Duolink PLA 免疫染色シグナル増幅技術

Duolink PLA ユーザーアプリケーション vol.1

慢性骨髄性白血病(CML)幹細胞におけるシグナル伝達解析

データご提供

広島大学 原爆放射線医科学研究所 幹細胞機能学研究分野 准教授 仲 一仁 先生

実験概要

組織幹細胞のような稀少細胞において、蛍光免疫染色を用いた微弱シグナルの評価は困難を伴う場合があります。本実験では、慢性骨髄性白血病(CML)のモデルマウスを用いて、骨髄内にわずかしか存在しないCML幹細胞内のリン酸化シグナルの検出を試みました。Smad2とSmad3は相同性が高いため、従来の蛍光免疫染色では区別ができません。しかし、Duolink PLAを用いることによって初めてリン酸化シグナルの定量化、および分子間相互作用の検出に成功しました。

実験結果

1. 蛍光免疫染色とDuolink PLAの比較
<Data 1a>CML幹細胞におけるFoxo3aとSmad2/3の共局在を示した蛍光免疫化学染色3

細胞:CMLマウスモデルから純化した長期(LT)CML幹細胞
(CD150+CD135-CD48-KLS)

固定条件:4% paraformaldehyde 透過処理:0.25% Triton™-X

抗体:Anti-FKHRL1 (Foxo3a) Antibody clone FR1 produced in mouse (F1304 Sigma)
Anti-phospho-Smad2/3 Antibody (AB3849 Millipore) *現在販売終了しております
DAPI (D9542 Sigma)

<Data 1b>LT-CML幹細胞における各Smad2, Smad3 のC末端リン酸化(上)とFoxo3aとSmad2またはSmad3(下)との相互作用を示したDuolink PLAイメージング2

標的 カタログ番号, メーカー名(PLA Plus 側 カタログ番号, メーカー名(PLA Minus側
p-Smad2 Sc-11769 Santa Cruz Biotechnology 5339 Cell Signaling Technology
p-Smad3 ab51451 Abcam Ab75512 Abcam
Smad2-Foxo3a 5339 Cell Signaling Technology F1304 Sigma
Foxo3a-Smad3 2497 Cell Signaling Technology ab75512 Abcam

※本実験系では、Plus側、Minus側の両方が近接する場合に赤色蛍光を検出

初期実験 <Data 1a> の免疫染色の結果からFoxo3aとリン酸化Smad2/3の共局在が示唆されたが、Smad2/3は相同性が高く、どちらがFoxo3aと相互作用しているのか判断できなかった。Duolink PLAの適用 <Data 1b> により、Foxo3aはSmad2ではなくSmad3と相互作用をしていることが見出された。これらの結果と既報より、Smad3がCML幹細胞の維持に関与するTGFβ-FOXOシグナル伝達カスケードに関与している可能性が示唆された。(発表論文 2, 3)

2. 新規ALK5キナーゼ阻害剤TEW-7197で処置後のLT-CML幹細胞のリン酸化Smad3の検出と1細胞当たりの蛍光シグナル数の定量

細胞:CMLマウスモデルにTEW-7197(2.5 mg/kg)を経口投与後、経時的に単離した長期(LT)CML幹細胞}
(CD150+CD135-CD48-KLS+)

固定条件:4% paraformaldehyde 透過処理:0.25% Triton™-X

抗体:Anti-Smad3 Antibody (ab75512 Abcam)
Anti- phospho-Ser423 ⁄ 425 Smad3 Antibody (ab51451 Abcam)

<Data 2> LT-CML幹細胞のリン酸化Smad3を検出したDuolink PLAイメージング1

Duolink PLA処理後の共焦点顕微鏡観察とソフトウェア解析(発表論文1 Figure2c)によって、Smad3のリン酸化シグナル数がTEW-7197処理後6時間から48時間まで継続して減少することが確認された。
このデータによって、ALK5キナーゼ阻害剤TEW-7197が、CMLマウスモデルのLT-CML幹細胞におけるALK5のキナーゼ活性を阻害できることが証明された。さらに、このSmad3リン酸化の抑制は、TEW-7197投与後、少なくとも48時間維持されることが判明した。

仲先生よりいただいたコメント

Duolink PLA実験はどなたでも実施できますが、若い研究者の方など初めて研究を行われる場合には、最初に免疫染色の一連の手技を習得する方が、コツをつかむ近道になると思います。また、使用するサンプルによってはプロトコールの最適化が必要だと考えています。推奨プロトコールを参考に、ご自身のサンプルを用いた際のPLA DNAサークル増幅の最適温度、最適反応時間や、PLAプローブの至適濃度を検討してみてください。
Duolink PLAの一番の利点はシグナルの有無がはっきりわかることだと思います。私は、可能な限り、従来の免疫染色は行わないで、Duolink PLAを中心に実験を組み立てるようにしております。多くの先生方にとって、Duolink PLAがより信頼性の高いデータを得るための身近な手法となり、ご研究が発展なさいますことを願っております。

発表論文

  1. Naka et al., Novel oral transforming growth factor-β signaling inhibitor EW-7197 eradicates CML-initiating cells. 2016, Cancer Sci., 107, 140-148. PMID 26583567
  2. Naka et al., Dipeptide species regulate p38MAPK-Smad3 signalling to maintain chronic myelogenous leukaemia stem cells. 2015, Nat. Commun., 6, 8039. PMID 26289811
  3. Naka et al., TGF-β–FOXO signalling maintains leukaemiainitiating cells in chronic myeloid leukaemia. 2010, Nature 463, 676-680. PMID:20130650

▲ Back to Top