生体材料(バイオマテリアル)

マイクロ流体技術を利用したナノ医薬品向け材料の製造

Mike Geven,1 Nora Francini,1 Roberto Donno,1 Nicola Tirelli1,2

1 Laboratory of Polymers and Biomaterials, Fondazione Istituto Italiano di Tecnologia, 16163, Genova, Italy.
2 Division of Pharmacy and Optometry, School of Health Sciences, Faculty of Biology, Medicine and Health, The University of Manchester, M13 9PT, Manchester, UK.

Material Matters 2019, 14(3), 83 → PDF版

はじめに

本稿では、薬物を担持して送達するように設計された、ナノ担体として知られるナノ材料のさまざまな調製法について説明します。ナノ担体は、薬物の薬物動態(生体内分布、排泄、代謝)と薬力学的な挙動(生物学的標的との相互作用)に影響を与え、以下を可能にします。a)水への溶解度を遥かに上回る量までの投与量の増加、b)体内の特定の部位における濃度を変えての、可能な限り優先的な標的の器官への薬物を送達、c)薬物の排泄速度の低下による、分解からの保護(薬物動態要素)、d)薬物の細胞への提示、およびe)薬物のより効果的な細胞の区画への送達(薬力学要素)などです。非常に広範な治療に適用できる可能性があるため、複数のナノ医薬品を用いた製剤が現在臨床で使用されており(表1)、アメリカ食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)および欧州医薬品庁(EMA:European Medicines Agency)によって承認されています。その一方で、ナノ医薬品の開発には克服すべき大きな障害が複数あります。最も重要な点として、厳密に言うならば、ほとんどのナノ医薬品は「分子的に定義」することができません。つまり、異なる化学種で構成されており、複数の相境界がある場合が多く、分子に用いるような古典的な解析が適用できません。例えば、モル濃度(またはモル重量)という概念さえもナノ粒子には適用できません。

ナノ医薬品の開発で生じる実際の障害の例として、「ナノ類似品」(あるナノ医薬品に対応するジェネリック医薬品)の評価に何が必要かを考えることができます1。既存のナノ医薬品との治療上の同等性は、以下の同等性が確立された場合にのみ期待されます。a)薬学的同等性、すなわち、典型的には重要品質特性(CQA:critical quality attribute)と呼ばれる新製品の物理化学的な特性が類似していること、およびb)生物学的同等性、すなわち、有効成分が同じ部位において同じ速度および同じ程度で利用可能になることです。ただし、(a)の不成功(=CQAの再現性が不十分)は(b)の不成功(=薬物動態の再現性が不十分)を伴うため、精密に特性付けされた再現可能なCQAは治療有効性のための必要条件です。これらは必要条件ですが、十分条件ではないことに注意が必要です。例えば、薬学的同等性が達成されているように見える場合でも、生物学的同等性が不十分である可能性があります(ジェネリックのPEG化リポソームLipodoxとDoxilの比較を参照2)。

ナノ医薬品で最も重要なCQAはサイズおよびサイズ分布であり、これらは表面電荷と薬物充填とも多くの場合関連づけられます3。欧州委員会の定義4に従うと、サイズ(数)、サイズ分布および表面積はナノ材料を特性付けする重要な要素とされているため、これは驚くべきことではありません。したがって、製薬におけるいかなるナノ製造工程でも、最初の目標は、ナノ医薬品のサイズおよびサイズ分布を精密かつ高い再現性で制御することです。

