2次元材料

ゲルマネンおよびその類縁体

共有結合的に官能化されたゲルマネン:合成、特性、応用

Warren L. B. Huey, Joshua E. Goldberger

Department of Chemistry, Ohio State University, Columbus, OH 43210, USA

はじめに

ゲルマネン(Germanane)は、層状ファン・デル・ワールス2次元材料の一種です。puckered(ひだ状)構造のハニカム状sp3 Ge格子で構成され、すべてのGe原子が共有結合性配位子で終端されています。その特性は終端配位子の性質で大きく変化するため、これらの材料は幅広い用途に合わせて容易に調整することができます1。本稿では、ゲルマネン材料の合成、特性、および期待される応用についてまとめました。

共有結合的に終端化されたゲルマネンの合成と性質

共有結合的に終端したゲルマネンの合成は、HClや有機ハロゲン化物のような求電子性試薬でCaGe2をトポタクチックに脱インターカレーションすることで行われます(図1)。この反応は、各Ge原子上に表面終端リガンドを提供する一方で、puckered構造のハニカム状Geネットワークを維持します2,3。このリガンドが-H、-メチル、-ジメチルエーテル、または-アリルのように小さい場合は、単一のリガンドによる完全な表面終端化が可能です。より大きなかさ高い配位子では、配位子と-H末端が混在した状態が観察される場合があります4,5。GeHとGeCH3は、結晶や粉末の状態、基板上に剥離した場合でも、空気や水に安定です。

ゲルマネンの合成

図1 ゲルマネン(GeH)の合成。CaGe2)とHClを反応させてGeH(中央)を合成します。GeHはGe原子でできたpuckeredハニカム構造をとります()。Ge原子を赤、Ca原子を青、H原子を茶色で示しました。

ゲルマネン表面配位子の化学的性質は、熱安定性、電子構造、バンドギャップ、分散性などの特性に影響を与えます。例えば、GeHは75℃でアモルファス化が始まり、200℃で完全に水素を失うのに対し、GeCH3は300℃まで安定です2,3,6。第二に、配位子サイズと電気陰性度の間の相互作用が、半導体バンドギャップを1.4から1.7 eV(または700~1000 nmの吸収端)に調整できることが明らかになっています(図25。一般に、-ジメチルエーテルおよび-アリル基のような、より大きく、より電子求引性の高い配位子は、より小さなバンドギャップをもたらしますが、電子供与性の高い配位子(すなわちCH3など)はより大きなバンドギャップを示します。上記バンドギャップでの消衰係数は典型的には約103 cm-1です。最後に、10~1000 nmの長さの単層および二層シートからなる長期安定分散液の調製は、適切な溶媒(表面配位子に依存)中での超音波処理および遠心分離によって調製することができます。GeHはイソプロパノール中で安定な分散液を形成しますが、GeCH3とGeCH2CH3はクロロベンゼンや1,2-ジクロロベンゼン中で安定な分散液を形成します7-9

ゲルマネンの半導体バンドギャップ

図2 異なる配位子で共有結合的に終端したゲルマネンの半導体バンドギャップ。電子求引性配位子が大きくなるほどバンドギャップは小さくなります5

ゲルマネンの応用

ゲルマネンとその類縁体は、膜、トランジスタ、電池、光触媒、導電性アモルファスGeコーティングなど、多くの用途で有用です。

有機終端ゲルマネンは、H2OやNH3などの低分子が層間において吸収と浸透を迅速に行うことができるような、十分な層間ファンデルワールス空間を持っています。例えば、GeCH3は、GeCH3の1モルあたり0.37当量のH2Oをインターカレートすることができます。GeCH3のファンデルワールス空間内のH2Oの存在はまた、バンドギャップを大きく超える1.87 eVの赤橙色のフォトルミネッセンスを誘導します6。このような特性は、低分子分離、センサー、および淡水化のためのゲルマネン膜の設計を可能にします。

GeHを用いた電子トランジスタが注目を集め始めています。典型的には、両極性輸送挙動が観測され、ゲーティングによって電子チャネルとホールチャネルの両方に電荷が供給されることが明らかになっています。120Kでの電子移動度とホール移動度の値が、それぞれ6500、570cm2 V-1 s-1であることが報告されています10

