生体材料

「ナノ粒子表面修飾ガイドブック」
-診断・イメージング技術におけるナノ材料の応用-

「診断・イメージング技術におけるナノ材料の応用」ハンドブックのイメージ

【ナノ材料を用いたセラノスティクス研究者に必携のハンドブック】

「診断・イメージング技術におけるナノ材料の応用」ハンドブック表紙画像

セラノスティクス研究に有用な、無機ナノ材料のバイオコンジュゲーションを可能とする表面修飾法のガイドブックです。ナノ粒子のコンジュゲーションに関する最新情報、プロトコールが掲載されています(英語版カタログ)。

目次

序文・はじめに

Nanotechnology Foreword

Greg T. Hermanson
Bioscience Consultant and Author of Bioconjugate Techniques

本文

【磁気イメージング(Magnetic Imaging)】

【蛍光イメージング(Fluorescence-based Imaging)】

Fluorescent Nanoparticles for Imaging and Diagnostics (sample pdf)

Authors: Maria Ada Malvindi, Enrico Binetti, Pier Paolo Pompa

pp 14

【プロトコール】蛍光シリカナノ粒子のバイオコンジュゲーション

Authors: Maria Ada Malvindi, Enrico Binetti, Pier Paolo Pompa

pp 17

序文

Greg T. Hermanson

ナノテクノロジーにおける革命は25年足らず前に始まったものの、科学技術の中で最も急激に成長している分野の一つになりました。新たな用途と相まって、新規ナノ材料の利用は、多くの研究開発分野に影響を与えているイノベーションの原動力になっています。そして、新しい高感度のアッセイおよび検出プラットフォーム、診断アッセイ、in vivo 画像化能力、治療処置、さらにはいくつかの優れた消費者製品を可能にしました。

しかし、材料や製品へのナノテクノロジーの応用は全く新しいものではなく、実際には、はるか過去にまで遡ることができます。 ナノ材料は、比較的最近までその組成や特性が明確に理解されていなかったにもかかわらず、何世紀にもわたって使用されてきました。 おそらく最初に特徴付けられたナノ粒子構造体は、1857年にマイケルファラデーが調製した金コロイドのルビーレッド懸濁液です。1世紀以上の後、同じタイプのコロイド懸濁液は免疫測定法における検出試薬として広く用いられています。 これら粒子が抗体とコンジュゲートすると、強いシグナルと局在化された抗原特異性を有する、非常に特異的な疾患診断プラットフォーム形成の可能性があります。

ナノ材料が材料科学とそのアプリケーションをどのように変えるかという最初のビジョンを持っていたのは、当時の優れた理論物理学者であるリチャード・ファインマンであったかもしれません。ファインマンはカリフォルニア工科大学で1959年に行った講演「There’s Plenty of Room at the Bottom」の中で、高度に調整可能な性質を用いて作製および操作される、精密に制御されたナノ構造を思い描きました。このビジョンはいずれ多くの技術分野に革命をもたらします。ファインマンはこのように語りました。「微小な世界には驚くような世界が広がっています。2000年になってこの時代を振り返ったとき、1960年になるまでなぜこの研究に誰も本格的に取り組み始めなかったのか、不思議に思うでしょう。」

そして、様々な新しく魅力的なナノスケール構造の設計に関する多くの手法が科学文献に登場し始めたのは、1990年初頭になってからです。これらナノ粒子構築物は、生命科学、医学、エレクトロニクスおよび材料科学の多くの重要な分野に急速に影響を与え始めました。これら微小構造の中で最も興味深いものの多くは直径100nm以下であり、生物学的巨大分子のサイズに近づいたものさえありました。それと同時に、ナノテクノロジーという言葉が初めて作られ、その正式な命名によって、材料の新しいナノスケールの特性とさまざまなハイテク分野でのユニークな用途を組み合わせた、刺激的で新たな分野の創出に貢献しました。

2000年までには、ナノテクノロジーは広く議論されるトピックとなり、ナノ分野に関連する事実上すべての研究を対象として、資金メカニズムを備えた長期的なビジョンを創出するための政府のイニシアティブが開始されました。多くの科学ジャーナルや雑誌が次々と創刊され、最終的には世界中のナノテクノロジープログラムに数十億ドルが流入しました。今日、ナノテクノロジーの世界は成熟した分野へと花開き、電子回路、高性能ディスプレイ、高感度バイオセンサー、様々な光学技術を用いた新規検出試薬、さらには病気と闘うための治療薬など、多様な用途のためのナノ材料が幅広く利用されています。

これら応用の多くにとって、ナノ材料表面に別の分子を結合させる能力は、その材料の使用を成功させるための重要な因子です。特に生物学的用途では、ナノ-バイオコンジュゲートを作製するために、多くの場合、結合プロセスには抗体または他の親和性リガンドのナノ粒子への共有結合が含まれます。このように、親和性分子は複合体(例えば、特異的抗原)の捕捉または標的化能力を提供する一方、ナノ材料はシグナル生成および検出能力に寄与します。

本ガイドブックでは、ナノ材料複合体がどのようにして生命科学の応用及び臨床診断に使用できるかをレビューします。現在、利用可能な診断ツールのほとんどは、磁気、蛍光または光学を利用した検出に依存していることから、このガイドも3つのセクションで構成されています。各章には、それぞれのナノ材料のバイオコンジュゲーションに関する診断技術及び方法についてのマイクロレビュー記事が含まれています。今日利用可能なナノテクノロジーにおける最も重要な新材料を実用的な観点から説明しており、専門家や初心者が、様々な構成の材料においてバイオとナノの力を迅速に組み合わせることが可能になります。