表1 EMAおよびFDA承認済みナノ医薬品a

  Active princ.; brand name Material Therapeutic indications EMA FDA
Nanoparticles Nab-paclitaxel; Abraxane® Albumin Breast, non-small-cell lung, and pancreatic c. 2008 2005
Glatiramer acetate; Copaxone®, Synthon® Poly(amino acid) Multiple sclerosis 2017 1996
Leuprolide acetate; Eligard® PLGA Prostate c. = 2002
Denileukin diftitox Ontak® Interleukin-2 + dipht. toxin T-cell lymphoma = 1999
Ferumoxytol; Rienso®, Feraheme® Iron oxide/dextran Iron def. anemia in chronic kidney disease 2012b 2009
Ferric carboxymaltose; Ferinject®, Injectafer® Iron oxide/ carboxymaltose Iron deficiency 2007 2012
Iron(III) isomaltoside Monofer® Iron(III)isomaltoside-1000 Iron deficiency 2009 2009
Liposomes Doxorub. hydrochl.; Caelyx®, Doxil® PEGylated lipos. Breast, ovar c., mult. myel., Kaposi's sarc. 1996 1995
Doxorub. hydrochl.; Myocet® Non-PEGylated lipos. Metast. breast c. 2000  
Amphoter. B; AmBisome® Non-PEGylated lipos. Fungal infection 2006 1997
Daunorubicin; DaunoXome® Non-PEGylated lipos. Adv. HIV-rel. Kaposi's sarc. 2012 1996
Cytarabine; DepoCytev® Non-PEGylated lipos. Lymphom. mening. 2001 1996
Mifamurtide; Mepact® Non-PEGylated lipos. Osteosarcoma 2009 =
Morphine; DepoDur® Non-PEGylated lipos. Pain 2006 2004
Vincristine; Marqibo® Non-PEGylated lipos. Ac. Lymphoc. blood clots = 2012
Irinotecan; Onivyde® PEGylated lipos. Pancreatic c. = 2015
AmphotericinB; Abelcet® Non-PEGylated lipos. Fungal infection = 1995
Poractantalpha; Curosurf® Non-PEGylated lipos. Stress disorders = 1999
Verteporfin; Visudyne® Liposomal porphyrin Age-related mac. degen. 2000 2000
           
Emuls. Cyclosporine Sandimmun Neoral® Glycerides/triglycerides Organ transpl., endog. uveitis, nephrot. syndr., rh. arthr., psoriasis, atopic derm. 1993b 1995
Estradiol; Estrasorb® Soybean oil/surfactants Menopause = 2003
           
Nanocryst. Xeplion®, Invega Sustenna® Paliperidone palmitate Schizophrenia 2011 2009
Zypadhera® Olanzapine pamoate Schizophrenia 2008 =
Aprepitant; Emend® Aprepitant Nausea and vomiting 2003 2003
Fenofibrate; Tricor® Lipanthyl® Lipidil® Fenofibrate Hyperlipidemia 1977b 2004
Sirolimus; Rapamune® Sirolimus Graft rej., kidn. transp. 2001 1999

a In this table we do not report nanomedicines of a molecular nature, such as protein/polymer conjugates. This group of nanomedicines is predominantly comprised of PEGylated proteins (PegIntron®, Pegasys®, Neulasta®, Oncaspar®, Mircera®, Cimzia®, Somavert®, Adagen®, Macugen®, Krystexxa®, Plegridy®, Adynovate®) and also Zevalin® (a radionuclide-conjugated antibody). They differ from those reported in the table because they are well-defined individual molecular entities in solution, where those reported are multi-molecular (e.g. drug and coating agent in nanocrystals) and multi-phase (e.g. oil and water in emulsions) formulations.

b Ferumoxytol – currently withdrawn. Sandimmun Neoral – date of the registration in Germany. Fenofibrate – date of first commercialization.

ナノ粒子の製造

ここでは、水分散液中のナノ製造について、特に(集合または凝集による)ボトムアップ型のナノ粒子製造を中心に説明します。ここでナノ粒子という単語は、本質的に大部分が粘性を示すナノ液滴、エマルション、自己組織化凝集体(ミセル、ベシクル)などではなく、主に弾性的な機械的挙動(固体のような挙動、したがってこの種類にナノ結晶が含まれます)を示すナノ材料を指します。処理の観点からは、弾性材料(高いデボラ数)は動力学が遅いまたは拘束されているため、ほとんどの場合、材料の形状、サイズおよび組成、つまりCQAが、熱力学ではなく前駆体の混合方法などの動力学的要素(系の流体力学)に決定されるので、この区別が重要です。動力学的要素の重要性を考慮すると、フロー法、特にマイクロ流体力学で支援される工程には明確な利点がありますが、重要な注意点もいくつかあります。

