できましたが、赤ちゃんから採取した血液由来の細胞は細胞サイズが小さいため、対物レンズが20倍のFlowSightでは不十分であることが判明しました。

――そこで、解像度がより高いImageStream®X Mark IIで再度検証の機会をいただきました。

齋藤 教授:
FlowSightの測定結果を踏まえるとImageStream®X Mark IIの仕様であれば、細胞サイズが小さい場合でも測定可能と予想できましたので、ImageStream®X Mark IIも購入をいたしました。過去に細胞集団の可視化と定量化の二面から解析を実施できる装置はなかったので、他の装置との比較はしませんでした。

 

使用のメリット

定量化と可視化は一緒に実施できないものだというこれまでの認識が覆りました。
多面的な解析を実現できたことは重要で、脊髄性筋萎縮症を血中のバイオマーカーで評価できるという意義は大きいことでした。

――では、実際に使ってみての感想をお聞かせください。

齋藤 教授:
購入後も色々と相談にのっていただき、検証も何度も実施いただいたので条件が最適化され、SMNタンパク質の画像解析結果を数値として定量することができるようになりました。

――製品の性能だけでなく、メルクのデモやサポートもお役に立てたということで、私たちも嬉しいです。

齋藤 教授:
画像で観察できて、かつそれを数値化できることは、やはり有意義ですね。イメージングフローサイトメーターを使用するまでは正確に定量するか顕微鏡で観察するかの二者択一でした。そして、定量測定は大抵ELISAを用いて実施していました。ELISAを用いると細胞画像の情報を得ることはできません。イメージングフローサイトメーターの利点は、細胞画像情報を取得しながら定量化できるところです。これまでできなかった両測定を同時に実施できる点がこの装置の強みです。

――遺伝子疾患の研究でイメージングフローサイトメーターを使用されたことも大きな意味があるということですね。

齋藤 教授:
免疫研究の人たちは慣れているのでしょうが、私たちの遺伝子疾患研究では、普段フローサイトメーターを使用しません。その意味で血液学や免疫学のフィールドの思考が遺伝子疾患研究領域に融合したことで、良い結果が出たのだと思います。あるものを一面からだけでなく多面で見るという概念にスイッチできたところに大きな意味があるのではないでしょうか。

――イメージングフローサイトメーターや弊社へのご要望がありましたら教えてください。

齋藤 教授:
今後は試薬やキットなどにも将来性を期待したいですね。こういう測定ができるという段階から、投薬の効果が評価できるような結果がでると新しい展開を期待できます。SMNタンパク質の測定によって、将来的に難病治療から運動機能疾患やスポーツ研究、老化研究など一般的な健康分野まで成果を応用できればと思っています。

先生の取り組んでいらっしゃる難病治療に側面からでもサポートさせていただけていることは嬉しく思います。研究が更に進み、希少難病が治る時代が来ることを私たちも祈っています。お忙しいところありがとうございました。

プロフィール

齋藤 加代子教授
東京女子医科大学附属 遺伝子医療センター

東京女子医科大学を卒業後、同大学院医学研究科内科系小児科学修了。東京女子医科大学小児科助手、同講師、助教授などを経て99年小児科教授。2001年大学院先端生命医科学系専攻遺伝子医学分野教授、04年から同教授と兼務で現職。専門は遺伝医学、遺伝子医療、小児科学、小児神経学。

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