GeHはリチウムイオン電池の負極材料として有望であることが示されています。完全にリチウム化したLi15Ge4相の理論エネルギー密度は1384 mAh/gです。GeHを用いたアノードはこの値に近づき、0.1~2V vs. Li / Li+の間で充放電した場合、可逆容量は1108 mAh / gになります7。また、インターカレートしたLiによるGeナノ粒子の体積膨張が大きいため、充電サイクル中に負極が劣化します。GeH負極の場合より安定で、100サイクル以上の高サイクルレートで容量を維持します7

また、ゲルマネン材料は、H2O/CH3OH混合溶液中での水素発生反応など、光触媒としても優れた可能性を示しています。例えば、1 wt% Ptを担持したGeCH3ナノ粒子光触媒は、可視光照射下で容易にH2を発生させることができます。バンドギャップを超えるエネルギーの光を吸収すると、光生成した電子とホールはそれぞれ速やかに白金およびCH3OHに移動し、再結合プロセスが低減されて水素生成反応が進行します11

また、合成後の処理により、水素終端ゲルマニウムを用いて導電性アモルファスゲルマニウム薄膜を作製することも可能です。GeHは本質的に絶縁性ですが、脱水素温度以上の熱アニールを行うと、室温で 1.6 x 10-7 Ω m の抵抗率を持つ非常に高い導電性の金属状態の材料に変化します12

結論

共有結合的に終端されたゲルマネン材料の調整可能な性質は、幅広い用途での応用を可能にします。終端配位子は、極薄膜への剥離を可能にしながら、空気や水に対する高い安定性をもたらします。終端配位子は、バンドギャップ、導電性、化学的相互作用に影響を与え、それぞれの用途に合わせて材料をカスタマイズすることが可能です。

2D材料については右記のページもご参考ください。
     

References

  1. Huey, W. L. B.; Goldberger, J. E. Chem. Soc. Rev. 2018, 47 (16), 6201–6223.
  2. Bianco, E.; Butler, S.; Jiang, S.; Restrepo, O. D.; Windl, W.; Goldberger, J. E., ACS Nano 2013, 7 (5), 4414–4421.
  3. Jiang, S.; Butler, S.; Bianco, E.; Restrepo, O. D.; Windl, W.; Goldberger, J. E. Nat. Commun. 2014, 5 (1), 3389.
  4. Jiang, S.; Arguilla, M. Q.; Cultrara, N. D.; Goldberger, J. E. Chem. Mater. 2016, 28 (13), 4735–4740.
  5. Jiang, S.; Krymowski, K.; Asel, T.; Arguilla, M. Q.; Cultrara, N. D.; Yanchenko, E.; Yang, X.; Brillson, L. J.; Windl, W.; Goldberger, J. E. Chem. Mater. 2016, 28 (21), 8071–8077.
  6. Asel, T. J.; Huey, W. L. B.; Noesges, B.; Molotokaite, E.; Chien, S.-C.; Wang, Y.; Barnum, A.; McPherson, C.; Jiang, S.; Shields, S.; D’Andrea, C.; Windl, W.; Cinquanta, E.; Brillson, L. J.; Goldberger, J. E. Chem. Mater. 2020, 32 (4), 1537–1544.
  7. Serino, A. C.; Ko, J. S.; Yeung, M. T.; Schwartz, J. J.; Kang, C. B.; Tolbert, S. H.; Kaner, R. B.; Dunn, B. S.; Weiss, P. S. ACS Nano 2017, 11 (8), 7995–8001.
  8. Tachibana, H.; Toda, N.; Takada, N.; Azumi, R. Jpn. J. Appl. Phys. 2019, 58 (10), 105002.
  9. Tachibana, H.; Toda, N.; Takada, N.; Mizokuro, T.; Ando, A.; Azumi, R. Jpn. J. Appl. Phys. 2019, 58 (SI), SIIB21.
  10. Katayama, Y.; Yamauchi, R.; Yasutake, Y.; Fukatsu, S.; Ueno, K. Appl. Phys. Lett. 2019, 115 (12), 122101.
  11. Liu, Z.; Wang, Z.; Sun, Q.; Dai, Y.; Huang, B. Appl. Surf. Sci. 2019, 467–468, 881–888.
  12. Chen, Q.; Liang, L.; Potsi, G.; Wan, P.; Lu, J.; Giousis, T.; Thomou, E.; Gournis, D.; Rudolf, P.; Ye, J. Nano Lett. 2019, 19 (3), 1520–1526.