フロー法対バッチ法によるナノ製造工程

2000年代後期に開発された5フロー法の工程は、薬物送達のための製剤方法として徐々に利用が拡大しています。工程の種類にはほとんど関係なく、連続フロー条件は従来のバッチ工程に対して以下の明確な利点をもたらします。a)大規模化が容易。生成物の量は時間に直接比例し、異なる反応装置が不要です。b)再現性。形態が固定されているために混合条件の精密制御が可能であり、サイズ分散度の低い粒子が得られ6、薬物充填が向上する場合もあります7。c)流動状態などの工程パラメータによる粒子特性(サイズ)の微調整。オーダーメードの材料が可能になります5

マイクロ流体装置は流路の寸法が小さいため(1 mm未満)、高度な品質管理ツール(インラインの動的光散乱法(DLS:dynamic light scattering)、オフラインのフィールドフロー分画法(FFF:field flow fractionation)6など)を組み込むための連続フロー工程の各条件の評価および最適化が、実験室規模および非常に手頃なコストで可能になります。大量生産に使用することも可能ですが、実際の工業的大規模化には、適切なチップの性質、寸法および生産費用を注意深く検討することが必要です8

混合の問題

マイクロ流体力学で支援されるナノ製造には、流路の側面方向の寸法が小さいため流れが基本的に層流になるという重要な特徴もあります。定量的に記述すると、一定流量において、レイノルズ数(Re = Vdρ/ηVは流量、dは流路直径、ρは流体密度、ηは流体粘度)はd-1に比例し、ほぼ必然的にReの値は乱流の発生に必要な最小値(Re>>103)より数桁小さくなります。流量を大幅に増加しても、駆動圧力がηd-2の両方に比例して9大幅に増加するため、Reは増大しません。

これが問題になります。層流中では側面方向の対流がないため、拡散による混合しか起こらず、混合時間は典型的にτmix~d2/Dで比例します(dは流体流の幅、Dはサイズに反比例する拡散係数、図1)。つまり、特にポリマーでは混合が遅くなります。例えば、1 kDaのポリエチレングリコール(PEG:poly(ethylene glycol)、水溶液中のD = 約3 × 10-10 m2/s)は、30秒間で100 µmに拡散します。1 mL/minで混合を達成するためには、毛細管は少なくとも15 cmの長さが必要です。

遅い混合は、望ましくないものの熱力学的には安定な生成物が生じてしまうなどの問題に繋がることが多くあり、例えば沈殿過程が遅くなるためにマイクロ粒子(低い界面エネルギー)がナノ粒子の代わりに生成することがあります。

サイズの異なる流体と層流中での拡散の違い

図1 1つの層流中で並行して移動する2つの流体は、側面方向には拡散のみによって混合します。この拡散は、物体のサイズの増加に伴い徐々に遅くなります。

混合を促進するために開発された解決策

多くの場合、拡散係数の逆数を最大化し、粘度が最小になるように、溶媒および材料を選択します。さらに多くの場合、流れの幾何学的特徴と状態を、異なる流体が合流する領域(合流点)またはその直後(チップの混合領域)に適切に働くよう設計します。前者の手法の一例が流体力学的フロー集束(HFF:hydrodynamic flow focusing)です。これは目的の物質を運搬し、層流によって絞り込まれる中心の流れの幅を制御する方法です(図2)。

後者の手法では、層流の領域からカオス流の領域へ移行することが全体的な目標とします。すでに曲線流路によっていくらかの結果が得られていますが、典型的な静的または「受動的」(マイクロ)混合装置10図3)には複雑な形状の流路および障害物があります。流れのカオス性は、例えば微視的なレベルで粘度を変える少量の高分子量ポリマー9や、パターニングした表面の使用11などによって、流れ自体の不均一性を用いてさらに増加させることが可能です。静的混合装置の混合効率は、典型的にペクレ数(流路長)を通じて比較されます。これは対流による物質移動(カオス流)と拡散による物質移動(層流)の比率を実際に与える数値です。