はじめに

Niraj Singh, Bryce Nelson
Materials Science, Sigma-Aldrich, { Merck }

ナノテクノロジーの概念は1959年に定義されましたが、ナノサイエンスから恩恵を受けるようになるには数十年の時間がかかりました。ナノテクノロジーの生物医学的応用における進歩は特に遅く、その大きな要因としては、ペプチド、オリゴヌクレオチド、抗体又はタンパク質のような生体分子のナノ材料表面への結合に、効果的なコンジュゲーション化学が必要であったためです1-6

このようにゆっくりとした進歩にもかかわらず、診断におけるナノ材料の利用は非常に大きな可能性を有しており、近年その研究は加速しています1-4。ナノマテリアルは、タンパク質や他の細胞成分と同じ大きさ(100 nm以下)であるため、生細胞やその構成要素と固有の方法で相互作用することができます5。このように、生体分子-ナノ材料複合体は、早期および迅速な疾患検出など多くの用途の可能性を有しています。本ガイドブックは、現在及び今後の診断用途の両方で使用される主要なナノ材料のコンジュゲーションのための詳細なプロトコルを提供することを狙いとしています(図1)。

生体分子-ナノ材料複合体の主要な要素

図1 診断アッセイの開発および応用において使用される生体分子-ナノ材料複合体の主要な要素をまとめた概略図

本ガイドでは、免疫学的試験、フローサイトメトリー、細胞イメージング及びゲノム解析のような現在及び将来の診断法の開発に使用されるナノ材料のコンジュゲーションに必要な化学について考察します。最も一般的に使用される三つの検出方法(磁気、蛍光、光学)に従ってセクションを分け、各検出シグナルの生成に関連したナノ粒子に使用されるコンジュゲーション方法を解説しました。例えば、多くの酸化鉄ナノ粒子は、ミクロンレベルの分解能を有する磁気共鳴に基づくイメージングを可能にする超常磁性特性を有します7-8。カプセル化された蛍光体を有するシリカナノ粒子は顕著な光安定性と輝度を有する蛍光シグナルを発し、分子レベルでの分解能が得られることが示されています9-10。金および銀ナノ粒子は、表面プラズモンから生じる強い光シグナルを生成し、診断用途に広く用いられています。これら用途の多くは、かつてない高感度が得られる表面増強ラマンまたは蛍光技術に基づいています。しかし、ナノサイズの材料を用いたアッセイの成功には、効果的なコンジュゲーション化学が不可欠であることは、非常に重要な点です。

最初のセクションでは、磁性ナノ材料によって可能となる磁気検出法について述べます。ここでは、Jon Dobson教授(フロリダ大学、米国)が、細胞分離、磁気共鳴画像法(MRI:magnetic resonance imaging)、ドラッグデリバリー、磁気温熱療法、遺伝子トランスフェクションにおける酸化鉄ナノ粒子の生物医学的応用についてレビューしています。種々の表面官能基を有する酸化鉄ナノ粒子と抗体、蛋白質および酵素とのバイオコンジュゲーションのための戦略および方法についてもここで考察します。また、酸化鉄ナノ粒子-バイオコンジュゲーションの特性評価に用いられる一般的な技術についても要約しました。

第2のセクションでは、蛍光検出法に焦点を当てています。Pier Paolo Pompa博士(イタリア技術研究所、イタリア)は、診断法開発における蛍光ナノ粒子の使用について解説し、特に蛍光シリカナノ粒子について述べています。また、シリカナノ粒子とDNAおよび抗体とのバイオコンジュゲーション法も、本セクションで取り上げられています。

最後のセクションでは、金属ナノ粒子の独特な光学特性を利用した技術に焦点を当てました。本節では、Hongjie Dai教授(スタンフォード大学、米国)が、金属ナノ粒子のプラズモン特性と診断への応用の可能性について解説しました。新たに開発されたナノ粒子及びナノロッド、ナノアーチンおよびナノプレートのようなナノ構造体のバイオコンジュゲーションについてのプロトコルも紹介します。

References

  1. Biju, V. Chem. Soc. Rev. 2014, 43, 744.
  2. Strong, L. E.; West, J. L. ACS Biomater. Sci. Eng. 2015, 1, 685
  3. Giner-Casares, J. J.; Henriksen-Lacey, M.; Coronado-Puchau, M.; Liz-Marzan, L. M. Mater. Today. 2016 19, 19.
  4. Howes, P. D.; Rana, S.; Stevens, M. M.; Chem. Soc. Rev. 2014, 43, 3835.
  5. Tram, D. T. N.; Wang, H.; Sugiarto, S.; Li, T.; Ang, W. H.; Lee, C.; Pastorin, G. Biotechnol. Adv. 2016, 34, 1275.
  6. Oliveira Jr., O. N.; lost, R. M.; Siqueira Jr., J. R.; Crespilho, F. N.; Caseli, L. ACS Appl. Mater. Interfaces. 2014, 6(17), 14745–14766.
  7. Heng, L.; Zhang, J.; Chen, X.; Du, X.-S., Zhang, J.-L.; Gang, L.; Zhang, W.-G.; Nanoscale, 2016, 8, 7808-7826.
  8. Li, L.; Jiang, W.; Luo, K.; Song, H.; Lan, F.; Wu, Y.; Gu, Z.; Theranostics, 2013, 3, 595-615.
  9. Burns, A.; Ow, H.; Wiesner, U.; Chem. Soc. Rev., 2006, 35, 1028-1042.
  10. Peuschel, H.; Ruckelshausen, T.; Cavelius, C.; Kraegeloh, A.; BioMed Research International, vol. 2015, Article ID 961208, 16 pages, 2015.
PDFダウンロードはこちらから

(PDF:3.6MB)

「Polumeric Drug Delivery Techniques」バナー