細胞アプリケーション

【参考】最適な条件検討の指針

目次

> イントロダクション
> 変異因子
> 酵素の不活性化
> 酵素の作業濃度
> リベラーゼ研究用グレード試薬パネル
> 組織分散の最適化
> リファレンス

イントロダクション

このセクションは、組織分散の結果を判断し、細胞の収量・生存活性・機能性を向上させるためのものです。 リベラーゼ酵素タイプと濃度の選択は、実験のアプリケーションと目的に大きく依存しています。 ある目的(e.g. 大量の細胞培養のための収量アップ)を指向する研究室で良い結果が得られた酵素タイプと濃度が、別の研究室または目的(e.g. 単離した細胞を用いたパッチクランプ)においても最適であるとは限りません。

 

結果を評価する際には、以下の点に注意が必要です。

  • リベラーゼ リサーチ グレード各製品には、純粋にコラゲナーゼと中性プロテアーゼ活性のみを有しています。
  • コラゲナーゼ酵素は、細胞間マトリックスを消化します。
  • 中性プロテアーゼは、コラゲナーゼと相乗的に作用します。
  • 処理時間と濃度によって、中性プロテアーゼは細胞表面タンパク質を傷害します。
  • 処理時間・酵素比・酵素濃度の全てが、細胞単離の結果に影響を及ぼします。
  • リベラーゼ酵素は、血清・BSA・プロテアーゼインヒビターなどの変異因子のない状況で使用する必要があります。

変異因子

分散バッファから変異因子を除去することにより、スムーズに目的を達せられることがあります。それぞれの リベラーゼ リサーチ グレード酵素は、幅広い中性プロテアーゼ活性を保つようにブレンドされています。 元来、酵素活性は、変異因子(血清・BSA・プロテアーゼ インヒビター)を酵素バッファに添加することにより維持されてきましたが、リベラーゼ酵素ブレンドを用いた場合、これらの因子を添加する必要はありません。リベラーゼ研究用グレード試薬パネルでは、一連のリベラーゼ ブレンド酵素が有する「攻撃性」についても言及されているので、表を確認して組織タイプと実験用途に応じて、攻撃性の強弱を選択することができます。

酵素の不活性化

精製されたコラゲナーゼには酵素1モルあたり、亜鉛約1モルとカルシウム約2~7モルが含まれます(Bond and Van Wart, 1984)。酵素を二価陽イオンのキレート剤にさらすと、亜鉛とカルシウムが除去され、酵素が不活性化されます(Seifter and Gallup, 1960)。

Modification Factor
Inhibitors 0.1 M EDTA (McShane, 1989)
Cysteine (Seifter and Gallup, 1960)
Mercaptoethanol (Seifter and Gallup, 1960)
Protease inhibitors
Serum albumin
Stabilizers Calcium (Bond and Van Wart, 1984)
Cofactors Zinc, calcium (Calcium: Bond and Van Wart, 1984)

酵素の作業濃度

はじめて使用する場合の推奨濃度

全てのリベラーゼ リサーチ グレードは、従来のコラゲナーゼより高い比活性を有しています。 このため、mg/mlで表示した場合リベラーゼの作業濃度は、他のコラゲナーゼに比べてかなり低くなる場合があります。 推奨される開始濃度については組織別 分散酵素適合表のリストを参照してください。

If... then...
リストに目的の用途が掲載されている アプリケーションで推奨されているリベラーゼ リサーチグレード濃度を採用してください。
リストに目的の用途が掲載されていない リベラーゼ TM リサーチグレードを0.08~0.28 WU/mlでお試しください。

コラゲナーゼの比活性表記について

コラゲナーゼは通常、mg/mlで表される濃度に希釈して使用されます。 従来のコラゲナーゼの酵素比活性はロット間差が大きく、ロットが変更される毎に新たな濃度を決定する必要がありました。 これに対して、リベラーゼ リサーチ グレード酵素は、高純度に精製された酵素から構成されており、再現性の高いコラゲナーゼおよび中性プロテアーゼ活性を有する最終産物を生成します。 この活性を現実に即した形で表示するため、ロシュはコラゲナーゼ濃度をWU/mlと表記することを推奨しています。

コラゲナーゼ比活性とWU/mg換算表

以下の表を使用して、現行のコラゲナーゼの比活性をWU/mgに変換して下さい。 この表ではFALGPA Units/mg、またはコラーゲン分解ユニット(Mandl UnitsまたはCDU)/mgのいずれかからWU/mgを算出しています。

Supplier To Convert from To Divide Example
Sigma FALGPA Units/mg Wünsch Units/mg FALGPA Units/mg by 3.9 3.5 FALGPA units/mg/3.9 = 0.9 Wünsch units/mg
Sigma, Serva, Worthington, Gibco CDU/mg or Mandl Units/mg Wünsch Units/mg CDU/mg by 1000 200 CDU/mg/1000 =
0.2 Wünsch units/mg

Note: these conversions are a reasonable approximation based upon the expected precision of the different collagenase assays.