より複雑な手法では、「能動的」混合装置を用い、例えばキャビテーション12などによって外場を介してカオス性が導入されます。

2D HFFと3D HFF

図2 2D HFFでは、2つの層流が相対速度(流速比)の増加に伴い中心のポリマー溶液を絞り込みます。ポリマー溶液は完全に混合するまで流路の高さ全体にわたっていますが、3D HFF()では、さらなる絞り込みで中心に集束させます。

受動的混合装置の概略図

図3 最も一般的な受動的混合装置の構造の概略図。全体的な目的は、流れの方向に直交する混合を促進するため、渦、ねじれまたは横断流を形成することです。これらの構造は合流領域の後に導入されるため、これらの手法はHFFと適合します。

マイクロ流体力学で支援されるナノ製造の例

相分離によるナノ製造

ゴールドスタンダードとされる材料は、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA:poly(lactic-co-glycolic acid))またはポリカプロラクトン(PCL:poly(caprolactone))のような疎水性ポリエステルと、界面活性剤または親水性成分としてPEGを含むマクロ両親媒性物質(両親媒性ブロックコポリマー)のブロックのいずれかを組み合せた材料です(表2上部)。注目すべき点として、マクロ両親媒性物質は、核生成直後から粒子を安定化する親水性表面があるため、疎水性物質と表面活性剤の組合せと比較して生成するコロイドが小さくなります。ただし、自己組織化した構造間のエネルギー差が小さいため、複数の不均一な形状(ミセル、ポリマーソーム、ミミズ状またはフィロミセル)13が生成する可能性があります。

ポリマーの(極性)有機溶液中での非溶媒(ほとんどの場合は水)との混合の後に、相分離が起こります(図4)。熱力学的不溶性(スピノーダル分解)の条件は、主に非溶媒の含有量と温度に依存しますが、粒子の実際の核生成速度が最も影響を受けるのは、ポリマー濃度、臨界組成を上回る非溶媒の量、ならびに溶媒、非溶媒およびポリマーの拡散係数です(すべてが媒体粘度の影響を受けます)。

フロー集束配置における相分離の各ステップ

図4 フロー集束配置における相分離(ナノ沈殿)の異なるステップ。以下のように複数のレベルの動力学的制御があります(A)ポリマーが多い相でのポリマーの収縮とコイルの折りたたみを引き起こす、相境界を通過する溶媒および非溶媒分子の物質移動。B)折りたたまれたポリマーコイル(グロビュール)の拡散と、これらの衝突により起こる粒子の核生成。C)粒子の擬弾性衝突および融合(合体)(溶媒の含有量の減少とともに可能性が低下)、または個々の高分子がさらに取り込まれることによる、粒子サイズの増加)。結果的に、最終的な平均粒子サイズおよび平均サイズ分布は、さまざまな化学種の拡散係数、全体の流速と流速比、ならびにポリマー濃度に対して複雑に依存します。

つまり、熱力学的な要因に加えて、核生成は混合中の2相間の物質移動に強く依存します。核生成の後、凝集は次の2通りのメカニズムで継続します。第一が、成長中の粒子へのポリマー鎖の付加です。速度は両者の濃度および拡散係数に依存しますが、ナノ粒子の表面の性質にも依存します。第二が、成長中の粒子の合体です。これは有機溶媒の水中への不完全な移動によって促進され、ポリマーを可塑化します。合体速度も、溶媒の物質移動と粒子の濃度および拡散係数に依存します。重要な点として、この説明は(ナノ)沈殿に対するもので、エマルションおよびベシクル形成にもある程度は当てはまりますが、ミセルの自己組織化のような平衡過程に対しては、第二のメカニズムは一般的に当てはまりません。

