生体材料

ポリエチレングリコール(PEG)選択ガイド

ポリエチレングリコールとは?

Polyethylene glycol (PEG)ポリエチレングリコール(PEG:Polyethylene glycol)は、ポリエチレンオキシド(PEO:polyethylene oxide)とも呼ばれる、エチレンオキシドと水の縮合重合によって得られるポリマーで、生物学、化学、医薬用途で有用な性質を示します。ポリエチレングリコールは、エチレンオキシドのアニオン開環重合で容易に合成することが可能です。分子量の範囲が広く、多種多様な末端基の付与が可能なため、多くの研究用途でPEGが使用されています。架橋によるネットワーク構築により、PEGは多量の水を含有可能なヒドロゲル(ハイドロゲル)を形成します。ヒドロゲルの形成は、電離放射線の照射や、PEGの反応性鎖末端を用いたPEGマクロモノマーの共有結合性架橋で開始できます。ポリエチレングリコールは、免疫応答を誘発しないため生物学的用途に適した材料であり、タンパク質の沈殿や、活性化してポリペプチドとタンパク質を結合するために多用されています1,2

ポリエチレングリコールは空気中において酸化による劣化を受けます。高温や酸素への暴露を最小限に抑えたり、酸化防止剤を添加することで、PEGの劣化を制限することができます。ポリエチレングリコールは保管中に加水分解や劣化を起こさず、カビも発生しません。ポリエチレングリコールはフェノールと適合せず、他の防腐剤の抗菌作用を阻害する場合があります。ポリエチレングリコールはペニシリンやバシトラシンを短時間で不活性化し、ソルビトール、タンニン酸、サリチル酸とは適合しません3

ポリエチレングリコールの用途

シグマ アルドリッチでは、さまざまな研究に適したPEG製品を提供しており、分子生物学、ハイブリドーマ、昆虫細胞培養、ガスクロマトグラフィー固定相、GPC分析用標準物質、ペプチド合成、X線結晶構造解析、洗剤およびdesigner surfactantなどに使用されています。我々のPEG製品の多くは、不動化や、タンパク質、ペプチド、その他高分子へのコンジュゲーションを行うために、機能性・反応性末端基で修飾されています。非PEG系の架橋剤や修飾用試薬と比較して、これらPEG試薬ではコンジュゲートの溶解度が向上し、毒性および免疫学的な影響を最小限に抑えることができます。ホモ二官能性(両端に同じ反応基を持つ)およびヘテロ二官能性(両端に異なる反応基を持つ)PEG架橋剤を使用することで、多様な長さと構造のポリマーが得られます。さらに、特定の異なる長さを持つPEG架橋剤が入手可能です。

用途に合ったPEGの選択

PEGは親水性と生体適合性を示すため、ポリマーを用いた薬物送達やその他の生物医学用途に適した材料です。ペプチドやタンパク質の毒性と免疫原性を抑え、溶解度と安定性を向上するために、直鎖状および分岐したPEG誘導体によるPEG化や修飾が行われています。薬物送達や生物医学研究に用いるPEGを選択するには、一般的に4つの性質が考慮されます。

官能性

ポリマー構造

  • 単官能性PEGは、化学的反応性を持つ末端基を1つ含んでいます。用途の例として、PEG化や表面およびナノ粒子の被覆などがあります。
  • 二官能性PEGは2つの反応性末端基を含んでおり、その種類が同じ場合(ホモ二官能性PEG)と異なる場合(ヘテロ二官能性PEG)があります。用途の例として、コンジュゲーションや架橋などがあります。
  • 薬物送達システムのPEG化、架橋、コンジュゲーションには、一般に直鎖状のPEGが使用されています。
  • マルチアーム型PEG(4本、6本、8本のアーム)は、薬物送達や生体組織工学の用途で、架橋を行ってヒドロゲルや足場を作製に使用することができます。
  • Y型PEGは、分岐構造により生体内での安定性が向上することからPEG化に使用されています。

反応性

分子量

  • 共有結合性のコンジュゲーション:N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基、チオール基、カルボキシ基のような反応性を示す末端基を持つPEGは、対応する官能基と共有結合性のコンジュゲーションを行うことができます。選択したコンジュゲーションの化学的方法に応じて、PEGの結合する位置や分子1個あたりのPEGの数が決まります。
  • クリックケミストリーは、コンジュゲーションやネットワーク構造を形成するための高速かつ選択性が高い生体直交型の方法です。
  • PEG末端をアクリラートで修飾すると、反応条件が温和で反応時間が短い光重合法を用いて重合することが可能になります。
  • PEG化:高分子量PEG(≥5 kDa)は、低分子量の薬物(低分子、siRNAなど)とのコンジュゲーションに使用されます。低分子量PEG(≤5 kDa)は、高分子量のタンパク質やペプチドのPEG化に使用されます。
  • ヒドロゲル形成:PEG分子量が、ヒドロゲルのメッシュサイズや機械的性質に影響を与えます。通常は、高分子量PEG(≥5 kDa)が使用されます。

PEGとの共有結合的な修飾には、化合物が少なくとも一方の末端に反応基または標的化可能な官能基を含んでいることが必要です。官能基とは、化合物の他の部分と関係なく特徴的な化学反応を起こすことが可能な分子内の原子団を指します。一般的な官能基と、対応する反応基を下の表に記載します。

Functional Groups Reactive Groups
Primary Amine (–NH2) NHSEster
Aldehyde

Anhydride
Epoxide
Isocyanate
Sulfonyl Chloride
Fluorobenzene
Imidoester
Carbodiimide
Acyl Azide
Carbonate
Fluorophenyl Ester
Thiol (–SH) Maleimide
Pyridyl disulfide
Haloacetyl
Vinylsulfone
Iodoacetyl
Carboxyl (–COOH) Carbodiimide Compounds (EDC, DCC)  
Carbonyl (–CHO) Hydrazides Alkoxyamines  
  • N-Hydroxysuccinimide
  • 1-Ethyl-3-[3-dimethylaminopropyl]carbodiimide hydrochloride)
  • Dicyclohexylcarbodiimide
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References

  1. Ingham, K.C., Precipitation of Proteins with Polyethylene Glycol. Meth. Enzymol., 182, 301-306 (1990).
  2. Veronese, F.M., et al., Surface modification of proteins. Activation of monomethoxy-polyethylene glycols by phenylchloroformates and modification of ribonuclease and superoxide dismutase. Appl. Biochem. Biotechnol., 11, 141-152 (1985).
  3. Martindale, W. The Extra Pharmacopoeia, 30th ed., Reynolds, J. E. F., ed., The Pharmaceutical Press (London, England: 1993), p. 1384.

General Reference

  •  Hermanson, G.T., Bioconjugate Techniques 3rd Edition, Academic Press (2013).
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