使用濃度

上記の換算方法により求められた比活性(WU/mg)と、従来のコラゲナーゼ濃度(mg/ml)から、WU/mlを算出することができます。 プロトコールに一貫性を持たせるためにも、コラゲナーゼ濃度は常にWU/mlで表記するように心がけてください。

リベラーゼ研究用グレード試薬パネル

各製品の活性値

リベラーゼ リサーチグレード精製ブレンド酵素の各バイアルは、総タンパク質量により充填されています。 コラゲナーゼ I・IIアイソフォームの総コラーゲン分解活性は、Wünsch法により測定されています(Wünsch & Heidrich, 1963)。 中性プロテアーゼ活性は、非蛍光カゼインアッセイにより測定されます。

Liberase Research Grade Enzyme Target Collagenase Content (mg/vial) Target Collagenase Activity (Wünsch units/vial) Target Neutral Protease Amount Enzyme Mixture Aggressive-ness Neutral Protease Type Endotoxin (EU/mg)
Liberase DL Research Grade 5 mg

50 mg
26

260
Low + Dispase® ≤50
Liberase DH Research Grade 5 mg

50 mg
26

260
High +++ Dispase® ≤50
Liberase TL Research Grade 5 mg 26 Low ++ Thermolysin ≤50
Liberase TM Research Grade 5 mg

50 mg
26

260
Medium ++++ Thermolysin ≤50
Liberase TH Research Grade 5 mg

50 mg
26

260
High +++++ Thermolysin ≤50
Liberase Research Grade Selection Kit 5 mg of each enzyme 26 for each enzyme See above See above See above ≤50 each

+ = (lowest neutral protease activity/mg protein)
+++++ = (highest neutral protease activity/mg protein)

至適温度とpH

リベラーゼ リサーチ グレード酵素は、様々な基質に異なる作用を及ぼす酵素の混合物です。 pHまたは温度(人工基質で測定)に基づくin vitroの酵素活性プロットでは、この両者が組織分散に及ぼす影響を予測すること困難です。

pH Optimum Temperature Optimum
一般的には、組織分散に適したpHは、分離する細胞に生理学的に適切なpH 7.4とされています。 一般的な組織分散には、+35~37℃の温度が採用されます。 下でも実行できますが、酵素活性すなわち組織分散の速度が低下することがあります。

組織分散の最適化

最適化のための対策

リベラーゼ酵素により分離された細胞の収量・生存活性・機能性が、示された条件に当てはまるかどうかを判断し、推奨された解決策をお試しください。 中性プロテアーゼ比活性のレベルについては リベラーゼ研究用グレード試薬パネル を参照してください。

事象 1 事象 2 想定される原因 対処策
細胞の生存率が低い 分散が極めて早い 酵素の濃度が高すぎる 酵素の濃度を50%減らす。
酵素ブレンドの攻撃性が高すぎる 中性プロテアーゼ含有量の低いリベラーゼ酵素ブレンドに変更する。
分散が極めて遅い 酵素の濃度が低すぎる 酵素の濃度を50%増やす。
酵素ブレンドの攻撃性が低すぎる 中性プロテアーゼ含有量の高いリベラーゼ酵素ブレンドに変更する。
細胞の機能不全 生存率は80%より高く、収率に問題はない 酵素の濃度が高すぎる 酵素の濃度を25%減らす。
酵素ブレンドの攻撃性が高すぎる 中性プロテアーゼ含有量の低いリベラーゼ酵素ブレンドに変更する。
細胞の収率が低い 生存率は80%より高い 酵素の濃度が低すぎる 酵素の濃度を25~50%増やす。
酵素ブレンドの攻撃性が低すぎる 中性プロテアーゼ含有量の高いリベラーゼ酵素ブレンドに変更する。
生存率が80%以下である 酵素の濃度が高すぎる 酵素の濃度を50%減らす。
酵素ブレンドの攻撃性が高すぎる 中性プロテアーゼ含有量の低いリベラーゼ酵素ブレンドに変更する。
強いせん断力が生じている 細胞に必要以上の力が加わらないように、組織を丁重に処理する。
細胞が凝縮し、ゲル状の繊維体を形成する 収率と生存率は許容できる範囲である 細胞の融解に続くDNA放出が凝固につながっている 組織によって発生しやすいがDNaseを添加して分散を行うと自体の改善につながることがある
収率と生存率が低い 強いせん断力が生じている 細胞に必要以上の力が加わらないように、組織を丁重に処理する。

リファレンス

  • Bond MD, & Van Wart HE. Characterization of the individual collagenases from Clostridium histolyticum. Biochemistry 1984; 23:3085-3091.
    Online reference(External Link)
  • McShane P, Sutton R, Gray DWR, Morris PJ. Protease activity in pancreatic islet isolation by enzymatic degradation. Diabetes; 1989; 38 (suppl. 1): 126-128.
    Online reference(External Link)
  • Seifter S, & Gallop PM. Collagenase from Clostridium histolyticum. Methods in Enzymology; 1960; 5: 659-665.
  • Wünsch E, Heidrich HC. Zur quantitativen Bestimmung der Kollagenase. Z. Physiol. Chem. 1963; 333:149.
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