混合を制御して、それにより粒子サイズを制御するために最もよく用いられるパラメータは、a)全流量(TFR:total flow rate)およびb)流量比(FRR:flow rate ratio)です。流量比はポリマー溶液と水の速度の比率で、全体的な有機溶媒/水の組成も示します。最終的な粒子サイズに対する影響はFRRのほうが大きく、FRRが小さいほど(図2も参照)、より速く臨界核生成濃度に到達し、得られる平均サイズ5,6,14,18およびサイズ分布の幅が減少し、粒子形成が促進される(ただし、核生成速度は必ずしも影響されない)ことが報告されています。さらに、動力学を速くすると、薬物の粒子外での結晶化の確率が減少し、カプセル化効率を向上させることが可能です14,18。TFRの粒子サイズに対する効果は顕著でないように見えますが、全体的な流れの増加(HFFなど)または(半)カオス流7,14,15によって混合が有利になる場合、TFRの増加は粒子サイズの減少につながります。また、ポリマーの結晶性や、特に自己組織化ブロックコポリマーの形状(低TFRでの球状から高TFRでのフィロミセルおよびラメラ構造)にTFRが影響を与える可能性もあることが報告されています13。薬物のカプセル化に対するTFRの影響はあまり明確ではなく、使用されたマイクロ流体システム、薬物およびポリマーによって相反する効果が報告されています13-15

他の2つの制御要素は、ポリマーの分子量(MW:molecular weight)およびその溶液の粘度で、後者は分子量、濃度およびポリマー構造に依存します。疎水性物質(ポリマー全体または両親媒性物質中のブロック)の分子量が大きいと粒子サイズが増加する17,18とよく言われていますが、影響がみられない場合も報告されています6。基礎となる主要な現象は、おそらく高分子のサイズの増加に伴う溶解度の低下(つまり、コイルの折りたたみが溶媒交換の際により速く起こります)ですが、その影響は混合条件によって複雑になる可能性があります。混合が非常に速い場合、分子量の増加が核生成速度を増加させ、より小さな粒子がより多数生成する可能性があります。疎水性の影響は本質的に類似している可能性があります。疎水性がより高いキトサンは、おそらく核生成速度が速いため、より小さな粒子を生成します18

粘度が向上するような要因によって、粒子サイズの増加が見られるかもしれませんが、粘度が大幅に増加した場合に限定され14、これはカプセル化効率の向上にも有効である可能性があります16。ただし、高粘度は、特に流路の壁における混合に悪影響を及ぼし、巨視的な凝集や堆積につながる可能性があります。

架橋形成によるナノ製造

相互作用する1組の材料を、典型的には同じ溶媒に溶解し、適切に混合した場合、物理的または化学的に結合したネットワークの形成を用いてナノ粒子を生成することが可能です(表2下部)。通常は、コイルの転移(折りたたみなど)と粒子の合体のいずれもほとんど起こらず、主要な過程の決定要素は、2相間の物質移動、核生成速度および粒子成長の機構です。最も一般的な手法では、架橋形成法として高分子電解質の錯体形成(アルギン酸または核酸などのポリアニオン + ポリエチレンイミン(PEI:poly(ethylene imine))、ポリ-L-リジン(PLL:poly(L-lysine))、キトサンまたはカルシウムなどのポリカチオン)が用いられます。この手法は、化学的架橋形成と比較して粒子成長の制御が向上するため、より多用されています。1つの試薬を過剰量で用いることで、凝集ではなく主に個々の鎖の付加によって成長させた荷電(自己反発性)粒子を得ることが可能です。通常、核生成速度はカチオン/アニオン濃度およびその釣り合い(pHの影響も受けます)、2つの材料のイオン強度およびサイズに依存します。

表2 マイクロ流体製造によるナノフォーミュレーションの例

Technique Junction/ mixer Polymer a Active principle b Size (nm) Solvent/ Non solvent c Ref
Phase-separation
HFF X-shaped / linear PLGA/PLGA-PEG docetaxel 20-40 ACN/H2O 5
HFF X-shaped/ sinusoidal PLGA/Pluronic F127 paclitaxel 100-200 Acetone/ H2O 6
HFF X-shaped/ linear PLGA ribavirin 20-250 [ACN, acetone DMSO]/
H2O
7
HFF Y-shaped / sinusoidal PCL-PEO paclitaxel 50-1000 DMF/ H2O 13
HFF Y-shaped / herringbone PLGA/PVA N-acetylcysteine 100-1000 [ACN, acetone or DMSO]/
H2O
14
HFF Y-shaped/ staggered
herringbone
PLGA/PLGA-PEG curcumin 50-200 Acetone/ H2O 15
3D-HFF Multi inlets; + X-shaped
junction/ linear
PLGA/PLGA-PEG docetaxel 30-200 ACN/ H2O 16
HFF X-shaped/ linear PLGA-PEG - 30-150 ACN/ H2O 17
HFF Cross-shaped/ linear HMC paclitaxel 50-220 pH 5.5/ pH 9 in water 18
HFF Y- vs. X-shaped/ Split &
recomb. vs. sinusoid.
PLCL-PEG (linear &
branched)
paclitaxel 30-160 Acetone/ H2O 19
Cross-linking
Co-flow Y-junction (2-inlets)/
various geometries
PEI + nucleic acids pDNA, mRNA, siRNA 200-400 5% glucose 20
Co-flow Y-junction (2-inlets)/
not specified
Chitosan+ pDNA Quantum dots, pDNA Not specified Aqueous (pH 6.5) 21
HFF Cross-shaped/ linear Alginate + Ca2+ BSA 60-250 1mM CaCl2 22
Coaxial +
turbul.
Various geometries and
mixing patterns
Alginate + Ca2+ Polymyxin B 65-250 10 mM Tris-HCl + CaCl2 23
Co-flow 2 sequential inlets &
micronozzles/linear
Ca Alginate + PLL - 380-520 Aqueous 24
HFF X-shaped junction/
linear
cHANPs + divinyl
sulfone
Gd-DTPA 70 -2000 Aqueous/ Acetone or
ethanol
25

a Nomenclature: PLGA: poly(lactide-co-glycolide) , PCL: poly(caprolactone), HMC: hydrophobically modified chitosan, PEG: poly(ethylene glycol), PEI: poly(ethylene imine), PLL: poly(L-lysine), cHANPs: crosslinked hyaluronic acid nanoparticles.

b BSA: bovine serum albumin. Gd-DTPA: gadolinium diethylenetriamine penta-acetic acid.

c ACN: acetonitrile, H2O: water, DMSO: dimethyl sulphoxide, DMF: N,N-dimethylformamide.

主要な問題はナノ粒子のバルクの均一性および緻密性で、多くの場合、そのメッシュサイズで表現されます。この点に関して、高分子電解質錯体形成は不可逆性が十分に高いため、過程は実質的に動力学的に制御されます。例えば、アルギン酸と、より結合性が高く拡散性が低いポリマー系カチオンを架橋して得られるネットワークは、カルシウムイオンで架橋したネットワークより均一性が低下します。ただし、(例えば、層流の混乱により)23核生成速度が高いと、より緻密なナノ粒子が得られる可能性があります。一般に、マイクロ流体力学を用いる手法では、バッチ工程と比較して、表面電荷の増加(したがって安定性の向上)24および細胞毒性の低下(溶液中の遊離ポリマーの減少)20で示されるように、メッシュサイズの制御とバルクの圧縮が向上します22

重要な点として、これらの手法では、ほとんどの場合、生物活性成分の充填にも静電相互作用が用いられており、分配や捕捉を用いる相分離による過程と比較してカプセル化効率を大幅に向上できます(典型的な効率は静電相互作用を用いる場合で70~100%、相分離を用いる場合で20~30%の範囲)。より強固な充填の結果、高分子電解質錯体からの放出が拡散的に起こることはほとんど無く、したがって破裂がほとんど起こらず、持続時間が長いことが特徴になります22,23。より一般的には、十分な薬物送達を実現するためには、分解や静電的な錯体形成の弱体化が必要です。

結論および今後の展望

マイクロ流体力学は、さまざまな機構でナノ製造を支援することができます。最も多用されているのは相分離(ナノ沈殿、自己組織化)ですが、高分子電解質の錯体形成も用いられています。従来のバッチ工程に対する利点は、再現性、調節性および少なくとも部分的には工程の大規模化が可能なことであり、個別化医療の発展に貢献します。

現在の主要な開発領域として以下の2つが挙げられます。第一が、カオス混合の流体力学です。サイズおよび充填の制御の向上については有望ですが、凝集の詳細な機構的理解が不十分です。第二が、工業的大規模化です。流路を大きくすると流れの領域が変化する可能性があり、並列化は多くの場合に高コストです。

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